「アインズさん、最近ウルベルトさんってどこ行っちゃったんですか?」
「そっすよー。もう五日もいないじゃないっすか。どこ行ったんです?」
記憶がなくなったフラミーと、何も知らされていないペロロンチーノの無垢な質問にアインズは頭を悩ませていた。
「あー……いや、それがちょっと、しばらく引きこもりたいそうで……」
「え?じゃあナザリックにいるんですか?私ウルベルトさんに用事が──」
「行くな!!!」
アインズの突然の大声にフラミーはびくりと肩を震わせた。
「あ、す、すみません……。俺、ちょっと疲れてんのかな」
ペロロンチーノとフラミーは目を見合わせると、支配者の疲労を可哀相に思い正面に一人座っていたアインズの左右に座った。
「大丈夫ですか?ウルベルトさん出てこなくて寂しいんですよね?」
「ウルベルトさんいたら支配者手伝ってもらえたのにねぇ〜!俺はやんないよんっ!」
「……はは。そうですね……」
二人はアインズをポンポン撫でてしばらく話した。その後解散すると、フラミーはウルベルトの自室に向かったが、そこには誰もいなかった。ほかにウルベルトがいるような場所も思い付かず、第七階層に行くとデミウルゴスが気配を感じて慌てて出てきた。
「フラミー様。これは、如何なさいましたか?」
デミウルゴスは自分の寝室で行われた出来事を悔やんであまり部屋を利用しなくなっていた。新しい自室を建設中だ。
「デミウルゴスさん、ウルベルトパパ見ませんでした?」
「……見、見ましたが、何か……」
「どこにいるんですか?私ウルベルトさんに用事があって」
「……おやめください。我が創造主に御身は二度と近付いてはいけません」
「え?」
フラミーは首をかしげると、デミウルゴスは話は以上とばかりに許可なく自分の前から立ち去って行った。どうも様子がおかしいとフラミーは思う。もしかして何か自分がやったせいでウルベルトは自分を避けているのではと。その後ナザリック中をウロつくと、絶対にいるはずもない氷結牢獄に辿り着いた。僕達がざわめく様子にここに違いないとフラミーは確信した。進んでいくと、腹に穴を開けて血を流すウルベルトが見たこともない魔法をかけられた手枷を嵌められ膝立ちで囚われていた。
「う、ウルベルトさん!?なんで!?大丈夫ですか!?ウルベルトさん!!」
「あぁ?ふ、ふらみーか……。わざわざ見にきてくれたのか……?はは、ありがとな……」
「ま、待ってて下さい!今、今回復を!!こんな、なんで……」
フラミーの様子にウルベルトは朦朧とする意識の中、あんなことをしてしまったが、気持ちは正しく伝わったのかなと思った。
「フラミー……ごめんな……」
「良いですから!静かに!!」
フラミーが魔法を掛けようとすると、誰かが走ってくる足音が響きだし、足音の正体はすぐに姿を現した。
「フラミーさん!!なんでこんな所に来てるんですか!!」
「あ、アインズさん!アインズさん、どうしてこんなことするんですか!!ウルベルトさんを出してあげてください!!」
「へへ……ももんがさん……ざまぁねぇなぁ……」
「黙れ外道が!フラミーさん、あなたはここを出てください。お願いしま──」
「いやです!!なんで、こんな酷いこと!!」
「っ……頼みますから!!」
「やだ!!ウルベルトさん、<
途端に腹の穴が塞がったウルベルトは久々に痛みのない体を手に入れるとすぐさま立ち上がった。しかし、ユグドラシルの力ではどうやっても解けない手枷を前にガンガンと手を振り回している。
「モモンガさん、フラミーの気持ち解っただろ。一回抱いてやったらこんなもんだよ!!」
「え?だ、抱く?何を……?」
ウルベルトはハッとフラミーを見た。
「まさか、モモンガさんあんた
「えっ!?あ、アインズさん!?私、私記憶、えっ、まって……待って…………」
フラミーは断片的に残る謎の記憶に頭を抑えるとフラフラし始めた。
「何?なんなの?やだ……こわいよ……アインズさん!!怖いよ!!なんなの!?
フラミーは自分の上で揺れるウルベルトを幻視した。
「なっ、あまり見ては悪いと思ったのが仇になったか。フラミーさん、とにかく行きますよ!!早く!!」
「や、やだ!!怖い、怖いよっ皆、皆怖い!」
フラミーはその場でヘタリ込むと泣き出した。
「こわい、こわいっアインズさんも、ウルベルトさんもこわいよ!!」
「フラミー思い出せよ。お前悪くなさそうだったぜ。それに、俺の言ったことちゃんと──」
「ウルベルト黙れ!!フラミーさん、こんな所にいちゃいけない!!」
アインズはフラミーを捕まえようとしたが手は振り払われた。
「やだっ!!アインズさん私の記憶返してよ!!」
「返せないですよ!!いいから早く!!」
「アインズさんなんか大っ嫌い!!!」
「……ふ、ふらみーさん……」
「はははは!アインズサン、あんたの気遣いは大間違いだったな!」
「ッチ、フラミーさんごめん」
「ひっ!や、やだ!!離して、離して!!あ、あれ?離して……?」
(ちょっと!やめて下さいって!!下ろしてよ!!)
