ウルベルトさんが一部界隈で人気なせいでウルベルトさんルート、見事二つ目。
びっくり!!!
本編272 #82 外伝 大災厄の魔 からの分岐です。
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ウルベルト分岐物語#1好き
フラミーの語る「恵まれた私」の生活はどん底だった。
「…お前、人生諦めてんだろ。」
「そんな事ないですよ。いつか可愛いお嫁さんになって、二つくらい、ちょっと重なっててもお布団を敷けるような広いお家で、一人でも子供を産んで…家族に囲まれて…それで…たまに外食したりしたいですもん。」
「そんな当たり前の事を――!!」ウルベルトが苛立ち叫ぶと、フラミーのアバターは無表情のまま肩を揺らした。流石のウルベルトの家も布団二枚くらいは敷ける。
そんな当たり前の事を夢として語らせる社会への怒りはウルベルトの胸を焼いた。
「師匠、あの…怒んないでください。」
「馬鹿野郎が。」
ウルベルトはそう吐き捨て、しばらく黙って歩いた。
波打つ美しい草原を行きながら、
「…フラミー。」
「はひ。」
見上げてくるフラミーは微笑んでいた。このアバターは常に微笑みに設定してある。
「お前の夢、俺が叶えるって言ったら笑うか。」
フラミーのアバターは何も言わずにウルベルトを見上げていた。プログラム通り、規則的に瞬きする瞳を覗き込んだが、何も感情は読み取れなかった。
「…フラミー。なんとか言ってくれないと…。」
「あっ、あの、広いお家くれるんですか…?」
ウルベルトはちがーう!と心の中で叫び、わしわしと頭を掻いた。
「家くれる奴なんかいるか!!」
「あ!そ、そうですよね!解ってますよ!うんうん!」
両手をグーに握り何度も頷き頭を振る様子にため息をついた。
「良いか、お前のその夢は全部俺が叶えてやる。お前の望む全てをお前の下に運ぶって誓う。だから、フラミー…俺に任せるって言ってくれ。」
フラミーの戸惑いがアバターの向こうの息遣いから手に取るように伝わってきた。
「…あの、ウルベルトさん。私、人に同情してもらうほど自分を可哀想だなんて思ってません。」
フラミーは師匠と呼ばなかった。
「フラミー、違う。そんな偽善で俺が人助けなんかすると思うのか?たっちじゃあるまいし…。」
「わかんないです…。ウルベルトさんは優しいから…。」
「……お前の夢全部叶えるって言ってんだよ、俺は。そのお前のいう可愛いお嫁さんって奴と、布団二つ敷ける広い家って奴と、たまの外食って奴と――え、えっと、子供一人って奴…。全部。子供は二人だって良い。外食だって、たまにじゃなくて毎週だって連れて行くよ。こんな事同情なんかで言えやしない。」
「待って…待ってください…。お願い。おちょくってるだけなら、もう絶対にそんな事言わないで。」
「フラミー!手に入りそうなものを自分から手放そうとするな!!」
そう言うと、周りを歩くモンスター達がウルベルトの大声に反応を示し、向かってきた。
「ッチィ!大事な話ししてるっつぅのに!!失せろ!!<
ウルベルトの火力で降り注いだ隕石は並の
「<
魔物が倒れ、ウルベルトが振り返ると、そこには誰もいなかった。
「――フラミー!?あぁ!もう!!<
ぷつりと切れてしまうそれはログアウトしているか受信しないと設定しているかのどちらかだ。
コンソールを開き、落ちていないことを確認するとマークしている
フラミーが落ちてしまう前に急いで。
七色に輝く門をくぐり、自分の世界に戻って来ると再び転移魔法を唱えた。
「<
途端に視界は円卓の間、そしてモモンガ、ヘロヘロ、フラミーの姿を映した。
「ありがとうございます。俺大事にしますよ。」
「えへ?大事にって、モモンガさん。それちゃんと売って足しにするんですよ!」
「はは。大事に売ります。」
「なんですかぁそれ。ははは――あ、ウルベルトさん。」
「あ、ウルベルトさんお疲れ様です。」
「ん、お疲れ様っす。ヘロヘロさんも。」
