鈴木と村瀬注意ですなぁ!
IF 悟さんと文香さんが付き合っちゃう話+後書きR18
鈴木は待ち合わせの時間の30分前にその場所についた。
はぁーと溜息をつくと、自分の身だしなみがおかしくないかを何度も確認する。
「……あぁ……やばいよ……やばいよ……よく俺誘ったよ……。フラミーさんほんとにくるのかな……」
鈴木は自分の勢い任せの行動にわずかに後悔した。
+
モモンガはその日泥酔状態でログインした。
「えぇ!?ウルベルトさん、フラミーさん誘ったんですか!?」
「そ、そうですけど……」
「あぁぁぁ……それで、フラミーさんはなんて!?」
「……それ聞きます?はぁ……」
ウルベルトからは深すぎるため息が聞こえた。
「……その様子、振られましたね」
「うるさいですよ、飲みに誘っただけですから振られるもクソもないですし」
モモンガは友人の不機嫌そうな声にニヤリと鈴木の顔を歪めた。
「……おれも誘ってみようかな……」
「はぁ?なんでですか?」
「いや、おれ、えへへへ」
その後の記憶はない。
そうして翌日の昼過ぎ、二日酔いでガンガン痛む頭を抑えながら起きた。
スマホを立ち上げると知らない電話番号から一通Cメールが来ていた。
「……ん?」
内容はこうだ。
──届いてますか?日曜日楽しみにしてますね。お返事待ってます。
鈴木は迷惑メールにため息をつくと、ポイとスマホを投げた。
気分は最悪だが土曜日を満喫する為に冷蔵庫を開け液状食料の味噌汁味を取り出す。
「……二日酔いにはこれなんだよなぁ」
鈴木は液食を咥えるとドサリと定位置の椅子にもたれた。
何もしなくてもログインだ。そうすればギルメンの楽しい会話が聞ける。
癒されようとユグドラシルを立ち上げた。が、味噌汁のためにフルダイブモードにはしない。操作に大幅な支障を来たすが、ハーフダイブモードだ。
今日もアインズ・ウール・ゴウンは大賑わいだった。
鈴木は液食をすすりながら、円卓の間にいたギルメンに挨拶をした。
「おはようございます〜」
「来たなモモンガさん!!それで、どうだったんだよ!!」
途端にウルベルトに詰め寄られると、モモンガは思わず液食を落としかけた。
「っおっと!あぶない!!」
「は!?なにが!?」
「え?あ、すみません。味噌汁食ってて」
「……あぁ、二日酔いっすか?昨日ほんとやばかったっすもんね。それで、どうだったんですか」
「……何がです?」
ウルベルトの体からは怒りの波動が漏れ出ていた。
「何がじゃないっすよ!!フラミー誘ったんでしょ!!」
ウルベルトがダンっと机を叩くと、ピコンと0ptsとダメージ量が表示された。
「ふ、ふらみーをさそ……あぁ!?そうだ!!やばい、そっか!!あのメール!!」
モモンガは慌ててヘッドギアを放り投げるとスマホを手に取り、迷惑メールフォルダへ吹き飛ばしたメールをサルベージする。
「頼む頼む頼む……フラミーさんだよな、フラミーさんだよな!?」
誘うと言った記憶すら朧げな中、そもそも本当に誘ったのかと言うのも解らなかった。
鈴木はだらだらと冷や汗をかきながらさっきのメールを開いた。
よく見れば一番下にフラミーと書いてある。
どうやら本当に誘っていたらしい。
「……あああ……。俺ってもう!!」
急ぎ文章を考える。
が、何も思いつかない。
鈴木はスマホを手にしたまま転がるヘッドギアをつけた。
「ウルベルトさん!!日曜日楽しみにしてますって!!なんて返事したらいいんですか!?」
思わずそう叫ぶと、そこには見慣れた紫色の天使がいた。
「あ……ふ、ふらみーさん……」
何故かやってはいけないことをした確信を持ち、日曜日──明日はまた一日ユグドラシルかと嘆きかけると──
「あ!モモンガさん!オススメのカフェ、楽しみにしてますね!!」
あっけらかんとしたフラミーの声が響いた。
それを聞くや否や、ウルベルトはプッと口一杯に空気を溜めたような音を出し、ゲラゲラと大笑いを始めた。
「ははは!ひひひ、ひぃー!!モモンガさんと、フラミーの温度差!!ひはははは!」
モモンガはそれはそうだよなと、普通の友人とのお出かけ感覚のフラミーを前にぽりぽりと鈴木の頬をかいた。
「んん。はい。えーっと……」
カフェに誘ったのかと記憶を辿るが覚えていない。
とにかくウルベルトに張り合いたくなってしまってフラミーを誘うと男同士で盛り上がったところまでだ。
「明日、東口で私、待ってますね!」
明るい声にそうかと、そんなところにモモンガさんはオススメのカフェなんかがあるのかと、鈴木はバカな自分から出たであろう言葉に苦笑する。
しかし自嘲している場合ではない。
モモンガは挨拶もそこそこに一度ユグドラシルから
「やばいやばい……やばいって……」
約束の場所はアーコロジーの端っこだし、そう何度も行ったことはない。
これがまるっきり遠い場所じゃなくてよかった。何も考えず明日飛行機の距離に集合だったら鈴木は破産する。
鈴木は必死に約束の駅にある良さそうなカフェについて調べた。
破産しないで済みそうな……ある程度静かで……オシャレで……。
そうして鈴木は当日を迎えた。
何度も腕時計を確認し、まだ来るには早すぎたと頭をかいた。
「あぁ──……」
まずは何と言おう。
はじめましてだろうか。
いや、いつも通りおはようございますだろうか。
何度も頭の中でシミュレーションを重ねるがまるっきりいいセリフは思い浮かばない。
いや、まだ約束の時間までは20分あるから──。
不意に肩を叩かれ、ビクッと身を震わせると鈴木は思い切り振り返った。
「あの、モモンガさんですか?」
「あ、あ……」
第一声は終わった。
可憐な人を前に、こんな人と待ち合わせをした記憶はないと思う。
いや、現実逃避だ。
(ああああ!!違う違う!!違うだろ俺!!)
