※この作品はR-18です。

アズレンエロ話(直球)   作:オパール

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えっ!?全開でイク!?(挨拶)

まさかTwitterで宣言してから半年近く
しかもこれが2019年一発目になるとは思いもせんかった

モチベ低下が最たるものとはいえこれはちょっとどころかかなりの反省です、ほんとに

そんなわけでアラフォー艦隊後日談にあたる綾波とアラフォーの初夜ックスになります

ちなみに本日、綾波とのケッコン記念日です


アラフォー艦隊編
綾波「初夜」


 ここはとある泊地。

 少々年食った男が指揮官を務める海軍基地。

 

 男は一人。されどその妻は五人。

 

 一般社会なら到底認められるわけがない状況だが、この泊地内においてはそれは合法となっている。

 

 ―――何故なら。彼女達は人間ではないのだから

 

 

 

 このお話は、そんな五人の彼女達―――艦船(KAN-SEN)―――の内の一人、その筆頭である駆逐艦のある決意と願いが起こした一夜限りのお話である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・綾波「初夜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツルッ ターンッ(転倒)>

 

アッハハハハハハ!!!!wwwww>

 

え、嘘でしょ。転んだんですか赤城さん?>

 

……帰してくれんかぁ>

 

 

 

「何やってんだか……」

「ざまぁないのです」

「お、おう……何か口悪くなったな綾波……」

 

 夜も更けた母港。寮舎の一角。

 とある一室には、この泊地の代表たる指揮官と、彼と一番最初にケッコンを果たした駆逐艦、綾波の姿がある。

 座布団に胡座をかく指揮官の膝の上に、その小さな体躯をすっぽり納める綾波。

 二人が観ているのは、旅先にいる部下や同僚達からのビデオレター。

 映像の中では、赤と黒の着物に身を包んだ狐耳の女性が雨に濡れた地面に足を取られてスッ転んだ様子。それを見て一人で大笑いしてる白髪の女性と、心配してるようで内心その姿を嘲笑っているであろう黒髪の女性の姿が映されていた。

 

「……しっかしさぁ。重桜本土ってそれなりに広いんだよな?」

「はい。確かそのはず、です」

「そこをサイコロの出目だけ頼りに回るって、考えたやつ馬鹿じゃねぇのか?」

「翔鶴は赤城を陥れるためなら何でもするです」

「あぁ、そう……」

 

 

 

鳴いてみたらどうですかすずむし>

 

なにぃ?>

 

 

 

 狐耳の女性―――赤城のその叫びを最後にテレビ画面が黒く染まる。どうやら今回はここで終わりらしい。

 

「何かあいつらの言葉の殴り合いを見せられてるだけだな」

「でも指揮官、楽しそうだったのです」

「いやまぁ面白かったけども」

 

 テレビの電源を落とし、綾波の髪が優しく撫でられる。

 むずがりながらも、それを受けてふにゃりと微笑んだ綾波。指揮官の意図を察して、そっと立ち上がった。

 

「さて、と。良い時間だし風呂入るか」

「あ、指揮官……」

「ん? 一緒に入るか?」

「……はい、です」

「……?」

 

 妙な歯切れの悪さに違和感を覚えるも、指揮官は着替えを手にそのまま室内備え付けの浴室へと向かっていく。

 

 一方、残った綾波は頬を真っ赤に染めたまま俯いていたが、やがて意を決したように自身も浴室へと入っていった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 突然だが、ここで時間を少し遡ろうと思う。

 

 事の発端はこの日の昼過ぎ。哨戒任務を終えて、指揮官がいる執務室へと向かっていた綾波。

 いざ目の前まで着くと、何やらドアが少し開いている。

 不思議に思いつつも、そこから指揮官の声が聞こえてきたため、他に誰かが来たのだろうと思い、ノックして自分の中に……そう思って中を覗いてみた。

 

 

 

 ―――銀髪の女性が、指揮官と唇を重ねていた

 

 

 

「―――」

 

 別に浮気だとかそういうことを言うのではない。

 彼女もまた、指揮官とケッコンしたKAN-SENの一人。彼が選び、自分もまたそれを認めた相手だ。それにキスくらい自分も何度か交わしている。

 

 ―――問題は、そのキスの仕方

 

 遠目から見てもわかるほどに、濃厚なそれ。

 唇を吸い合い、舌を絡め、口の端から零れる唾液も意に介さず、情熱的に交わされる口付け。

 

 ―――自分は知らない。そんなキス、知らない

 

 キスくらい何度もしてきたが、そのどれもが唇を重ねるだけの簡単なもの。

 もちろん、それも愛情から来る行為だとぼんやりとだが理解できているし、彼女達だって経験くらいしてるだろう。

 

 でも、いま綾波の目の前で行われているそれは違う。

 

 胸の奥が黒くざわつく。口の中がカラカラに渇いて、頭の中でナニカがチリチリ弾けている。

 

 気付けば、綾波はそこから逃げるように走り去っていた

 

 

 

 

 

 

 

「……お前な」

「あら、良いじゃない。オアズケ(・・・・)されてる分、これくらいの役得はあって然るべきでしょ?」

「時間と場所考えろっつってんだよ。誰かに見られたらどうすんだ」

「見せ付けてやっても良いんじゃない? 文句言える子なんて今はいないんだし。……ねぇ、それよりもう一度……」

「お断りだ。さっさと仕事してこい」

「もぅ、ツレナイわね。そんなだから童貞なのよ」

「違ぇっつってんだろうが」

 

 

 

(―――お膳立ても楽じゃないわねぇ)

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 寮舎の自室で、綾波は一人黄昏ていた。

 膝を抱え、窓の外から聞こえてくる波の音を右から左へ聞き流す。

 胸の奥のざわつきはまだ続いている。自分が知らない行為を、指揮官と他の艦船達はしていたのだ。

 

