メガロメセンブリアに賞金首にされかかったのを、別の方向から断罪した俺たちは相変わらずな日々を送っていた。
世の中の人間同士での戦争が揮発し、世界大戦が揮発しても関係なしに、相変わらずのだ。
まあ、元々世捨て人、というか人間ではないからな。もとより関係ないといえば関係ない。
戦争で戦力になるだろう京……、今は京都の陰陽師や神鳴流剣士達も『我々の技は悪霊や人に害をなす、人外に振るうもので戦争のために使うものではない』って、基本不参加だ。まあ、異能者が人間世界の戦争に関わると碌なことが起こらないからな。
だから俺は持て余した時間を、現実の6時間がダイオラマ魔法球の中では12時間という設定を変えたダイオラマ魔法球をエヴァに開発してもらい、そのなかで植物栽培を続けていた。
ちなみに何故設定を弄くったかというと、前に魔法世界に住んでいた時の城は、1時間、24時間タイプのダイオラマ魔法球だったから、1日放っておくだけで魔法球のなかで24日が経ち、2日、3日で48日、72日と経ってしまうからだ。引越しから数日後にダイオラマ魔法球に入って見たとき、家庭菜園が荒れ放題になっていたことに愕然としたことを覚えているから、こういう設定に変えたのだ。
でも、それでも外と中との時間の流れが違うので、定期的に入らないと菜園が荒れてしまうので、エヴァと錬金術師たちのなかで有名だった『フラスコのなかの小人』という意味のホムンクルスを生成し、ダイオラマ魔法球(フラスコ)に入れて農園の管理や建物の管理をさせることにした。
ちなみにホムンクルスのタイプは、ホムンクルスで元々性別関係ないんだし奉仕されるなら女性だよな、ってことで全員女性型。個別に個性も持たせて清楚タイプとガサツタイプと元気タイプ、ツンデレ、クーデレタイプなどをいろいろ創ってみた。
こうして俺はダイオラマ魔法球内での品種改良しながらの農作業に精をだしたり、その食材を美味しく調理したいからと料理の修業をしたりしていた。
一方のエヴァはというと、ちんちくりんのおっさんから合気柔術を習ってから、その練習したり、俺が栽培した新種の薬草を活用して新たな魔法薬を開発したり、人形作りをしたり、ゴスロリドレスなど、かわいい服を自作してたりしている。
それに、基本森のなかでの生活といっても、世界各地にも同じように拠点を散りばめているので、時おり転移魔法を使って世界旅行したりしている。
そうして時は流れていき、1982年。
22年周期で神木・蟠桃がその身に内包した過剰魔力を発光しながら消費する年。俺は魔法世界へ観光兼大戦がどうなっているか様子を見るために、魔法世界へと出発した。
行くのは俺だけ、エヴァはお留守番だ。魔法世界ではいたるところで大戦が起こっているそうだし、中継ぎを経て俺達の土地半分……、麻帆良という土地に建設されている学園都市の学園長に就任した近衛近衛門なる男が、2代目のように攻撃的ではないにしろ、必要以上にこちらに干渉したがっている傾向にあるから、あまり長期間留守にはできないんだ。
まっ、元々留守番っていっても自分の土地の一角に魔法世界への転移ポータルあるし、寂しがりやのエヴァのために、自身のエヴァ成分補充のために遅くても3ヶ月に1回ぐらいは帰ってくるつもりだからな。
ぶっちゃけ、エヴァを置いていく理由は特になかったり……。あるとしても女を口説きにくくなるぐらい……。
ちなみに茶々ゼロは戦闘大好きで戦争大好きと、いろいろな意味で危険なので当然お留守番。
………………。
さてと、魔法世界へ行きますか!
冤罪ですぐ取り消されたけど、賞金首の顔写真対策のために、久々に人外形態である、かわいくないからとデフォルメしたぬいぐるみサイズの黒龍フォームになって、魔法世界へと俺は出発した。
お土産期待しといてね、エヴァ。……と茶々ゼロ。
◆
そしてやって来ました魔法世界!
