日本の自宅へと帰ってきてしばらく。中国のチャイナっ娘や、アメリカのインディアンガールズなどと戯れたり、魔法世界に行くため転送ポータルまでの移動が面倒だからって、自宅兼私有地となっている土地の一角に魔法世界へ繋がった隠しゲートを創ったり、エヴァといくつもある人間世界の歴史本を読んだりして、観光したり、いろいろ勉強したりと旧世界、魔法世界両方で遊んでいると、18世紀に差し掛かったぐらいから土地に侵入しようとする者が現れてきた。
まあ、ただ侵入しようとする者ならあまり珍しくはないんだが、今回のものは少々毛色が違っていた。
まずこの俺とエヴァが住んでいる土地というものは、現在神が住む土地として日本の神聖な土地となっていて大きな結界も張られており、日本の裏に精通している神鳴流や陰陽師などにとっても大恩がある者達が住んでいる土地として大事にされていて、本来なら誰しもが迂回するような土地なのだ。
なので普段侵入してくるのはそんな事情を知らないほど低俗な盗賊や、興味本位に近づいてくるバカぐらいしかいないのだが、今回侵入しようとしてくる者は、まったくそこらの事情など関係なしに強引に結界を破ろうとしたり、金にものを言わせて周囲の土地を買ったりしてきているのだ。
俺とエヴァの留守中にもかなりの頻度で、しかも大勢の人数がこの結界に侵入しようとしていると、世界樹……神木・蟠桃も言っていたし、もうそろそろエヴァがキレてしまいそうなんだ。
周囲の土地から買い、周りに認識阻害の結界を張って堂々と中央に孤立させた俺達の土地を侵そうとしてくる相手側の汚いやり方に。
そして、当然今日もまた侵入を試みようと結界を破ろうとしてる。
エヴァは侵入者が結界を破ろうとしてる場所を睨んで怒鳴る。
「ああ、まったく! うるさいハエ共め! いっそのことすべて皆殺しにしてくれようか!」
怒りのボルテージが上がっているエヴァが全身から魔力を放出させる。
そして魔法を放つ構えをとって――。
「リク・ラクラ・ラックライラック! 契約に従い我に従え、氷の女――」
「ちょっ!? エヴァ、待った!」
周囲の環境とか関係無しに大魔法を放とうとしたエヴァを捕まえ慌てて止める。
「何をする!」
「いやいやいや、そっちこそだろ! エヴァがその魔法放ったら家庭菜園はもちろん森が凍りつくだろうが!」
ほぼ絶対零度、150フィート四方の広範囲完全凍結殲滅呪文なんか放つなよな!
「むぅ」
「かわいく頬を膨らませてもさっきのはやりすぎだ!」
「だが、アルヴィン……」
いじけモードに入るエヴァの頭に手を置いてやさしく撫でる。
「まあ、気持ちはわからなくもない。魔法世界でも住んでた城を取り上げられそうになって、結局引っ越したからな」
「……そうだ。私はもう奪われるかたちで拠点を動かしたくないぞ。奪われるぐらいなら敵を殲滅したほうがいい」
まっ、俺とエヴァだけで実際に魔法世界も旧世界も殲滅できるぐらいの力はあるんだけど。
それじゃ、つまらなすぎるし事後処理が面倒だ。
「とりあえず、戦争なんかは面倒だから、侵入者と対話でもしてみようか」
「話す? だが、奴らは話を訊くのか? 私たちは人外……。しかも、真祖の吸血鬼と大魔王なんだぞ。私たちの正体を知ったらそれを理由に喜々として土地を奪いにきそうだが……?」
不機嫌そうにつぶやくエヴァだけど……、吸血っていつしたっけ? 血よりも俺の精子ばっか飲んでる気がする。
「でも、話してみないとわからないだろ? これ以上あれこれ探られるのもいい気分じゃないしな」
「……それもそうだな。はぁ……、どちらにしろ面倒なことになりそうだ」
「でも相手に諦めるような気配がないんだし、放置しておくほうが後々面倒なことになりそうだろ?」
「それは……、そう、だな……」
「だからここらで相手側の主張とか理由とかを知っておこうじゃないか」
「むぅ……、わかったよ」
嘆息するエヴァを引きつれ、俺は侵入者の元へと足を進めた。
◆
「それで、私たちに何の用だ?」
「わ、私は本国の命令で……!」
はい。話を訊きに行ったんですが、エヴァがフライング気味な先手を打ちました。