 端から見れば、誰もがその感情の正体に気付くだろう。だが、綾波はそれを理解できていなかった。

 感覚としてはこれまでも何度か感じたことはあるが、それを理解できたことは一度も無い。

 

 だから、思ってしまう。自分の中に溜め込んでしまう。

 

 今からそこそこ前、綾波が自分だけで悩みを抱えて潰れそうになってしまった時。指揮官はどんなことも言ってくれていい。頼りにして、迷惑をかけてもいいと、そう言ってくれた。

 

 嬉しかった。指揮官は、ずっと綾波の大好きな指揮官のままで、はじめて会った時から何も変わらなくて。

 

 それからたくさんわがままを言うようになった。それでも、端から見ればわがままと言えるかどうかも微妙な、ごくごく可愛らしいものばかりだったが。

 

 けど今回は、あの時とは勝手が違う。

 

 ―――知られたくない

 

 ―――こんな気持ちを持ってしまった自分を

 

 ―――こんな、醜い気持ちを抱いてしまう自分を

 

 ―――他の子を、『邪魔』だと思ってしまう自分を

 

「……ぅ」

 

 そして、また一人で完結させようとする。

 涙が溢れる理由はわからない。

 

 いらいらして、むしゃくしゃして、ざわざわして

 なのに、何でか悲しくて

 

「―――」

 

 役職じゃない、彼の名前を呟いてもむなしいだけで。それどころかもっと悲しくなってきて

 

「………」

 

 声は出ない。なのにはらはらと涙だけが零れていく。

 

 こんな時、どうして人間みたいなのだろうと思ってしまう。

 

 KAN-SEN―――本当にただの艦船だったのなら、どれほど

 

 

 

 コンコンコンッ

 

 

 

「!?」

 

 ほの暗い考えにまで及びそうになっていた瞬間、ドアから響くノックの音で思考が中断する。

 涙を拭い、つっかえながら返事をすると、ゆっくりと控え目に扉が開いていく。

 

 現れたのはベルファスト。

 彼女もまた、指揮官から指輪を贈られた艦船の一人。

 

 部屋に入り、綾波の表情を見るや、彼女は一番に切り出した。

 

「……何か、あったのですね」

 

 何かあったのか? という疑問ではなく、何かがあった、という確信。

 やっぱりこのメイドさんには隠し事は無理、と綾波は早々に諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

「……そう、ですか」

「綾波は、指揮官とあんなことはしたことないです。……いいえ、する必要があるとも思ってなかったのです。だって、指揮官と一緒にいて、みんなと一緒に過ごして、指揮官と触れあってるだけで……とても、倖(シアワセ)なんですから」

 

 綾波の話を、ベルファストはただ静かに聞いてくれていた。いつも懐いている想いも、たまに感じる嫌な気持ちも、今回みたいな苦悩も、何もかもを吐き出して。

 

「指揮官はきっと、綾波のこんな気持ちを許してくれると思うです。でも……『綾波が』嫌なのです。こんな、みんなに向けて良いものじゃないのに。それでも……綾波がしたことないことを、他のヒトがしてるのが、どうしてか許せなくて……ざわざわして、むしゃくしゃ、して……」

 

 そう言って、両手で顔を覆う綾波。肩を震わせ、微かに漏れ出る嗚咽が室内に広がっては消えていく。

 隣に座るベルファストは何も言わず、ただ優しくその小さな背中を叩いていた。その優しさが逆に綾波の心に追い討ちをかける形になっていたが、ベルファストはそれを理解しつつもやめることはなかった。

 いっそのこと、一度何から何まで吐き出させてしまった方が良いのだ、と。

 

 

 

「……綾波さん」

 

 落ち着いた頃を見計らって、ベルファストがそっと声をかける。顔を上げた綾波の泣き腫らした目を、正面から見つめながらゆっくりと語りかけた。

 

「その感情は、悪いものとは限りませんよ」

「……え?」

「嫉妬、やきもち……愛するヒトが、自分以外の誰かと親しく、もっと言えば睦みあっている様を見てざわついて……ええ。実を言いますと、私、しょっちゅう綾波さんとご主人様に感じています」

「……ベルファストさん、も」

「どうして私にはそこまでしてくださらないのか。私も指輪を贈られて、それを受け取っているというのに。ご主人様を受け入れる準備など、とっくに出来ているのに、と……」

「やき、もち……」

「はい」

 

 やきもち。

 名前くらいは知っていたが、いざ直接そう言われて、自分の中で言葉の意味と感じてきた感情を擦り合わせてみる。

 

 ストン、と

 

 不思議なほどに、すんなりと。歯車がカッチリ噛み合ったように落ち着いた。

 

「…………あ」

 

 そして

 

「あぁ……!」

 

 理解できたと思ったら

 

「ああああああああ……!!」

 

 一気に恥ずかしくなってきた

 

「綾波さん?」

「沈めて……綾波の酸素魚雷使って良いですから……」

「申し訳ありません。ご主人様が悲しまれますので」

「うぅ……」

 

 そういうベルファストの声は実に楽しげだ。

 普段は指揮官に迫っては軽くあしらわれて空回りしまくるというポンコツムーヴキメてばかりの彼女だが、ああ確かに、親しい相手にはこういう面もあると知っていたのに。からかい上手のベルさんなんて呼ばれている女なのに。

 

「……で、でも。指揮官がどう思うかなんてまだわからないです。嫉妬する子なんて嫌だとか思われたら……!」

「あら。ご主人様……綾波さんの旦那様は、そのようなところがあるだなんて……そのようなことはないと、他でもない綾波さんが一番よくご存知だと思っていましたが」

「それ、は……」

「それに、です」

 