うん、自宅の敷地内に転送ポータルがあるから、1時間もかからずに来れました。
しかも地下に作った隠しポータルだから入国審査とかもいらないし、いつも通り影を媒介にした転移で移動します。
とりあえずは戦争の理由を知ってるだろうあいつのとこに行きますか。
エンテオフュシア王国に転移し、それから空中を飛行しながら墓守の宮殿へと向う。
「相変わらず辛気臭いところだなぁ」
空中王宮なのにラスボスダンジョンみたいな住処に、思わず素直な感想が漏れてしまった。
まあ、誰も聞いていないだろうと、王宮内へ向かうと……。
「何者だ!」
「龍?」
「何故ここに?」
「敵か?」
「貴様は……」
ぞろぞろと出てきました。
おいおい、ここはいつの間にこんな大所帯になったんだ? 数百年ぐらい前は陰気な造物主しかいなかったはずなのに。
とりあえず、刺激しないように長男? もしかして夫? 造物主って男だっけ? 女のような気がしたけど……。まあ、いいや。年長っぽい筋肉に話しかける。
「え~と、はじめまして。アルヴィンだけど、造物主いる?」
「……知り合い……、なのですか?」
少しだけ警戒を解いてくれたようだ。
「まあ、数百年前からの付き合いかなぁ。いまだに本名教えてくれないけど……」
ていうか、こいつら人工的に創られた人形じゃない? 俺とエヴァが創ったホムンクルスに少し似てるし、そもそも陰気なあいつに夫とか嫁さんとか息子とか、家庭が似合わないしさ。
そんなことを考えていると、宮殿の奥から数百年前とまったく変わらない全身黒ローブ姿スの造物主が出てきた。
「よっ、造物主。また遊びに来たよ~」
「アルヴィンか……。この時期に来たということは、魔法世界で起こっている戦争の理由に気づいたか」
相変わらずの深読み&自己解釈だねぇ。ていうか、戦争の理由っておまえかよ……。それに俺の黒龍フォームには触れないの?
「それで、何をしに来た? 計画を邪魔しに来たのか?」
「なっ! 計画の邪魔!? こいつやはり!」
おお、造物主の言いがかりに、雷っぽい青年がバチバチしてる。
俺は首を横に振って言う。
「別にそんなつもりないけど。ただ万年ヒッキーのおまえが寂しいだろうって、唯一の友人? まあ、知り合いが会いに来ただけ」
「……そうか」
「「「「「……………」」」」」
造物主はこちらの腹を探るような感じでうなずいたが、子供たちは造物主をほんのちょっぴりかわいそうな人を見るように遠巻きに眺めていた。
その空気に居心地が悪くなったか造物主が奥で話そうと提案してきた。
俺はそれにうなずき宮殿の奥へと向かい、テーブルなし、仰々しい2つの椅子を離れた位置に、対面に向わせで置いた場所へと招かれ、造物主と向かい合わせで椅子に座り、造物主から話し始めた。
「私が何故大戦を起こした理由について聞きに来たんだろう。昔会ったときに言ったがこの世界は元々、私が創り出した人工の世界で、その寿命が――」
おいおい、語りたがり屋か? 勝手に話し始めたんだけど……。
「――それで、私は『
ふ~ん、やっぱりか。ていうか、お茶出ねぇの、ここ? かれこれ30分ぐらい『魔法世界は滅びる!』、『魔法世界に住む住人を完全なる世界のなかへ入れて救わないといけないんだ!』、『私は世界を救うんだ!』と熱弁されて正直そろそろ帰りたいです……。
「そういえば、アルヴィンは元大魔王だったな」
「ん? ああ、そうだけど」
椅子に座りにくいから人間形態になろうかなぁ、と考えていたら造物主は椅子にもたれかかり訊ねてきた。
「滅びゆく魔法世界を我々は住人を完全なる世界に入れることで救済するつもりだが、おまえはどうする?」
「どうするって?」
「我々と対立するか、協力するのか、はたまた無干渉なのかだ」
「ん~……、俺はぶっちゃけどうでもいいって言ったら、いいんだけどねぇ。魔法世界の獣っ娘や、角っ娘が消えちゃうのは嫌だなぁ」
「…………それも全て幻想だぞ」
あれ? なにこいつ?
