ボツにしたお話をここで消化しちゃいます!
ちっちゃなifルートですね。
#46 閑話 だって両性具有だもん 没IF話
フラミーはアインズにこってこてに絞られ、寝室でフォアイルに慰められていた。
「フラミー様?そうお気を落とされずに……」
「うぅ……フォアイルちゃん……アインズさん怖いよ……すごく怒ってる……」
「大丈夫です。アインズ様はすぐにお許しになられます。フラミー様の事をいつも一番大切に思ってらっしゃるのですから」
「じゃじゃ馬娘って言われたし……そもそもアインズさんが一番大切なのは私じゃないですよ……あの人はナザリックと皆が一番大切……」
フォアイルは思いがけない言葉に胸が熱くなり、"そんな事はない"とフラミーに言いたくないと思ってしまう。
しかし、絞り出す。
「そ……そんな……ことは……」
「そんな事あるって。皆を守るためだけに、あの人はああやって昔から……たった一人で……ナザリックを……」
フラミーはそのまま黙ってしまった。
フォアイルも思い出す。
フラミーも月に一度訪れるか訪れないかと言うナザリックで、アインズだけは毎日皆に顔を見せてくれていた日々を。
「ウルベルトさんの大切な息子のデミウルゴスさん傷付けられて、アインズさん、もう許してくれないかな」
フラミーはそう言って布団に潜っていった。
「フラミー様……」
フォアイルは思う。
デミウルゴスに傷付けられたのはフラミーなんじゃないかと。
布団から寝息が上がるのを聞くと、フォアイルはこっそり部屋を出た。
三つ斜め向かいにあるアインズの部屋の扉を叩く。
「リュミエール。フォアイルよ」
「何?わかってると思うけどアインズ様は今寝室で本を読まれる時間なのだけど」
「うん。あのね……少しでいいの。アインズ様にお目通りを」
「……伺ってきます」
扉は一度閉ざされた。
そして再び開いた扉は細くではなく、招き入れるように開かれたのだった。
デミウルゴスはネクタイとジレの回収に第九階層を訪れていた。
扉越しにフォアイルに貰えば良いと思って。
あまり寝室に響かないように、優しく静かにノックする。
返事がない。
何か仕事をしていて気付かないのかも知れないのでもう一度ノックする。
すると遠慮がちに開いた扉から覗くのは、想像した人物ではなかった。
「ふ、フラミー様……」
「あ、デミウルゴスさん。どうぞ」
デミウルゴスはアサシンズしかいない部屋に入り、即座に跪いた。
「フラミー様、お休み中の所申し訳ありませんでした」
「いいえ、あんまり眠れてなかったから。さ、立ってください」
「御身お一人ですか?フォアイルは一体どちらに?」
「へへ、愛想尽かされちゃったかな」
そう言うフラミーは眠るために長い髪を下ろしていて、ネグリジェにガウンを着た姿は装飾品も一つも着けていない為いつもより幼く見える。
「そのようなことは有り得ません。我らナザリックのエヌピーシーは皆誰もが至高の御方々に仕える事を喜びに感じております」
「ありがとうございます……。デミウルゴスさん、私のせいでまだそんな格好してたんですね。これ」
フラミーは袋からデミウルゴスのジャケットとネクタイを取り出していた。
「着ていきますよね?」
そう言いながら、ジャケットを着せるために広げて持つ。
袖を通せと言うポーズだが、そんな真似はさせられない。
「あ、いえ。畏れ多いことです。そのまま頂戴します」
が、フラミーは譲ろうとする気配がない。
「私が脱がせちゃった物だから。さ、どうぞ」
心底反省している雰囲気にデミウルゴスはあの後もアインズにフラミーが怒られていた事を容易に想像する。
デミウルゴスが黙ってゆっくり袖を通すとフラミーはジャケットを上げていく。
「デミウルゴスさんも、セバスさんに怒られちゃいましたよね。ごめんね。私本当考え無しだ。アインズさんはあんなに色々考えてるのに」
同じ至高の人とは思えないねとフラミーは笑いながら、デミウルゴスの前に回った。
くしゃくしゃになったポケットチーフを引き抜き、手の中で三つ山ができるように丁寧に畳んでいく。
「フラミー様、アインズ様にきつく怒られましたか?」
「うーん。うん。怒られました。大切なウルベルトさんの息子に何やってくれてるんだって。一番ナザリックの為に働いてる男なんだぞって」
