あれから数年。
アインズとフラミーの下には可愛らしい娘が生まれていた。
「あいんずさま」
「えっ!?なんで!?いつものはどうした!?」
「いいえ!あいんずさまはとっても強いですから、私もあいんずさまって呼ぶことにしました!」
「ばばばばばばかをいうな!!」
今日も父は娘に振り回されていた。
天空城でアインズは間に合わなかった。
パンドラズアクターは殺され、フラミーはほとんどの記憶を失った。
「あいんずさん?」
「そうです。そう呼んでくださいね」
「はぁい!」
「それから、あなたはフラミーさんです」
「わたしはふらみーさん」
アインズはフラミーに微笑んだ。
その晩。
「うぅ……うっ……」
一人寝室で泣いていると、突然扉は開かれた。
弾けるように起き上がると──「あいんずさんどうしたの?」
フラミーが首を傾げていた。
慌てて目元を乱暴に拭う。
「い、いえ……なんでも無いんですよ……。ほら、ちゃんとねないと」
「でも一人でねれないよ?」
丸っ切り子供のようになってしまった。
アインズは悩んだが、布団をめくった。
「……じゃあ、ここで寝て良いですから……」
「うん。ここで寝る!」
パタパタと走ってきたフラミーは嬉しそうに布団に潜り込み、アインズにすがって眠った。
「っうぅ……ふらみーさぁん……」
まるで眠れないアインズは一晩フラミーの顔を眺めて過ごした。
翌朝。
「ぅ……ん……。にゃ……。あいんずさん、おはよぉ」
いつもと違う挨拶にアインズはまた涙が溢れた。
(アインズさん。おはようございまぁす)
フラミーをただただ思い出す。
「あいんずさん、いたいのぉ?」
「うん……痛いんだ……。貴女に……貴女にまた会いたいですよぉ!!フラミーさん!!」
思わず叫ぶとフラミーはビクッと肩を震わせた。
「あいんずさん、いたいの……」
「俺、俺……心が痛くって痛くって……もう……もう…………」
フラミーはアインズの胸を指差した。
「ここが痛い痛いな時はね、夜にお手手をこうするんだよ」
手を前に組む。
アインズもそれを真似て手を組んだ。
「うん……それで……?」
「それでね、 痛いの痛いの持って行ってくださいって、お星様にお願いするの!」
アインズの瞳は輝いた。
「あぁ……。わかったよ」
闇に手を入れ、タダで手に入る二回分の奇跡の一つに願う。
フラミーは怒るだろうか。
それはプレイヤーとの戦いに残しておかないといけないのにと、またむくれるだろうか。
「I wish。天空城で書き換えられる前のフラミーさんに戻せ」
フラミーは大きい目をパチクリさせて首を傾げ──。
「アインズさん!!」
ここはペロロンチーノとウルベルトが転生してきた不思議な、少しいつもとは違う世界。
アインズはやらしいことを考えていた。
「はっ……い、今ペロさんから何か……!」
「え?なんすか?」
金色の鳥は首を傾げた。
「あ……いえ、何でもないです」
「ねーそれよりモモンガさん、いつになったらフラミーさんに告るんですか?」
それを聞いたウルベルトはぴるぴると耳を震わせた。
「……フラミーにははっきり言わないと伝わんないから気をつけろギルマス……」
「えっ!?なんですか!?その哀愁!?」
「なんでもないすよ……」
その晩ウルベルトの部屋にはデミウルゴスが訪れていた。
「よろしいのですか……?」
「よろしくなくても宜しいふりするしかねーだろ」
「そんな……」
デミウルゴスは最も敬愛する創造主の言葉に気を落とす。
「俺はギルマスを一人にして、フラミーとも向き合えなくて、お前達をとりのこして……」
いつも自信に満ち溢れる創造主は辛そうだった。
「……私は御身とずっとご一緒です」
「……無理すんなよ。ギルマスとフラミーが好きなんだろ……」
「お二方と同じくらい、御身を愛しております。どうかウルベルト様。私にあなたのお心を癒すチャンスを」
ウルベルトは世話焼きな可愛い息子に笑った。
今日もずっとイチャイチャとくっ付く支配者達に深いため息をつく不敬者がいた。
「……父様も母様もいい加減にして欲しいです本当に……」
それを聞くと
「全くですねぇ。でも治りませんよ。父上はもうずぅぅぅぅぅぅぅっっっっと昔からあのまんまですから」
爺も頷く。
「昔迷宮ニ入ッタ時ハ大変ダッタナ……」
「ありましたねぇ。敵地でまぐわってばかりいらっしゃって」
二人の言葉に思春期を迎えた息子は顔を真っ赤にした。
「ああああ!もう本当父様がすみません!!!」
