「モモンガさんって、フラミーの事好きなの?」
モモンガはウルベルトの唐突な質問に数度瞬いた。
「え?なんですか?いきなり。」
「いや…今までそんな事思った事なかったけど、他のギルメン女子とフラミーの扱い、随分違う気がして。」
「あー…うーん?」
にぶちん男はしばし考える。
一人引退してしまったが、楽しい仲間達がたくさんいるギルドの一員のフラミー。どことなく感性の似ているフラミー。親友が好きだと公言して憚らないフラミー。何となく癒しのフラミー。お互いの生い立ちを話したり、時には慰めあったりするフラミー。信頼しているし、信頼されている事が伝わってくるフラミー。
モモンガは考えれば考えるほどに、良くない着地を迎えそうで口に手を当てた。
「ふーむ…。」
「どうなんすか?」
「…いやぁ、俺そう言うのよく分からないんですよね。」
モモンガはハハハと軽く笑った。
いつもは一緒に笑うウルベルトは笑わなかった。
「…モモンガさん、俺モモンガさんと不仲になるのは望むところじゃないんです。だけど、こればっかりは恨みっこなしで行きましょう。」
「…そう、ですね。いや。俺はウルベルトさん応援してますよ。」
モモンガは少しも家族を知らないというフラミーをぼんやりと眺めた。
「――フラミーさん、ウルベルトさんといたらNPC作れるかもな。」
「NPC?そう言えばなんであいつちっとも作らないんすか?何かデミウルゴス作ってる時に聞きに来たりもしたけど。」
「あの人にも欲しいもの作ればいいっていつもの言ったんですけどね、"家族が欲しいけど、家族がどんなものかわからなくて作れない"って言ったんです。どうしても設定が書けないみたいで…。俺は待つことにしたけど、ウルベルトさんなら家族が何なのか、フラミーさんに教えてあげられるのかもしれないですね。」
「…そんな事があったのか…。」
ウルベルトはモモンガに背をトンと押されると、一度モモンガを振り返り――その顔が笑っているのを見ると若干照れ臭そうにしてから皿を拭いているフラミーと茶釜の下へ行った。
「ウルベルトさん、モモちゃんと内緒話?」
「あぁ。内緒話。――なぁフラミー。」
「ほい!なんです?」
「家族作ろうな。一から教えてやるから。」
茶釜は拭いていた箸を落とした。モモンガはそこはNPCと言った方がと少し笑った。そして、正面突破の様子になんとも羨ましさを感じる。
「っだぁああぁあ!!ウルベルトさん!!少しはその下心しまってよ!!」
「いや、普段は多大なる下心があるけど、今俺のジョニーは落ち着いてる。これはジョニーの呼び掛けじゃない。」
「ジョニー誰!!」
「茶釜さんのアバターだよ。」
理解した茶釜は落とした箸を拾うと自分の頭をわしわしかいた。
「あーもー本当に!」
「茶釜さんのアバター?スライムのジョニー?」
「フラミーは一生ジョニーも茶釜さんのアバターの正体も知らなくて良いよ。あ、一生はだめだな。もう少し時が経つまではにしとくか。」
ウルベルトは皿を拭くフラミーを楽しげに観察した。
「え!私子供じゃないですよ!もう!」
「知ってるさ。お前のこと女だって思ってるよ。」
フラミーは皿で半分顔を隠した。
「…ねぇウルベルトさん。家族作るのも、一緒に暮らすのも、とっても大変だと思います。」
「あぁ、そうだろうな。頑張ろうな。」
茶釜はこいつの精神は鋼――いや、七色鉱で出来てるのかと思った。
「ウルベルトさん。私達、例えば同棲とか、結婚とか、そう言うの全部なしで付き合うことってできないんですか…?」
ウルベルトは何を言われているのかと数度瞬いた。瞳の奥に映りかけてしまう困惑と消沈を読み取らせないようにする。