「あ、ご、ごめんなさい!」
少女なのだか女性なのだかわからない乙女はぺこりと頭を下げ、立ち去ろうと踵を返した。
慌てて鈴木は乙女の細い腕を掴むと、「も、ももんがです……」それだけ絞り出した。
「あ……よ、よかったぁ」
フラミーは困ったように笑った。
鈴木はそっと手を離すと落ち着きなく自分の後頭部を撫でた。
「すみません。ちょっと……あー考え事を。はは」
「難しこと考えてたんじゃないですか?モモンガさん、とっても賢いですから!」
キラキラした視線が痛い。
まるで賢くないというのにこの高評価は何なのだろう。
鈴木も困ったように笑った。
──沈黙。
何を話せばいいのかまるでわからない。
フラミーは興味深そうに鈴木を頭からつま先まで観察していた。
「えっ……と、いきます……?」
「はひ!」
人懐こいような笑顔にウッと胸を押さえた。
(……いかん……別に、ただのオフ会だし……)
鈴木が歩き出すと、ちょこちょことフラミーも隣を歩き出した。
「モモンガさんっておっきいんですね!」
「え?あ、そうですか?あんまり言われたことないですけど」
たった177cmだ。
「なんだかお兄さんって感じします!」
──かわいい。
この生き物は何なんだろう。
鈴木は別に褒められたわけでもないのになぜか顔が熱くなった。
「あっと……俺の方が少しお兄さんのはずですから」
「うーん、やっぱりそうなんでしょうねぇ」
フラミーはうんうんと頷き鈴木の隣をついて歩いた。
「……行ったんじゃない?」
「行ったねぇ」
「はぁ……仕事でもないのに俺は何でこんなことしてんだ……」
ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜、ウルベルトは読みもしない新聞をゆっくり下ろした。
もはや絶滅危惧種の紙媒体はそこらへんに捨てられていたものだ。
気になってるくせにぃと姉弟に突かれる男は不機嫌そうだ。
「で?どーすんだよ。ペロロンチーノ」
「どーもこーもないっすよ!!童貞同盟これで崩れでもしたらどーすんですかって逆に聞きたいです!!」
「おい、愚弟。なにフラちゃん貫通させてんだよ」
まるっきりおかしな集団はやいのやいのと二人の後ろをついて歩いた。
「あ!あそこだ!!モモンガさんのオススメのカッフェー!!」
「半地下かよ!穴場カフェ知ってますアピールか!!」
「モモちゃんおっとなぁー!」
茶釜からひひひひと上がる声とは裏腹にウルベルトは真剣になりはじめた。
(俺も飲みじゃなくてカフェとか昼間遊ぶようなのに誘えばよかったわけだなぁ……)
当たり前のように飲み会に誘った過去を反省した。
微妙な希望を見出し、階段を下りる二人を追う。
「ねーちょっとモモちゃん歩くの早くない?フラちゃんちっこいんだから合わせて欲しいんだけど」
「姉ちゃん、それは童貞には難しい!」
そしてこの姉弟を見ると、ウルベルトは絶対にフラミーにユグドラシルで何時にどこ集合と言わせないように固く口止めしようと誓った。
「じゃあ、私ロイヤルミルクティで」
「あー俺本日のコーヒーで」
想像より安い様子に安堵する。
ここはマスターが人をみてカップを選んでくれるというオシャレ喫茶だ。
固形の食料もあるが、はっきり言って高すぎる。
頼むつもりは毛頭──
「モモンガさんって大人ですね」
ないわけではない。フラミーが食べたいというなら大人らしくここはひとつ頼んで奢ってあげてもいいだろう。
いや、決してフラミーが子供だと言うわけではないが、ギルドマスターは見栄っぱりだった。
「いえ。ほんの少し長く生きてるだけですよ」
今のは少しかっこよかった気がする。
鈴木は段々フラミーに慣れてきた。
「私こんな素敵なお店始めて来ました。モモンガさんとっても慣れてます。すごいです」
ぴぴぴとフラミーからは汗が飛ぶようだった。
こういうとき緊張している者がいると落ち着くのはいい魔法だ。
「ははは、じゃあ慣れるまで色んなところに付き合いますよ。なんて」
──なんて。
また一緒に出かけてもらえるだろうかとわずかに期待する。
フラミーは嬉しそうに頷いた。
それぞれに頼んだ物が届くと、鈴木の前に来たのは鳥獣戯画の描かれた瀬戸物マグ。
フラミーの前には花柄のカップだった。
「あーわかります」
「ふふ。わかりますねぇ!」
二人は笑った。
「でも俺のこれはモモンガさんなんてフラミーさんが呼んだからですよ、絶対」
「ふふ、これもきっとモモンガさんがフラミーさんって呼ぶからフラワーで出てきたんですよぉ」
鈴木はミルクも砂糖も入れないのでセットをフラミーの方へ押した。
