※この作品はR-18です。

型月ハーレムマンション   作:七味胡椒

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隣宅訪問(アルクェイド)

「────────はあ」

 

 と、歩は溜息をついた。

 

 マンションの通路で自室の扉を背にして座り込み、降り止まない雨を見上げる。今日は不運にも傘を忘れてしまった。彼の通う学校はここからすぐ近くで走れば5分少々。とはいえ梅雨の夕立に打たれ、すっかり制服はずぶ濡れになってしまっていた。

 

 雨に濡れて額に張り付く髪を拭う。今朝は寝坊して急いでいたからか、傘のおまけに家の鍵まで忘れてしまっていた。母親が帰ってくるのは夜中になる。独身キャリアウーマンである母の稼ぎのお陰でかなりの高級マンションで生活できているのには感謝しきりだったが、こんな時ばかりは早く帰って来てくれと願うばかりだ。財布はあるのでその辺りで食事くらいは出来るけれど、何となく動く気になれなかった。

 

 ここで親友でもいれば電話で呼んで相手の家で雨宿りさせて貰うなりするのだろうが、悲しいかな歩の友達はクラスで会えば話すという程度の間柄の相手だけ。ついでに彼女も今までいた事がない。電話一本で彼の為に働いてくれる相手など存在しなかった。

 

「明日の宿題、どうしようかな……」

 

 そんな事を考えていると、ふと隣の部屋の扉に目が行った。

 

 最近、このマンションには外国人の入居者が多い。そして何故だかその多くがとんでもない美人ばかり。少年の隣室の女性もその一例だった。

 

 美しい金紗の髪に、カラコンでも入れているのか血に染まったように真っ赤な瞳。芸術品のように整った顔は意外と人懐っこい笑みをよく浮かべている。隣に住んでいるだけあって偶に遭遇するが、初めて会った時は余りの美しさに数秒間硬直してしまった程だ。今でも不意打ちで通路の角で出くわすと呂律が回らなくなってしまう。

 

 そして何より、そのスタイルはえげつない。ゆっさりと盛り上がった胸は巨乳と言って差し支えない。お尻もこれまた大きく、ふんわりしたスカートが張り付くかのようにむちむちと歩く度に揺れる。人種はよく分からないが東欧かどこか出身だろうか、透き通るような白い肌が艶めかしい。特に露出の高い恰好をしている訳でもないのに暴力的な色気を振り撒いている。歩が小柄な方だとはいえ、腰の位置など彼のへそより高いのではなかろうか。はっきり言って彼の同級生の女子たちなど女性として比べものにならなかった。

 

 むずり、と股間に血液が流れ込むのを感じて身じろぎする。ゴツンと後頭部をドアに当てて煩悩を振り払った。とはいえ彼も性欲旺盛な男子である。あのドスケベボディの外国人美女をオカズにする事などしょっちゅうであった。先週など、歩がふとスマホを落としてしまい親切に拾ってくれた彼女の手に指が触れてしまった。その時の女性らしく少しひんやりとしていながらすべらかな手の感触で何度自慰をしたか分からない。

 

 あんな美女が隣に引っ越して来てくれたのは歩の人生でも最高の幸運だ。叶うものなら見ているだけじゃなくて、お近づきになりたい。しかし歩は同学年でも小柄な方で、風貌も男らしくないと言われがち。本人としても一見少女のようにも見える中性的な見た目はコンプレックスだった。ついでに名前も女の子みたいだと言われた事もある。自分でもあの美女の隣に立つのに見合うとは思えない。余りにも高望みが過ぎるというものだった。

 

「どんな男ならあんな人の彼氏になれるんだろう。少なくともあの人より背が高くないと駄目だよね……」

 

 はーっ、とまた溜息をつく。雨の中一人で座っているせいか気分が鬱々としている。このままでは思考がどこまでも悪く進んで行きそうだ。

 

 一旦切り替えて、近くのコンビニに行って傘でも買おうか。どうせもうずぶ濡れだし、走ればすぐそこだ、などと思っていると。

 

「────あら、お隣さん? どうしたの、そんな所で座っちゃって」

「…………え、あっ!」

 

 どきんと心臓が跳ね上がる。涼やかな美声の方を振り向くと、あの人がいた。

 いつもの白いタートルネックのセーターに、紫色のロングスカート。買い物の帰りだろうか、雨に濡れた傘とスーパーのレジ袋を提げている。カツンとパンプスが鳴った。

 

「って、ずぶ濡れじゃない。傘忘れちゃったの?」

「は、はい。それでその、家の鍵も忘れてしまって」

「もーっ、駄目じゃないちゃんとしなきゃ。お母さんは遅くまで帰って来ないんだっけ」

「そうです……って、な、なんで知ってるんですか?」

「この前、立ち話したんだー。うちの息子が忘れっぽくて困るって言ってたよ」

 

 くすくすと笑われてしまい、どう反応すればいいか分からない。ただでさえ美し過ぎるその顔を直視していられず、歩は目を逸らした。

 そんな彼を見て美女が言う。

 

