夜更けに日下部が寝慣れたソファから起きてトイレに行こうとすると、ウルベルトのベッドには誰もいなかった。
悪いなと思いながら、ちらりとフラミーの布団の方も確認したが、人の盛り上がりは一つ分しかなかった。
廊下に出ると、洗面所の方から音がし、静かに扉を開けた。
「宇留部さん…?」
ウルベルトは睨むように日下部を見た。その目は赤く、腫れていた。
頬に残る大量の涙の伝った後に日下部はあの日を思い出した。
「おれの、おれのかあさんたちは…とうさんたちは…。」
「日下部、大丈夫だから…大丈夫だから…!」
そう言って泣く日下部を宇留部は抱きしめていた。酷く汚い雨の降る日だった。
「何が大丈夫なんだよ!!もう誰も帰ってこない!!大事な人は皆殺されたんだ!!宇留部さんだって薄々わかってたなら、教えてくれよ!!信じて探そうなんて、金が欲しいならそう言えよ!!父さんたちは…とうさん…かぁさぁん。うわぁあぁ!!」
「ごめんな、ごめん。本当にごめん。俺が悪かった。俺も新太の母さん達が生きてるって、信じたかったんだよ。悪かった。本当にごめん。」
日下部が「離せよ!」と宇留部の胸を叩いて離れると、宇留部の顔も辛そうに涙で濡れていた。
「ごめんな…新太…ごめん…。」
「宇留部さん…。」
「……なんだよ。風呂か。」
日下部は首を振ると洗面所の扉を閉めた。
「宇留部さん、今日何があったんですか…。」
「…前に事務所に来た、俺の"楽しいお友達"がやんごとねぇ奴らに殺された。箱はすぐそこなんだと思う。フラミーには言うな。」
二人は押し黙った。
「…日下部、もしスマホを置いて出掛けた俺が三日帰らなかったら、俺を探すのはやめろ。」
ベルリバーが金曜に襲撃され、何もかもを押収されて、ウルベルトのところに特高が来ていないと言うことはベルリバーはウルベルトに繋がるものを一つも残していないだろう。
しかし、これから必死になって箱探しを始めれば、次は自分かもしれないと思わずにはいられなかった。
日下部は信じられないものを見るような目をした。
「で、でも宇留部さん。村瀬さんだって宇留部さんを探すって言いますよ。」
「今日みたいに止めてくれ。お前は馬鹿だけど信用できる。」
「無理ですよ、一日であの騒ぎなんだから!」
「なぁ。俺は今、フラミーの夢を叶えるためと、綺麗な世界を捧げるためだけに生きてるんだわ。」
「だったらなおの事――」
「ぶっちゃけ夢叶えるのは俺じゃなくてもできる。あいつの夢は可愛いお嫁さん、二枚の布団を敷ける部屋、たまの外食、子供一人。これを叶えて幸せにできる奴なら俺じゃなくても――例えばモモンガさんでも良い。だけど世界を綺麗にするのは俺じゃないと多分難しい。ベルさんの命の分までちゃんと継がねぇと。もちろん、お前のためにもな。」
「…今更そんなこと言って…もう抱いたくせに。見てればわかりますよ…。」
「……先走ったかな。」
宇留部が後悔したように笑うと日下部はギュッと手を握って晒されている上半身を殴った。
ドンッと音が鳴り、宇留部は数歩後ろによろけた。
「っいってぇな…。そこは顔だろ。人殴る場所選べるくらい賢くなったアピールかよ。」
日下部の顔は赤くなっていた。
「村瀬さんの事そんな風に言うなよ!!俺の想像の百倍惚れてんだろ!!宇留部さんは何でも大丈夫だって、大丈夫でもないこと大丈夫って言う人だろ!!なのに済んだこといつまでもうだうだ言ってんじゃねぇよ!!」
「…それ俺のセリフじゃん。」
「ベルさんがなんとかって!いなくなった誰かのために仕方なくやるような、自分がやりたい訳でもない事なら、そんなもんやめちまえよ!!あんたのやりたいことはなんなんだよ!!箱なんか、俺も村瀬さんもいらねぇよ!!あんたがいる方が俺たちには大事なんだよ!!」
ウルベルトはじっと日下部を見ると笑った。
「お前、俺のこと口説いても給料上げないぜ?たけど…俺のやりたいことは、俺のためにフラミーの夢を叶える、だな。――新太、もう泣くな。俺が悪かったから。」