フラミーは軽く礼を言いながら、きっとこの人は百戦錬磨のお兄さんなんだろうと思う。
何とも手馴れすぎているというのも問題だ。
別に今日はデートに誘われているわけでもないし、ただのオフ会だ。
しかし、憧れていた人に誘われて悪い気はしなかった。
「じゃあ、フラミーさんって何て呼ぶのが正解ですか?」
くすりと笑ったような雰囲気でモモンガはコーヒーに口をつけた。
「あ、私、村瀬っていいます。村瀬文香」
「村瀬さん。俺は鈴木悟って言うんです。何人かは知ってるんですけどね」
「鈴木さん」
「はい」
二人が目を細めると、ウルベルトは机に突っ伏した。
「モモンガさん……ユグドラシルじゃ童貞臭いってのになんなんだよ……!」
「ウルベルトさん静かにして!俺っちちゅーする瞬間見逃せないんだから!」
「しないだろ」
ペロロンチーノの頭をペチンッと茶釜が叩く。
相変わらず三人は怪しかった。
「ん?今何か──」
モモンガがこちらを向く気配。
三人はボックス席で小さくなった。
「姉ちゃん今はそれやめて。まじで」
「悪い。今のは反省した。でもお前も反省しろ」
「お前たち姉弟はもう帰れ。後は俺だけでみるから」
ごそこそと話をしていると、二人の笑い声が上がりこっそりと視線を送った。
「はは、おかしい。ほんと」
村瀬が笑った時に浮かんだ目尻の涙を拭うと、楽しんでくれているようだと安堵の息を吐いた。
「ところで村瀬さん。この後どうします?」
「この後、うーん。せっかくアーコロジー入りましたしねぇ」
二人は天井を見上げるとうーんと唸った。
「……良かったらアーコロジー観光してから帰りませんか?何度かたっちさんに案内して貰ったところがありますから」
「いいですね!そういえばたっちさんってこの辺でしたっけ」
住む世界違うなぁと漏らす村瀬に鈴木も分かると頷いた。
「たっち……!!」
「……いやなんでそこだけ聞き取れるんですか」
「すごい。もはや好きなんじゃないの?」
何をするつもりなのかウルベルトは身を乗り出し、茶釜に羽交い締めにされていた。
すると、二人は席を立ち──三人の真後ろを通って店を出た。
「おい、出るぞ!!」
「落ち着いてウルベルトさん、お会計済ませないと!」
三人も慌てて店員を呼ぶと会計を済ませた。
「はー……こんな高ぇもん飲んで大して味感じなかった……!」
ウルベルトは大いに嘆いた。
(あんな高いもの飲んでほとんど味しなかった……)
同時に鈴木も同じことを考えていると、ツイツイとジャケットの裾を引っ張られた。
「あ、どうしました?」
「あの……やっぱり悪くって……。お金払いますから……」
フラミーは心底居心地悪そうに鈴木を見上げていた。
「いやいや、良いんですって。お茶の一杯くらい奢らせてください」
財布には大打撃だ。
今月はもう課金はやめておこう。これがせめてアーコロジーではない場所の店なら大丈夫だったろうに。
「でも……」
「良いですから、そんな顔しないでください」
鈴木が困ったように笑うと、村瀬も困ったように笑った。
「私、きっと何かお返ししますね」
「はは。楽しみだなぁ」
期待しても仕方がないと思いながら、期待してしまう。
鈴木は村瀬を連れて隣駅までくると、アーコロジーの中でも数少ない、環境省が持っている公園に来た。
「こんなところがあるんですね。知らなかったぁ」
「俺もたっちさんに連れて来られるまで知りませんでした」
二人で公園には入らず、公園の外の小さな散歩道を歩いた。
この公園は有料だ。
このご時世緑を守るにはコストがかかるのだろう。
二人はしばしあてなく歩いた。
村瀬は緑を珍しそうに見上げ、鈴木も滅多にお目にかかれないそれを見上げて歩く。
ふと手が触れ合うと村瀬はヒャッと声を上げ鈴木からはなれた。
「あ、すみません。近くって……」
「いえ、私こそ……」
二人の頭からは照れ臭さの汗が飛ぶようだった。
もじもじしながら互いにそっぽを向いて歩きだすと、「ッキャ!」という声とともに村瀬は鈴木の服を掴んだ。
「あ、だ、大丈夫ですか」
「あいたた……」
「あぁ……捻りました……?腫れてる……」
自分に掴まる村瀬を支え、キョロキョロと辺りを見渡し、手近なベンチを見つける。
「すこし休みましょう」
「すみません……」
「良いんですよ」
鈴木は村瀬を支えながらベンチへ向かった。
座らせると靴を脱がせ、痛そうな足首に触れた。
「うわー……派手にやっちゃいましたね……。歩けますか……?」
「やっちゃいましたぁ……。すみません、多分しばらくは難しいんで、よかったら先に帰ってください」
「いや、いやいや。待ちますよ」
鈴木は靴を村瀬の足に戻すと隣に座った。
(……むしろ、ラッキーなのでは?)