(フラミー、そう嫌がんなよ。俺は大好きなお師匠さんなんだろ)
「ひっ、は……これ、これは……」
アインズはフラミーの力が抜けた瞬間体を抱えて転移して消えた。
「はははは。はぁ……なんであいつが泣く顔見たくなるんだろう……。フラミー……ごめん……。ごめんな……」
悪魔は膝を抱えるとその身のカルマに葛藤した。
アインズはフラミーの部屋に転移すると、大急ぎで杖を引き出した。
「や、やめて……お願いします……お願いしますから……」
「っく……フラミーさん……でも、でもこのままじゃ……」
「怖いよアインズさん……こんなの、こんなのこわいよ……」
アインズが泣いているフラミーを抱きしめたまま床で震えていると、扉が勝手に開かれた。
「フラミーさん、ちょっち俺っちとシャルティアの写真撮って下さ──えぇ!?」
「アインズさんやだよぉ、やだぁっひっひぐっうぅ……」
ペロロンチーノは泣いてやだやだと言うフラミーを離す様子のないモモンガを見ると背筋が凍った。
「ちょ、モモンガさん!やめてあげて下さいよ!!いくら俺でもそんな鬼畜属性もってないですよ!!」
「ぺ……ペロさん……俺は……俺はどうしたら……」
「どうしたらもこうしたらもないです。ほら、離してあげて」
「ふぇっひっうぅっうっぺろろんちーのさん、私、自分の知らない記憶がっこわいよぉ、こわいよぉ」
「あらあらあらあら……よしよし大丈夫ッスよ」
ペロロンチーノはアインズの腕の中からフラミーを回収すると立ち上がった。
「取り敢えず少し寝たら落ち着くんじゃないっすか?」
ペロロンチーノがくるりと背を向け寝室の扉に手をかけると、フラミーは再びさっきの謎の記憶が見えた。
「や、やだ!!ご、ごめんなさい!!ごめんなさい!!やだ!!そこだけはやだ!!」
「えぇ!?そ、そうっすか……?」
「ペロさん……返してください……」
「えっ?返すって何を……?」
「俺のフラミーさん返してください!!」
「わっ!!びっくりしたぁ!別に何もしませんよ。って言うか俺のって、ひひひ。やぁっぱりそうなんじゃないですかぁ〜!」
アインズは奪うようにフラミーを回収すると再び杖をフラミーの前に掲げた。
「え!?ちょ、何すんですか!?モモンガさん!!」
「やだ!!やだやだ!!アインズさんやめてぇっ!!」
「静かに!!このままじゃあなたが壊れちゃうんですよ!!」
「モモンガさん!いやいやいやいや!そんな事した方が壊れちゃうでしょ!!」
「ッチ!!<
「ちょ!!くそ、モモンガさんトチ狂いやがって!!っこの!!」
ペロロンチーノの回し蹴りに杖が吹き飛ぶと、アインズの頭の中にしまった記憶はフラミーにわずかにもれ、記憶は閉じた。
「っあ……あぁ……」
「や、やめろ!!思い出すな!!フラミーさん!!」
「っやだ……やだ……!やだあぁあ!!」
アインズは飛んで行った杖をサッと振り返るとそれはかなり遠く、回収を諦めた。どこまで何を思い出したのか不明なフラミーの顔を掴むとアインズは必死に首を左右に振った。
「ダメだダメだ!思い出すな!!」
「あいんずさん、あいんずさぁん。あぁぁぁっ」
「え?え?何々?なんなのよ?」
「フラミーさん、俺を見ろ!!目を閉じるな!!」
「ひっうぅっあいんずさん、っわたし、わたしっ」
「良いから!!」
フラミーはしゃくり上げながら涙の向こうにアインズを見ると、少しづつ落ち着きを取り戻しはじめた。
「そう。そう。良い子だから!ペロさん!!早く杖を!!」
「えぇ……フラミーさんどしちゃったって言うんですか……?」
「どうもしませんから早く!!」
「やだぁ!!や!!やだぁ!!」
「こ、こんなに嫌がってるのに……モモンガさん、兎に角一回皆で落ち着きましょ?」
「落ち着いてられるか!!この人は、この人はウルベルトに滅茶苦茶にされたんだよ!!」
ペロロンチーノが固まる中フラミーの泣き声だけが響いた。
「フラミーさん。大丈夫ですから。今度こそ綺麗に全部消しますから」
「あいんずさん、こわいよっこわいよぉっ」
「大丈夫です。全部済めば怖かったことも皆忘れます」
「忘れるのもこわいの。こわいのあいんずさん!やだぁ、もうやだぁ!もう、もう生きてけないっもうむりだぁ!」