日下部はハッとするとごしごしと顔を拭いた。
「…すみません。」
「良いよ、少し俺もおかしくなってたわ。…次は俺かと思ったら、怖くなった。日下部、俺はいなくなる予定はないけど、もし万が一いなくなったら、俺を死ぬ気で探してくれ。どっかで多分生きてるから。」
「わかりました。俺、必死でさがしますよ…。」
「迎えに来るときはガキみたいに泣いてんだろうなぁ。」
「はは、ガキみたいに泣いてた人に言われたくないですよ。」
二人が笑っていると、廊下のドアが開いた音がした。
そして、ぺたぺたと歩く音がし、洗面所のドアも開いた。
「…けんかしてるの?」
不安そうにするフラミーに二人は戯けたように笑った。
「してないよ。大丈夫だって。」
「先生と喧嘩なんかしたら給料下げられちゃいますよ。」
フラミーはウルベルトの胸に拳大の赤い痕を見ると日下部の手を見た。
「せんぱい、たたいたの…?」
「あ…え、えーと…。」
ウルベルトは困っている日下部の肩に手を置いた。
「俺が殴ってくれって言ったからな。」
「どうしてそんなこと言うの?」
「腑抜けてたから。お前のこと他所に嫁にやろうとしたから。」
フラミーは絶望的な顔をするとふるふると顔を振った。
「およそになんて行きません!うるべるとさん…私のこと…嫌いになっちゃったの…?」
抱いた後にこんな事を言わせて――胸が痛くなった。
「いや、死ぬほど愛してるよ。お前が幸せなら何でも受け入れられるくらいな。でも…今夜は少し不安になったんだよ、お前のこと幸せにできないかもって。」
ウルベルトはフラミーを抱き締め、震えそうになる手を何とか抑えた。
「嫌いじゃないならちゃんとウルベルトさんのお嫁さんにしてください…。私もう十分幸せだから…。ウルベルトさんと一緒じゃないと、私幸せなれないよ…。」
フラミーは目に一杯の涙を溜めギュッと口を一文字に閉めた。涙はこぼさなかった。
「お前が強いのに俺がかっこ悪くてごめんな。フラミー、やっぱり明日出かけよう。式場探し。」
うん、とフラミーが頷くと、日下部は静かに洗面所を後にした。
日下部がカーテンの向こうのソファで二度寝を始めると、ウルベルトはフラミーを連れて自分のベッドに潜り込んだ。
考えてみれば、よくこのカーテンの向こうに日下部と二人でいる事を許したなと自分の狂いっぷりに失笑する。
フラミーはウルベルトに縋り付くように眠った。
(…無理はしない。時間がかかってもいいから安全に箱を探す…。これだな…。)
考えながら何度もフラミーの頭を撫で、狭い額に口付けた。
しかし、ベルリバーは一体何を知ったのだろう。
箱とは何なのだろう。
(…フカマスミレとか言う奴を探すか…。)
ウルベルトは手掛かりを思い出し、目を閉じた。
もしかしたら、この言葉はブラフで何かもっと違う意味があるのかもしれない。
考えてもキリがなかった。
頭の中だけでは答えは出ない気がする。
やがてウルベルトも眠りに落ちた。
波打つ美しい草原の中で、歌を歌うフラミーを見た。美しい紫色の肌をする悪魔は幾枚もの輝く翼を風に任せて靡かせていた。
そこは初めてフラミーに好きだと言った、
『フラミー、だから外でそれ歌ったらだめだって言ったろ。』
フラミーは返事もせずに歌った。
歌を捧げる先では大きな男が手を振っていた。
ウルベルトは目を細め、それが何者なのかを確認すると駆け出した。
『――ベルさん…ベルさん!待ってくれ!ベルさんは何を見たって言うんだ!!何を知ったって言うんだよ!!』
走っても走っても足は進まず、ベルリバーは申し訳なさそうな顔をするばかりで、何も言ってはくれなかった。
ウルベルトが走ることを諦めると、ベルリバーはフラミーの歌に送られるように去って言ってしまった。
『フラミー!歌うな!!そんな歌歌うんじゃない!!何でよりによってF班の歌なんだよ!!くそ!くそ!!何がF班だよ!!ベルさんを返せよ!!ベルさんを返せぇー!!』
子供のように泣いていると、フラミーがウルベルトを抱き締めた。
