※この作品はR-18です。

眠夢裏   作:ジッキンゲン男爵

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酒宴会直後ですん!


IFウル、ペロ追加転移
ウル、ペロ転移IF話 #1


 その日、一匹の仔山羊が苦しんでいた。

「パトラッシュ?パトラッシュどうしたの?もう少しでアインズさんが来てくれるから、もう少しだから」

 日課の仔山羊散歩の為に第六階層に来たフラミーは一生懸命パトラッシュをさすっていた。可哀想な仔山羊は息も絶え絶えだった。

「フラミーさん!パトラッシュ、どうしたって!?」

 アインズが慌てて転移門(ゲート)を潜ってくると、フラミーはアインズにすがってパトラッシュを指差した。

「アインズさん!アインズさん!パトラッシュが死んじゃう!」

「だ、大丈夫です!なんとかします!取り敢えず強欲と無欲から少し魂引き出して与えてみましょう!!」

 フラミーは慌てて王国の戦争以来持ち続けていたそれを取り出すとアインズに渡した。アインズはそれを装備してからパトラッシュに触れ、勿体ないと思いながら魂を流し込──もうとした瞬間、パトラッシュはパカリと割れ、中には裸の大きな山羊が丸まって入っていた。

 その見覚えのある山羊は──「「ウルベルトさん!?」」

 

「……っつ……いってぇ……なんだ……?ここ……夢か……?あ?モモンガさん……フラミー……?」

「やっぱり!ウルベルトさん!!」

 フラミーがウルベルトに抱き付こうとするや否や、アインズはそれを手で制し引っ張り出した布を素っ裸のウルベルトにかけ、代わりにちょっと抱きしめると背中をバンッと叩いた。

「な、あれ?なんだこれ。触り心地?それに匂いも……血なまぐせぇ……」

「ウルベルトさん、ここは俺達のナザリックですよ!おかえりなさい!」

 フラミーはその様子を見て少し涙ぐむと、ウルベルトとアインズの横──パトラッシュの血にまみれた地に膝をついて二人を抱きしめた。

「おかえりなさい」

 

 ウルベルトはよく分からなかったが今は二人の腕に身を任せることにして少し目を閉じた。フラミーからは優しい甘い匂いがして──アインズからも少しだけ同じ匂いがした。

 その後ウルベルトはこの世界の話を聞かされると、瞳を輝かせた。

「なんだよ夢みたいな世界じゃないっすかモモンガさん!もっと早くに来たかったっすよ!」

「俺ももっと早く来て欲しかったですよ!本当大遅刻もいいところですよ!」

 アインズは笑いながら清潔(クリーン)の魔法をウルベルトに掛けると立ち上がった。ウルベルトも渡された布を腰に巻いてから立ち上がり、フラミーのお団子をポンポン叩いた。

「フラミーもよくモモンガさんのこと支えてくれたな」

「いいえ!私、いっつも役立たずで。でも、ウルベルトさんが来てくれたら百人力です!」

 嬉しそうに笑うフラミーに、アインズは胸を押さえながら「この先誰が来てもちゃんと遊ぶ」と交わした約束を思い出して一度長い息を吐いた。

 

「フラミーさん、俺達は宝物殿に装備取りに行くんで、守護者集めて貰ってもいいですか?」

「はひ!いってらっしゃーい!」

 ブンブン手を振るフラミーを見るとアインズは指輪を起動させた。すると、当たり前に装備していると思い込んでいたがウルベルトは指輪をつけていなかった。宝物殿には指輪でしか転移はできない。

「あ、俺持ってねぇや」

「あらら。置いてけぼりですね。私の使ってください!ふふ。デミウルゴスさんに指輪あげた日の夜思い出すなぁ」

 すぐにアインズはその場に再び姿を現した。

「すみません、ウルベルトさん。俺先走りました。はは」

「いやいや。今フラミーに指輪もらったとこなんで」

 フラミーはウルベルトの差し出された手を取って右手中指に指輪を差し入れた。

「……それは良かったです。行きましょう」

 今度こそ二人は宝物殿に飛んだ。

 

 

+

 