「幻想って言っても、元々世界ってのは幻想だろ」
「?」
わからないといった様子の造物主に、丁寧に説明を始める。
「魔法世界における崩壊とか、将来的に人間界でもいつかは起こるって言ってるんだよ。魔界もいつかは滅びるだろうしな。――滅びるまでは全てが幻想……、ってのは言ってしまえば当然だろ」
「――っ」
「今回のことも結構単純なことだ。魔法世界を創ったおまえ=神さまが力不足で崩壊することになりました~。火星に戻って魔法世界は消滅します。――なんてことも、大きな視点で見れば案外普通のことなんだよ。人間界でも滅びに瀕して創造主=神さまが出てきたりしても、しなくても、将来的には崩壊するかもしれないものなんだし」
「全てが崩壊という未来を通るだと!? 崩壊は決まっていることだから受け入れろとでも言うのか!?」
俺の言葉に激しく動揺を見せる造物主。まっ、こいつは魔法世界と1つの人間世界しか知らないようだし、仕方がないか。
「造物主、教えてやる。――実際、世界っていうのは結構な頻度で崩壊しているんだぞ」
「なっ!?」
ショックを受けた様子の造物主だが、かまわず続ける。
「魔界に住む者……、魔王ぐらいになれば誰もが知っていることだが、世界というのは幾つも存在する。それは違う次元、異なった銀河などに存在し、それらはまったく同じ世界であったり、次元が違ったり無数に存在するんだ」
「いくつも世界が存在する……?」
「その世界はいろいろなことが原因で滅んでいる。隕石の衝突だったり、太陽が消滅したり、化学兵器の暴発だっり、人間同士の戦いだったり……。おまえのように世界を創った本人が気まぐれで崩壊させたりと、このおまえが創りだした魔法世界に限らず、世界というものはいずれは崩壊するものだ。――だから、言ってしまえば、最初から存在する世界は誰が創造しようと、全ては崩壊までの長い幻想なんだよ」
「………………」
長い沈黙がこの場を支配する……。
何かを悩んでいるように、考えているように、造物主の全身黒ローブからはうかがえないが、少なくとも喜んではいないようだ。
……そろそろ本気で帰ろうかなぁ。
「元大魔王……」
「なんだ、造物主」
「崩壊は……、最初から世界に定められていたことなのか?」
「……そうだな。どんな世界でも生まれてからは成長、崩壊とそれまでの時間は永くても終わりは変わらないだろう。世界樹も枯れないとは言うが、ただ単にあれも1000年、2000年といった千年単位で生きるもので、数万年ほど経てば寿命がくるものなんだ。枯れないと人間が言うのは、枯れるまでの時間が人間の寿命よりも遥かに長いから枯れないものだと、そんな幻想を抱いてるだけなんだよ」
「世界樹でさえもか……。――私が『完全なる世界』に住民を入れても……」
「崩壊の運命は変わらないだろうな。完全なるっていったところで、その世界もいずれは何らかの理由で魔法世界のように崩壊するよ」
「……………」
永遠と思われた魔法世界の崩壊という実例がある分、造物主も『完全な世界』に不安をもったようだ。
「まっ、そう気を落とすなって。崩壊を止めることはできないまでも先延ばしにすることはできるんだからさ」
「だが、先延ばしにしたとしても……」
「崩壊するだろう。――が、それでもいいだろ。さっきも言ったが元々世界は崩壊するものなんだ。その世界を崩壊させないように努力するのは生命として当然の行動だと俺は思うぞ」
「……私は、どうすればいいんだ……」
弱々しい声でつぶやく造物主。元々陰気な奴だから空気がものすごく重い……。
「まあ、おまえはおまえなりに崩壊から魔法世界を救えばいいんじゃないか?」
「私なりに……?」
「そ。おまえなりに試行錯誤して悩んだ結果の『完全なる世界』なんだろ?」
「ああ……、2000年以上悩んだ」
「マジで!? 2000年悩んでんの!?」
「…………」
「…………その、ゴメン」
「……別にいい」
とりあえず場を切り替えて……。帰りたいし結論に入る。
「全部まとめて考えると、おまえはおまえのやり方で世界を崩壊から救えばいい。――俺はそうだな……、魔法世界が崩壊するのは嫌だから、別の方法でも考えるかな」
「別の方法だと?」