『っうぅ…ふらみー、お前を幸せにしたいのに…お前のために綺麗な世界をやりたいのに…お前が俺の全てなのに…。』
生まれてから一度も吸ったことがないような綺麗な空気が体を包むのを感じた。
「ウルベルトさん、私、綺麗な世界なんていらない。あなたがいてくれたら、なんにもいらないの。」
鮮烈にフラミーの声が聞こえると、ウルベルトはゆっくりと目を開けた。
「………ふらみー。」
「わたし、なんにもいらないよ。」
頬を撫でられると、フラミーの手に雫がついた。
ウルベルトは頷くと、涙で光る綺麗な手を握った。
「……歌ってくれ…お前の作った…お前のあの歌…。」
フラミーは微笑むと、ウルベルトの頭を胸に抱き寄せ、優しい調子に変わっている不思議な歌を聞かせてくれた。
(……ベルさん…ごめん…守りたいものができるとこんなに…だめになるんだな…。俺は本当に腑抜けてるよ……。)
頭を撫でられ、フラミーの歌う旋律に耳を傾ける。
「…フラミー、愛してる……。」
歌が終わると、ウルベルトは静かにフラミーに口付けた。
日が昇ってしまうまでと決め、傷を癒すようにキスは続いた。
舌が入っていないのに息が詰まるようなキスだった。
唇を吸い、舐め上げ、はむと、フラミーから微かな声が漏れた。
「ッ……ぁ……。」
静かな室内には日下部の寝息と、フラミーの荒くなりそうなギリギリの呼吸、ウルベルトの深く求めるような口付けの音が響いた。
続けば続く程に、二人の心臓はバクバクと鳴った。
ウルベルトの顔を包むようにし、フラミーから舌を差し出すと、二人は口の外で舌を絡ませ合い舐め合った。
フラミーの瞳がとろんと下がり、ハートになると、ウルベルトは何で日下部がいるんだと空気の読めない弟を心の中で恨んだ。
そして、静かに唇を離すと、フラミーに耳打ちした。
「静かにできる…?」
その意味がわかると、フラミーは首を振った。
「できなぃょ…。」
ウルベルトはフラミーの頭を撫でると試しに胸に触れ、愛らしい突起を優しく押してみた。
「ッ――!」
かなりギリギリだ。
キスし、声を堰き止めるように舌を入れると小さな胸をゆるゆると揉みしだき、呼吸が荒くなり快感がたまったところで突起を摘んだ。
「ッ――!ッン!」
ウルベルトは確信した。無理だと。
耐えようとすればするほどにフラミーの感覚はウルベルトの手に集中し、いつもより感じてしまっているようだった。
仕方がないので、ウルベルトはキスをやめ、フラミーに背を向けさせた。
「っはぁ…び、びっくりした…。」
小さく呟いたフラミーを後ろから抱き締めると、ウルベルトはそっとフラミーの口を手で塞いだ。
「フラミー、日下部帰った後のためにチェックするよ。」
耳元で囁かれたフラミーはぞくりと体を震わせた。
ウルベルトは煽るように片手でフラミーの胸をたっぷりとまさぐった。手の中でやわやわと形を変える。
呼吸が早くなっていくと、突起をつまみ、こりこりと刺激した。
「――――!」
首を振るフラミーがウルベルトの手を止めるように握りしめてくると、刺激されていた胸から手が離れた。
腹を撫で、止まることなくパンツの中に手を潜り込ませる。
小さく勃っている物をくりっと押し込むと、電流が走ったようにフラミーは跳ねた。
「ッッ――!!ッンン!!」
優しく指の腹で撫でると、リズムに合わせて布の擦れる音が響いた。
教えた通りによがる姿はたまらなかった。
「…フラミー、えろいわ…。」
どんな体のどんな女よりも魅力的で、いやらしかった。
耳を舐めると、フラミーは口を塞ぐウルベルトの手を自分にギュッと押し当てた。
声が漏れないように必死なようだった。
みみたぶを吸い、外耳を丁寧に舐める。
擦ることもやめずにいると、フラミーは震えだした。
ふー…ふー…と溺れるような息が吐き出される。
フラミーの耳にはちゅぷちゅぷと舐められる音だけが聞こえ、自分の呼吸など一つも聞こえなかった。
そして――くちゅ…と可愛らしい音が鳴った。
それを合図にフラミーの中心にはぬぷぬぷと指が入って行った。
