「兎に角、お二人はちょっと待っててください」
アインズはペロロンチーノとウルベルトに謝り、フラミーを抱えたまま水上ヴィラへ立ち去っていくツアーを追った。
「おい、待てツアー!待てと言っているだろう!」
「アインズ。君はフラミーを大切に思っているならあまり危険な者をそばに寄らせるんじゃない」
「だから危険じゃないって言ってるのに……」
フラミーは自分を抱える鎧の頭をコンコン叩いていた。
「兎に角降ろすんだ」
ツアーはアインズに数歩近寄ると、フラミーを渡した。
「どうか離さないでくれ」
「……わかったから。心配するな」
アインズは自分の腕に戻ったフラミーを大切そうに抱き締めるとその匂いをたっぷり吸った。
安心する匂いだ。
はぁー……と長く吐き、ツアーに持ち帰られなかったことに安堵する。
ツアーは桟橋を渡ると、橋の入り口で腕を組んだ。
「全くツアーのやつおかしくなっちゃって困りましたね。あいついつまでいる気なんだろう」
「ウルベルトさん、大悪魔だから怖くなっちゃったんですよ」
「……大悪魔って言ったらフラミーさんだってそうじゃないですか。何があいつの地雷か良くわかんないなぁ……」
骨の身には不要なため息をつくと、フラミーはくすくす笑った。
「ふふ、アインズさんのこと、皆とっても大切なんですよ」
「……俺はフラミーさんが一番大事ですよ。なのに……俺からフラミーさん持ってっちゃおうとするなんて、あいつ何も分かってない」
アインズが骨の細い手で髪を撫でると、フラミーは顔を赤くし、じっと自分を抱える人に視線を落とした。
「……あいんずさん……私、また好きって思っちゃった……」
「は……」
最重要課題は、何と伝えればいいのか、いつも途中で照れ臭くなってしまって真面目に最後まで考え切れた事がない。
アインズはこの感覚が散ってしまう前にと急いで言葉をかき集める。
「あ、あの、フラミーさん。えーと、ちょっと真面目な話いいですか?」
フラミーは赤い顔をぷるぷる振ると、いつもの紫色の顔に戻った。
「はい!いいですよ。私はいつでも真面目です」
心の中でそれはないと突っ込んでからアインズは今骨の身でいて良かったと何度も思った。
しかし、人生で一度も経験がないため一体どんな言葉を紡げばいいのか解らない。
考えれば考えるほど心臓の音がうるさい──いや、錯覚だ。骨の体に心臓なんかない。
「アインズさん?大丈夫ですか? 」
何も言わないアインズを心配するようにフラミーは顔を覗き込んだ。
その金色の瞳を見ると、心臓が飛び出していくんじゃないかとアインズは精神抑制が働いているはずの身を疑う。
「ツアーさんのこと、大嫌いになったなら、私が殺してきましょうか?」
真剣に不穏な事を言うフラミーにアインズは少し笑った。
「はは。そんな事ないです。それにフラミーさん一人じゃ多分竜の体のツアーには勝てないですよ」
「それはそうですけど……でももう嫌だって思ったら全部壊しちゃえばいいんですからね」
「ありがとうございます。俺、いつかフラミーさんが何の心配もしないで済むくらい強くなりますよ……」
フラミーを抱きしめる腕に力を込め、改めてアインズは言葉を探す。
「……アインズさん。心配な事もありますけど、アインズさんがいてくれれば私何も怖くないです」
体を付けて背中をさすっていると、骨の腕の中から自分のものではない鼓動を感じた。
この人の言ってくれる"好き"は自分の"好き"と同じだろうか。
優しい時間を手離す事になるのではと少しアインズは怖気付いた。
アインズはフラミーから体を離して、いつでも破壊できますとでも言うような笑顔を眺めた。
「フラミーさん、俺もあなたを好きだって思っちゃいました。あなたが、俺のこの顔──」人の身を呼び出す。
「この顔、アインズさんの顔だから好きって言ってくれたの……すごい嬉しかった……。ありがとう……」
フラミーはアインズの顔を撫でた。
「……アインズさんの物なら、何でも好き……」
「俺もフラミーさんの物なら何でも好きです……」
「……アインズさん、私達の好きって似てる……?」
「似てる。すごく。……もしかしたら、同じかも」
「おなじ……」
アインズが顔を寄せると、唇がかするように触れ合い掛け──
「きゃ──!!モモンガさん!!頑張って──!!」
二人はかすっている唇をどうしたらいいのか分からず固まった。
ここがただの桟橋で、向こうには友人もツアーもいる事を忘れていた。
「君たちには生殖して欲しくなかったけど、こうなったらその方が安心できる」
ツアーの生殖と言う言葉に、フラミーが涙目になるとアインズは我に返った。
「うわっ!あ、えっと、ち、違うんです!!違うんですからね!!」
アインズは急いでフラミーを下ろすと駆け出し──
「あっ、あの、アインズさん」
すぐさま立ち止まり背筋をピンと伸ばした。
「はい!!」
「……また、お話ししましょうね」
「……あ……うん」
照れ臭そうに頷くと、ツアーの兜を杖でパ──ン!と弾いて吹き飛ばし、ヒュ──!と盛り上がる男子二人に向かって走った。
「結局フラミーを離してるじゃないか」
ツアーはぶちぶち文句をいいながらフラミーを拾うと、そのまま兜を探しに出かけた。
本編と違ってちゃんと伝わりそう!!