 最強装備へ身を包みなおしたウルベルトは守護者達と挨拶を済ませ、皆が帰り始めると自分の息子の手を見た。

「デミウルゴス。お前フラミーにもらった指輪、どこに入れてんだよ。はは」

 デミウルゴスは気恥ずかしそうに左手薬指の指輪を後ろ手に隠した。

「不敬かとは思っていたのですが、その、特別これまで怒られずにいましたので」

「いいよ。してろよ。おーい!フラミー!」

 

 守護者達を見送っていたアインズとフラミーはくるりと振り向き、嬉しそうに二人で手を繋いでこちらへ向かい出した。

「は?なんだ?あいつら?」

「なんだ、とは?」

 デミウルゴスが疑問に疑問を返すと、フラミーが返事をした。

「はーい!どうしました?」

「いや、指輪返そうと思っただけだけど、お前たちなんなんだ?」

「え?なんだって何ですか?」

 アインズもフラミーもデミウルゴスも首をかしげると、自分がおかしいのかとウルベルトも首を傾げた。試しにウルベルトがフラミーの手を引っ張ると、誰も何も言わない。ここはボディータッチが当たり前の世界なんだろうか。

「あ、入れてくれるんですか?ふふ。親切」

「あ、ああ。フラミーも入れてくれたから。はい。ありがとさん」

 フラミーは自分の指に返ってきたそれを少し眺めると、手をグーにして、ウルベルト自身の指輪にコツンと当てた。

「もう……いなくならないでくださいね。ウルベルトさん」

「いなくなりたくてもリアルに帰れねーんだろ」

 アインズは二人が笑い合うのを複雑な気持ちで眺めた。

「アインズさんをもう一人にしないでくださいね。ずっと、寂しがってたんですから……」

「アインズさん……あぁ、モモンガさんか」

「ははは。俺は一人じゃなかったですし、フラミーさんもいたからそんなに寂しくなかったですよ」

「そうですか?」

「はい。そうですよ」

 

 アインズが優しくフラミーの前髪を分けるとウルベルトは何だこいつらと再び思った。

「……兎に角、八欲王の城でしたっけ?俺そこ行ってぶっ壊してきていいですか?ギルマス」

 ウルベルトはモモンガと呼ぶのも今はおかしいのかと、しかしアインズと呼ぶ事にも少し違和感があり結局ギルマスと呼ぶことにする。

「あ、俺たちも行きますよ!馬車で移動すると結構楽しいんです。デミウルゴス。お前も来るか」

「っは!是非お供させてください!」

「よし。ではお前も念の為渡してある世界級(ワールド)アイテムを装備することを忘れるな。相手はアースガルズから見えていた天空城だ」

「かしこまりました。アインズ様」

 デミウルゴスは恭しく頭を下げると闇からヒュギエイアの杯を取り出し、小さな杯の取っ手部分に付けたチェーンをネックレスのように首にかけた。ウルベルトはなんて夢のあるやり取りだろうと二人を羨ましく眺めた。

 

「ギルマス……かっけぇ……」

「え?や、やだなウルベルトさん。あなたには敵わないですよ」

「ウルベルト様、アインズ様は守護者全員の憧れでございます」

「うわーお前俺の子供だろ?そこは俺の方がかっこいいって言い切れよ!」

 デミウルゴスはこの一年ちょいでアインズにすっかり懐いていた。自分を精一杯可愛がってくれる支配者を愛するなと言うのも無理のある話かもしれない。

 

 

+

 

 四人は天空城で殺戮と盗掘に盗掘を重ねると、如何にもギルド最奥というようなフロアに辿り着いた。巨大な扉の向こうはナザリックでいう玉座だろう。

「ま、ここのギルド武器はツアーが持ってるんですけどね」

「わかってるって!でも、ワクワクするじゃないっすか!!」

 男子二人はニシシと顔を見合わせ、ゆっくり扉を押していった。すると中から、ヒュンッと矢が飛んできてフラミーの肩に刺さり、フラミーは肩を抱いて蹲った。白いレースのローブは血を吸わず、赤紫色の血はポタポタと落ちていった。

「あっ……あ……っうぅ……!!」

「なんだと!?」「フラミー!?」「フラミー様!!」

 近くにいたデミウルゴスが慌ててフラミーの肩から矢を引き抜くと、エルフの邪王の皮から作り出した大治癒(ヒール)のスクロールを燃やした。

 

