「はぁ……ふぅ……。許して……ないんずとこの世界を……」
聞こえているのか聞こえていないのかフラミーは再びそう言った。
「あぁ……俺は……俺は……!!っなんて事をぉおお!!」
鎮静され、知らない瓦礫の街でフラミーを抱いて蹲るように崩れた。
「っうぅっ……うぁ……おれは……おれはぁ……」
すると、近くにアンデッドの反応が現れたのをアインズは感じた。
フラミーを危険に晒してはいけない。アインズはどんどん近付いて来るその反応の方をギッと睨み付けた。
「フラミーさん!!──な……!」
「な……!?」
向こうから来たのは確かに自分だった。
そして守護者達。
「「はっ!マーレ!!フラミーさんを回復しろ!!」」
二人のアインズは同時に同じことを言うと、マーレは一も二もなくフラミーに回復魔法を送った。
「っんぅ……はぁ……さ、悟さん……。はは、ありがと。私もう死んだかと思った」
「──クゥ、クズがぁああぁああああ!!この俺の!!もっ、最も大切なフラミーさんを傷付けやがってぇぇえええ!!糞がぁああぁあ!!許せるものかぁあああ!!」
「っひぅ!ご、ごめんなさ──あれ?あっちもこっちも悟さん……?」
フラミーは数度瞬き、交互に骸骨を見た。
「フラミーさん、あれは……」
「アインズさんがたくさん……?」
「──お前達!こっちに来てフラミーさんを守れ!!」
守護者は戸惑い、楽な格好をしているアインズに確認を取るような視線を送った。
「「そいつは偽物だ!!」」
二人は杖を突き付けあったままに叫んだ。
「……しかし……父上、どちらも父上の気配を……」
「外では父上と呼ぶんじゃない!」
「は?では……あいんず様?」
「いや、父上でいいと言っているだろう」
「父上……?恐れ入ります?」
パンドラズ・アクターとのやり取りを聞きながら、フラミーは自分を抱き寄せるアインズの、杖を握る右手の薬指にギルドの指輪を見つけた。
左手の薬指を確認すると、そこは空席。
父上でいいと言っているアインズの左手薬指にはギルドの指輪。そしてドラウディロンの腕輪。
フラミーは自分を抱き寄せるアインズを見上げた。
二人しか知らない話を語ったアインズを。
「フラミーさん!早くこっちに!!」
「アインズさん、でも──!」
フラミーが何かを言おうとすると、パンドラズ・アクターは弐式炎雷に姿を変え掻っ攫うようにその身を取り上げた。
「パンドラズ・アクター!!なにを!!」
「父上!!」
「<
「っく!!フラミーさん!!」
「アインズさん!!」
フラミーに食らわされた<
「やっと来てくれたギルメンを!!手放してたまるかあぁああ!!」
「何なんだこいつ!?」
「<
「お前達!あれを取り押さえろ!!」
守護者は迷った。確かに支配者の気配を漂わせる存在を前にそうする事が正しいのか分からずに。
しかし、「フラミーさんに危険が及ぶ!!」その言葉を聞いたデミウルゴスは向かって来る戦士の前に立ち塞がった。
「悪魔の諸相: 鋭利な断爪!!」
すぐに二人は肉薄し激突しあった。
「っやめて!!アインズさん!!デミウルゴスさん!!」
剣の煌めきが無数に起こり、デミウルゴスの長く伸びた爪ではじき返した。
「デミウルゴス!!邪魔をするな!!」
「アインズ様!!落ち着かれてください!!」
「王都の再現じゃないんだぞ!!」
「王都!?とにかく、このままでは私たちは敵同士として戦うしかありません!!剣をお捨て下さい!!」
「ヤルダバオトごっこはやめろ!!」
ゴガン、という肉があげるとは思えない音と共にデミウルゴスは大きく吹き飛ばされた。
荒廃した石畳の上をゴロゴロと転がっていく。
「っつぅ……!アインズ様!!」
戦士化しているアインズがガツンと音を立てて剣を突き立てる。
「デミウルゴス……頼む、お前を傷付けさせないでくれ……。シャルティアの時みたいな事はもう嫌なんだ……。ウルベルトさんの為にも……」
アインズは戦士化を解き、再び杖を取り出した。
パンドラズ・アクターに抱えられてじたばたするフラミーをなだめていたアインズはその名を耳にし、謎の存在を信じられないものを見るような目で見た。
「貴様……聖書にもその名を書くことは許していないというのに……何者なんだ……」
「……貴様こそ何者だ」
フラミーはアインズの腕の中からひゅるりと抜け出した。
「っあ!危ない!!フラミーさん!!」