わざと声を上げさせるように動く指はあまりにも卑猥で、気が狂いそうだった。
無音――というには些か無理のある行為が続き、遠慮がちに二本目が侵入するとフラミーはたまらず腰をそらした。
「ンン…――!」
快感の波が落ち着くのを待ってくれている。いや、痛むか心配しているのかもしれない。
優しさを感じていると、指を入れている手の平でぎゅうぎゅうと芽を押された。
連動して中で指も円を描くように動き、フラミーの体が溶けていく。
「痛むか?」
ささやく優しい声にフラミーは首を振った。
足はいつのまにかウルベルトの足に絡め取られるように開かれていて、指は優しく出入りを始めた。
フラミーの思考する力は奪うようにほぐされ――フラミーはウルベルトにもしてあげたいと思った。
しかし、何をどうすればいいのかわからない上にこの腕から逃れる方法も知らず、されるがままに快感を受け入れた。
ぷちゅんぷちゅんと布団の中で音が鳴る。
無理なく快感を溜められたところで、突然動きは激しくなった。
腰が、足が、胸が震える。
激しい布の擦れる音が続くとフラミーは「ンンッ!」と声を上げ、痙攣した。
内部がひくつき、腰が軽くかくかくと動いた。
「…イクのもうまくなったな、可愛かったよ。」
ウルベルトはささやいた。
「明日、また気持ちくなろうな。」
指が抜かれると、フラミーは疼くようにぞくりと震え、まどろみに溶けて眠った。
日が登った部屋で、疲れ切ったフラミーがすぅすぅと寝息を立てる横からウルベルトはそっと起き上がった。
ぬめる手を洗い、フラミーが以前退職祝いにもらったコーヒーを淹れると手帳を眺め、ちょちょいと検索した。
(深間。…静岡、神奈川、北海道の苗字か…。)
他にも川の深み、男女の深い仲などがヒットした。
(後は地名か?深間と菫で二語の可能性もなくはないな。)
菫の花言葉は誠実、小さな幸せ。
愛や希望に満ちた人生をと願い名付けることが多いらしい。
ウルベルトはフラミーをちらりと見た。
(文香はどんな意味で付けられたんだろうな…。)
そしてFUKAMA SUMIREの字面に目を落としなおしたウルベルトは一瞬何かを閃きかけた。
食い入るように手帳を眺めていると、カーテンの向こうから日下部が出てきた。
「んー……はぁ。うるべさーん。おはようございます。」
無視して手帳を眺めていると、日下部はウルベルトを避けて勝手に追加のコーヒーを二杯淹れ始めた。
ウルベルトが閃こうとした瞬間「そう言えば昨日死ぬほどエロい夢みました」と日下部が笑った瞬間全てが砕け散った。
全てのパーツが流れてどこかへ消えるとウルベルトは笑った。
「俺も死ぬほど
「ははは。俺たちヤバイっすね。」
日下部はコーヒーが入るとウルベルトのベッドに座った。
「村瀬さん、コーヒー入りましたよ。おはようございます。」
フラミーはほにゃほにゃ言いながら起き上がり、二人を見るとボンッと顔を赤くした。
すぐに布団に潜り込むと日下部はキョトンとし、ウルベルトに内緒話をするように顔を寄せた。
「村瀬さんもそういう夢見たかもしれないすね。」
「……間違いねぇな。」
二人はハハハ〜と能天気に笑った。
日下部はケーキとカトラリーを出し、コーヒーを並べた。
ウルベルトはフラミーをゆすった。
「おーい、飯食うぞ。飯っていうかケーキ食うぞ。いらねぇの?消費期限的に食っちまうぞ。」
フラミーは途端に布団から出てきた。
「く、食います!!」
「よろしい。」
三人は小さなテーブルを囲み、小さくカットされているケーキをそれぞれ食べた。
フラミーは至福の時に頬を緩め、んふんふと笑った。
ケーキも食べ終わると日下部は帰って行き、ウルベルトとフラミーも出かけた。
誰もいなくなった部屋には暖かく甘い香りがいつまでも残った。
その晩、二人は唸っていた。
「ここも良かったし、ここも良かった。でもここが一番良かった。」
「でもそこはちょっと高すぎます。」
フラミーは堅実だった。
「一回のことなのに値段でどうこう言いたくないだろ?」
