※この作品はR-18です。

眠夢裏   作:ジッキンゲン男爵

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ウルベルト分岐物語#12資源ゴミ

「「「「ウルベルトさん!!」」」」

 ログインした瞬間円卓の間には大量の友人達がいた。

 ウルベルトは笑顔のアイコンを出し、手を挙げた。

「おっす!オラ、ウルベルト!」

「全くキャラじゃねぇ!!」「やばいですね。フラミーさん効果がすごい。」「本当にフラミー引っ越させたの?」

 皆きゃいきゃい喜びウルベルトに群がった。

「ふ、引っ越しは昨日無事に完了ですよ。」

 ウルベルトは鼻の下をかく仕草をした。

 それを見るとオォ…と皆声を漏らした。

「じゃ、皆俺とモモンガさん、タブラさんに支払いよろしく!!」

 武人建御雷がそう言うと、ウルベルトは首を傾げた

「何の話し?」

「ウルベルトが振られるか振られないか賭けてたんだよ。」

「…建やん俺に入れてくれたんだな…!」

「あぁ、負けそうな方に入れたほうが面白いから入れてみた!」

「…ぶっとばすぞ。――タブラさんは計算通りっすよね?」

「私も盤面がひっくり返るところが見たかったんで。」

 ウルベルトが怒りのアイコンを出しているとモモンガもログインした。

「あぁ!モモンガさん!!我が友よ!!」

「あ、ウルベルトさん!おはようございます!皆さんも勢揃いですね。この様子だとフラミーさんの引っ越し終わったのかな?」

 モモンガはいつもと変わらない様子だった。

 が、ペロロンチーノは大興奮だ。

「ね〜ウルベルトさぁん!!昨日引越した後ユグドラシルに来なかったのなんで!!ねぇなんでぇ!!」

「フラミーの誕生日祝って外食連れてったからだよ。何か邪推してんだろ。」

 周りのギルメンたちの視線は好奇に染まっている。

「それで、フラミーさんはインしないんですか?」

「今日は遅かったから、今風呂入ってるんすよ。」

 

 風呂。

 

 円卓の間はざわめいた。

 

「の、の、のぞくなよ!!絶対に覗くなよ!!」

「のぞかねぇよ!!――おっと、声がでかいと聞こえる。」

 ウルベルトはヤギの口元をそっと抑え、ペロロンチーノはモモンガの腕にぺとりとくっついた

「ねぇモモンガさぁん課金童貞俺たちだけになっちゃうよぉ。どうしよ〜。」

「え?あ、あぁ〜…本当ですねぇ。」

「だから元から童貞ちゃうって言ってんだろ!!」

「うーん、これは童貞!!でも、フラミーさんで卒業するなんて…いや、その前に別れれば解決か!」

「おい、お前流石にそれは聞き捨てなんねぇな。俺のセカンド童貞はフラミーに捧げてみせるよ。」

 ウルベルトが照れ臭そうにすると、ペロロンチーノとモモンガは固まった。

「せ、せこんど…?」「せかんどどーてー?」

 二人は肩を抱き合い、これでもかと綺麗な声を出した。

「モモンガさん。俺たちは清く正しく美しく。」

「そうですね。ペロさん、俺たちはいつまでも仲間です。」

「…風俗行きゃすぐだろうが…。」

「あ!ウルベルトさん!!素人童貞ですか!!」

「いや、ごめん。風俗行った事ねぇわ。」

 骸骨の魔王と爆撃の翼王は円卓の間の床にしょんぼりとしゃがんだ。

 

「そうだ、そんな事より…モモンガさんにちょっと教えてほしい事があるんだけど。」

「ん?なんですか?」

 ジタバタし始めた鳥と違い、骨はすぐに切り替えこちらを向いた。

「この歌知ってる?」

 そう言うとフラミーの歌っていた鼻歌を歌って聞かせた。

「……知りません。なんなんですか?」

「いや…フラミーが作ったとか言ってたんだけど聞き覚えがある気がして。でも思い出せないんすよね。モモンガさんなら何か知ってるかと思ったんすけど。」

「はは、フラミーさんの歌か。可愛いな。」

「俺の嫁まじで可愛いですよね。」

「…まだ嫁じゃないでしょう。」

「週末あたり婚約指輪見に行ってまた口説きますよ。」

 モモンガと適当な会話を繰り広げながら、ウルベルトは曲の正体について考えを巡らせた。

 モモンガも知らないとなるといよいよ持ってお手上げかもしれない。

 ウルベルトは手と足を組み少し唸った。

 そして――『あ、ウルベルトさんユグドラシルしてるんですか?』

 ウルベルトのアバターからくぐもったフラミーの声がすると円卓の間は再び騒めいた。恐らくマイクから遠い為に音が悪いのだろう。ノイズキャンセル機能が軽く働いている雰囲気だ。