同棲も結婚もできないのでは何の意味もない。今を面白おかしく付き合ってさよならするだけの関係では、フラミーの夢は一つも叶わない。それではだめだった。
茶釜はふんふんと頷いた。
「ま、そうだよねぇ。ウルベルトさんさぁ、前に一緒に暮らしてた彼女もそう言って口説いたわけ?女子口説く時はうちに来いって言う派?」
茶釜のその言葉を聞くとモモンガの眉はぴくりと動いた。フラミーはよく分かっていないのか首を傾げた。
「は?前に暮らしてた彼女?なんのこっちゃ。」
ウルベルトも唐突に何の話だと首を傾げた。
「男の一人暮らしだと思ったら、お揃いのお箸が二膳、カトラリーも二組、お皿も二枚組、歯ブラシも二本、まるっきりウルベルトさんの趣味じゃないバスタオルも何枚かあるし、まさか今もここに誰か暮らしちゃいないでしょうねぇ?別に同棲経験あるくらい何も悪いことじゃないけど、うちのフララとその相手を同時進行するのだけはやめてよね。」
茶釜はたまにこうしてフラミーを妹のように扱う。ウルベルトは茶釜から敵意を感じた。
「茶釜さん、言っていいことと悪い事があるぜ。俺は人生賭けてるって言ったろ。それにここで暮らしてた奴は――」
「フラミーさん。」
困り顔でいたフラミーはモモンガを見上げた。
「は、はひ…。」
「少し外行こう。ウルベルトさんは茶釜さんと話がある。」
「あの、でも私は――」
「大丈夫。終わった頃に戻って来ましょう。」
モモンガはフラミーの手を引いて外に行こうとすると、フラミーの体はガクンと止まった。
「待ってくれ、モモンガさん。分かるだろ。俺はそんなじゃないって。」
ウルベルトがフラミーの手を取ると、モモンガは優しい顔で振り返った。
「分かってますよ。二股かけたりするくらいならもう片方と別れるだろうって。でも、そう見えかねない過去のものは整理した方がいい。フラミーさんが不安に思うだろう。」優しげな顔に似合わず、声はまるで魔王のようだった。「――ウルベルトさん、俺達は片付けと話が終わるまで外で過ごすから。離してくださいよ。」
「モモンガさん…あんた分からないなんて言ってたけどやっぱり――…いや、確かに状況だけは言われてみればそう見えなくもないけど、全部男のもんなんだよ。」
茶釜はそれを聞いて数秒固まった。
「…おとこ?なんでまた。」
「…なんでだって良いだろ。」
「そりゃなんでだって良いけど、ちょっとそれ苦しくない?」
「…あの、私はそんな事を言いたかったんじゃないんです。だから、別に気にしないですし…皆さんも気にしないで下さい…本当に…。」
ウルベルトはフラミーの心が閉じられて行くのを目の当たりにしているように思えて、小さな手をギゥと握った。
朝焼けに照らされていた時に弱々しく握り返されていた手を思い出すとやるせなかった。
「…茶釜さん、フラミー…本当にどれもこれも全部俺の部下の持ち物だよ。」
「…部下って、もしかしてさっき電話してたコンシェルジュ・日下部?」
「そう。コンシェルジュではないけど。日下部は事務所から近い俺ん家に泊まる事があるから何でも置かせてんの。」
「たまに泊まるだけの人のタオル何枚も置くかねぇ。」
茶釜の疑うような視線にウルベルトはため息をついた。
「…すまん、五分くれ。」
茶釜はやれやれと腰に手をあて、モモンガはフラミーの手を離さなかった。
「フラミーも頼む。説明するために五分欲しい…。」
「あのぅ…そんな、説明なんてしてもらわなくっても私気にしませんよ…?」
「いや、俺がそうしたいんだよ…だから頼む。どうか…。」
フラミーは少し目を泳がせてからコクリと頷いた。
ウルベルトはそれを見た瞬間急いで携帯を取り出し、日下部に電話した。数度のコール音が鳴る間、時間が粘度を持つように長く感じた。
『はい?宇留部さん今度はなんですか?俺今出かけてて――』