多数いる侵入者のなかで、外見的にも魔力的にも1番偉そうな金髪のおっさんを有無を言わさずにロープで体をぐるぐる巻きにして地面に寝かせ、エヴァはそいつの喉元に『断罪の剣』という光の剣をそえました。
「本国の命令だと? ――つまり貴様らは魔法使いか?」
エヴァが威圧を強める。金髪のおっさんはその魔法とエヴァの魔力を見て怯えてます。まあ、人間にすればエヴァの魔力は大きいからねぇ。
「は、はいっ! わ、私は魔法使いです! ど、どうか剣を下ろしてっ、く、くださりませんか!?」
「ああん? 私有地に何度も不法に侵入しようとしたり、周囲の土地を買うという挑発行為を行っておいて言っているのか?」
「そ、それは……!」
もう金髪のおっさんビビリまくりです。エヴァもストレスを発散するみたいに魔力を放出してますし。
そろそろ止め時だな。話が進まない。
「エヴァ、ストップだ」
「だが、アルヴィン……」
「このままじゃ話もできないだろ? こいつらの目的や理由とやらを聞いてみようじゃないか」
「……わかったよ」
そう言ってエヴァはしぶしぶ剣を収めた。
未だに簀巻きにされているおっさんを見下ろして言う。
「さて、魔法使い。これからおまえがこちらを害してきた目的や理由とやらを聞いてやろう」
「あ、ありがとうございます!」
死の恐怖から解放されたからかおっさんは涙を流して頭を下げた。ただ話がスムーズに進むように解放しただけで、まったく礼を言われることじゃないんだがな。
俺はおっさんを縛っている縄を切って言う。
「では、移動しようか」
◆
おっさんがこの土地にちょっかいをかけてきた理由を問いただすため、俺は自宅から少し離れた森にある休憩所へと移動した。
休憩所といっても立派な建物で屋根付きで木製テーブルと簡単な壁としっかりとした創りの建物だ。
拉致とも取れなくはないが、丁度おっさん以外に魔法使いが近くにいなかったこともあり、追っ手はない。
休憩場に設置したテーブルの椅子である長椅子に俺とエヴァが並んで座り、その間、正面に金髪のおっさんを座らせた。
そこでの金髪のおっさん達が何度も強引に侵入してきた目的など理由を聞いて、相手側の主張は集約すると『この土地を使うから俺達に寄越せ』だった。
エヴァは相手側の一方的な主張とやり方に眉間にシワよせ、怒りで顔をピクピクさせた。
「つまり、魔法使いの拠点としてこの土地が欲しいから、現在この土地を所有している私達を追い出そうとしていたわけか」
「そ、それは……」
金髪のおっさんはエヴァの怒りに小さくなって顔中……、おそらく体中に冷たい汗をかいているようだ。
その金髪のおっさんにエヴァは冷淡に告げる。
「却下だ」
エヴァの意見に俺も同意して、
「ああ、却下だ」
と、うなずいた。
土地寄越せと言われて、かわいがってきた土地を渡せるわけがないじゃないか。そもそも世界樹との契約もある。
「ど、どうしてもですか……?」
金髪のおっさんは訊ねるが――。
「「もちろんだ」」
と、俺たちは揃ってうなずいた。
これで諦めてくれればいいのだが、おっさんは食い下がる。
「でっ、ですが! この土地は我々にとって重要な――」
「おまえたちがどう思っているかなど知るか」
「俺たちにはまったく関係のないことだ」
「――っ」
エヴァと俺が食い下がるおっさんの言葉を遮って切り捨る。そしてエヴァは威圧するような眼光で睨んだ。
「この土地は私たちにとって大事な土地だ。他所からやってきた魔法使いなどに渡せるか」
エヴァは本国にいる身勝手な魔法使いとか、一方的な正義を掲げる『立派な魔法使い』が大嫌いだからな。
「ここは諦めてくれないか? 他の土地でも探せばいいだろ。イギリスとかゲートがあるんだし、そこに拠点創ればいいんじゃないか?」
俺が助け舟? というか代案を出してみるが……。
「イギリスにはすでに拠点があるのです。それに……、絶対にこの土地でないといけないのです……」
と、魔法使いのおっさんは首を横に振った。ていうかこの土地でないといけないって、やっぱり――。
「世界樹が目的か」
「――っ!」
俺のつぶやきに魔法使いはあからさまな反応を見せた。この土地……、世界樹近くの地下には天然の大きなゲートがあったし、おそらくそれを確保したいんだろう。ていうか気づいてないとでも思ったのか?