 

 ウルベルトが慌ててヘッドギアを取ると、首の後ろのコネクターが繋がっているせいでアバターも同じ動きをした。

「あぁ、今インしたばっか――って、お前!」

「っえ、なんですか?」

 ウルベルトががばりと立ち上がるとフラミーは驚いて肩を揺らした。

 心配そうに顔を見上げるフラミーはお団子じゃなかった。

「お前いつものお団子頭は?」

「寝るのに邪魔ですしお風呂に入る前にほどいちゃいましたけど…。」

「まじか…。……おろしてても可愛いな…。天使かと思った…。」

 ウルベルトはフラミーの少し湿ってきらきら輝く髪をすくった。

「な、何言ってるんですかぁ。すぐにおちょくるんだから。」

「はは、赤い顔もかわいいよ。昨日の夜、俺のベッドにいた時のお前も可愛かった。顔真っ赤にして。」

 

 円卓の間ではそれが聞こえた瞬間、阿鼻叫喚だった。

「いやー!ウルベルトさん本当にやりやがった!」

「あぁーー…フラミーさんごめん…。俺がもっとちゃんと止めてれば…。」

 モモンガは頭を抱えた。

「何がセカンド童貞だよ!!それって普通に非童貞じゃん!!課金童貞は解散!!」

「…ペロさん、俺はそんなのに参加した覚えはないです…。」

「俺もないですけどね!!」

 そうこう言っていると、再びウルベルトのアバターからは声が聞こえてきた。

『もー可愛くないですよぅ…。それより、私もユグドラシルします。』

『待てって。もう少し良く見せて。パジャマも可愛い。』

 ウルベルトのアバターが何かを掴むように動くと立ち会ったギルメンは全員悶絶した。間違いなくフラミーの腕を掴んだのだろう。

『あの…化粧もしてないしあんまり…見ないで下さい…。』

『良いだろ、これから毎日顔突き合わせるんだから。それに、お前可愛いから気にすんなよ。』

 

 ギルメン達は息も絶え絶えだった。

「僕ちゃんたちは一体何を見せられてるんだ!!」

 ペロロンチーノの絶叫にモモンガも頭を抱えた。

「…ウルベルトさん、まじで頼みますよ…せめてコネクター抜いてくれ…。」

「ボク、フラミーさんやウルベルトさんに次会ったら今の会話思い出しちゃいそう。」

 やまいこが恥ずかしそうにそう言うと、茶釜はもたげているスライムの頭をピンッと縦に伸ばした。もちもちと上下屈伸運動をするとあまりにも危険な絵面だった。

「まさか引き取られた当日に貫通させられたなんてねぇ。」

「かぜっち…貫通とか言わないで。…どうして女に生まれたの?」

「辛辣ゥ!」茶釜は汗アイコンを出した。「でもさぁ、可愛い可愛いって、フララは可愛かったから良かったけど、これでプロレスラーと相撲取り足して二で割ったみたいな女子だったらウルベルトさんどうしてたんだろうね。」

 そのセリフに皆確かにと頷いた。

「まぁでも声的にプロレスラーはなくないですか?あの線の細そうな感じ。」

 モモンガがそう言うと茶釜は笑顔アイコンを出し――愛くるしい声を出した。

「じゃあ、私はどんな姿だと思う?」

「…悪かったです。やっぱりどんな声でもどんな見た目もあり得ます。」

「おい、それはそれで失礼だぞモモちゃん。」

 