 そっと、綾波の手を取るベルファスト。

 

 その手の薬指に光る指輪。指揮官から贈られた絆の証で―――今は、気持ちを繋ぐ宝物。

 

「先ほども言いましたが、嫉妬するということは悪いことではありません。まぁ、赤城様や大鳳様のような場合は別にしてですが。……綾波さんは、嫉妬して当たり前の立場にいるのですよ」

「当たり、前」

「はい。綾波さんはこの母港の誰よりも―――」

 

 

 

 ―――ご主人様を、想っていらっしゃるのですから

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「~♪」

 

 タイル張りの小ぢんまりとした浴室に鼻歌が響き渡る。

 浴槽に肩まで浸かっている指揮官。その膝の上に当然とばかりに綾波が。

 

 端から見れば事案である。今さら? 知ってた

 

 一日の疲れがお湯に溶け落ちていくような感覚にご機嫌な指揮官とは対照的に、綾波はじっと湯面に浮かぶ自分の顔を見つめている。

 

 ベルファストとの語らいの際、最後に告げられた言葉が未だに頭の中で繰り返し繰り返し響いているのだ。

 

 

 

『実を言いますと、私達の誰一人、キスから先は経験しておりません』

『エンタープライズ様は恥ずかしがっておられますし、三笠様は誘うより誘われたい派とのこと。オイゲンさんはその辺り貪欲ですが、指輪を贈られた順番という立場上自制は出来ているようです』

『私ですか? ええ、いつも通りすげなくフラれてます』

 

『ですので―――スる(・・)なら、綾波さんが一番最初、ということになります』

 

 

 

「……」ブクブクブク

「綾波?」

「ブハッ!?」

 

 いつの間にか鼻が浸かるほど湯船に沈み、そのまま空気を吐き出し続けていた綾波。唐突にかけられた声に思わず驚き、勢いで鼻から口からお湯を吸い込み瞬時に逆流した。

 

「うぉぉぉぉぉい!? どうした大丈夫か、まさかのぼせたのか!? そうならそうって言ってくれよ!!」

「げほっげほっ……お゛ぇっ。ぢ、違うです……考えごとじてて……」

「そ、そうか? 大丈夫か?」

「はいです……あっそうだ(唐突)。お背中流すです」

「いやでも」

「流すです(迫真)」

「アッハイ」

 

 鬼神の圧力に圧されるがまま、指揮官は湯船から上がるとバスチェアに腰を下ろす。その後ろに膝立ちになる綾波。

 ボディーソープを馴染ませ、お湯を少しかけてよく泡立てたタオルを当ててごしごしと。

 

「ごしごし……ごしごし……どうですか?」

「ん? うん、気持ちいいよ」

「……えへ」

 

 心地よさそうな声に気をよくして、そのまま腕や脇腹も洗っていく。見える範囲まんべんなく洗い、指揮官が自分で足や身体の前面を洗い終えたところで、洗面器に汲んだお湯で数回流す。

 

「……ふぅ。ありがとな綾波」

「それじゃあ、交代、です」

「ん?」

「指揮官に、綾波の身体、洗ってほしい、です」

「……お、おう」

 

 このお願い、実ははじめてされる指揮官だった。

 一緒に入浴することは何度もあったが、これまでは自分が流してもらうばかりで、綾波は恥ずかしがって自分で身体を洗っていた。

 この時点で指揮官、だいぶ綾波の様子がおかしいことに気付いている。伊達に長い時間連れ添ってない。

 それでも、期待に満ち満ちた綾波の視線を受けて断れるはずもなく。

 

「……んじゃ、始めるぞ」

「お願いします、です」

 

 泡立てたタオルを、その小さな背中にそっとあてがう。

 

「んっ……」

 

 ぴくり、と少し肩が震えるも、それ以降アクションは無さそうなので、指揮官はゆっくりとタオルを動かし始めた。

 

「……痛くないか?」

「はい……気持ちいい、です」

 

 その声音はうっとりとしていて。

 前にある鏡に写るその顔は、確かに気持ちよさそうだった。

 

 ごしごしと、とても小さいはずの音が、二人の耳にはやけに大きく聞こえている。

 それに加えて、自分の鼓動の音さえも聞こえてる気がして。

 

(……いや、本当にどうしたんだ今日の綾波。ていうか何でこんな緊張してんだよ俺……ダメだ、待てやめろ反応するなマイサン。綾波やぞ? ケッコンしたっつっても娘みたいに思ってる相手やぞ? 性欲戻ったとはいえ向ける相手が悪いって……!)

(あぅ……指揮官に背中見られて、触られて……でも、拒んだらダメ……指揮官なら、何でもしていいって知ってもらうです。綾波、指揮官のお嫁さんなんですから……だから……!)

 

 こんな具合に、この二人見事にすれ違いの思考に至っている。

 お互いがお互いを誰よりも大切に思ってるのに。

 片や汚したくない、片やもっと触れてほしいという。

 

 何ともまぁ不器用な夫婦である。

 

「……うし。じゃ、前は自分でな」

「あっ……」

 

 気付けば背面は余すとこなく洗い終わり、指揮官はさっと距離を取る。

 一方の綾波、名残惜しくもどこか満足している自分の気持ちを無理矢理に抑えつけ……そして

 

「―――前、も」

「―――はい?」

 

 聞き間違いか、と思った指揮官が振り返る。

 

「前、も……洗ってほしい、です……」

 

 チェアに座ったまま、身体ごと指揮官に向き直り。

 両手をいっぱいに伸ばす綾波の姿。

 

「―――」

 

