「私が冷静なうちに立ち去るんだな」
アインズの眼光は冷たく、見る者の心胆を凍りつかせるようだった。
骨の指は前方へ指されている。
「……」
少しだけ時間を置きアインズは再び口を開く。
「私が冷静なうちに立ち去るんだな」
今度は腕を組み、肩幅大に脚を開いていた。
アインズは今日も一人自分の寝室にいた。
「うーん、やっぱり腕を組んでるバージョンで仕上げるか」
手元のメモにせっせと情報を書き上げていく。
アインズは再び腕を組むとその眼光を鋭くした。
「私が冷静なうちに立ち去るんだな」
「わっ、ご、ごめんなさい」
「えっ!?」
途端に聞こえた声に慌てて振り返った。
「いつの間に来てたんですか!フラミーさん!」
天使にも見紛う八枚の羽を背負い、藤の花のような紫色の肌をした女性が立っていた。
彼女はサタン、嫁だ。
「ま、また後にしますね」
そそくさと立ち去ろうとするフラミーに慌ててアインズは駆け寄るとその腕を取った。
「違うんです、ちょっと仮想敵を威嚇する練習中だっただけなんです!」
フラミーはカソウテキ?と声を漏らすと動かしかけていた足をアインズの方へ向けて下ろし直した。
「えーっと……王様らしく敵に去ってもらう方法を考えてました」
「わぁ……アインズさんって優しい」
アインズは軽く首を振るとフラミーの頭にぽんと手を乗せた。
「無駄な争いでフラミーさんが危なくならないようにしたいだけです。俺が優しくするのはフラミーさんだけですよ」
フラミーはその言葉に紫の顔を少し赤くするとアインズのローブのフードから垂れる細い帯を引っ張り目を閉じた。
すぐに人の身を呼び出すと、アインズはかがんで顔を寄せた。
精一杯背伸びをするフラミーの唇に優しく唇を重ね、それが離れると二人は照れ臭そうに笑った。
「えへへ、じゃあ、私お手伝いします。私がカソウテキです!」
「あ、えー……でも微妙に恥ずかしいんでそれは良いです」
苦笑するアインズにフラミーは一生懸命首を振った。
「アインズさん!今更私に見せて恥ずかしいものなんて無いはずですよ!」
それは以前アインズが言ったセリフだった。
+
「これはどうですか?」
「良いと思います!」
「じゃあこういうのは?」
「良いと思います!」
支配者らしいポーズを取ってはベッドに腰掛けるフラミーに振り返る。
が、フラミーは同じセリフしか言わなかった。
「……本当にいいと思います?」
微妙に不安になり、手帳に書き込むことをやめるとフラミーに振り返った。
「わ!今の振り返り方もかっこよかったですよ!」
「え?そ、そうですか?」
あまりに自然に振り返ってしまった為、鏡を見ながら何度か振り返り先ほどの感じを掴む。
なるほど、羽織っているローブに空気を含ませふわりとなびかせながら──
「こうですか?」
「すごーい!かっこいー!」
ベッドの上できゃいきゃい喜ぶフラミーにアインズは若干だらしなく「へへへ」と声を漏らした。
「じゃ、これは支配者アクション集に入れておきます!」
せっせと書き込んでいくとフラミーは立ち上がり、ノートを覗こうとした。
「あっ、ダメですよ。これは企業秘密ですから」
若干のドヤ顔だ。
「アインズさんってなんでも出来るけど、たくさんお勉強もしてるんですね!」
その瞳の尊敬の色にアインズは照れ臭くなり骨の頬をぽりぽり掻いた。
「な、なんでもなんて出来ませんよ。はは」
「ううん!なんでも出来ていっつもスゴイって思ってるんですよ!」
真っ直ぐすぎる。
「俺……頑張ります……。なんでも出来る最強の支配者になりますよ」
「ふふ、もうなってるのに。偉い支配者さん」
くすりと笑うフラミーを抱き上げると、ベッドに腰掛けた。
「じゃあ、今日も頑張った支配者にご褒美下さい」
自分より高い位置にいるフラミーに顎をしゃくる。
細い指に優しく顔が包まれるとアインズは目を閉じた。
twtrで微妙に話題になったやつを旅行先から投げます!(っ'-')╮ =͟͟͞͞⚫️