 それぞれギャアギャアと盛り上がっていると、ウルベルトのアバターは目の前の何かを撫でるように動いた。

『お前甘い匂いすんのな。』

『あ、すみません。匂いのないシャンプー買いますね。ウルベルトさん、匂いのするトイレットペーパーもダメですもんね』

『いや、良い匂いだから良いよ。』

『本当ですか!使って良いですよ!サラサラになりますし、おすすめです!』

 

 多くのアバターがこけた。

「そうじゃねぇだろフラミー。」

「建御雷さんですらそうじゃないと気付く。」

「フララのこう言う所本当好き!!」

 

 ウルベルトもそうじゃないと思っているような雰囲気で続けた。

『…サラサラも良い匂いも興味ないから良いや。ありがとさん…。あ、俺洗面所にズボンプレッサー出しっぱなしだったろ。ごめん。』

『良いんですよ。終わってたみたいなんでスラックス、出してあったハンガーにかけておきました。』

『まじか…ありがと。次は気をつけるから。』

『はは、気にしないでください。気がついた人がやれば良いだけですし。』

『いや、俺ちゃんとするから。お前が暮らしやすいように。』

『私もウルベルトさんが暮らしやすいように色々気を付けます!』

『あ、お前的にこう言うルールがあると良いって言うのあったらなんでも教えて。』

『毎日笑顔で元気よくですよ。』

 ギルメンは全員が即座に笑顔アイコンを出した。

『んなバカな。小学校の標語かよ。なんかもっとまともなルールないの?』

『うーん?ないですねぇ。』

『仕方ねぇなぁ…自分で見つけるしかないか…。』

 ウルベルトのアバターは空中に手を滑らせた。

『えーと…プレッサーしまう…、風呂の髪の毛は毎度捨てる…、靴揃える…、ちゃんとコップを使う…。』

 呟きを聞き、皆それが何をしているのか理解した。

「ウルベルトさん、これもしかしてメモしてんの?」

「真面目…。」

 意外だね〜と女子たちは声をそろえた。

 

『よし。俺からは一つルール良い?』

『はい、もちろんです!』

『遅くなる時は――そうだな、九時過ぎる時は必ず遅くなるってメッセージ入れてくれ。今日は心配過ぎて胃に穴が開くかと思った。十時すぎる時は駅に迎えに行く。』

『そ、そこまでして頂かなくっても…。駅も近いですし。』

『ダメ。ルール守って。』

 モモンガと茶釜ははうんうん頷いていた。

『でも大変じゃないですか?』

『大変だって良いんだよ。俺はお前のためなら何だってできる。』

 

 全員再び悶絶した。

「フラミーやべぇなぁ。ウルベルト骨抜きになって何もできなくなるんじゃねぇの。」

 ベルリバーはやれやれと息を吐いた。こんな事で箱(・)は見つかるのだろうかと少し心配になる。

「俺、俺…!段々この会話聞いてるだけで抜ける気がしてきた!!」

「ペロロンチーノォ!!」

 モモンガの咎める絶叫が響く。

『っわ!も、モモンガさんの声した!』

 モモンガは慌てて骨の口を押さえた。

「モモちゃん!!もっと聞いてたいから静かにしてよ!」

「す、すみません。」

 モモンガは小さな声で野次馬たちに謝罪した。

 

『あ、繋げっぱだからな。』

『え、ずっと繋がってたんですか?』

『あぁ。音も行ってんのかな…。確認して来るわ。』

 ウルベルトのアバターがキョロキョロと辺りを見渡すと、皆「聞こえてました〜」と声を揃えて返事をした。

「あー、まぁ聞こえてたよなぁ。」

『えっ、あのっ、私今日はもう寝ます!皆さんおやすみなさい!』

「あ、フラ」――『ミーもう寝んの?布団敷いてやろうか?』

『ううん、自分でできるんで平気です。ウルベルトさんもおやすみなさい。カーテン閉めますね。』

 

「部屋仕切ってるんですね。えらい。」

 ぷにっと萌えは冷静に聞いていた。

 

『あ、フラミー。もしあれなら俺のベッドで寝て良いよ。昨日気持ちよかったろ。』

『あ、そう言えば昨日、途中で寝ちゃってごめんなさい。』

『いいよ。それも可愛かった。』

 それが聞こえた瞬間モモンガは立ち上がり、ウルベルトのアバターの目の前に行くと肩を掴んだ。

「ウルベルトさーーん!!早く戻ってこーーい!!」

「っうわ、びっくひした。た、ただいま。」

「…気持ちよくて真っ赤なフラミーさんインベッドってもんを聞かせてもらおうじゃないですか…。昨日の夜はウルベルトさんのベッドにいたそうですねぇ…。俺の大事なフラミーさんに…俺の妹分に…。」