 息を呑む。

 浴室の温度で上気した頬。湿気で濡れた髪。

 首元から滑り落ちる汗を目で追ってしまえば、そこには呼吸に合わせて上下する一対の膨らみと、その頂点。

 更に下にはなだらかな丘から続いて描かれる曲線。

 

 綾波の一糸纏わぬ姿を正面から見たのは、実はこれがはじめてだった

 

「―――バカ言うな。それくらい自分で」

「指揮官、前にわがまま言ってくれて良いって、言った、です。だから、わがまま……」

「いやそれとこれとは」

「指揮官」

 

 気付けば目の前まで来ていた綾波。タオルを握ったままの手を取られ―――その胸へ、導かれた。

 

「……あ、や」

「……綾波、は。指揮官の、お嫁さん、です。……一番最初の、お嫁さん、です。他の子達がしたことないことも……一番、最初にしたい、です」

「……まさか、昼間の」

 

 見てました、という意味をこめて頷く。

 最悪だ、と自分の迂闊さと能天気さを同時に恨む。

 

「責める気は、ないです。でも、それを見て綾波……ざわざわして、むしゃくしゃして……やきもち、妬いてしまった、です」

 

 大きなその手を握りしめたままの綾波、その指は小さく震えている。

 それでも、と。

 勇気を出して、いつも優しく撫でてくれるその手を、離さないとばかりに、今以上に自分の胸に押し付ける。

 

「指揮官。綾波は、指揮官が大好きです。だから、指揮官とケッコンしたこと、後悔したこともないです。……綾波、もっともっと、指揮官のお嫁さんになりたいです」

「……自分が何言ってるかわかってるか?」

「綾波、詳しいことはよくわからない、です。だから」

 

 

 

 ―――指揮官に、教えてほしい、です

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 身体を洗う、というのはどちらかというと方便に近いものだったらしいが、それはそれとしてしっかり行われたらしい。

 指揮官は先に部屋に戻り、寝間着のスウェットを着て布団に座り込んでいる。

 

(……来ちまったかー)

 

 正直なところ、いつかこういう日が来るのではないか、と心のどこかで思っていた。

 赤城や大鳳、愛宕といった人型肉食獣系艦船が重桜以外にもいるこの現状(ユニオンのセントルイスは特にやばい)。人間と同じ姿を持ち、食事もすれば睡眠だって摂る。

 そんな、人間の三大欲求を持つ彼女達KAN-SEN。その中で綾波は例外、などとどうして断言できようか。

 

(だ、大丈夫、だよ、な?)

 

 最後に女性と寝たのは何年前だったろうか。

 自分はアラフォー。記憶の限りでは20代後半、30を越えてからは一度も無い。

 少なくとも十年はご無沙汰、という計算になる。

 

(無理させたくねーよなぁ……)

 

 

 

「お待たせしました、です」

 

 

 

 背後からかけられたその声に振り向く。

 目に飛び込んできたのは、いつだったか彼女が見せてくれた、花嫁衣装だった。帽子は外されていたが、その格好は間違いない。

 

「綾波……」

「……その。やっぱり、この服の方が、お嫁さんらしいと思って……変、でしたか?」

「……いや、そんなこと無い」

「良かった、です」

 

 一歩。また一歩。

 ゆっくりと、焦らすように指揮官の元に向かう綾波。

 

 やがて目の前にたどり着き、潤んだ瞳で、まっすぐに見つめ―――言葉を、誓いを紡ぐ。

 

「―――綾波は。指揮官のお嫁さんです」

 

「大好きな指揮官を、もっともっと好きになってるです」

 

 

 

 指揮官の目の前で、綾波はその白無垢の裾をゆっくりと両手でたくし上げていく。

 

 ―――そこはもう、濡れるという表現では表せないほどの蜜で溢れ返っていた

 

 

 

「これが何なのか、綾波……なんとなくわかってるです」

 

「指揮官のことを考えて……こんなになってしまうです」

 

「こんな綾波ですけど……指揮官」

 

 

 

 ―――大切に、してくれますか?

 

 

 

 口より先に、身体が動いていた。

 

「ふぁっ……!? ん、むぅ……」

 

 小さな身体を抱きすくめ、唇を奪う。

 最初は驚いた綾波だったが、すぐにその大きな背中に手を回し、ぎゅぅ、と抱きしめ返す。

 

「……なるべく」

「?」

「出来るだけ、優しくするから」

「……はいっ」

 

 その言葉に微笑んで、今度はゆっくりと唇を重ね合う。

 

「ん……んぅ……ふっ」

「ぷは……綾波、ゆっくりで良いから、鼻で呼吸な」

「ふぁ、い……んむっ」

 

 最初は触れては離すバードキスだけ。そこから少しずつ唇が触れ合う時間を長くしていき、やがて吸い、啄むように動きを変えていく。

 

「ふっ、ふぅ、う……んん、むぅ」

 

 おっかなびっくりといった具合の綾波。その様子がむしろ微笑ましく思えて、落ち着かせる意味もこめて両手をそっと頬に添えた。

 

「あ……んっ」

 

 そうやって、お互いに何度も何度もキスを交わす。

 

 最初はされるがままだった綾波も、少しずつ自分から動き始めていく。そうなれば指揮官は彼女のしたいようにさせるだけだ。

 

「ちゅ、ぅ……ふぁ、ぁ……れる」

 

 くっつけ、離して、またくっつけては離して、やがてぺろりと、舌先でその唇に触れる。

 

「……綾波。口開けて」

「……?」

 

 言われるがまま、その小さな口を少し開く。

 

「む、ぁ……!?」

 

 再び重ねられた唇、だが今度はそこからナニカが口内に侵入してきた。突然の異物感に、綾波は思わず思い切り歯を閉じてしまう。

 