エヴァがチッと舌打ちをしたあと、意地悪そうな笑みを浮かべて魔法使いに尋ねる。
「それで、私達がこの土地から退かなかったらどうなるんだ? 退かせるために軍でも送るか? ああ?」
エヴァの挑発のような言葉に魔法使いは額の汗をハンカチで拭い、ゆっくりとうなずいた。
「それも、本国は辞さないかと……」
「そうか……」
エヴァはそれだけ言うと――、
「ストップだ。エヴァ」
「――ちっ」
ふぅ、何とか行動する前に止められたか。まったく気づいてないようだけど、俺が止めなきゃ殺されてたね、魔法使い。
気を取り直して俺が魔法使いに話しかける。
「先ほど軍をあげてでも俺達を退かせようとすると言っていたな」
「あくまでそれは最終手段で――、っう!」
はぁ、魔力をほんの少し、1%にも満たないだけの量を解放し、威圧するだけで、喋れなくなるのか。
完全に魔力を収め、改めて大魔王モードで魔法使いに訊ねる。
「魔法使いよ。俺とエヴァが魔法世界程度に負けるとでも本気で思っているのか?」
「そ、それは……」
怯える魔法使いに、エヴァも続けて言う。
「私は真祖の吸血鬼で、こいつは実体を持った規格外の悪魔だぞ。――魔法世界の一国家、いや、全魔法使いが襲ってこようと退けられる」
「なっ! 真祖の吸血鬼!? じ、実体を持つ悪魔ですと!?」
魔法使いのおっさんは顔を真っ青にして震えた。
そして止めのようにエヴァが嗤いながら言った。
「どうだ? 私たちと戦争をしてみるか? 確実に貴様らが大打撃を負うこと、間違い無しだ」
と……。
魔法使いはそれで放心状態となった。先ほどの魔力でも威圧もあって、これで深層心理まで恐怖が刻み込まれただろう。次は――。
「魔法使いよ」
「……は、……はいっ! な、なんでしょうか!?」
「おまえ達は世界樹が欲しいとは言うが、それはそもそも不可能だ」
「ふ、不可能とは?」
「そのままの意味だ。世界樹、神木・蟠桃は俺たち……、厳密には俺と契約している。俺が守る代わりにこの土地を委ねるとな。万が一にでも俺とエヴァをこの土地から退けれたとしても、蟠桃はおまえ等を受け入れないだろう」
「…………それは本当ですか?」
「もちろんだ。500年近くなるがそれほど前からの契約だ。試しにそうだな……」
信じさせるために、蟠桃に頼む。もはや宴会芸の18番となったアノ技を。
『―――、――――、――――――』
『――、―――』
どうやらあちら側も乗り気のようだ。
「では証拠を見せよう。丁度ここから世界樹が見えるだろう。そこから世界樹を見ていろよ」
魔法使いにそう言って発動させる。
「おお……、こ、これは……」
魔法使いは呆然と世界樹を見た。光り輝く世界樹を……。一方、エヴァはというと見慣れてるからスルーだったが、脅しにかけては俺以上!