「――日下部!お前と俺が会った頃の事を少し俺の友人に話したい…。」
『えぇ…なんでまたそんなもん…。』
「…なんちゅーかあらぬ疑いをかけられてる…お前がややこしい存在なせいで…。でも、お前が話して良いって言ってくれなきゃ俺はお前の事何も喋れないんだよ。」
『……なんか焦っちゃって先生らしくないですね…。いっすよ。別に。でもあんまり細かくはやめてください。』
「…助かる。四日来ないで良いぞ、有給やるよ。」
『え!社長ありがとうございます!どうぞ何でも話してください!』
現金なやつ。ウルベルトは電話を切るとため息をついた。
日下部から許可は貰ったが――「皆に日下部の事を説明することはできない。だけど、フラミー。お前にだけは話すから…来てくれないか…。」
フラミーは困ったように笑った。
「そんなに大切そうな事…無理に話してもらわなくっても…。それに、私が言いたかったのはそんな事じゃないんです…。」
「…それでも弁明したい…。日下部にも許可もらったから。頼む、来てくれ。」
フラミーの手を軽く引くと、フラミーはモモンガと繋いでいた手を離した。
「ごめん、モモンガさん。」
「恨みっこなしって協定はウルベルトさんがフラミーさんに誠実だった場合だけですよ。」
「わかってます。」
ウルベルトは玄関にかけてあるチェスターコートを掴み、フラミーを連れてマンションの廊下に出た。
フラミーが寒そうに息を吐くと、コートを掛けてやりウルベルトは再び屋上を目指した。
無言で登って行き、二人でチェーンを跨いだ。
たどり着いた屋上はフラミーと初日の出を見たせいか、酷く綺麗な場所に感じた。
「フラミー、俺の部屋には日下部って言う俺の部下が暮らしてた事がある。お前もなんで男がって思うかもしれない。俺は何でも屋みたいな仕事をしてんだけど…日下部は昔、親を探してくれって言って…ガキみたいな顔して大金握りしめてうちの事務所に来たんだ。」
フラミーは軽い相槌を打った。
「それで、二人で探したけど中々日下部の親は見つからなかった。俺も仕事だとか、金貰ってるからとか関係なく、そりゃもう我武者羅に探した。そしたら、日下部の親は見つかった。だけど、もう死んでたんだ。いや、殺されてた。最悪の結末だった。日下部は燃え尽きたみたいに空っぽになっちまって…ほっといたら野垂れ死にしそうで、仕方ないからうちに暫く置いてた。以来うちで雇ってる。今もしょっちゅう泊まりにくるから、全部そのままにしてあるんだよ。」
ウルベルトはフラミーの手を取ったまま片膝を落とした。
「フラミー、嘘じゃないよ…。もし全部女の物だったら、俺の性格なら捨ててるか隠してるって思うだろ…?彼女がいた事がないとは言えないけど、俺はいい加減な男ではないよ。」
フラミーは真剣な顔で頷いた。
「分かってます、ウルベルトさん。私、そんな風な目であなたを見たことなんて、一回もないです…。」
「…ありがと、良かった…。」
恋人は何人かいた。今は何年目かのセカンド童貞を謳歌しているところだ。
一人目の彼女は自分と同じように世界を恨んでいる女だった。気付けば薬に手を出し怪しい連中とつるむようになり、自然消滅。
二人目はウルベルトの「登記上は代表取締役だから」と言う下らない理由で寄って来た女だ。最初はそんな事は知らなかったので付き合ってみたが、アーコロジーの中で暮らそうと三回言われたところで別れた。捨て台詞で寄って来た理由が判明したのだ。
三人目は人恋しさに負けて適当に付き合ってみた。べたべたしない女で居心地は良かったが浮気をされて――いや、ウルベルトが間男側だったと気付いて別れた。
ろくでもなかった。
「じゃあ、次はフラミーの番。どうして同棲も結婚も全部なしで付き合えないのかなんて言うんだ?俺じゃお前の未来に不足か…?試してみてもないってのに…。」