「い゛―――!」

「え……あ、あぁっ」

 

 顔を大きく離した指揮官。見れば手で口を押さえている。

 そこで察する。つい今しがた感じたモノは、彼の舌だったのだと。

 

「ご、ごめ、ごめんなさ……!」

「あ゛ー、いや。俺もちょっと焦ってたから……」

 

 舌を押さえていた指揮官の指先、離されたそこが薄く朱に染まっているのを見て、再び愕然とする。

 

「うぅ……」

「別に深く切れたわけでもねーしさ。このくらいならすぐ止まるよ」

「……綾波、失敗してばっかり、です」

「いや、だから」

 

 言葉を最後まで待つことなく、今度は綾波からその舌へと吸い付いた。

 

「ひき、ひゃ……ごめ、んなひゃい……ぢゅぅ、ん……ちゅ、はぁ……れるぅ……」

 

 傷を中心にぐるぐると全体を舐め回すように、無我夢中で舌を動かしていく綾波。流れこんでくる血の味を気にすることなく、口の端から零れていく唾液も無視して、少しでも癒されてほしい、という願いをこめて熱心に。一心不乱に舌を回し、溢れ出てくる液体を吸い上げて飲み下す。

 

「……!」

 

 そんな姿に鼓動を大きく脈打たせながら、その背中を抱きしめる指揮官もそれに応える。

 

「ぁ、ちゅ……ひき、か……らめ、れす。あやなみ、がぁ」

 

 口内で響く水音。それが耳を通して頭の中に直接響いてくるような、そんな錯覚を覚える。

 そうしている内にいつの間にか、もうお互い、余計なことは考えなくなっていた。

 

「―――ん、はぁ」

 

 やがて離れる距離。その間にかかった糸には、泡立った白の中にほんの少しだけ、赤が混ざっていた。

 

「……どうだった?」

「は、はぁ、ぁ……すごかった、です……頭、ふわふわして……なんだか、くらくら、して……」

「あー、ちょっと酸欠かもな。少し深呼吸して落ち着きな」

「は、い……」

 

 言われた通りに、ゆっくりと息を吸っては吐き出して、を繰り返す。その間、指揮官はずっと頭と背中を優しく撫で続けてくれていた。

 いつもなら心が落ち着くその行為。なのに何故だか落ち着かない。髪や服から覗く肌にその手が触れる度、胸が甘く疼き、へその下、その奥辺りがじくじくと熱を訴え出している。

 

「しき、かん……」

「ん? 落ち着いたか?」

「い、え……ちがくて……綾波、変です」

「変?」

 

 砕けそうな腰に力を入れて、覚束ない動きで指揮官の目の前に膝立ちになる。

 

 白無垢の胸元、その布を留めている紐をしゅるりと解く。小さな鈴が音を立てながら解かれた紐と共に布団に落ちるのを横目に、緩くなった胸元の布をゆっくりと開いていく。

 

 ふるり、と

 

 その小柄な体躯に見合ったサイズ。まん丸としたお椀型の膨らみ。露になったその双丘は呼吸や身動ぎに合わせて小さく揺れ、ちょこんと自己主張している頂は薄く色付いていて。

 

「胸、どきどき……おなかがきゅんきゅんして……なんだか、すごくイケナイ気持ち、です……」

 

 年甲斐もなくその裸体に惹き付けられる熱視線。

 背筋をゾクゾク震わせながら浮かべた微笑は、その容姿とは不釣り合いなほどに、耽美で妖艶だった。

 

「―――指揮官っ」

 

 抑え難き熱と共に吐き出された吐息

 

 二人して布団に倒れこんだのはその直後だった

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 灯りはとっくに消され、室内を照らすのは窓から射し込む月明かりだけ。

 

「ふ、あっ……」

 

 再び唇を重ね合わせる二人。だが今は男の両手は少女の胸元に宛がわれ、その膨らみを優しく弄んでいる。

 柔肉が形を変え、そこからもたらされるむず痒さとくすぐったさが少女の脳内へ電気信号となって届けられる。

 

「んぁ、ぃう、ぅ」

 

 外から内へ、円を描くようにやんわり揉みこまれ、柔肉はそれに合わせてパン生地のごとく形を変える。

 大きく無骨な手からは想像できないほどの優しい手つき。痛みは無く、ただ大好きな人に触れられているという事実と相まって綾波は切なげに息を漏らし続けていた。

 

「指揮官、んんっ」

「……痛いか?」

「だいじょぶ、です……ただ、ムズムズして、変な感じで……あぅ」

 

 指先で輪郭をなぞるように。掌で掬い上げるように。全体をマッサージでもするかのように。

 次から次へともたらされる刺激に、綾波はもういっぱいいっぱいで。

 

「は、ぅあ……しきか、ひやぅっ」

 

 くに、と

 親指が膨らみの頂点に触れた途端、襲いかかってきたえもいわれぬ感覚に思いっきり仰け反る。

 

「しき、かん……いま、びりびりっ、てぇ」

「悪ぃ。びっくりするだろうけど我慢してくれ」

「んやっ、やぁぁっ」

 

 言うが早いか、直後に肉芽がぬめったナニカに撫で上げられる。

 それが舌だと気付いて、反射的に引き離そうとするも、力の抜けた細腕ではびくともしない。いかにKAN-SENといっても艤装が無ければその力は一般的な人間と同じ。従って綾波は脳にまで走るその刺激にまったく抗うことができなかった。

 

(や、あ……これ、すごい……!)