「モモンガさん!!」
「フラミーさん!!」
激突するように抱き締めあった二人にアインズの不快指数は上限突破するようだった。
「アインズさん!!この人もアインズさん──モモンガさんだよ!!」
「何を!?俺はここにいます!フラミーさん、危ないから、頼むからこっちに、いや、ナザリックに帰ってください!!」
「できません!──モモンガさん!あなた一体どうしたんですか!!」
「ど、どうって……俺は別にどうも──いや、今はそれより偽物を何とかしないと」
「モモンガさん、だめですよ!アインズさんを虐めないで下さい!お願い、一回武器を渡して下さい!」
「で、でも……」
「お願い!大丈夫だから」
戦々恐々としている守護者達の瞳に罪悪感を覚えたアインズはギルドスタッフの贋作をフラミーに渡した。
「……お前には聞かなきゃならん事が山積みだ。しかし、フラミーさんに手を出した罪は誰だろうと決して許されるものではない。最後は必ず殺す」
アインズの冷たい宣言にフラミーは憤るように口を開いた。
「あなたもツアーさんが来た夜にそうしたでしょう、お願いですから……もうやめて下さい……。モモンガさんもユグドラシルで私たちが二人で倒した竜の事、覚えてるんですよ」
「……信じられん……その紛い物は何者なんだ……」
「モモンガさん、あなた玉座の間から出てきてましたけど……」
「……紛い物って何なんだよ……。フラミーさん、俺はアルベドが……えぇと……分かるかな。リ・エスティーゼ王国って言うところに出かけたから、玉座の間で過ごしてたんです」
アルベドは、ずっと一緒だった知恵者二名と目を見合わせた。
「それで、玉座の間を出たら……フラミーさんみたいな人がいるなって……。でも、その翼も髪型も……装備も……違うから……。それに、俺をアインズさんって呼ぶから……。また偽物かと……」
「うん、うん、びっくりしましたね」
「はい……。少し前にナザリックに……あの、勝手にワーカーって奴らを入れたんですけど……」
「うん」
「その時に、アインズによろしくって言われて──」
モモンガからどろりっとドス黒い怒りが湧き出るとアインズは杖を向けた。
「おい!!」
「──っは、い、いや。それで、また俺達の神聖なるナザリックにドブネズミが入り込んだかと」
「神聖なるナザリック……」
今にもどうかなってしまいそうな危うい雰囲気のモモンガの言葉をフラミーは繰り返した。
「すみません、勝手に……ナザリックに……」
「あ、いえ。大丈夫ですよ。私達もナザリックに、ジルクニフさんとか呼びましたし……」
「私達も?俺もジルクニフは呼びましたけど……フラミーさん、ここは……あなたは一体……」
フラミーはここに来てからの夢のような話をおおまかに聞かせた。
「──それでね、あのね……私ね……」
呆然と聞いているモモンガは言い淀むフラミーに先を促した。
「──あいんずさんの子も産んだの」
「……ま、待って下さい。俺は頭がおかしくなったのか?これは……俺の願望?」
「……とにかく私の妻を離せ。お前が私だろうかなんだろうが関係ない」
混乱のモモンガは骨のアインズと、肉体のあるフラミーを交互に見ては頭痛を感じた。
「……じゃあ、アルベドとも?」
「は?──お、お前まさかアルベドと!!」
「あ、いや。当然何もしていないが──いや、少し胸は揉んだけど……」
アインズは呆然とモモンガを、フラミーは苦笑混じりにモモンガを見た。
アルベドの花咲くような顔と、デミウルゴスの眼鏡を押し上げる様子は真逆の感情に彩られていた。
「フラミーさん……こいつはやっぱり俺じゃない……」
「ンンッ!じゃなくて、アルベドは私を愛してると言っているだろう」
アルベドは別の世界の自分もアインズを愛していると知って嬉しそうに頷いた。
「はい!アインズ様!あ、いえ!モモンガ様!私もアインズ様を愛しております!」
「お前は罪悪感はないのか?」
モモンガの問いにアインズは平然と首を振った。
「ない。子作りはせんと百万回言っている」
「ですから、まだ四百九十五回目でございますわ!」
「だから数えるなと言ってるだろうが!」
アルベドはしゅんとした。
「モモンガを愛していると書き換えた事に何も思わない俺がいるのか……」
モモンガも信じられないものを見るような目をアインズに向け呟いた。
「──は?何だそれ」