「い、いや。普通に酒飲んでフラミー寝ちまったからベッドに――」

「フラミーさんに酒ぇ!?まさか酩酊させて――ウルベルトォ!!」

「も、モモンガさん落ち着けって!何もしちゃいねぇから!!――っと、うるさくできないんだよ。俺はもう落ちる。じゃ、皆おやすみ。」

「あ!待て!!おま――」

 ウルベルトはログアウトするとヘッドギアを再び外し、コネクターを抜いた。

「ウルベルトさん…?」

 カーテンの向こうからフラミーの声がした。

「あ、あぁ。うるさくてごめん。俺も今日はもう寝るわ。あ、あと昨日は本当に何もしてないから。」

 と、言いつつ、頬にキスしたんだったと思い出した。が、言わなかった。ウルベルトにとってはあれは何もしていないの内だろうと言うことにする。

「ウルベルトさん、優しくしてくれてありがとうございます。」

「………良いって。」

 小さな罪悪感がもにょりと心の中を動いた。

 

「……なぁ、フラミー?」

 ウルベルトはベッドから体を起こしたが、フラミーのいる方からは静かな寝息が聞こえてきた。

 こっそりとベッドを抜け出しカーテンをめくると、フラミーは布団の上でまるくなっていた。

(…寒いかな?)

 一枚自分の毛布を取り、フラミーに掛けた。

 ウルベルトは机に頬杖をつくとしばらくフラミーの寝顔を観察した。

 飽きるまで眺めると自分の領土に帰った。

 そしてお宝(・・)を持ってトイレに行こうとベッド下に手を突っ込んだ。

 宝箱を開け、わくわくと資源ゴミにしなかったお宝を取り出し眺める。

 が、まるでやる気にならなかった。

(なんだこりゃ?)

 それどころかどこか汚らわしく見え、お宝をゴミ箱に放った。

 やる気満々だというのに、悲しいくらいにフラミー以外のものに対して賢者だった。

 ウルベルトは仕方なく布団にもぞもぞと潜り、目を閉じた。

(ちぇ…つまんねぇの…。)

 

+

 

「っわ!…んん、よいしょ。」

 ウルベルトはフラミーの声で目を覚ました。

「…んん…ふらみー?」

「ッキャ!あ、あの、おはようございます。」

 恐る恐る振り返るフラミーの手にはウルベルトのお宝。

 でっかいお乳の女子が手ブラをしている表紙だった。

「っあ!お前何勝手に!」

「えっと、あの、今日は燃えるゴミだからゴミまとめてて…でも、本は資源ゴミだから…。」

「わかった!分かったからそんなもん触るんじゃない!」

 ウルベルトは清純なフラミーが汚れると慌ててえっちな本を奪いとった。途端に中が見え――一層えっちな写真が晒された。

「やべ。」

「あの、ごめんなさい!」

 そそくさとゴミをまとめるとフラミーはまだ髪を結んでもいないのにカバンを引っ掴み出かけようとした。

「っあ、ま、待てって!」

 思わず開きかけた廊下への扉を閉じてしまうと、フラミーはウルベルトに困ったように振り返った。

「わ、わたし…かいしゃが…。」

「…髪もまだ結んでないじゃん。」

「あの、でも…。」

 フラミーの目が泳ぐとウルベルトは間違いなくフラミーの中でえっちな奴になったと確信した。まぁえっちな奴ではあるのだが。

「…これはもう捨てるもんだから、俺はえっちじゃない。分かったな?それをえっちな奴だと思う奴が一番えっちなやつだ。」

「わ、わかりました。」

「…よし。じゃ、髪結んでいけるな?」

 フラミーは頷くとゴミとカバンを置いて髪を結びに洗面所へ行った。

 

(このエロ本は日下部にやろう。喜ぶだろうし。)

 

 お宝は行き先を手に入れた。




朝から忙しいね!!

#13泥棒
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