マンションの屋上の剥き出しのコンクリートの床についている膝からしんしんと冷たさが這い上がってきた。ウルベルトは未だ拭えない焦りで、寒いと言うのにおかしな汗をかいていた。
「ウルベルトさん…私、以前小学校卒業する前に孤児院出ることになったってお話ししたじゃないですか。私十歳までに自分が生きるのにかかったお金を返さないといけないんです…。家族作ろうって言ってくれるのは嬉しいけど…私…。考えれば考えるほど、やっぱり、私の夢は夢に過ぎないんだって気付いちゃった。」
これまで相手のいなかった小さな夢は、相手を正確に持つことで砕けていた。深く考えずにずっと憧れていた夢は叶えるには相当な苦労がいるだろう。
ウルベルトは静かに首を振った。
「んなこと…。」
「小学校も途中までだけど行かせてもらって…生かしてもらって…。家族を持たない
アーコロジーの外は空気が悪いせいで、六十歳くらいで肺を壊す為六十には定年する。そして誰しも八十の頃には死ぬ。地球が美しかった頃は超高栄養な液状食料の台頭や医療の発達から平均寿命は百歳まで伸びたが、年々汚くなっていく世界で、寿命は短くなる一方だ。ウルベルトやフラミーはもしかしたら六十で死ぬかもしれない。
ただし、この話には例外もある。何故ならアーコロジーの中の人々は大体百十歳くらいまで生きるのだ。整った環境と発達した医療は平等だったはずの時間を不平等なものにした。アーコロジーの住民はガスマスクをしてアーコロジーの外に出てくる者が多い。もちろん、ガスマスクと言っても鼻と口だけを覆うような簡易的なものだが。
小学校を出るだけで恵まれていると言われる世界で、アーコロジーの外の人々の命のサイクルは早い。
「でも、私、毎日あなたに好きって言ってもらえて嬉しくって…ばかだから、夜明けを見せてくれるあなたの事…――。だけど…だけどだけど…うるべるとさん、わたしやだよぉ。やさしいひとに縋って迷惑かけてなんて、生きれないよぉ。」
フラミーの瞳からポロポロ涙が落ちるとウルベルトは慌てて小さな身をかき抱いた。
「フラミー、解ってる。全部わかってるから…。」
「解ってるなら、勢いや下心だけで家族作ろうなんてもう言わないでよぉ。ばかぁ。」
「ごめん、ごめん…。」
「どうするんですかぁ、こんなの…こんなのぉ…。なんで付き合おうじゃなくて、夢叶えるなんですかぁ。そんな事言われちゃったら、ゴール目指したくなるじゃないですかぁ!だけどあなたの事思えば思うほど、私とゴール目指させるのなんて…耐えらんないよぉ。」
フラミーがぽかりと胸を叩いて静かに泣き始めるとウルベルトは抱きしめる力を強くした。
「フラミー…査定は終わったんだな…。聞かせてくれ。俺のこと、好き?」
フラミーは頷いた。
「すき、すきです…。だから、良かったらあなたが飽きるまで楽しくお付き合いして下さい…。」
「悪い、そりゃだめだ…。」
フラミーはまた少し泣いた。
「うぅ…じゃあ…いつまでも楽しいお友達でいましょうね…。」
「それもだめだ…。」
「そんな…お別れしたくないよぉ…。」
ウルベルトは震えるフラミーを優しく撫でた。人生史上これほどまでに気を付けて人に触れたことなどない。その手はしゃぼん玉も撫でられそうだった。
「お別れなんかしねぇよ。馬鹿だな。フラミー、お前は俺のところで暮らしな。お気に入りの枝も持ってきていいよ。新しい靴下も、大好きな海のポスターも、ちっちゃな布団も、皆持って来い。お前の夢は全部俺が叶えるから。」
「なんでまだそんなこと言ってるの?うるべるとさん話聞いて下さいよぉ。」