「──え?タブラさんが書いた設定の最後の文章、書き換えただろう?」
「フラミーさんと玉座に行ってそんな事ができるか!」
アインズは叫ぶと、守護者達の、とくに息子の「フラミー様がいるのにドン引きですよ父上」な視線に耐えきれなくなった。
「──んん。とにかくお前達は先にナザリックに戻りなさい。皆に私とフラミーさんは喧嘩していないと言え。それから、あー……このよく分からない私の事も周知しろ」
「かしこまりました!アインズ様が増えたと伝えておきますわ!」
「……細胞分裂みたいな言い方……」
フラミーは苦笑した。
守護者達はびっくりしたね〜とアインズの開いた
アルベドはアインズが二人なら、片方と子作りさせて貰おうとウキウキだ。
シャルティアもあんな事やこんな事をしたいとよだれを垂らし帰って行った。
デミウルゴスが
「待ちなさい、デミウルゴス。怪我はしてないか?」
「は。なんともございません。モモンガ様は手加減してくださったので」
「すまなかったな、デミウルゴス……」
「いえ。とんでもございません。──しかし、再びフラミー様を傷付けるような真似をすれば、モモンガ様とはいえ容赦いたしません」
デミウルゴスの絶対の忠誠のありかにアインズは骨の顔を緩めた。
モモンガもうなずいた。
「私はお前と言う部下がいることを何より嬉しく思う。さぁ、行け」
「は!」
デミウルゴスも
「……どうした、行かないか」
「いえ、父上。また戦闘になってはいけません」
「大丈夫だから、お前もナザリックに戻りなさい」
「……しかし、フラミー様をお守りする者が……」
「安心しろ、私は私相手でも手加減はしない。俺達の宝に手は出させない」
「……は」
パンドラズ・アクターは頭を下げ、今度こそ
静かな沈黙都市で、アインズはやれやれと崩れた壁の残骸に腰掛けた。
「さぁ、お前のことを詳しく聞かせろ。まったくタブラさんの大切な娘に何やったんだか」
フラミーもアインズの隣に座り、モモンガを見上げた。
「……俺はあの転移の日、一人で玉座に──」
モモンガの話す世界征服を聞く二人は一々驚嘆した。
そして所々、似たような話を聞いてはこっちはこうだったよと話した。
「……俺は、フラミーさんもいなくて一人で聖王国行ったんだよ……」
「そうか、あれはキツかったもんなぁ」
アインズは分かる分かると頷きちらりとフラミーを確認した。
「フラミーさんそう言えばまた髪伸びてきましたね。帰ったら切りますか?」
「切りまぁす」
フラミーは嬉しそうに笑った。
「…………なのにお前はフラミーさんと楽しく聖王国攻略!!前髪切ってあげた!?お前は本当に俺か!?」
うおおっと唸るモモンガにアインズは可哀想なものを見るような目を向けた。
「それにしても、シャルティアが
「ふらみーさぁん……」
「おいで」
「え」「え」
モモンガもアインズも硬直した。
「おいではしなくて良いですよ。そこまでしてやる義理はないですし」
「あ、あーえっと、フラミーさん。俺は、その、なんと言いますか……」
骨から恥ずかしいような照れ臭いような汗がぴぴぴと飛んだ。
「よしよししてあげますよ?好きでしょ」
「え?そ、そうなの?俺、よしよしなんて、ははは。母さんにして貰って以来だからな」
「おいで」
魔王ルックの骨は瓦礫に座るフラミーの隣にちょこりと座った。
「よしよし、よしよし。モモンガさんはいい子ですね。大変でしたね。えらい、えらい」
フラミーに撫でられながら、モモンガは恥ずかしそうに小さくなった。
「はは、な、なるほど。いやぁ……はは」
「一人で支配者なんて大変でしたね。ここにいれば寂しくないですよ」
アインズはモモンガを撫でるフラミーを引っ張り抱き寄せると威嚇するようにモモンガを見た。
「お前は帰れ。向こうの守護者がお前を待ってるだろう」
「……そうは言っても帰り方も分からん。しばらくはここにいる。フラミーさんもいるし」
ギルメン一人は全てのNPCに勝る。
モモンガのフラミーを見る目は危なかった。
「とにかくそろそろ一回ナザリックに帰ります?」
「……そうですね。ナインズも心配ですし」
「……俺の息子かぁ」
「お前の息子ではない。俺の息子だ」
「つまり俺の息子だ。パンドラも俺の息子だし」
「<
「「は〜い」」
アインズとモモンガは子供のように返事をしてフラミーと共にナザリックに帰った。
続く?
ギャグ時空にしたいんだけどなぁ!