「そんな、私はまだ何も……」
「ううん。今聖王国を手に入れる為に動いてるし、皮もあなたのお手柄だし、王国もお膳立てしてくれて、今度は帝国も。きっともう手に入る」
そして胸ポケットにチーフを戻す。
フラミーは許可も取らず、その首にネクタイを巻き始めた。
薄暗い部屋で行われるそれは、デミウルゴスに何か神聖な儀式のように感じさせた。
「私はさ、誰も生み出してないし、アインズさんみたいに賢くもない」
黙って耳を傾ける。
「いっつも自分のことばっかり。お調子者だしね」
「そんな事はございません。フラミー様はアインズ様を一番に思ってらっしゃるではありませんか」
「ははは。そうかな?よし、できた」
デミウルゴスの胸にポンと手を当てて、フラミーは黙ってドレスルームに入って行った。
少し待っても出てくる気配がない為、頭を下げ、もう自分の守護階層に戻ろうと扉に近付いていくと、フラミーから声がかかる。
「デミウルゴスさん、ほら。懐かしいでしょ」
フラミーは初めて飛んだ時の、膝丈の黒いタンクワンピースに深い紫のフードのついたローブを羽織っていた。
「こんな夜は外に出ないとね」
デミウルゴスは黙って頷いた。
「アインズ様。夜分遅くに申し訳ありません」
「何、私は睡眠不要の身。何も気にすることはないぞ。ところで何か用かな?フラミーさんは一緒じゃないようだが」
アインズは最初てっきりデミウルゴスに一緒に謝りに行って欲しいとでも言いにきたのかと思った。
昼間に叱ったあと、謹慎しますと言ってそのまま部屋に篭ってしまって以来だ。
「その事なのですが……。アインズ様は、フラミー様をお許しにはならないのでしょうか?」
「へ?いや、もうとっくの昔に許してるぞ」
アインズはあっけらかんと返す。
何やらフォアイルは重大なことのように感じているらしい。
「そ、そうでしょうか……?」
「そうだとも」
「フラミー様は、アインズ様に自分は許されないかもしれないと……仰っていたので……」
「ん?何?フラミーさんがそんな事を?」
「はい……もうお眠りになりましたが……」
フラミーはすっかり意気消沈していたが、それはどうにもならない自分の体の事とデミウルゴスへの反省かと思っていた。
(悩む女子を前にちょっと俺も大人気なかったかな……)
もう一緒に暮らすようになって夏を超え、秋を超え、冬を迎えた。
バンバンなんでも言いたい事を言ってしまった気がする。
「今からフラミーさんを起こすのは、お前たちはどう思う?」
アインズはどうしましょうと言う気持ちで女子に視線を送る。
「私は、今すぐにでも行かれる方が良いかと」
「私も、そのように愚考いたします」
女子の意見が一致すると、アインズはちょっと気が重いながらに、意を決してベッドから起き上がった。
「行ってみるか……」
「何度見ても綺麗だなって思います」
フラミーは髪と翼とローブを風にはためかせながら、墳墓の地表入り口から星空を見上げていた。
「私ね、飛んだこともなかったけど、空も……ずーっと濁り続ける、壊れた空しか知らなかったんだ」
デミウルゴスは言葉の意味を探るが、分からない。
「それは……修羅の世界でございますね……」
「うん、本当そんな感じでした」
美しいものを見せたい、献上したいとデミウルゴスは思いその背に羽を生やすとフラミーに視線を送る。
そして悪魔達は空へ飛び立った。
「気持ちいい。ねぇ、デミウルゴスさん。今日は外で夜明けでも見ましょうよ!」
少し明るい雰囲気になったフラミーにデミウルゴスは安堵した。
「畏まりました。このデミウルゴス、夜明けまでお供させて頂きます」
フラミーがニコリとデミウルゴスに笑うと、やっと笑ったとデミウルゴスは思った。
「デミウルゴスさん、昼間はありがとう」
フラミーは心を込めて礼を述べ、続ける。
「私の一番の理解者なんだよね」
フラミーの呟きは風に飛ばされて行った。
「はい。一番の理解者でございます」
そしてデミウルゴスの囁きも風に飛ばされて行った。
「い、いない……?」
「はい、フラミー様がどちらにも。ただ、先程までお召しになっていたものがこちらに」
墳墓内は俄かに騒がしくなり始めていた。
アサシンズもここにいないとなればすぐに戻るはずだ。