発想は最悪だった。
「本当すみません、やだなぁ……私って本当不注意で」
「良いですって。いくらでも待ちますから」
「でも……」
「じゃあ、とりあえず村瀬さんのこと教えて下さい。全部聞けたら帰ります」
「ふふ、私空っぽ人間だからすぐですよ?」
「例えば?」
「うーん。根無し草なところとか」
「俺もそうだ」
鈴木が笑うと村瀬も笑った。
鈴木はあれこれと村瀬情報を無意識に収集していくと、あたりはすっかり薄暗くなり始めていた。
「……あ、もう夜になっちゃう」
「あー。行きます?立てますか?」
鈴木は立ち上がり、村瀬に手を伸ばすと、わずかに躊躇われてからその手は取られた。
「っい……」
「ダメですね。困ったな。俺の家そこそこ近いですけど、うち来ますか?」
何も考えずに誘うと、村瀬は困ったように目を泳がせた。
「あ、あの、でも……」
そしてすぐに自分の言ったことの意味を悟は悟る。
「あ!?すみません、違うんですよ!!えっと、本当にただ近くって、それで、あー少し休んで行ったらいいんじゃないかって!!」
「あ……はは。私、なんだかすみません本当お気遣い頂いて……」
「い、いえ……」
鈴木は若干流れた汗を拭いた。
「そしたら、少しだけお邪魔させて下さい。このままじゃここで一夜明かすことになっちゃいそうだから」
少し心細そうな、縋るような顔を見ると何故か鈴木はゴクリと喉を鳴らした。
「……い、いきましょうか。掴まって下さい」
村瀬は申し訳なさそうにし、掴まる様子がない。
「あの、でも……」
「はは、何もしませんから」
そんなことはわかってますとでも言うように村瀬は鈴木を見上げた。
「じゃあ……、失礼します」
そっと腕に村瀬の手が絡まると鈴木は生まれて初めての感触に心臓が跳ねた。
胸の中から叩きつけるように鳴るそれを叱責する。
(肩を貸してるだけなんだから落ち着けって!!)
二人はゆっくり駅へ向かった。
その場の茂みからボスンと男が顔を出した。
「……っだあぁぁああ!!モモンガさん!!あいつ絶対童貞じゃねーだろ!!」
「うーんあれは鮮やかな犯行だね。一体どこに向かうってんだろう」
靴擦れを確認したと思ったらそのままベンチ休憩。
ベンチ休憩からの腕を取らなきゃ動かないとでもいうような雰囲気。
「……モモンガさんって、似非童貞?」
ペロロンチーノも首を傾げていた。
二人はなんとか電車に乗った。
「流石に座れないか……」
鈴木は誰かに席を譲ってもらおうと車内を見渡した。
「あの、大丈夫ですからね」
「そうですか?でもこの先少し混みますよ?」
「大丈夫です!」
私頑張ります、と言う表情に和む。
「じゃあ、俺も頑張ります」
ポン、と頭に手を置くと、鈴木は村瀬を連れてドア傍に移動した。
振動が響くのか電車が動くと村瀬は痛そうに声を上げた。
「……やっぱり変わってもらいます……?」
「い、いえ……」
村瀬が痛みに僅かに涙を浮かべていると、電車は止まり──「ここから混みます」鈴木の注意喚起に呼ばれるようにザラザラと人が乗り込んできた。
ギゥと二人は圧縮され、鈴木は一瞬目を泳がせてから村瀬の肩を抱いた。
村瀬がピクリと震えると、ぶんぶん頭を振る。
「次、こっち開きますから……」
「は、は、はい……」
ドアが開いていくと、鈴木は村瀬をギュッと壁に押すようにし、ドアの前を開けた。
若干迷惑行為だが一度降りると再会は難しい。
「次降りますよ」
「あ、あの、ももんがさん……、わたし、やっぱり……」
不安そうな顔をする村瀬は鈴木さんと呼ばなかった。
距離を取ろうとしているのだろうと察し、こちらもその距離に応じる。
「フラミーさん、戻るにしても一度降りましょう。これ以上行ったら戻れません」
「あ……ぅ……」
鈴木はフラミーの手を取ると電車は止まりドアが開いた。
「気をつけて下さいね」
フラミーがゆっくり降りていると、後ろから急ぐ人に押され、ボフッと鈴木の胸に激突した。
「っあ、あわわわ」
「あわわわわ」
二人でよくわからない声を上げると、鈴木はバチン!!と凄い勢いで後頭部を叩かれ、何事かと振り返った。
「モモンガさん!!ここあんたんちの駅じゃねぇか!!許さねーぞ!!まじで!!」
「う、ウルベルトさん!?」
「モモちゃんさぁ。そうやって純情っぽいフリして女子お持ち帰りしようとするなんてあんまりなんじゃなーい?」
「俺は応援しちゃいますよー!ひゅー!」
「茶釜さん、ペロさん!ちょっと誤解しないでください!フラミーさんのこの足みて下さいよ!!」
モモンガがビッとフラミーの足を指し示すと、三人はそれをちらりとみて、声をそろえた。
「「「いい脚だ」」」
「そうじゃな──い!!」
モモンガが絶叫した後、足首の腫れを見せると三人はアァ〜と頷いた。
「第一皆さん何でこんなところにいるんですか!!」
「……いや、ちょっと、なぁ?」
「ねぇ?」
「心配で……?」
モモンガは心底ふざけるなと思ったが──ちらりとみたフラミーは安心したようだった。
「……茶釜さん。今日はフラミーさん連れ帰ってあげて下さい」
「え?何?いいの?」
「良いに決まってるでしょーが。フラミーさんも茶釜さんとなら安心ですよね?」
努めて優しい笑顔を向けると、腕にすがるフラミーはうん、と頷いた。
──残念だが仕方ない。
フラミーを茶釜に渡すと、鈴木はフラミーに軽く手を振った。
「じゃあ、フラミーさん気を付けて帰って下さいね。一日すみませんでした」