「そう、別の方法。魔法世界を救う(結局延命だけど言わない)方法がひとつしかないってことはないんだし、俺は俺で動き始めることにするよ」
「……それは、我々と敵対するということか?」
「極論が過ぎるぞ、おまえ。俺は俺で動くって言ったろ。――そりゃあ、救う方法の違いでおまえと敵対するようなことになるかも知れないが、俺が表立っておまえを打ち滅ぼすみたいなことはしないよ。面倒くさいし。この魔法世界と人間世界で見るとおまえが1番歳が近いんだしさ」
まっ、歳が近いっていっても数千歳は離れてるだろうけどね。
「……そうか。肉体があって制限がない大魔王が敵にまわらなくなっただけよしとするか」
俺の言葉を一応納得した様子の造物主は椅子から立ち上がった。
「だが、今回の大戦だけは絶対に邪魔しないで欲しい」
「絶対は無理だ。俺の大事な獣っ娘や角っ娘とかが死んでいくのは気分がいいもんじゃないし、――おまえに俺の行動を制限される義理もない」
「…………やはり、そうか……。ではそれ相応の対価を払おう」
「対価?」
造物主は宮殿のさらに奥へと足を進めて、俺についてくるよう促した。
長い回廊を造物主が歩き、その後ろを俺がふわふわと黒龍モードでついていく。
「大魔王といえど、悪魔。それ相応の対価を引き換えにすれば願いを聞いてくれるのだろう?」
「まあ、そうなんだけど、造物主。俺は実体で来てるから魔力を引き換えにとかは意味ないぞ? それに元とはいえ大魔王クラスと契約するんだ。魔力を対価にするならこの星の全ての魔力を対価にしても足りないぞ」
「それはわかっている。……昔に力の片鱗を見せられたときに嫌というほど理解できた」
ああ、はじめて会ったときね。俺が廃墟だと思って宮殿に入ったとき、侵入者は「問答無用殺します」とか攻撃してきたから、そいつら無力化するときに力の一部を解放したんだよな~。
「じゃあ、何を対価にするんだ?」
「ついてくればわかる」
あ~、対価ねぇ。ホムンクルスを創ってるから魂もあんまりいらないし、魔法具や魔法書も自分とエヴァで製作できるし、何か渡せるものでもあるのか?
◆
墓守の宮殿の奥、造物主が差し出す対価が何かといろいろ考えながらついていってると、造物主は大きな扉の前で止まった。
「ここだ」
ゴオオ……、とうるさく扉が開き、造物主が中に入る。俺も続いて入ると……。
「何だコレ? 棺か?」
石でできた棺のようなもの、いや、棺そのものが部屋のなかにいくつも鎮座していた。
造物主はそのなかの1つの前で止まる。
「これがおまえにとって丁度いい対価になるだろう」
「?」
疑問符を浮べていると、造物主は魔法で棺の蓋を開けた。
その棺を覗き込んで見ると、薄い褐色肌で、クセのある長い白い髪の小柄な女の子がいた。
疑問符を浮べたままの俺に、造物主が説明を始める。
「私が創りだした戦闘用の人形、アーウェルンクスシリーズだ。これは現在起動しているアーウェルンクス達の予備の肉体として作っておいたもので、予定では火のアートゥルの2代目となる器だった。それゆえにこの魔法世界ではかなりの上位にはいる能力を有している」
「へ~」
ふわふわと空中を浮遊しながら調べてみると、うん、確かに人形だった。造物主が言った通り、身体能力も高く、強い火の精霊の加護を受けているようだ。
「でも、魂がないぞ?」
これじゃあ、ホムンクルスよりも意味ないただの肉じゃん。
「さっきも言ったがそれは今稼働中のアーウェルンクスの予備の肉体なんだから、現在魂が入っていないのは当然だ」
「なに? じゃあ俺が魂入れんの?」
「そう言うことになるな」
「う~ん……、まあ、いっか。知らない内におまえになんか仕込まれるのは嫌だし、見掛けも上々。内面はこれから育てていけばいいんだし、うん。契約の対価とすることを認める」
「…………そうか」
対価にしていいと許可したのに、何やら納得できていない様子の造物主。
「どうしたんだ?」
「いや、なんでもない。……まさか大魔王とあろう者が女を用意するだけで譲歩するなんて。……やはりエヴァンジェリンのような子供型を用意しておいてよかった……」
小声だけどばっちし聞えてるからね、造物主! あと俺はロリも好きなだけだからな! 大人も大好きだから!