そう思うが、遠くまで行っていたらどうしようと不安になる。
ザイトルクワエを内包するような世界で、ワールドアイテムも持たないナザリックでも指折りの弱者である彼女に危険がないとは思えない。
悪魔の性質を持っていながら天使を呼び出せるのは今のところ都合が良かったが、はっきり言って悪魔のフラミーが呼び出す天使は脆弱だ。
逆に天使の性質を持っているせいで呼び出す悪魔も脆弱だ。
流石に超不人気職なだけはある。
呼び出されたアルベドが駆けてくる。
「アインズ様!!」
「アルベド!いつもすまない」
駆け寄るアルベドの肩に手を置く。
「フラミーさんが誰にも何も言わずに出かけたようだ。アサシンズも連れて行っているようだから心配はないと思うが、念のため捜索しろ」
頭を下げ、アルベドはすぐにナザリックの防衛を司る指揮官NPCである悪魔に連絡を取ろうとするが──。
「なんだ、どうかしたのか」
「あ、あの……それが──」
「デミウルゴスと繋がらないなんてそんな事があり得るか!」
アインズはドタドタと進んでいく。
すると、どこかと線がつながる感覚にハッとする。
「私だ」
『アインズ様、デミウルゴスにございます』
「俺は今昼間お前を叱らなかったことを後悔してるよ」
『申し訳ございません。お叱りはこの後すぐにでも』
「それで。今どこにいるんだ。フラミーさんも一緒なんだろう」
『はい。墳墓の屋根の上に。アサシンズも一緒です』
「わかった。待ってろ。動くなよ」
そう言って切ると、全くどいつもこいつも心配ばっかりかけやがってと愚痴りながらアルベドと地表近くに転移する。
「デミウルゴ──」
そこにはあぐらをかいて、しーと指を口に当てている悪魔がいた。
その膝を枕にするように眠るフラミーは、髪を下ろしていて無駄に儚げだ。
ワンピースと、ローブだけのその姿に本当この人子供かよとアインズは思った。
「全く。仕方のない人だな」
どっこいせとデミウルゴスの隣に座ると、アルベドが後ろで控えるように立っているので隣に座るようにポンポンと自分の隣を叩く。
「よ、よろしいのでしょうか……?」
「よろしいよろしい。もう疲れたから早く座りなさい。寒いだろ?ほら、これもやる」
アインズはやれやれという雰囲気で布を取り出しアルベドに渡す。
軽く振り向いてアサシンズに告げる。
「これから明らかに秘密でこの人が出掛けようとする時は、一人は残って私にどこへ行ったか伝えろ。いいな」
アサシンズは頭を下げる。
アインズは満足げに頷くと、申し訳なさそうな悪魔に視線をやる。
「それで、お前ともあろうものがなんだ一体。本当に」
「申し訳ありません。アインズ様。心よりお詫び申し上げます」
そう言うデミウルゴスの視線はフラミーを見ていた。
少し出ている肩にローブを引き上げる。
「昼にフラミーさんに言ったが、お前は本当によく働いている。アルベドもな。だからと言うわけではないが、私はお前達を心から大切に思っている。そのお前達を傷つける者は例えフラミーさんでも私は本気で叱る。逆にお前たちがフラミーさんを傷付けたら、私はお前達を────いや、多くの罰を与えるだろう」
アインズの厳かな語りに、二人は真剣に耳を傾ける。
すると、フラミーがむくりと起きた。
「あ……アインズさん……」
「おはようございます。本当に困った人ですね。あなたって人は」
「すみません……」
デミウルゴスの傍から起き上がってローブが落ちたその肩はすごく寒そうだ。
「怒ってないですよ。叱っただけです。許されないかもしれないなんて言ってたって聞きましたよ。そんなわけ無いじゃないですか。さ、寒いでしょ。こっちきてください」
長いネックレスを煌めかせながらフラミーはデミウルゴスとアインズの間に収まった。
あたたかい。
「それで。ここで何するつもりだったんですか?」
「ふふ、夜明けを、夜明けを待ってたんです」
フラミーは未だ星が煌めく空の下、心の夜明けを感じていた。
おいおい没話に微妙に重要情報あったじゃないのよ
>悪魔の性質を持っていながら天使を呼び出せるのは今のところ都合が良かったが、はっきり言って悪魔のフラミーが呼び出す天使は脆弱だ。
>逆に天使の性質を持っているせいで呼び出す悪魔も脆弱だ。
>流石に超不人気職なだけはある。