ドラウディロンはアインズに腕輪の約束なんか知らないと告げられていた。
「すまなかった……」
「すまないですむか!!私は……私は……貴君のために全てを捧げようと思っていたのに……」
あまりの痛ましい状況にフラミーは震える手を胸に当てていた。
「ど、ドラウさん……」
「ふらみー殿はあっちに行っててくれっ!!っうぅっ……ふらみー殿も……ふらみー殿も知ってたのかあ……」
「いいや。この人は本気で私の下にお前が嫁いでくると思っていたし、そう覚悟していたとも……」
「っじゃあ!何でダメなんだ!!フラミー殿は許してくれてるのに!!側室の一人や二人、王ならば──」
「……やめてくれ。私はフラミーさんしか愛せない……」
「っなんで何千年もそうじゃなかったのに!!突然!!今になって!!」
「すまない。私は多分、生まれた時からこの日を望んでいた……」
「っ!!」
パンッと頬を打つ音が鳴り響いた。
アインズは微動だにしなかったし、そよ風に吹かれた程度の物しか感じなかった。
「あっ、あいんずさんっ」
「……許してくれとは言えん。気がすむなら何度でもそうしてくれ」
「どうせ痛くも痒くもないんだろう!!私は……うぅ……もう……もう殺してくれぇ……」
「ドラウさん……」
「触るな!! うぅ……アインズ殿……アインズ殿ぉ……」
流石に可哀想になったアインズはドラウディロンの肩に手をポンと乗せた。
「ドラウディロン……ツアーを紹介してやるから……」
「バカタレ──────!!!!」
女王は少しアインズを嫌いになった。
「あぁ。何て懐かしいんだ……!」
アインズは懐かしい仲間の再臨に喜んでいた。
とは言え、全てを手に入れた男の中でギルドメンバー達の思い出は昇華されている。
旧知の者が久々に来た、それだけだ。
「皆さんお久しぶりです!三百年ぶりですね!」
フラミーもその四人を見ると嬉しそうに微笑んだ。
するとノックが響き、アルベドが優雅に入室してきた。
「アインズ様。竜王国から手紙が」
「後にしろ。どうせドラウディロンの末裔からだろう。それにはこう書いてあるぞ。「早く御身にお会いしたい」と」
「その通りでございます」
「全く。フラミーさんしか嫁にはとらないと三百年前から言っているのに……」
転生してきたギルドメンバーはエッと顔を見合わせた。
「そうだ。アルベド、あいつを呼べ。挨拶をさせる」
「かしこまりました」
アルベドは
あるギルドメンバーはドキドキしながらアインズとフラミーを見た。
「あ、あの。フラミーちゃんしか嫁に取らないって事は、モモンガさんとフラミーちゃんって結婚したんですか?」
アインズは幸せそうに微笑んだ。
「そうなんです。フラミーさんともこれで三百年か……長いようで短かったなぁ」
「さ……さんびゃくねん……」
ギルドメンバー達が驚愕していると、再び扉は叩かれた。
「入れ」
美しい長髪の男性が入ってくる。
「父様。お待たせいたしました」
「来たな。これが私が昔お前によく話して聞かせた我が仲間達だ。お前は一番その話を聞きたがっただろう」
アインズを父様を呼ぶその者はハッと全員を見渡した。
「すごい……。小説の登場人物に会えたような気持ちです。皆さま光栄にございます」
丁寧に頭を下げられるとギルドメンバーは大層恐縮した。
「さぁ、今日は祝宴だな」
フラミーはパタパタとアインズに近付いた。
「私先にピッキーのところに行きますから、あなたはここで皆と遊んでいて下さい」
「フラミーさんもそんな事はアルベドに任せてここにいて良いんですよ」
アインズはフラミーを引き寄せると頭を撫でるように髪に手を通した。
「ううん。私が決めたいの」
「ふふ。お料理好きですもんね。今日は何を食べさせてくれるのかな」
後頭部に当てた手でフラミーの顔を引き寄せるとアインズは人の身になり、二人は唇を重ねた。
「「「ええぇっ!!!!」」」
息子はギルメンの反応に首を傾げた。
「……?父様と母様はずっとこうなのでは?」
「いやいやいやいやいや!!そんなわけないでしょ!!」
「モモンガさん見せつけおせっせなんてやめて下さいよ!!」
「うひぃ──ー!!く、苦しい!!!」
アインズは、あ、そうか。リアルじゃこういう事は普通あまりしないんだったとようやく気付いた。
「……やっぱり父様のそれはおかしいですって!!!」
「……そうらしいな。お前の言うことがまさか正解だとは思いもしなかったよ」
アインズはやめなかった。
まだナイ君もアルメリア様も名前がない…!