「まっ、対価としては少ないから、要求できる願いも限られることになるがいいんだな?」
「ああ、おまえに渡せるような物は他にない。もう1体実は作製しているがそれは外見的に旧世界には相応しくないからな。――それで契約だが、この大戦で表立って行動しないと約束してくれればいい」
「つまり、大戦の規模を大きくしてる黒幕で、世界の敵認定にされるだろうおまえらを、俺が気まぐれにぶち殺すなって言いたいんだろ」
「……その通りだ」
完全に手を出すな、という選択肢がない状態ではそれが最善か。これだったら、俺が前線に現れることがないし、こいつ、俺のことバカで面倒くさがりだと思ってるらしいから、裏側でこそこそ動くなんてしないって思ってるみたいだからな。
「契約成立だな。――ああ、このままじゃおまえの支配があるかも知れないし、始まりと終わりの魔法とか効きそうだから、こいつは完全に俺の眷属にするぞ?」
「好きにしろ」
「じゃあ、さっそく」
彼女が入った棺の下に魔法陣を敷き、龍の手の指先を切って口元に血を一滴落とし、眷属化する。
胸の中央、心臓に俺のマークが刻まれたら眷属化完了だ。
「…………。よし、無事に眷属化できた。魔法世界からも、おまえの支配からも切り離したからな」
「ああ」
造物主はうなずいたのを同時に、彼女が目を覚ます。
「…………」
ふむ、まだ自己の魂や考えは生まれていない、まっさらな状態だが、これから教育していけばいいか。
とりあえず……。
「俺がキミのパパ兼主人だ。基礎知識はついでに入れたが、理解できるか?」
「はい」
俺の言葉に素直にうなずいた。どうやら理解はできているようだ。
「じゃあ、これで用は全部済んだな。俺らは帰るぞ」
「ああ、わかった。契約は忘れるなよ」
「ふん。誰に言ってるんだ? 俺は悪魔だぞ。交わした契約は絶対だ。行くぞ、え~……と、ニィ」
「ニィ?」
「そうだ。それがおまえの新たな名だ。ちなみに俺のここでの名はアルヴィン・アンドリュー。気軽にパパやお父さん、お兄さん、お兄ちゃんなど、好きに呼んでくれ」
火の二代目予定だったそうだからね。弐=ニィだ。
「わかった」
「よろしい。じゃあな、造物主」
最後にもう一度造物主に挨拶してから、俺はニィを引きつれて墓守の宮殿から出て行った。ちなみに、ニィに与えた知識のなかには魔法はないので、俺が浮遊魔法を使って飛ばしてる。
さてと、娘ができたけど、これからどうするかな。
◆
ニィをつれて墓守の宮殿を出たまではいいが、魔法世界は現在大戦中。旅をするには少々危険だし、一箇所に留まったほうがいい。
とりあえず、近いというか、同じ国の首都オスティアに滞在するかな。
灯台下暗し~、みたいにすごく近くにいると知ったら造物主が驚きそうだしね。
オスティアで大部屋の宿を取ってそこで一夜を過ごす。
宿で今まで棺のなかにいたためか埃っぽかったので、桶に張ったお湯で体を洗わせた。
「これからどうするんですか?」
お湯で体を洗い終わったニィが訊ねてきた。
「しばらくこの国を拠点にしようと考えているよ。ニィの自衛のためにも魔法も覚えないといけないからね」
「魔法?」
かわいらしく首をかしげるニィの頭を手の代わりに尻尾で撫でながら言う。
「そ、魔法。気を覚えさせてもいいけど、ニィには魔法のほうが合ってるようだからね」
身体構造的にはほぼ人と同じで、魔力量はこの世界の人間と比べてかなり高めで火の精霊の加護つきと高スペック。さらに大魔王である俺直属の眷属にしたんだし、鍛えればかなり強くなるだろう。
虚空に黒龍の手を突っ込んで、ある物を取り出す。
「ニィ、こっちにおいで」
「はい」
近づいてきたニィに手を出すよう促して、差し出した手の平に置いた。
「指輪?」
かわいく首をかしげるニィに説明する。
「それは魔法の発動体だ。まあ、生まれ的に必要ないだろうが、普通は必要だからな。つけておいたほうがいい」
「フェイクということですね」
と、ニィは指輪を人差し指に嵌めた。まだ個としての表情は乏しいが、機動して数時間にしてはかなり早く個が生まれてきたな。
「じゃっ、今日のところは寝るか」
「はい」
ニィと一緒にベッドに潜り込み、ニィに抱き枕にされ、こうして1日が終わった。
とりあえず、ニィのゴスロリドレスはかわいらしいけど、寝るときはちょっと邪魔だね。
まずはパジャマとか服を買わないといけないな。
一応エヴァが作った服も取り出せるし、別荘のなかには魔界にいたころから制作して溜めていた様々なコスプレ衣装が多々置いてあるけど、ニィ専用として服を買ってあげたいからね。
まあ、それも全部明日からだ。
原作2代目火のアートゥル、弐ことニィをゲット!