「あ、あの、モモンガさん。すみませんでした」
二人でペコペコ謝り合うのを見ると、ペロロンチーノはビッとフラミーを指差した。
「フラミーさん!皆でモモンガさんちに行こう!!」
「「えっ!?」」
「いやいや、俺んちそんなに広くないですって!」
「なんとかなるだろ!オールだ!!行くぞ、フラミー!!」
ウルベルトは途端に元気になるとフラミーを持ち上げた。
「っわ!な、危ないですよ!」
「危なくない危なくない、俺に任せな!」
ウオオォォォ──……とそのままウルベルトは駆け出した。
「いや、危ないでしょ!!ウルベルトさん!!それに初めましてでそんな事!」
モモンガも走り出すと、姉弟は顔を見合わせた。
「……初めましてでそんな事はモモンガさんも一緒だよなぁ?姉ちゃん」
「そう思うけどねぇ。皆自分は違うって思いたいんだろーよ」
実は常識的な姉弟も駆け出した。
ウルベルトは当然すぐにバテ、フラミーを下ろすとペロロンチーノを連れてコンビニに走った。
茶釜に肩を貸されながらフラミーがひょこひょこ歩くのを先導し、特別綺麗でも汚くもない部屋の鍵を開ける。
ただ、汚らしく濁った空気の中に、アーコロジーがぼんやりと浮かび上がるように見えるこの部屋を鈴木は割と気に入っている。
「……ほんと、オールとかするつもりじゃなかったんで何もないですよ……」
「オッケーオッケー」
「おっけーおっけー!」
フラミーはすっかり楽しそうにしていた。
茶釜が真っ先に部屋に入り、ガタガタと片付けをしている音がする。
「……あの人、母ちゃん属性もちなんだ……」
モモンガは部屋は無事かと──たった数歩しかない短い廊下の先の部屋を案ずる。
「ふふ。茶釜さんって本当頼りになります!」
「はは。それは何よりですよ。俺はあんまり頼りになりませんから」
複雑そうな顔をして笑い、フラミーの足から靴を抜いた。
「……痛みます?」
「……あ、少し」
少しという様子ではなさそうだ。
鈴木はフラミーにもう一度手を伸ばし立たせると部屋の扉を開けた。
「……茶釜さん……」
茶釜の手には厳重に口が閉められた袋が握られていた。
「危ないところだった……。臭いもこれでオッケー。フラちゃん、入っていいよ」
鈴木は言われた事の意味に気付くと顔がカッと熱くなった。
「っ!な、あんた!!」
「あんたじゃないでしょ。感謝して」
茶釜はボフッと一人で処理した孕ませかけのゴミ袋を渡すとフラミーの手を引いて鈴木のいつもユグドラシルをプレイしている定位置に座らせた。
ウルベルトとペロロンチーノも到着すると二人はドヤドヤと入室し、腰を下ろした。
皆で円になって座ると、鈴木は一瞬不思議な幻を見た。
それは神妙な顔をした階層守護者と、温かいカップを持って円になって座る奇妙な──いや、NPCとそんな事があるはずはない。
ぷるぷると鈴木が頭を振ると皆で乾杯し、フラミーは噂通りすぐに寝た。
「……はぁ。モモンガさんさぁ、もしかしていつも童貞に擬態してんの?」
「擬態ってなんですか……。それよりそんな事堂々と公言しないでくださいよ。フラミーさんに聞こえたら──」
「聞こえたらなんだってんですか」
ジリジリと迫られながらチラリとよく寝ている様子のフラミーを見た。
「恥ずかしいでしょうが。いい歳こいたおっさんが」
「……まぁ、それはそうですね」
二人は頷き合った。
「それにモモちゃんはまじんこの童貞だわ」
「え"っ」
「ゴム一つ持ってないでフラちゃん襲うとも思えないからね」
「…………漁ったんですか……」
「ちょぴっとね!」
「もー!!俺のプライバシーをなんだと思ってんですかー!!」
鈴木の嘆きにも似た声が響くと、四人の酒盛りはしばし続いた。
皆が寝静まると、鈴木はそっとフラミーの眠る椅子に手をつきヘッドギアへ手を伸ばした。
明日はもう休むと決めたし、どうせならこの状況をインしている仲間に伝えようとわくわくする。
ギシリと椅子が揺れた。
「ん……」
「っあ、すみません」
フラミーの瞳は開かれた。軽く頭を下げるとフラミーは察したように笑った。
「鈴木さん、遊ぶんですか?」
「はは、ちょっとだけ」
「ふふふ。こんなに遊んだのに」
「大人は遊べる時に遊ぶものです」
鈴木は自分の口の前に立てた人差し指を添えるとフラミーは目を細め頷いた。
「……あ、でも、やっぱりフラミーさんが起きたならユグドラシルはやめておこうかな」
そっとヘッドギアを下ろすとフラミーは気にしないで良いですよと首を傾げた。
鈴木がヘッドギアを数度撫でているとフラミーは鈴木に手を伸ばした。
「村瀬さん、今日本当俺楽しかったです。でも痛い思いさせてすみませんでした」
触れていいのか悩みながらその手を握ってみると、優しく指で手の甲を撫でられた。
「鈴木さんは何も悪くないですよ……?」
手を広げ指を絡ませると鈴木の鼓動はまた早まった。
「……村瀬さん、あんまりこういう事しない方がいい……」
「どうしてですか……?」
「どうしてもこうしても……こんな風に煽られちゃ……」
酔いの回っている鈴木はそう言いながら手を離すつもりも無いまま視線を落とした。
「私も一日煽られちゃったんですもん……」
「……じゃあもう、いっか……」
鈴木はフラミーと繋いだ手をそのままに顔を寄せた。
その口から出た声はまるで空気を吐くように小さかかった。
「村瀬さん、俺と付き合っちゃいませんか……」
内緒話。吐息が掛かる距離で瞳を覗き込むと、恥ずかしそうに逸らされた。