椅子に踏ん反り返って喜々として魔法使いを脅しにかかった!
「どうだ、魔法使い? 世界樹の内包する魔力は? おまえらがこの土地を無理矢理奪えたとしても、今度はあの魔力を持った世界樹がおまえらに牙を剥くぞ。何せ500年以上守っていた存在が不等に追い出されたのだ。暴走して何をしでかすかわからないぞ?」
「…………ぁ、ぅ……」
魔法使いはただ呆然と、どうすればいいんだと頭を抱えていた。
力で奪うにはあまりに強すぎる。仮に力以外で奪えたとしても、今度は世界樹が牙を剥くかもしれない。
だが、それでもこの土地は確保しないといけない。
精神が不安定になりかけていたところで、テーブルの下からエヴァを触って念話を繋ぐ。
『エヴァ』
『なんだ、アルヴィン?』
『このままこいつを追い払えば、また次のバカに説明しなきゃいけなくなる。この辺が落としどころだろう』
『ちっ、不愉快だが仕方がないか』
『ああ、だがまずはこの土地の活用法を聞いてから考えよう』
『それもそうだな』
エヴァとの相談を終えて魔法使いに訊ねる。
「そういえば、この土地をおまえらが手に入れたとしてどうするつもりだったんだ?」
魔法使いはゆっくりと答えた。
「……そ、それは……、これほどの大きな土地なので魔法使いも通える学園都市を創ろうかと……」
「学園都市……」
つまり学生の園か。……セーラー、スク水……、そういえば色々あったなぁ。コスプレエッチ……、最近は本職のところに行ってたけど、この世界ではまだセーラーとかブレザーとかないわけだし、エヴァとか素人に着せるのもいいけど、本物を愛でるのもなかなか……。それに多くの人間界の歴史ではもう少しすれば20歳以下とセックスしたらダメとかいう法律ができるそうだし……、まあ、悪魔である俺には法律とか関係ないけど。
うーん……、と、俺が心のなかで唸っていると、魔法使いのほうから切り出してきた。
「そ、そうです! 土地を貸し出すというのはどうでしょう!? 我々が金品などを対価に土地を借りるのです!」
これいい案だよな! 見たいに言うが、エヴァは甘くない。高圧的な視線で魔法使いを睨み、言う。
「ほう、土地を借す、か。外堀を埋めるように周囲の土地を金にものを言わせて支配下においたおまえらが、戦争をしてでも排除すると言った、おまえらに土地を借せと言うのか?」
「…………」
魔法使いのおっさんは何も言えずに固まった。このままでは話はまた最初に戻るとこちらから切り出す。
「……ふむ、そうだな……。まあ、条件次第では貸してやってもいいだろう」
「アルヴィン!?」
「ほ、本当ですか!?」
不機嫌そうに驚くエヴァだが、それも作戦の内だ。
暗闇のなかで一筋の光が見えたという魔法使いに大きな要求を通すための……。
止む終えずというか、仕方なしに慈悲をかけてという感じでエヴァに提案する。
「エヴァ、どうだろう? いつまでも広大なこの土地が森のままというのは将来的にありえないんだし、蟠桃と俺たちが住む土地での干渉や、不法侵入など、ある程度の金品を対価に土地を貸し出してみないか?」
「だ、だが……、土地を貸せばこいつらは絶対に、契約を結んでから何代かすれば、貸した土地を私物化して私たちの土地も寄越せと言ってくるぞ?」
嫌がるエヴァに、俺は諭すように言う。
「そうなったら、そのときに滅ぼせばいいことだろう? 元々俺たちは人外。貸した土地に一般人や魔法使いが住んでいようと関係なしに吹き飛ばせばいいんだ」
「――む? ああ、それもそうだったな。契約を破られたらすべてを破壊すればいいか」
「…………」
しぶしぶうなずくエヴァと、そうなった場合を考えて固まる魔法使い。
テーブルの下では相変わらず念話での相談が続けられいた。
『これだけの経緯を挟めばいいだろう』