「ど、どうも〜。」
ヘロヘロはウルベルトのマックス不機嫌オーラを前に、フラミーにも仕事の愚痴を聞いてもらおうと思っていたのをやめた。
「フラミー、俺の言い方が悪かったならもう一回だけチャンスをくれ。」
「はは、やだなぁ。ウルベルトさんおかしいですよ。今日は私もう落ちますし、ウルベルトさんも――」
「フラミー!!頼むから…。」
何やら様子のおかしい二人をモモンガとヘロヘロは交互に見た。
「フラミー、本当に同情とかじゃなくて、俺、お前のこと気に入って――」そこまで言いかけ、ウルベルトは首を振った。「いや…好きなんだよ。だから、お前の夢も全部叶えたい。お前のためにじゃなくて、俺のためにお前の夢を叶えたい。」
モモンガとヘロヘロはパカリと口を開けた。
「ウルベルトさん、本当にやだ…勢いだけでそう言うこと言うのやめて下さいってば。」
「フラミー、聞けって。」
フラミーの二の腕を両手で掴み、至近距離で瞳を覗き込むと、ウルベルトの画面には黄色い三角の中にエクスクラメーションマークが大きく表示された。運営からの警告だ。
モモンガはそれを見ると立ち上がった。
「う、ウルベルトさん、そんな風に触れたらアカウントが…!」
「モモンガさん、解ってるよ。なぁフラミー、お前が俺なんて無理だって言うならそれで諦める。おかしな事を言った事も謝る。だけど、お前が俺の言葉を疑って、俺の気持ちを疑って…それで話を聞かないって言うなら俺は引かない。」
ウルベルトの画面の警告表示がカウントダウンを始めるとウルベルトは心の中で舌打ちした。
「フラミー。俺は本気だよ。ちゃんと聞いて。」
「ウルベルトさん…解りましたから、ちゃんと聞きますから、離して…アカウント凍結されちゃう…。」
ウルベルトが腕を離すとモモンガもヘロヘロも、フラミーも皆が目に見えて安堵した。
「ありがとう、脅してごめん。」
「…そう思うなら二度としないでください。」
「はは、解った。じゃ、仕切り直し。」
カラリとした声音にモモンガもヘロヘロもハラハラさせんなと内心悪態をついた。
「フラミー、俺はお前が好きなんだよ。お前がもし俺の手を取って、俺に賭けてみても良いって言ってくれるなら、すぐに迎えに行くよ。俺の部屋は布団なんか普通に二つ敷けるからさ。」
ウルベルトが落ち着いた調子で言うとフラミーは躊躇うようにウルベルトを見上げた。
モモンガとヘロヘロも躊躇うようにウルベルトを確認した。この男は告白してるのかと思いきやいきなり迎えに行って布団を敷けるなんて、なんちゅう事を言っているんだと。ヤル気満々やんけと二人は小さなブーイングを送った。
しかし、フラミーの返事を聞くと静かにした。
「あの…私荷物すごく多いですよ…?」
「入りきらないなら引っ越すよ。その時は二人で家探ししよう。」
「むぅ…付き合ってもないのに同棲誘うんですか…?暮らしてみて、やっぱり違ったってなるかも…。」
骨とスライムは何度も頷く。
「お前が納得するまで付き合ってから同棲だって良いよ。俺はこう見えて紳士だからな。でも、あんまり環境の悪いところで暮らしてんなら、ひとまず俺がそっちで暮らすからお前は俺の部屋で暮らしてくれ。」
「えぇ…何でそこまでしてくれるんですか…。」
フラミーの若干引いたような雰囲気に山羊は少しふてくされた。
「好きだから。何か悪いか。」
「え、えぇ…?うーん…男の人にはちょっと私のお部屋は小さいかも…。」
そこ?と外野は思った。
「どのくらい?」
「三畳間とお風呂とおトイレだから。」
「………やっぱりすぐに引っ越させる。」
「三畳間ってそんなに変ですか?」
「変。皆五畳や六畳はある。俺んちもモモンガさんちも八畳間。」
「は、八畳…?皆で暮らすお部屋だぁ…。お布団四枚は敷ける…。」
「いや、カウンターキッチンもあるから布団は三枚しか敷けないけどな。でも、半分づつにしても四畳はあるから、部屋にカーテン引いてお前と空間分けて暮らしても良いよ。まぁ俺は下心満載だけど。」