「ご、ご無事ですか!?」

「っは……はい!もうすっかり」

 ウルベルトは、デミウルゴスがフラミーを抱きしめる様子を見ると被造物は自分に似るという言葉を思い出して少し胸を痛めた。アインズはいつもの事だと割り切っているため、攻撃してきた者が出てくる気配にバフを掛け始めた。

「おらぁ!!俺の新居に勝手に入ってきたのはどこのどいつじゃあ!!」

 バフをかけていると、向こうからはなんとなく知ったような声が響き、アインズがもしやとバンッと扉を蹴り開くと、中には金色の鳥がいた。

 

「もう一発お見舞……い?モモンガさん?ウルベルトさん……?」

「やはりお前か、ペロロンチーノ。お前がフラミーさんを射ったのか」

 アインズはデミウルゴスとフラミーのやり取りには冷静だったが、それを傷付けた対象をには切れかけていた。

「あ、やっぱりモモンガさん。なんだ。皆インしてたんすね!なんか俺落ちれないんすけど、どしたらいいんですか?」

「黙れペロロンチーノ!!お前には同じ一撃を──」鎮静「──んん。ペロさん、フラミーさんを射ったんですよ。全く。ふざけないでください」

 一瞬感じた怒涛の怒りにペロロンチーノとウルベルトが目を白黒させていると、その怒りは綺麗さっぱりどこかに消えていた。光りかけていた謎の腕輪も元通りだ。

 

「ペロロンチーノ様……。まさか……御方々の御再臨とは……」

 デミウルゴスはフラミーを胸にしまったまま夢のような光景を眺めた。ペロロンチーノはデミウルゴスに首をかしげてからフラミーに手を振った。

「え?デミウルゴスのアバターの人誰ですか?フラミーさんおひさっすー!」

「わぁ!ペロロンチーノさん、おひさっすー!」

「いやあいつは……あーまぁいい。一度ナザリックに帰りましょう」

「そうっすね。ペロロンチーノ、お前には俺がこの世界のことを教えてやるよ!」

 ウルベルトはニヤリと口元を歪めた。

「あ、ちゃんとユグドラⅡにナザリックもあるんですか!いやー良かったなー!」

 まだ痛みがこの世にあると知らないペロロンチーノはウキウキでナザリックに帰還した。

 

+

 

「すみませんでした」

「い、いいんですってそんな」

「本当にすみませんでした」

「やめて下さいよ、ほんとにもう」

 装備を整え守護者に顔見せを行なった後から始まった長時間に及ぶペロロンチーノの土下座攻撃にフラミーはもう疲れ果てていた。ウルベルトは声が小さいとノリノリでペロロンチーノのケツを叩いている。もっと……とたまに呟く声が非常に馬鹿らしい。アインズはその様子に少し笑った。

「はは。フラミーさん、肩大丈夫ですか?」

「えぇ、すっかり治ってますよ。いざ自分が痛くなると魔法使えること忘れちゃいますね!デミウルゴスさんが治してくれてよかったぁ」

 ニコニコしているフラミーの蕾を引き抜くと、アインズは立ったまま効果を使ってその手に握らせ少し撫でた。後ろの二人には何も見えていない。

 

「はぁ。良かったですほんと。ペロさんはバカな奴ですけど、許してやってください」

「えっ!モモンガしゃん……僕のことそんな風に思ってたのぉ……」

「黙れペロロンチーノ。可愛く言っても可愛くねぇぞ!」

 ウルベルトはげしげし尻を蹴っていた。

「ふふっ。なんだかとっても賑やか。懐かしいですね!」

 アインズはフラミーのお団子をポフポフ叩きながらそろそろ外は夜になっている頃だなと思った。

 

「ペロさん。この世界の星空って、見ました?」

「空?ずっとあそこの部屋にいたんでみてないですけど、なんですか?」

 一年半ここで暮らしてきた二人は嬉しそうに目を見合わせると、転移門(ゲート)を出し、後続の二人の手を取って連れ出した。ウルベルトはこの世界はどうやら手をつないだりするのは当たり前なんだなと自分の手を取るアインズの骨の手を見て納得した。ペロロンチーノは繋がれたフラミーの手を見て、これが幼女ならと思った。

 