「っく……。フラミーさん、落ち着いて。落ち着いて下さい。じゃあもう記憶には触れないから。何もしないから」
「あいんずさん、私どうしたらいいのっ!どうしたらいいのっ!!」
「ここで俺といるだけで良いんです。もう怖いものが絶対見えないようにしますから」
「っひっうっ。あいんずさんっあいんずさんっ」
「俺が守るって約束したのにすみませんでした……。俺の責任です。でももう二度とあなたを傷付けさせません」
「っうっあいんずさん、おねがい……」
「はい。もう大丈夫ですから……」
「しょうどくしてぇ」
「あっ……」
アインズは少し固まると人の身を呼び出した。
「っ……、目、閉じて下さい……」
「やだっ、やだっ、目閉じたら、違う人になっちゃう!!」
「じゃあ、逸らさないで」
二人は目を開けたまま唇を重ねた。フラミーの瞳からはボロボロ涙が出ていて、迷宮の分も消毒しようとアインズは口を開いてフラミーの口の中に侵入した。
「っんぇ、あっ、あいんずさん!っう……。んぁっ……」
じゅぶと一度音が鳴ってから唇を離すと、フラミーの瞳は揺れていた。
「あ……ご、ごめんなさい……。俺……やりすぎた…………」
「……あいんずさんと、にかいめのきす……」
「僕ちん何見せられてんだろう。しかも二回目っておたくら何なのよもう」
「……フラミーさん、もっと全部消毒する……?」
「ひっ、や、やだ、こわいっ、こわい!」
「ごめん。そうだよね。一応確認しただけ」
アインズは目を開けたままもう一度フラミーの唇に唇を重ねてねぶった。
「はぅっあいんずさん、んっ、わたしっ、ごめんらさいっ」
「っん……静かにして……フラミーさんは何も悪くなっ……んん……」
話すために少し唇を離すとフラミーはついてきて再び二人の唇は重なった。ペロロンチーノはあまりにもやらしい雰囲気に出て行かなきゃと思う気持ちと、ここで一部始終全部見ていってもいいのかとワクワクする気持ちが葛藤してバカ丸出しだった。
「あいんずさんっんぁっ……わたひっ、あなたのことっ。らのに、らのにぁ……!」
「わかってる。わかってるから。すみませんでした。俺がヘタレなばっかりに」
「んぅっ。あいんっずさん」
「うんうん!いいねいいねぇ!」
「…………ペロさん、ごめん、出てってもらってもいい……?」
「えっ!?ここまで見せておいて!?」
唇が離れた事にフラミーは不安そうにした。
「あいんずさん……やら……離れちゃやら……」
「あっ、すみません。ほら」
「んぅ……。んっんっ。んぁっ……。はん……」
この無限キス地獄で自分はいつまで耐えられるんだろうかとアインズは焦った。開かれたままの金色の瞳は濡れていて射抜く視線は離れなかった。アインズは
「あぁ、いっちゃうの〜ももんがさ〜ん。童貞卒業したら教えてぇ〜」
フラミーはピクリと肩を揺らした。
「うるさい。しない。んっ……ぁ、ふ、フラミーさんっ、一回ちょっと……あっんん……や、やめていただけるとっ」
「はなれちゃやだ、やらぁ!」
「離れませんからっお、俺はっんん……暫く働かないって言わないと、あっん……ナザリックがっ」
アインズはそう言いながら、ちらりと至高の一人を確認した。
「……僕ちんにはナザリック運営できないよ?」
「だ、だめか……あぁっ十秒だけっ、フラミーさんっ、んぅウゥンっあ、デミウルっごす、よばないと」
この状況でアルベドを呼んだら百パーセントしっちゃかめっちゃかになる。
「ひゅーぅ!僕ちんが呼んであげますよ!あ、デミデミ?フラミーちゃんのお部屋に来てちゃんねー!」
こいつはバカだと思いながらフラミーとキスを続けているとノックが響いた。
「は、はいっれ!あっ、ふらみーさ、でみっウルゴスのっ前ではっ」
パンドラズアクターにすべきだったと今更思うと、部屋に入ってきたデミウルゴスは固まった。
「失礼しま……あ、あの……自分はペロロンチーノ様に、よばれ……」
「そうそう!デミデミ、モモンガさんとフラミーさんはこのまま暫くエッチするからお仕事お願いねだって!」
「い、言ってない!!そんなことしな──あぁ、すみません。っぅん……」
本当にしないでいられるのかと正直自信はなかったがここでしては絶対に信用が