モモンガとヘロヘロは二人で揃って汗のアイコンをぴこりんと出した。
「…えっちな人となんて暮らせないです…。」
「馬鹿言うなよ、子供も欲しいならいつかはえっちな事もしないとダメだろ。えっちじゃない奴と暮らしたら子供なんかできないぜ。」
ウルベルトはもういつもの調子だった。モモンガの隣に座り、「ねぇ、モモンガさん。」と言うとモモンガはやはり汗のアイコンを出した。
「…外野から悪いんですけど、同棲とか子供とかは流石に付き合ってからにした方が…。」
「自分もそう思います。ウルベルトさんは少し急ぎすぎでは…?」
「モモンガさん、ヘロヘロさん。俺はこいつに毎日ちゃんとした飯食わせたいんすよ。」
「飯食わせたいなら、まずは食事に誘ってとか、ねぇ?」
ウルベルトはふぅむ、と唸った。
「確かに。ネットで口説くのは正直俺のポリシーに反しますしね。フラミー、飲みに行こう。」
「あの…私、お酒ダメですから…。」
「ん…そうだったな。すぐ寝るんだっけか…。」
モモンガはウルベルトの肩をポンポン叩いた。
「……ウルベルトさん、お茶くらいにしておいて。」
「おちゃ?あ、お茶か。お茶ならお前口説かれに来る?」
フラミーはもじもじと不安そうにした。
「あの…モモンガさんとヘロヘロさんもいるなら…。」
「…口説こうって言ってるのにモモンガさん達いたら気になるじゃん…。」
「いや、フラミーさんが身の危険を感じるのも仕方ない事ですよ。あんなこと言われた後じゃ持ち帰られそうじゃないですか。俺は行きますよ。」
「うんうん。ギルド長の言う通り誘拐されそう。俺も行きますよ。フラミーさん。」
「だってさ。フラミー、来れる?」
「そ、それなら…行きます…。」
ウルベルトはガッツポーズを決めた。
「じゃ、明日。」
「「あした!?」」
明日は平日だ。二人は目が飛び出るかと思った。
「明日、仕事終わりに、八時とかどうかな。」
「多分いけます。」
フラミーがそう言うと、ウルベルトはサポート二名に振り返った。
「俺も多分その時間なら空いてるけど…まぁ良いか。ヘロヘロさんは?」
「多分行けます。じゃあ………明日?」
「よし、明日な。場所はフラミーの出やすい所でいいよ。どこがいい?」
「うーん…それならこないだ皆さんがオフ会してたって言ってた所で…。」
「あそこな。あそこ居酒屋だけど――まぁ、お前が酒頼まなければ良いだけか。そしたら、皆仕事後に。」
全てが決まるとフラミーはもう寝ると言って急いで落ちた。
そして三人になった円卓の間はしん…と静まり返った。
静寂を破ったのはモモンガだった。
「……ウルベルトさん、あんな女子の口説き方ありますか。」
「…ちょっと反省してるけど、あいつには嘘も隠し事も一つもしたくなくて…。でも、うちに暮らしたって良いって言うまで指一本触るつもりなんかないのにぃ〜〜。」
ウルベルトは机に突っ伏すとウゥ〜〜〜ンと声を上げた。
「誠実なんだか不誠実なんだか…山羊にならないでくださいよ…。それにしても明日いきなりって何をそんなに焦ってるんですか。」
ウルベルトは口を開きかけ、フラミーの個人情報を言う事にためらい、ぼんやりとした返事を返した。
「……フラミーを守りたくなったら爆発しただけです。ぶっちゃけ外の風にも当てたくない…。」
「うわ、なんか一番危なそうな奴だ。ヘロヘロさん、明日は何が何でも早上がりしましょう。」
「そうですね…早出して仕事片付けます。と言うわけで俺ももう寝ます。モモンガさん、明日は頑張りましょう。」
ヘロヘロはモモンガと頷き合った。
「いや、でも本当に俺は紳士ですから、二人が来なくてフラミーとお茶してもちゃんと家まで送り届けて――」
「それが恐いんだって!!俺ももう寝ますよ、また明日、八時に。」
「「八時に。」」
三人は落ちた。
現実の世界へ戻った悪魔は首の後ろからコネクターをブツッと抜くとしばらくそれを見つめた。
「……俺、やればできるじゃん…。」
頑張った!!
しかし、フラミーさんの塀は高い!!!!