「聞いてるよ。だけど、言っただろ。全部解ってるって。居酒屋でお茶した日、行く前に一日かけて俺調べたから。お前がどのくらいの金額抱えてるのかもわかってる。それでも俺はお前と暮らして夢叶えるって言ってるんだよ。お前もちゃんと俺の話聞いて?」
フラミーの抱える債務額は取りすぎだろうと言うくらいの額だった。ウルベルトはギゥと小さな身を抱きしめると、搾取の象徴たるアーコロジーを睨み付けた。
「うるべるとさん…また世界にむかついちゃうよ…。」
「ムカついたとしてもお前がそばにいてくれたら最悪な年にはならないって言ったろ。ずっとそばにいてくれたら、ずっと最悪にならないで済むよ。」
「へんだよ、おかしいよ。ウルベルトさん何も解ってないです。」
「どうして。全く頑固だな。このお姫様は他に何を言って欲しいんだ?」
「だって、何で大変だってわかってる道を選ぼうとするの?」
ウルベルトはきょとんとした後に笑って再び告げた。
「お前のこと、好きだから。」
気持ちなんて変わってしまうかも知れないのに、フラミーの瞳にはそう書かれているようだった。
「俺、きっと死ぬまでお前を好きだと思う。それに、お前が俺に言ったんだろ、努力したら良くなる、上にいけるって。」
フラミーはウルベルトを見上げると小さな生まれたての生き物のようにぷるぷる震えた。
「俺お前の言うこと信じてみるよ。単純すぎるけど、好き同士なんだからやってみようじゃん。お前も俺のこと信じてみてよ。なぁ――村瀬文香。」
二人の上を奇形の鳥がバタバタと飛んで行った。
「わたしのなまえ…どうして…。」
「俺にわかんないこと何てないから――ってのは嘘。安心しな。名前とお前の持ってる債務額しか知らないから。」
「はは、知り過ぎですよぉ。」
「ん、そうか?悪い。ははは。」
「ストーカーが!本当十分知り過ぎでしょ。ウルベルトさんって何者なの?」
「さぁ…さっき便利屋みたいな仕事してるって言ってたけど…。リアルで何やってる人なのか全然知りません…。」
茶釜とモモンガ、ペロロンチーノは階段の影に座って全てを聞いていた。
モモンガは、まぁ良かったかなと思った。フラミーが家族や仲間や友達や、色々なものを手に入れていく姿を見たいから。
「でもさー、最初は無課金童貞だったのに、気付けばワールド・ディザスター取れるくらい強くなって課金もじゃぶじゃぶして、まともな家に暮らしてて…。勝ち組キライとか言ってるけど、ワールド・チャンピオンのたっちさんくらい本当はあの人――」
「たっちの野郎がなんだって?」
三人はギョッとして階段の上へ視線を送ると、仁王立ちしてるワールド・ディザスターがいた。
「ど、どうも〜…。」
「茶釜さんやらかしてくれたな。今回は着地が良かったから許すけど次はまじで許さねぇぞ。」
「すみまちぇん。」
「おい、フラミー!寒いから俺は先に下に行く!」
ウルベルトはすたすたと降りていってしまった。屋上にはウルベルトのコートを肩に掛け、一人よどんだ空を見上げるフラミー。
「…釣った魚に餌やらないタイプ?」
「まさかぁ…。」
一人先に部屋に戻ったウルベルトは玄関にしゃがみ込んで肩を震わせた。
そしてギュッと目元を拭った。
癖のようにスリッパを脱ぎ捨て――共同生活にはマナーが大事だったとちゃんと揃え直した。
ウルベルトは部屋に入ると冷めかけのお茶を一気に飲んだ。
熱いうちは気にならなかったが、冷めてみると、お茶は少し濃かった。日下部の言う通り茶匙一杯で充分だったのかもしれない。
はは、とウルベルトの口からは笑いが漏れた。
「世界を綺麗にする天使が手に入ったな。――じゃ、次は楽園ぶっ壊して神と戦争するか。俺の女神に捧げるために。」
悪魔に魅入られた悪魔は悪魔達を蔑ろにする神に戦争を仕掛けるのかもしれない。
彼らの受難は始まったばかり。
完!!!!!!!!
次回#7おちょくる
(完?