 

 ざらついた肉が肌を刺激する度、ピリピリとした感覚が身体中に伝わる。唇で啄まれ、時折甘く吸われて、かと思えば指の腹でこねくり回される。

 いやいやと首を振るしか出来ずに、腹の奥底から昇ってくる熱に、次第に思考までもが緩やかに麻痺していく。

 

「あっ、あぁっ、しきか、なにか、ぁ……なにか変なの、が……くるっ、きちゃう、ぅぅ……!」

 

 身体の震えが止められず。天井を仰いで喘ぐしかない自分。チカチカと明滅する視界の中、胸元に顔を埋める彼を見ようとして

 

「―――あっ」

 

 片方は強く吸われ、もう片方を指で押し潰されて

 

「―――んあぁっやぁぁぁぁっ」

 

 意思とは無関係に身体が跳ね上がり、両腕は勝手にその頭部を掻き抱く。首は仰け反り、自分でも聞いたことの無い、甘い悲鳴が部屋中に木霊し、暗がりの中へと消えていった。

 

「はっ、は、はぁ、ぁ……」

 

 何が起こったのかまるでわからず、ただ呼吸は乱れるばかり。落ち着けようとするも、身体がそれを受け付けてくれない。

 結果、髪に伝わる感触を自覚するまで、放心したままの状態が続いていた。

 

「……あっ」

「大丈夫か?」

 

 顔を上げれば、そこには心配そうに見つめる指揮官。

 今の綾波は優しく抱き止められ、頭をゆっくりと撫でられている形だった。

 

「……あの、綾波」

「ちと無理させちまったかな、って」

「だい、じょうぶ、です……頭、ふわふわしてるですけど……」

「もちっとこのままでいるか?」

「……いえ」

 

 その優しさは嬉しいが、このままだとまたいつものように甘えてしまう。

 そう思って、綾波は距離を置くと、そのまま布団に横になる。

 柔らかな布とその下の床を背中に感じながら、綾波はおもむろに衣服の裾、その内側へと手を入れる。

 

 内腿と股間部、下着が擦れると、不自然なまでの水音が聞こえてくる。それが妙に気恥ずかしくて、聞こえないフリをしながら腰周りを締め付けるゴムに指を引っかけ下へ。

 

 ―――下着と肌の間に、糸がかかっているのがわかる

 

 熱くなる顔、それでも最後まで下げきって、両足からもう機能していないそれを抜き取って。

 洪水、とばかりに溢れるそこを、一呼吸置いた後に、さらけ出す。

 

 シミ一つ無く、月明かりを反射しててらてらと光るまっさらな丘。濡れそぼっているその中心はぴったりと閉じられつつも、微かに覗く肉の花弁はひくひくと蠢いているようにも見える。

 

「お腹、どんどん熱くて……ずっと、ドキドキ止まらなくて……」

 

 指先を秘唇にあてがい、軽く触れる。それだけで身体は切なく疼き、奥から漏れ出る蜜が指に絡みつく。

 もっと触れたい、触ってほしいという欲が溢れ返り、その想いをこめた眼で見れば、指揮官の視線はそこに釘付けになっていた。

 

「……ッ。だから、指揮官……!」

 

 

 

 

 

 

 

(んー……)

 

 一方でこの男、頭はどこか冷めきっている。

 補足するならば、経験上ここでがっついてしまうと相手に余計な負担をかけてしまうとわかっているからだ。しかも綾波はこれが初体験。

 欲情どころか発情しきってまともな思考が働いていないのは見ての通り。

 なら自分は努めて冷静でなければならぬ、と理性に全力でブレーキをかけている状態。

 

 ……まぁ身体は正直なのか股座でイキリ勃つ息子はとっくに臨戦態勢。その上、逆に言えば理性にブレーキかけなければ襲いかかってしまいかねないレベルで綾波のあられもない姿に惹かれている事実。

 最初は娘のように思っていた相手だが、とっくに異性として認識し、愛してしまっている自分に気付いて、その業の深さに一人ごちる。

 

 だからこそ

 

 

 

「準備くらいはしとかんとなぁ」

「えっ……?」

 

 その入り口を指で軽く触れてやれば、くち、という音と共に指先が埋まる。柔らかく、弾力あるそこを円を描くように撫で回し、それから軽い力で何度も叩く。

 まだ粘膜に直接触れていないにも関わらず、それだけで綾波の身体はぴくぴくと甘く震え、それに合わせて指がしとどに濡れていく。

 

「っ、んぁ……」

「指、挿れるぞ?」

「や、ぁ……!」

 

 つぷり

 愛液をまぶした中指を慎重に秘唇から内側へ滑りこませる。第一関節までの段階でかなりの抵抗を感じるそこは熱く固い。異物の侵入を拒むように閉じられた入口にゆっくりと馴染ませるように抜き差しを繰り返していく。

 

「あぅ、く、ぅぅ」

「痛いか?」

「すこ、し……でも、指揮官……あやなみ、もう……!」

「駄目」

「そんな、っああぅ!?」

 

 抗議は封殺。その意味をこめて指を軽く曲げれば、喉の奥から悲鳴が上がる。

 

(……ちょいと解れたか?)

