タイトルはちょっとシリアスですけど、謎話でぇす。
「おい、また行くのかよ」
ガガーランの呟きにイビルアイはチラリと視線を送った。
「何度行ったって良いだろう。神に祈りを捧げることの何が悪いんだ」
イビルアイは毎日のように闇の神殿へ足を運んでいた。
(今日こそ……今日こそ神王陛下にお会いできるかもしれん……!)
まだ一度も礼拝に行って出会えたことはないが、偶に神は姿を現すともっぱらの評判なのだ。
闇の神殿で祈っていたら、神が二人揃って光の神殿に現れた事もあるし、現れることには違いないのだ。
「チッ。仕方ねーなぁ。待てよ、俺も行くぜ」
嫌々ガガーランが立ち上がると、ラキュースと双子忍者は二人に手を振り見送った。
ラキュースは今日から里帰りだし、双子は以前見つけた美ロリと美ショタが再びうろついていないか探さなければいけない。
「……別に無理についてきてくれなくても良いんだぞ」
「お前一人で行くと神官達が良い顔しねーだろ。ツアー様の襲撃は結構根深いんだから」
イビルアイはたしかに、とため息をつくとガガーランとともに神殿へ向かった。
神殿併設の聖堂は今日も大いに賑わっていて──と言っても静寂の祈りの場だが──イビルアイは人を避けるようにオシャシンカウンターへ向かう。
「……光神陛下とのこのお写真……美しいが……」
「あ?何だよ」
「羨ましくて死ぬ!!!」
突然出した大声に、神官達がジロリと視線を向ける。
「うるせーよイビルアイ。神様達が乳繰り合ってんのに嫉妬したって仕方ねーだろ」
「っく!乳繰り合ってなんかいない!神王陛下はきっと清らかだ!!」
「だからうるせーって。っつーか闇の神が清らかって何事だよ」
イビルアイは若干不機嫌そうに女神に祈られる神王のオシャシンを五部購入すると再び人の壁を縫うようにし、聖堂の一番前へ向かった。
ここらでいいだろうと、よく神王の像が見える場所に来ると手を胸の前で組んだ。
「陛下……どうかご来臨下さい……」
すると、像の前に闇が開いた。
聖堂内にざわめきが起こる。
闇からはエ・ランテルの守護神が足を踏み出し、頭を下げた。
「皆様、頭をお下げください」
その言葉の意味に全員が祈りを捧げるポーズを取り、頭を下げる。
闇からは美しい銀色のローブに身を包む、人の姿をした神が姿を現した。
「……わぁ……」
こっそりと薄眼を開けて様子を伺っていたイビルアイは声を上げた。
シッという声とともにガガーランに小突かれると、「いてっ」と声が漏れ、それは聖堂内に反響した。
「おい」
美しい声が響く。
イビルアイとガガーランは、やってしまったとばかりに顔を上げた。
「やはりそうか。イビルアイとガガーランじゃないか。元気にしていたか」
慈悲深いその様子に二人は深々と頭を下げてから顔を上げる。
「はい!元気です!!」
代表して、というわけでもないがイビルアイが応えた。
「それは何よりだ。冒険者のトップとして今後も地図作成にモンスター分布図の製作、頼むぞ」
イビルアイが瞳を輝かせる中、ガガーランは少しばかり冷や汗のようなものをかいていた。
「ん?ガガーラン。どうかしたか」
神王と蒼の薔薇のボストロールの目が合う。
「あ、いえ。なんでもねーんですけどね。ただ、陛下のオーラがやばすぎて……びびっちまいました」
ガガーランは人の姿をした神王の、童貞とは正反対のオーラに驚愕していた。
童貞を前にするとすぐに童貞だと分かるが、骨の時の神からは何も感じられなかった。
いや、神が童貞だとかそういう発想自体が間違っているし、そんなことを思いもしなかったのだが。
「そうか。私が恐ろしいか」
「い、いや。ほんと、でもすげぇや……」
「お前も登り詰めろよ」
「は、はい!!」
「いい返事だ。私はセバスと少し用事があるからもう行く。また会おう」
神が立ち去った後、イビルアイはご機嫌だった。
ガガーランもご機嫌だ。
あれは百戦錬磨という言葉が最も似合う男だろう。
いつか自分もあんなオーラを出すような圧倒的な女になりたい。
童貞狩りにもっと精を出そうと、ガガーランは決めたのだった。