『そうだな。じゃあ、今度はアルヴィンが先に契約内容を開示して、私がその契約を水増しだな』
『ああ、そうしたほうが、引き出しやすいし、こちらが妥協してやってるんだと自覚させられるからな』
『まったく、おまえは本当に悪魔だよ』
『そういうエヴァだって真祖の吸血鬼だろ?』
『ハハハハハ!』
『フハハハハハ!』
「(本国にどう説明しよう……)」
魔法使いは1人うなだれていた。
◆
結局のところ本国に魔法使いを帰し、正式な場で会議した結果、結ばれた契約はこうなった。
1、世界樹、神木・蟠桃とアルヴィン・アンドリューとエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの指定した土地には不干渉で、不法侵入した場合、いかなる理由があろうと生殺与奪権はこちら側にある。
2、私有地を貸し出す対価として毎年現在の価値で言うところの3億円を支払う(年代がどうなろうとその時代での3億円分の支払いを要求)。内1億までは魔法世界通貨でいいが、魔法世界の銀行での差し押さえ、横領等があれば、契約違反とみなす。
3、世界樹、神木・蟠桃の調査は認めない(これはひと悶着あったが、俺が守るという契約をしていることと、蟠桃自身が拒絶していることを新たな宴会芸となるだろう黒色発光させて、魔法使い側に世界樹自身が敵意をあることを示させて納得させた)。
4、貸した土地でのある程度の自由行動権。その土地で襲われたりした場合、襲った者の生殺与奪権を得る。さらに貸した土地で非人道的な研究などが行なわれた場合などは魔法使い側に何らかの罰則を科す。
5、基本貸した土地の防衛はそちらで行なうこと(世界樹の魔力を頼りにしていた魔法使いもいたようだが、貸してもらった土地ぐらい自分で防衛するのが基本だと大きな反論などはなかった)。
と、以上が最初の会談で決まったことなんだが、学園都市が設立されてから1代目学園長が任期を終えて2代目学園長が就任してから、段々と反発というか不満が強くなってきた。
学園都市の規模が大きくなりすぎて自分達では防衛しきれなくなってきたことも原因だったが、1番は正義の魔法使いが悪魔と真祖の吸血鬼に土地を借りていることが我慢できないんだそうだ。
遠まわしに出て行け、出て行けとうるさく言ってきたり、蟠桃を強引に調べに来て学園都市の防衛や一般人への魔法使いバレ防止用の認識阻害の結界に使ったりする魔力を得ようとしたりしたので、こちら側がキレた。
キレた上で追い込んだ。
まずは強硬派なる俺達を排除しにくる正義の魔法使いたちが、住居と森に張ってある結界を破って入りやすくなるように細工し、私有地の内側で捕縛。
捕縛した魔法使いを2代目学園長につきつけ、契約違反だと警告。
捕縛した魔法使い達を切り捨て、しらをきる2代目学園長に、作戦を強行させた魔法使いやバックにいる組織が誰かを、森のなかで愚痴を溢すようにバカみたいに話していた魔法使いたちの会話を記録した映像を見せるが、それでも2代目学園長がしらを切りそうだったので殺気を向けて威嚇すると、真っ白になって誰が命令したかを吐いた。
結果、魔法世界のメガロメセンブリアという契約した国の元老院という機関が黒幕らしいと判明。
そして、『真祖の吸血鬼、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』と、『実体を持った悪魔、アルヴィン・アンドリュー』とかいう賞金首にされる計画が魔法世界のメガロメセンブリアであることを聞きだした。
ちなみに賞金はエヴァが500万ドル、俺が400万ドルと、実際の実力などでいっても、ものすごくふざけた値段だった。
しかも、大量殺人など虐殺といった身に覚えのない罪で賞金首にされるという。
当然俺とエヴァは怒り、学園ごと滅ぼそうかと思ったが、一計を案じて元老院を別の方向から虐めることにした。