(……流石にダメか……)
言って損したと思ったが、今のは酔った勢いとして忘れて処理してもらえる筈だ。
逃げ道はまだある。
それに言ってみただけ勇気があるだろう、自分をよく褒めてやった。
鈴木は申し訳なさそうに顔を離しかけると手をギュッと握られた。
「あの……酔ってますよね……?酔った勢い……?」
退路を断たれ、なんと答えるべきか悩む。
「……酔ってるだけなら、やです……」
手から力が抜けていき、離れてしまうと思った所で鈴木は覚悟を決めた。
ギルドマスターとしてかなりマズイ気がするが。
「本気で……俺と付き合って下さい……」
ふざけていない真っ直ぐな言葉を送るとフラミーは小さくうなずいた。
「付き合ってみちゃいます」
「……はは。まじか……」
鈴木はこれはずいぶん都合のいい夢だなと笑い、空いてる手で目の前の顔を撫でた。
もうキスしたくて堪らない。と脳が沸騰していく。
付き合って初日、いや、数分でキスなんて──ダメだ、多分。
不純だ。
そんなことを思いつつ、目を閉じながら顔を寄せると、ッンとフラミーは息を止め、唇が重なった。
どんどん頭に血がのぼり、考え直す。
(これはマズイ……。まずすぎる……)
自分の体験した事のない柔らかさに悶絶しながら、想像したこともない程に高鳴る胸は痛み──大変忙しい。
忙しすぎる。
柔らかさを何度も確かめると鈴木は顔を離した。
「……フラミーさん……すみません……」
「あ……あぅ……」
童貞は謝るとさっと顔と手を離し、どんどん赤くなる顔を覆って寝転がった。
「お、おやすみ」
背中越しに声をかけると、彼女からも小さな声が聞こえた。
「おやすみなさい……」
鈴木はウゥゥゥゥゥと何度も心の中で唸り震えた。
翌日朝
「モモンガお兄ちゃん、時間だよ!モモンガお兄ちゃん!」
「……ん……っは!?」
鈴木は茶釜の声で目覚めた。
ウルベルトは休めないと夜に言っていたが、どうやらもう出かけたようだった。
「茶釜さんのその声とそれ聞くと、魔法撃つタイミングかって焦りますからほんと」
ユグドラシルで茶釜時計を使っている鈴木はしょっちゅうこのセリフを聞いている。
「んん……」
「あ、フラミーさんはまだ──」
顔を覗き込んだ瞬間、昨日の記憶が蘇り顔がボッと火が着いたように熱くなる。
いや、待て。あれは夢だったんじゃないのか。
鈴木は何度も自分に問いかけた。
「フラミーお姉ちゃん!朝だよ!フラミーお姉ちゃん!」
茶釜がフラミーを揺するとフラミーは目を覚ました。
目をこすり──「ぎゃっ!やってしまった!!」
フラミーは自分の手の甲に化粧がついたのを見ると叫んだ。
「あらら、私昨日の夜クレンジング買ってきたから使いな!」
「で、でも落としたら、化粧品ないですし……」
チラリと鈴木を見るとフラミーはさっと視線を外し、自分の顔を隠した。
「そうは言っても化粧伸びたままじゃいられないでしょ」
「茶釜さん、何か持ってないですか?」
「ない」
泊りがけの予定ではなかったので当然だ。
フラミーは茶釜から泣く泣くクレンジングを受け取り立ち上がる。
「あ、給湯器落としてんだった。俺も行きます」
鈴木が立ち上がるとフラミーはヒャッと声を上げ、駆け足で廊下に出て行った。
足はずいぶん良くなったようだ。
「……モモちゃん何かやったの?」
「え、あ、あの、え、っと……その、ああぁ〜〜」
鈴木はしどろもどろだった。
「と、とにかく俺給湯ボタンいれないと!」
鈴木も廊下に出るとパタリと背で扉を閉めた。
昨日のことがどんどん立体的に思い出され、奇跡の感触までもが鈴木の身には蘇った。
顔に温度が集まって行く。
すると、「つめた!」っと洗面所──といってもトイレに併設され、さらにその中のガラス戸の中にスチームバスがあるような代物だが──から声が聞こえると鈴木は悶えるのをやめ急ぎ給湯ボタンを押した。
ピロリンと軽快な、いや、軽薄な音が鳴る。
フラミーは多分タオルだって無いだろう。
鈴木は戸を叩いた。
「フラミーさん、タオル出しますから開けていいですか?」
「っは!あ、あの、その、えっと!!」
ウブな雰囲気に、あまり恋愛経験はないのかなとつい期待してしまう。
「タオル出してあげますから」
「で、でも私、一応ハンカチが……」
「ハンカチなんかじゃ拭ききれませんよ」──多分。
「は、はひぃ」
今のは了承と受け取っていいんだよな、と一度頭の中で考え、鈴木はゆっくり扉を開いた。
中ではびしょびしょの顔で眉尻を下げ、困ったように鈴木を見上げるフラミーがいた。
思わずどきりと胸が高鳴る。
鼓動を止めるためにギュッとそこを掴み、鈴木は顔が紅潮するのを止める。
「す、すぐ出します!!」
鈴木はフラミーから視線を投げるように外し、トイレの横にあるこじんまりとしたタンスを開けた。
なるべく新しくて綺麗なモノを取り出し──これはまさか臭くないよなとじっとタオルを見た。
「あの、モモンガさん……?」
「あっ!す、すみません。どうぞ」
ええいままよ。
鈴木はフラミーにタオルを渡した。
もふもふと顔を拭いていくと、フラミーはふあっと声を漏らし、さっぱりしましたとでも言うように微笑んだ。
(……かわいい……)
部屋からペロロンチーノと茶釜が盛り上がっている声が聞こえる。
鈴木はフラミーの顔に手を伸ばした。
濡れて顔に張り付く髪の毛を取ってやるとフラミーはピクッと肩を竦め、縮こまって鈴木を見上げた。
「あ、すみません。なんか、つい……」