 

 やや弱まった抵抗を感じて、少しずつ指を奥へ奥へと。

 進めば進むほどに締め付けはキツい。だがそれでも入口に比べれば遥かに柔い肉壁を中程まで進んでいく。

 その辺りで何か細いモノに触れ、すぐさまそれがナニカを理解。とりあえずはここが終点と判断することにした。

 

「綾波。辛かったら嫌って言っていいからな」

「ふぁ、い……ッ!? んっ、くあぁっ!」

 

 捩じ込んだ指を曲げれば感じる抵抗。濡れに濡れているとはいえ、これまで何の侵入も許さなかった秘蜜の壺はそれを許さぬとばかりに追い出そう、或いは食い千切ろうとばかりに締め上げてくる。軽く痛みを覚えるほどに。

 

「ふぅっ、ふ、んぐ、んんんんっ」

 

 両手で覆われた口から漏れるくぐもった呻き声。下腹部を内側から押し上げられる圧迫感と、閉じた花弁を強引に拡げられていく痛みもあるだろう。

 綾波の辛そうな表情と声に少しばかり胸が締め付けられるも、後のことを考えた場合、『馴らす』という行為は必要不可欠になる。

 それでも負担がゼロになるわけではないが、処女を相手にする場合、念を入れすぎるに越したことは無い。

 

 

 

 そんな時間がどれだけ過ぎたのか

 

 

 

「はふっ、ふっ、ふぅ、ぅ……んっ」

 

 荒かった呼吸は少しずつ収まっていき

 

「んっ……んん、んぃ」

 

 代わりに、漏れ出る声に少しずつ艶が生まれて

 

「あは、はぁ……んっ、ひや、ぁ……」

 

 とろりと垂れ下がった目尻。指を多少大きく動かしても抵抗は無いどころか、もっともっととせがむように吸い付いてくるほどに、蜜壺の具合も仕上がっていた。

 気付けば挿入されている指は二本。入口で浅く抜き差しして、奥へ進めて指を開く。ざらついた腹側部分を擦って叩けば、切なくきゅう、と引き締まる。

 皮膚がふやけるほど蜜に塗れた二本指。抜き去ろうとすれば嫌がるように吸い付いてくる肉を、やや強引に引き離す。

 異物が抜け落ちたその入口を見れば、ぴったりと閉じきっていた先程までの形は無く、名残惜しげにひくつく膣口からは際限なく、白く濁った粘液が垂れ流されていた。

 

 

 

 果たして、準備はここに整った

 

 

 

「……お待たせ、綾波」

「は、はい、ぃ……」

 

 指を覆う蜜を舐め取って、自分の服に手をかけて一気に脱ぎ捨てる。上も下も、一切を剥ぎ取って。

 

「―――あ、ぅ」

 

 綾波の身体を起こして、布団に座る自分の膝の上に。

 その視線は、天を向いて聳え立つソレに注がれていた。

 

「……大きい、です」

「そうか? 体格差的にそう見えるだけかも」

「これ、が。いまから」

「ん」

 

 両腕は肩、細い腰にこちらの手を添えて、入口に切っ先をあてがう。

 不安そうに揺れる瞳を見て、こつっ、と額と額を合わせる。

 

「……結構、痛かったり苦しかったりすると思う」

「……はいです」

「やめるならここが最後だぞ?」

「―――指揮官」

 

 肩に乗せられた手に力がこもる。

 眼も表情も、未だに不安を覗かせてはいたけれど。

 

「少しだけ、怖くて、不安です……けど」

 

「綾波は、がんばるって、決めてるです」

 

 

 

 それでも―――綾波(妻)は笑顔だった

 

 

 

「大好きな指揮官の―――お嫁さんですから」

 

 

 

 先端が埋まる

 強い抵抗に押されながらも、頭がすっぽりと隠れきる

 

「―――愛してる。綾波」

「~~~!」

 

 腰に添えた手を勢いよく下ろし、瞬間、一息に最奥まで辿り着く。

 

「―――か、はっ、あ゛あ゛っ」

 

 破瓜の痛みを自覚する間もなく、熱く堅い、指とは別種の異物に腹の内側が一気に押し拡げられる圧迫感。内臓を下から殴られたような鈍痛。濡れそぼった肉が無造作に抉られる甘い痺れ。肉ある身体が持つ本能が感じる、待ち望んでいたモノを迎え入れた喜悦。

 

 一瞬の内にありとあらゆる感覚を叩きこまれた綾波の口からは、もう声にならない音しか漏れなかった。

 

「あぐっ、ぁぁ……」

 

 大丈夫か、なんて訊きはしない。大丈夫じゃないのは見ればわかる。だから、落ち着かせる意味をこめて、その頭をやんわりと撫でてやる。

 

「……ゆっくりで良いから。深呼吸」

「は、はひ、かふっ、ふぅ、ぅぅぅ」

 

 覚束ず、つっかえながらも、聞こえ始めた呼吸の音に安堵の息を溢す。ちらりと下腹部を見やれば、流れ落ちてくる鮮血。爪が立てられた肩の痛みなぞ気にする必要は無い。綾波の背中を撫でて髪をすく。それでも落ち着きが訪れないなら、今度は額を突き合わせたり頬を撫でたり、そこにキスを落としたり。

 持てるあらゆる手段を講じて落ち着くよう計らい続ける。

 

 

 

(しき、かん……)

 

 ゆっくりと頭が冷えてきた綾波。

 自分を落ち着かせようと、抱き留めて頭や背中を優しく撫でてくれる手が、自分を案じるその表情がたまらなく愛おしい。

 腹の内で感じる肉槍は絶え間なく震え、それに応じて自分の身体も震えが止まらない。

 自分も辛いだろうに、それでもこちらを気遣ってくる指揮官の気持ちが嬉しくて、ついつい甘えてしまう。

 ようやく夫婦として、身も心も一つに結ばれることが出来た。たまらなく幸せで、それでももっと深く繋がりたくて。頬をくっつけてそのまますりすり擦りつける。

 

「……落ち着いた、か?」

 

 そんな声がかけられる。

 はい、と答えて、唇同士をちょんと触れあわせる。

 

「……綾波、いま、すごく幸せです」

 

 心からの、その言葉。

 それへの答えは、俺もだ、という言葉と、同じように触れ合う唇。

 問いかけるような視線に頷く。直後、下腹から痺れるような痛みが昇ってきた。

 

「あ、ぅ、くっ」

 