 出た先はナザリックの地表部で、フラミーの手に持たされていた蕾が咲いた。

「あー……これは……やばいっすね……」

「やべぇー!こんな綺麗なもんがあるんだ!!」

 二人はそれぞれ感想を述べると、しばらく満点の星空に見惚れた。それはリアルで見る空とは違い、青、黒、紫と様々な色が混ざり合いながら瞬く星々を強く際立たせていた。アインズとフラミーは当たり前のように手を繋ぎあって、それを見上げ──こうやって残りの三十七人も感動させようと再び決意した。

「フラミーさん、俺たちやっぱり間違ってなかったですよ」

「ほんとですね。守護者(みんな)の言う通り、世界征服始めて良かった」

 

 アインズはフラミーの手の中で咲きっぱなしの花を取りお団子に挿し直すと、フラミーは嬉しそうに目を細めた。こんな時人化していて二人きりだったらとアインズは思うが、こうして来てくれた仲間の存在には心の底から当然喜んでいる。

「……ももんがさぁーん」

「いっ、な、なんですか?」

「あーなたフラミーさんとどう言うご関係ー?」

 

 ペロロンチーノはリア充の匂いに敏感だった。

 

「な、ど、どう言うって……な、仲間ですけど……」

「あぁ〜?くっさいですねぇ。こいつぁ、リア充の匂いですよぉ〜?」

「はは。ペロロンチーノさんって本当面白い。私達、仲間ですよ。お二人がいなかった間もずっと一緒にやって来たんです!」

 まっすぐ言い切るフラミーにペロロンチーノは自分の嗅覚も鈍ったかと首を傾げていると、ウルベルトがちょいちょいと手を振っていた。

「フラミー、こいこい」

「はい!なんですか?」

 

 フラミーはアインズと手を離すとウルベルトの側に行って首を傾げた。

「それ、デミウルゴスが作ったんだって?ほら、みてくれ。俺の杖」

 ウルベルトは自分の最強装備のワンドを取り出すと、そこにはフラミーの頭に咲く花と同じ花が彫られていた。

「わぁ!ウルベルトさん、私達一緒ですね!」

「あぁ。わたしたち、いっしょ、だな!」

 二人はニヒーと笑い合った。

 

「アインズ様、フラミー様、ペロロンチーノ様、ウルベルト様。そろそろお夕食の準備ができましてございます」

 いつからか控えていたセバスが声をかけると、全員でアインズの自室へ行った。

 

「アインズ様もお召し上がりになりますか?」

「あぁ。せっかくだ。私も食べる。用意はしてあるのか?」

「もちろんでございます」

 アインズは返事をすると当たり前のように人化し、いつも座るソファに掛けた。フラミーもその隣にちょこりと座ると、食事をワゴンに乗せて入ってきたペストーニャに手を振った。

 

「はぁ!?ギルマスのその顔なんだよ!!」

「え?あ、骨じゃ食べられないんで、とりあえず人に」

「いやああああ!イケメン!!イケメンよ!!この子イケメンよ!!!」

 ウルベルトの不満げな声はペロロンチーノの絶叫を呼び出した。二人は心底不服そうにアインズとフラミーの前に座ると、幻術でイケメンになろうと話し合った。

「うーん、俺はこの顔いけ好かないと思うんですけど……。フラミーさんもあんまり好きじゃないですもんね?」

「え?好きですよ!かっこいいです!」

 アインズは精神抑制が取れたままだったのでポカンと口を開けた。

「あ、そ、そうでしたか。はは。じゃ、いっか」

 

「っだあー!!!お前らなぁ!!フラミー、お前こんないけ好かない顔が趣味なのかよ!!」

 ウルベルトは切れた。

「えっ!?違いますよ!アインズさんの顔だから好きなだけです」

 全員ぽかんと口を開けると、フラミーは自分の言ったことの意味に気づき顔を赤くすると、パッと立ち上がった。

 

「わ、わたし……やっぱり今夜は一人でご飯食べます」

 立ち去ろうとする手をアインズは急いで取ると引き寄せた。

「何言ってんですか。ここで食べていってください」

「でも……」

「いいから」

 フラミーはむぅ、と唸るとアインズの隣に座りなおし、アインズは「アインズさんの顔だから好き」の意味について一生懸命考えながら上機嫌に翼に指を通して弄んだ。

 

「「ああああああ!!だから、お前らはなんなんだよお!!」」




続くのかしら?
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