下心満載の男だと思われたくない。いや、下心満載だが。
──待て。そもそも昨日のあれは夢だった説があったじゃないか。
鈴木はさっと背筋が凍った。
あわてて洗面所の扉に手をかけると、フラミーから躊躇うような声が聞こえた。
「あの……昨日の……」
(ゆ、夢じゃなさそうだ……)
夢じゃないが、やっぱり昨日のあれは無しでと言われる可能性がある。
鈴木は決して油断できない状況に困った困ったと無意味に頭をフル回転させる。
何もどうすることもできずにいると、フラミーの言葉は続いた。
「昨日のって……夢ですか……?」
「え?」
鈴木は振り返ると不安そうにするフラミーを見た。
「夢じゃ……ないかと……」
「わ……夢じゃ……ないんだ……」
フラミーは顔をホオズキのように赤くするとタオルで口元を隠し、すこし俯いた。
鈴木はフラミーの細い腕をそっと包むように握った。
「村瀬さん……これってユグドラシルの中だけですか?それともリアルでも継続して良いんですか……?」
「リアルでも……ユグドラシルでも……継続したい……です……」
ぽつぽつと紡がれる望みに鈴木は生きててよかったと思った。
綺麗な瞳はあまりに純粋な色を宿していて、鈴木は触れている事も烏滸がましいように感じた。
そっと腕を離すと、自分の手に想像より汗をかいていた事に気付く。
「鈴木さん、あの……」
「は、はい」
汗かいてすみません。
鈴木の頭には簡潔な文章が浮かぶ。
「私、男の人とのお付き合い、まだ2回目で……何もわからないんです……」
ガンッと頭を殴られたような気分に陥る。
鈴木はこれが初めてだ。
いや、しかし、この人をこれまで誰も好いた事がない方が不自然だ。
こんなに愛らしくて──魅力的で──守りたくて──不思議な人が──放って置かれるわけがない。
「……俺も何もわかんないです……」
なんとか言葉を絞り出すとフラミーはなぜか苦笑した。
何もわからない30前後なんて気色悪かったかと苦笑の正体に気付くと途端に恥ずかしくなった。
言わなければよかったと即座に後悔する。
「あ、あ──でも、まぁ、ちょっとはありますよ……うん……」
つい見栄を張った。
フラミーはやはり複雑そうに笑っていた。
「私、ちゅーも……昨日がまだ何回か目でした……。鈴木さんについていけるかな……」
鈴木は何回か目って何回目ですかと何度も心の中で問いかける。
付き合ってたった数時間。
鈴木はもう一度フラミーの腕を包むように握ると、フラミーに一歩近付いた。
目が潤んでいく様子を少しだけ眺めながら、鈴木は震えそうになる唇と手を必死に止め、二度目のキスをした。
唇がふわりと触れる。
フラミーの唇はぷるぷると震え続けていた。
思春期の子供たちのはじめてのキスのようだった。
鈴木は唇を離しながら、(これで……二回……)とカウントした。
「っぷはっ!」
フラミーが息を吐き、数度大きく吸うと、鈴木は思わずプッと笑った。
自分も思わず息を止めていたことに気付いたのだ。
「っあ、は、恥ずかしい……」
フラミーは辛そうな顔をして鈴木を見た。
「はは。いや、恥ずかしくなんてないですよ」
鈴木は焦りかけたが、ゆっくりと進んでいこうと決めた。
最初の人にはなれなかったようだがきっと最後の人になろうと。
鈴木はこっそりズボンで汗をかいた手のひらを拭いてからフラミーの手を取ると洗面所の扉を開けた。
するとガチャン!と玄関が開き──「手帳忘れた!!」と叫ぶウルベルトがいた。
ウルベルトは鈴木とフラミーの繋がれた手を見ると乱暴に靴を脱ぎ、手刀を振り下ろした。
「何やってんだモモンガさん!!」
「っあ!」「わっ!」
「ウルベルトさん!?なんですか!?」
「何ですかじゃない!フラミー嫌なら嫌だって振り払って良いんだぞ!!」
途端に騒がしくなる廊下に姉弟は顔をのぞかせた。
「何々ー?ウルベルトさん、モモンガさんとフラミーさん気になりすぎて帰ってきたの?」
「やだねぇせせこましい」
「うるせー!今モモンガさん、フラミーの手ェ握ってたんですよ!?あんたらちゃんと監視してて下さいよ!!」
全くもうと怒るとウルベルトはフラミーを見た。
「フラミー、お前そういうの苦手だろ?俺が代わりに嫌だって伝えてやろうか?」
「あ、あの……私……」
うんうんと頷いていると、フラミーの口から出た言葉をウルベルトは聞き取れなかった。
いや、聞きたくなかったので脳が拒絶したのだ。
「な、なんだって……?」
「私、今日から鈴木さんとお付き合いすることになりました!」
フラミーは嬉しそうに笑った。
「はー、それで、あの二人はああなったわけか」
「なるほどですね」
弐式炎雷とぷにっと萌えはべったり一緒にいるモモンガとフラミーを見た。
「ああぁぁ……何でだよぉ……」
アバターの頭を掻き毟るウルベルトを見るとぷにっとはログアウトしたらこの人は禿げるんじゃないかと思った。
「まぁ、仕方ありませんね。戦略ミスです。ここは昼間のデートにいち早く誘い出したモモンガさんの計算勝ちですよ」
「あぁー!!ぷにっとさん、何で俺に昼がいいって教えてくんなかったんすかー!!」
「……いや、そもそも貴方がフラミー女史を誘っていたことも今知りましたから……」
「ハッハッハ!偲んでこそ恋!いいじゃないか!」
「良くない……」
ウルベルトはガクリと肩を落とし、代わりもしない互いのアバターの顔を幸せそうに見つめ合う二人を眺め、深い溜息を吐いた。
勢いだけはあった…!