その方法は、実に簡単。
変装&分身した俺がメガロメセンブリアに行き、元老院を糾弾したんだ。
都市のラジオ局など乗っ取って、念話を使い最高額賞金首として手配されることになったと放送したあとすぐに、空に映像を映し出して、冤罪だと訴えたのだ。
『自分たちは立派な魔法使いを目指す者です! 私たちは国民の皆さんに聞いて欲しいことがあって行動しました! 先ほど放送されたと思いますが、新たな高額の賞金首にされた2人は実は無実で、冤罪なんです! 彼らは旧世界のある土地で何百年も住んでいたのですが、数十年前、メガロメセンブリアの元老院が旧世界に魔法使いの拠点を得ようと、しぶる彼らに頼み込んで何とか対価を支払うことで土地を借りたのですが、元老院はその対価を惜しみ、彼らが人外だというところにつけこみ、正義感の強い『立派な魔法使い』を目指す者たちに、「彼らは悪である!」、「我々の土地を不等に占拠し、金品を巻き上げている!」、「罪を重ねた悪だ!」と洗脳し、彼らを襲わせたのです! ――皆さん! 私たちは自分たちの正義に恥じないようにこの場で元老院を兆弾します! 彼らは悪ではない! 悪なのは腐りきった元老院であると!』
てな感じに放送し、呆然としてる国民のなかで同じく変身させた分身体に煽らせる。
『そ、そんな元老院が……』
『俺達を騙したのか!?』
『だけど、人外でしょ?』
『人外といっても彼らは数百年前から旧世界の土地に住んでいたそうじゃないか』
『それも、そうだな……。旧世界は我々の世界とは別だ』
『そうだ! 旧世界は我々の世界ではないんだぞ! 拠点が欲しくて土地まで借してもらってるのに、借りる金が惜しいからと、犯罪者に仕立て上げるとは、立派な魔法使いがすることじゃない!』
『そうだ! 立派な魔法使いを貶める行為だ!』
『元老院は腐ってる!』
などと、少しずつ内側から煽り、さらに糾弾する。
『我々が独自に調査した結果、この書類に記載されている元老院の魔法使いが諸悪の根源だと判明しました! さらに調べていく内に元老院が違法な魔法薬での人体実験や奴隷の取引なども発覚したのです! 悪を断罪する立場にある、国の重鎮である元老院が、悪の苗床になっているのです! 彼らの非道な行いは、我々メガロメセンブリアの民が浄化させなければいけない! 我々「立派な魔法使い」の品位を貶めた諸悪の根源は絶対に絶たねばいけない! 皆さん! 「立派な魔法使い」として立ち上がりましょう! このままでは我々の大事な人にも元老院に巣食っている「悪の魔法使い」の魔の手が忍び寄ります! 実際にすでに悪とする判断材料もそろっているのです! 立派な魔法使いを名乗るのならば! 自分が立派な魔法使いだと家族や子供に胸を張りたいのなら! 元老院の悪を皆で絶つのです!』
そうして杖を元老院のほうへ向け、観衆のなかに仕込んだ数十人の国民に歓声をあげさせ、誘導する。
『俺は行くぞ!』
『だが、彼らが言ってることは本当なのか?』
『俺は本当だと思うぜ! 元老院は腐ってる! 不正が横行しているのは事実だ!』
『なんでそう言えるの?』
『俺の家族は元老院を兆弾しようとして、元老院が放った暗殺者に殺されたんだ!』
『ねえ! 空をから振ってくる紙を読んでみて! 元老院がやった事が書かれているわ!』
『なっ!? 人体実験!? しかも病院の地下で!?』
『そういえばその病院で噂を聞いたことがある! あの噂は本当だったの……!』
ここまでもっていってやればもう簡単。民衆を先導させるように仕込んだ分身を動かし、暴徒化させ、人の波を作って元老院へ向う。
ちなみに暴徒化した住民が向う元老院では先行して放送した際に映っていた、個性を強くした魔法使い(分身)たちがなかにいる連中が逃げないよう数人で囲うように、転移できなくする結界を張っていて、