「もー!女の子みたいなこと言わないで下さい!」
「えぇ〜だってなぁ?」
ぷくぷくと膨らむ頬をもちっと押されるとフラミーは預金通帳アプリを開いた。
「…でも、今私のお給料ほとんど貯められてる…。」
フラミーの生活費は殆どウルベルトが出していた。
一人で買い物に行くことが少ないので、ウルベルトが当たり前のように決済してしまう。フラミーの出費と言えば、携帯代と返済、稀に化粧品くらいだ。
「…四ヶ月でめちゃくちゃ貯まってんじゃん。お前、もう少し欲しいものとか買ったって良いんだぞ?服とか好きだろ?」
ウルベルトもウルベルトで従業員が増えたので次の確定申告ではかなり節税が期待できる。
フラミーに給料を払えば払うほど遠回しに自分の下に金を残すことになるし、経費に計上できて美味しい。前より仕事が片付くスピードも早いので儲かっている。
「私、タンスに入り切る分しか服は持たないって決めたんで今はいらないです!」
「じゃあ新しいタンスもう一つ買ってやろうか?」
フラミーは激甘男にぶんぶんと首を振った。
「大丈夫です!このお金はウルベルトさんが貯金してくれてるようなものですし、――あ!そうだ!結婚式は私が全部出します!」
フラミーは燃え始めた。
「いや、それ本当にカッコつかないから…。俺が出すから。」
「でもウルベルトさんがくれてるお金ですよ。ウルベルトさんが出すのと同じです。」
「それはそれ、これはこれ。俺は俺で貯めてるから心配すんなよ。」
定期預金には何年も手をつけていないのでまとまった額になっている。とは言え、一月は売上金がなくなる事件があったり、婚約指輪を買いに行ったりして普通預金は一時タンスを買う事も憚られる程に減ったが。
ウルベルトも自分の普通預金通帳アプリを開いた。
「…何でお前が暮らすようになったのに生活費が殆ど変わんないんだ…?お前ちゃんと食ってる?風呂入ってる?」
「食べてますし入ってますよぉ。」
「だよなぁ…?」
人間が一人増えたからと言って出費が単純に倍になる訳ではないようだ。めんどくさがっていた買い物もフラミーと散歩ついでに遠くにある安いスーパーまで出かけたりしている為かもしれない。
しかも自分に支払う給料は変わらないはずなのにむしろ前より残る金が増えている。
ウルベルトはうーむ、と考え一つのことに気がついた。交際費が大きく減っている。
(日下部が一々奢ってくれてるからか。あいつやるじゃん。)
そして日下部に奢らなくなったのも相当に大きかった。フラミーは飲まないし、デートもたまに車を借りるくらいしか金がかからない。週に一度ランチにどこかに外食に連れていくと大はしゃぎだ。
課金額も大幅に減っていて、ウルベルトは小金持ちになりかけていた。
「お前って福の神?」
「…何の話です…?」
「いや、なんでもない。余裕あるし、ここはせまいから結婚したら引っ越すか。そしたら日下部にこの部屋譲ってやろうかな。退居費用ケチれるし。」
オーナーに日下部を紹介して賃貸借契約を結び直すことができればどちらにも喜ばれる気がする。
フラミーの事以外には財布の紐のきついウルベルトだった。
「ね、ウルベルトさん。私、このお部屋大好き。まだ住んでたいです。それに、広いですよ!」
机の向こうの床に座るフラミーはにへっと笑った。
「そうか?じゃあここで良いか。子供出来たら引っ越そうな。」
頭をぐりぐりと撫でると顔がほんわりと上気した。
顔を引き寄せ机越しにキスするとはぁ…と二人で切ない息を漏らした。
「うるべるとさん…。」
ウルベルトは、ん?と軽く首を傾げた。
「どうしてこんなに何でも上手く行くの…?ウルベルトさんは何でもちゃんとやってて、とってもすごいです。私、何もやってなくってやんなっちゃう。」
フラミーは申し訳なさそうだった。
「はは、馬鹿言うなよ。お前が世界綺麗にしてるから何でも上手く行くんだろ。」
ウルベルトはからりと笑った。
えろすはさむ!!!!
次回#25小籠包と生一丁R18
次回予告一つも訳がわからないよ!