 思わず漏れる声に知らないフリをして、上下に揺さぶられる腰へ神経を集中させる。

 擦れるどころか抉られているのでは、と錯覚してしまいそうな、自分のナカに収まって蹂躙してくる堅い肉の感触。ズリズリとこそぎ上げてくるそれに、思わず口から妙な声が出てしまう。

 

「んっ、んひっ、ひゃ、ぁぁぁう」

 

 先程までのような痛みはもうあまり感じない。代わりに、ピリピリとした刺激が伝わってきて、身体の自由がきかなくなってきた。

 

「ひっ、ひぃ、ひぃんっ」

 

 みっともない悲鳴が勝手に出てくる。こんな恥ずかしい声、聞かれたくないと思っても、身体は言うことを聞いてくれない。

 それに呼応するように、繋がった股からは粘ついた音が絶え間なく響き続けている。

 

「あ、あぁっ、やぁ、んんっ、んあぁっあっ」

 

 振られる腰に合わせて、気付けば自分でも腰を揺すり始めていた。ゆっさゆっさと揺さぶられる身体、繋がる性器同士がもっと深くまで、と求めるように、腕が下ろされるのに合わせて自分も腰を深く落とす。

 最奥が押し上げられ、押し潰されるのは苦しいけど、いつしかそれさえも気持ちいいと感じるようになっていた。

 へそ下の奥辺りでずっと感じていた熱はもう抑えようがなく、これをこのまま続けてしまえば自分はどうなってしまうのだろう、と不安な一方でそれを心待ちにしている自分がいる。

 

 気付いてしまえば、後はもう受け入れる(堕ちる)だけ

 

「あ゛っ、あぁっ、んひぁ、ぁっ。きもち、いい……指揮官、しきかんっ、キモチいい、あやなみ、初めてなのに、キモチいいです、ぅ」

 

 気持ちいい。幸せ。気持ちいい。もっと。好き。大好き。指揮官。気持ちいい。もっと。好き。

 

 頭を支配するそんな言葉が、口からひたすらついて出る。

 大好きな人と結ばれる多幸感。身体中に走る性感。嬉しいのに涙が止まらない。好きという気持ちがどんどん溢れて止まらない。もっともっと愛しあいたい、一緒に気持ちよくなりたい。

 自分に、こんな想いを教えてくれた人と、ずっとずっと一緒にいたい……!

 

「好きっ、すきですっ、しきかっ、あぅっああ、だいすきですしきかんっ、だいすきぃ……!」

 

 耳元で泣きじゃくるような声で想いを告げる。それに応じるかのように、律動はより激しさを増して、それがより一層の熱を綾波の身体へもたらしていく。

 指揮官の腕はもう綾波の頭と背中に回り、抱きすくめられながら、髪を撫でている。

 

「~~~~~ッ!」

 

 それがたまらなく嬉しい。我慢も辛抱を出来ずに一心不乱に腰を振る。

 再び昇ってきた熱を荒い息と共に吐き出して、訪れつつある限界に向けて最後のスパート。

 

「あやなみ、あやなみっ、もう、だめですっ。すごいのが、おっきぃのが、ぁ、あぁっぅ、ぅあああっ」

「ああ、俺、も、そろそろ……!」

「しきかんっ、しきかん、しきか、っんんんっ」

 

 ドロドロに溶けた理性、纏まらない思考、湯だった頭。

 ただあるのは、相手に対する『好き』という感情だけ。

 

 吐き出され続けて溢れ続ける想いと共に――終焉

 

 

 

「あっ、く、んあぁっあああああああッ」

 

 

 

 ぴったりと隙間無く押し付けられたそこから、熱いモノが奥の奥まで流れこんでいく。

 正しく『叩きつけられる』勢いで放たれるそれは、何度も何度も綾波の胎内を満たし、それでもまだ止まらない。

 何秒か、何分か。或いはもっとか、と時間の感覚すらわからなくなるほどの絶頂の波。

 それが引き切る頃には、綾波の身体は布団に沈み、同じく久しぶりの性交に加減を忘れていた指揮官も崩れるようにその隣へと倒れ伏した。

 

 荒い呼吸を繰り返しながら、互いにじっと見つめあう。

 どちらともなく差し出された手を、離さないとばかりにしっかりと握りしめて、笑みを浮かべる二人。

 

 

 

「―――だいすきです、指揮官」

「―――俺もだよ、綾波」

 

 

 

 それだけ告げて、微睡む意識に従って

 

 甘い夢へと沈んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・後日談というか今回のオチ

 

 

 

「手のかかる二人よねぇ」

「まったくです」

「しかし、お主たちにしては中々の支援だったと思うぞ。よくあの二人を立てて私欲を抑えこんだものだ」

「ああ。まさかあなた達が綾波を焚き付けるとは思いもよらなかった」

「まぁ、そこはね?」

「メイドたるもの、主が見初めたお方を優先させるのは当然のことです。……まぁ、正直妬いてしまっていることも否定できませんが」

「はっはっはっ。まぁ良いではないか。これで正しく夫婦らしくなれるだろう、あの二人も」

「………」

「どうしたのよエンタープライズ?」

「い、いや、その……ベルファストの言葉ではないが……少し、羨ましいな、とも」

 

「「「………」」」

 

「……次は私でいいわよね」

「何を仰いますか。指輪を贈られた順番から考えて私でしょう」

「あんた殆どネタみたいな流れだったじゃないの」

「オイゲンさんも大概だったかと」

「「………」」

「落ち着け二人とも。……まぁ、その。こういう場合は年長者を立てるべきだと思うな我」

「お黙り最後尾」

「は?(威圧)」

 

(……明日にでも綾波に相談してみよう)

(私も同席させていただきますね)

(直接脳内に……!?)

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