『先ほど放送した他の仲間は先に元老院の奴らを確保しに行った! 俺たちは周りで結界を張って逃げられないようにしてるんだ! どうか彼らと元老院の悪を正してくれ!』
と、暴徒化した民衆を元老院へ向わせ、最後の仕上げとして、元老院の老害と糾弾した勇気あるリーダーが一騎打ちしている場面をいいポジションで見せ、どこから現れたかわからない子供を、錯乱し自分から悪の自供をする完全悪役な老害が放つ魔法から庇う形で死傷を負わせ、相打ちにさせる。
さらに追加で、死ぬ間際に元老院の悪で人生を狂わされたストーリーを透き通る声で民衆に話し、カッコよく『立派な魔法使い』として死なせ、死体をそいつの親友である魔法使い(分身)に抱かせ、外に出て、外で結界を張っていた他の仲間達にどんな死に様だったか話させた。
老害のほとんど不正を暴かれ捕まったことを立派な魔法使い(分身)が改めて広場に集まった民衆に告げる。
そして、立派な魔法使い(分身)たちは、広場で尊い犠牲の下、悪は捕まり裁かれるであろうと演説した。
これから国の浄化のあとの再生に入り、『立派な魔法使い』を体現しているといってもいい、元老院を勇敢に糾弾した魔法使い(分身)たちが、新たにメガロメセンブリアの元老院の椅子に座る案が民衆から多く出るが、それを断る。
それでも強く押す者がいたが、親友魔法使い(分身)に、我々は元々リーダーを慕い、『立派な魔法使い』として行動したんだとか、元老院を糾弾した我々が、元老院に座ることはできないと断るが、国の再生には喜んで手を貸そうと言い。反論を抑えた。
そして、死亡した立派な魔法使い(分身)の親友魔法使い(分身)に「今回犯罪者に仕立て上げてしまった旧世界にいる2人に正式に謝罪しなければ」と、他の魔法使いが「何をそこまでしなくても」と言うなか、立派な魔法使いの親友魔法使い(分身)は分身ではない魔法使いも数人引き連れ、旧世界に渡り、条約違反などを行い、元老院の悪に手を染めた者のリストに記載されている2代目学園長を解任&相応しい刑に処させ、正式に謝罪した。
俺とエヴァは始めはやって来た魔法使いたちに不機嫌そうに対応するが、魔法使い(分身)の話を聞き、その誠意ある謝罪や元老院を糾弾した勇気ある行いに敬意を示すという形で、世界樹の一部魔力(溜まっていた余分魔力)を学園都市の防衛に使う許可と、国の再生のために資金が要るだろうと、要求する金品を5年の間半分にすることを決めた。
犯罪者に仕立て上げられるという大迷惑をかけられた俺たちが譲り、大変だろうと逆に援助したことで、本国から謝罪にやって来た魔法使いたちは、我々に少なからずの好印象を抱き、やはり元老院が間違っていたことを確信。その情報を本国へと持ち帰った。
そのあとは、国の再生に立派な魔法使い(分身)たちは尽力し、正しい立派な魔法使いの精神を広め、元老院が再生され、国が安定したところを見計らい、引退と隠居を表明。
『どうか魔法使いとしての道を間違わないで欲しい』とか、『私の今は亡き生涯の供である立派な魔法使いである彼のように生きて欲しい』などと演説し、姿をくらませた。
そして、その結果……。
俺たちは昔と同じような平穏を過ごしていた。
「ハハハハハ、本当に『悪』だな」
一連の事件を記録し編集した『立派な魔法使いの行い』というタイトルの自作自演の感動人生映画を観てエヴァはハンカチを持ってそう涙を拭きながら笑い声をあげた。
とりあえず、この映画は5、60年ほど経ったぐらいにメガロメセンブリアの放送局に提供し、放送させるつもりだ。
意地の悪い笑みを浮かべるエヴァを後ろから抱いて俺はいつものようにつぶやいた。
「まあ、悪魔のなかでも元大魔王だからな」
19世紀も半ばに差し掛かった頃の出来事だった。