その後リアル→転移でえっちしたいねぇと言う話から↓
すぐえっちさせたくなるじゃん( ;∀;)
絵文字会話に肉付けしただけ説!
R18
+
腰を近付けると、フラミーは痛みに奥歯を噛み締めた。
「っあっっぅぅ…ヤァ!」
アインズは逃げて引けて行く腰を申し訳なさそうに掴むとさらに腰を寄せ肉棒を収めた。
痛みに浅い呼吸を続けるフラミーの頭を何度も撫でた。
慣れるまでこのまま暫く待ってやる。
「二度もフラミーさんの始めて貰えるなんて…俺本当に幸せだ…。」
柔らかな唇を何度も触れさせ、十分な時が流れるのを待った。
痛みが治り出した様子に微笑む。
「フラミーさん、平気…?」
「ちょっと…へいき…。」
涙目のフラミーはあまり平気そうではなかった。
痛みを忘れられるように竿を優しく包み刺激してやると、戸惑いの視線を向けられた。
「こうした方が良さそうだからね、大丈夫。俺に任せて…。」
「っふぁい…。」
手で送る刺激に合わせ内部が脈動すると、アインズのモノに我慢の限界が訪れ始める。
しかし、アインズは辛抱強くフラミーへ手で刺激を送った。
「っはっ…で、でたぅ!!」
貫かれながら男としての絶頂を迎えたフラミーを見届けると、アインズはようやく僅かに動いた。
痛まぬようにあまり大きな動きや早い動きは控える。
小刻みにフラミーをゆっくりと揺すると、この体での挿入は初めてだと言うのに、リアルで交わった時と同じ反応を見せた。
「っあ……っえ……?はぁ…っん…。」
これまでよく指で内部に快感を覚えさせ直した甲斐がある。
しかし、内部が窮屈になればなるほど、じっくりしてあげなければいけない事を忘れそうになった。
「フラミー、っさん…ちょっと、もう少し…ゆるめてっ…!」
「むりれすぅ!」
アインズはもうこっちも無理だよと眉間にしわを寄せ――口角を上げた。
丁寧に刺激を送り、初めてだということも忘れて、まるでリアルで繋がっていた頃のようにアインズは求めた。
くちゅ、ぶちゅ、と血混じりの粘液が音を立てる。
二人の吐息と喘ぎが混じり出すと、アインズは一層フラミーに身を寄せた。
小さな唇をついばみ動きをエスカレートさせると、フラミーは首を左右に振った。
「あっあっ、なかっ中だめぇ!赤ちゃ…できちゃう」
「俺は…出来て欲しいっ」
擦ったり押し付けたりして行くと、フラミーは口を開けたまま熱い吐息を吐き出した。
「ねぇ…フラミーさん…妊娠してください…!」
「えっあっあん…そんなぁ…」
逃がすつもりもなかったが、フラミーは逃げなかった。
小さな体を抱きしめると、抱き締め返され、密着する。
「だ、出すよっ…!!」
限界を迎えると腹に力を込め、身を丸まらせるように吐き出した。
「っぅ……はぁ…。」
生で中に出す快感にアインズは言葉を失った。
ポタリと自分の鼻先からフラミーに汗が垂れると、慌てて垂れた先と、自分の顔を乱暴に拭った。
「ご、ごめ――」
「…なか…変な感じ…」
そう言って己の下腹部に触れるフラミーは妙に艶めかしかった。
「――ッ。」
静かに腰を動かすと、引き抜かれると思った様子のフラミーはアインズの腰に絡めていた足を解いた。
しかし、抜かずに戻る。
「ん…?」
「す、すみません…」
「えっ?あのっ」
「すみません!!!」
アインズは再びピストンを始めた。
新しい液体が加わったことで信じられないような音が立ち、真空状態の内部は引き下がるアインズのモノを吸い上げるように包み込んだ。
奥に返せばぶじゅっと水音が鳴り、掻き出されるように白い液体がこぼれた。
何度も何度もそうすると再びアインズは白濁を放った。