「でも困ったねー。いくらなんでも夜中までずっとそこにいる訳にはいかないよね。お金はあるの?」

「えっと、財布は持ってるから大丈夫です。雨が止んだらどこかで時間を潰そうかなって」

「ふうん…………」

 

 美女が緊張しながら答える少年を興味深そうに見た。頭一つ分高い所からじっと見られて、歩は更にどぎまぎしてしまう。彼女の視線から逃げるように俯く。

 

 雨音が二人の間に立ち込める。

 ややあって、美女が再度口を開いた。

 

「よーし、仕方ないわね。ずっとここで待ちぼうけさせてるのも可哀想だし。わたしの部屋で雨宿りしていかない?」

「え?」

 

 突然の提案に驚いて見上げると、美女が微笑んでいた。慌てて首を振って断る。

 

「そ、そんな、悪いですし」

「いいっていいって。泊めるのはちょっとまずいだろうけど、夜まで居させてあげるくらいはどうってコトないわ」

 

 むん、と胸を張って言う。思わずぷるんと揺れた豊かな乳房に目が行ってしまい、慌てて逸らす。

 

「で、でも……。僕、一応男ですし」

「……ぷっ、あはは! なになに、そういうコト考えてたの?」

「ち、違います! でも女性の部屋に上がり込むなんて……それにお姉さんもお付き合いされてる方とかいらっしゃるんじゃ……」

「あー…………まあ今は独り暮らしだし、大丈夫。気にするコトないわよ。ほらほら、身体冷えちゃってるでしょ。早くしよ?」

「え、えーっと……」

 

 ちょいちょい、と彼女の家の扉を指して急かされる。

 

 戸惑うものの、最初は驚いて断ろうとしたが、落ち着いて考えればまたとない機会だ。元から想いを寄せていた女性の部屋に招かれ、しかも相手は独り暮らしときた。こんなシチュエーションに興奮してしまっているのも確かだった。このままここで一人夜まで座っているのか、魅力的な外国人女性のお招きにあずかるのか。迷う理由は一切なかった。

 

「それじゃ、その……夜までお願いします」

「ん、おっけー。お風呂も入れてあげる。あ、でも服も濡れちゃってるのか。替えの下着とか持って……るわけないか」

「あ、そこまでは濡れてませんから……ってお風呂!? い、いいですって、そんな」

「はいはい、部屋で話そうねー。それじゃ、ほら。どうぞ」

 

 扉を開けて招かれる。女性ものの靴がいくつか置かれた土間が見えた。

 こうなってはもう覚悟を決めるしかない。唾を飲み込んで、歩は美女へ向き直った。

 

「お、お邪魔します。……ええと……」

「ん。アルクェイド・ブリュンスタッド。アルクェイドでいいわよ」

 

 一体何語で、何人なのだろうか。少年にはとんと見当も付かなかった。

 

「あ、アルクェイドさん。宜しくお願いします」

「はーい、いらっしゃい」

 

 にこやかに笑う姿に見惚れながら。

 アルクェイドに導かれて、歩は彼女の部屋へと入った。

 

 

 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

 アルクェイドの部屋は、歩の想像より質素な内装だった。

 

 机やソファといった家具は置いてあるが落ち着いた色で、あまり女性らしくないなと歩は思った。小物類や、驚いた事に化粧品なども見当たらない。一番使われていそうなのはテレビで、再生デッキの上にレンタル中らしいBDケースがいくつか置いてあった。

 

「ちょっと待っててねー。お風呂いれてくるから、座ってていいよ」

「は、はい」

 

 アルクェイドは玄関と居間の間の通路にある洗面所の方へ向かった。ガララ、と風呂場の扉を引く音がする。

 

「座っててって言われてもなあ……」

 

 服は濡れているし、あの人の部屋だと思うと緊張してしまって手持ち無沙汰で突っ立ったままになってしまう。

 

「……………………」

 

 アルクェイドの消えたドアの方をちらちら見ながら、すう、と深呼吸してみる。クラスの女子の化粧の匂いとは違う、かぐわしい花のような香り。そういえば先ほど初めて彼女の顔を間近で見たが、化粧っけが全くなかったように思える。すっぴんであれだとしたら、本当に女神のような美貌だった。

 

 辺りを見回していると、戸棚の上にいくつか写真立てがあった。アルクェイドと一緒に数人の男女が写っている。アルクェイドのように人間ばなれした程ではないが、女性は皆美人だった。

 その中には男性もいた。眼鏡をかけている青年だ。歩よりはいくつか年上、20代だろうか。彼がアルクェイドの恋人なのかも知れないと少年は思った。

 

「ごめんねー、待たせちゃって。すぐお湯張ると思うから、ちょっと待ってようか。何か飲む?」

「す、すいません。お構いなく」

「気にしないで。冷たいお茶でいいかな。梅雨は嫌だねー、あっついし湿気がすごいし」

 

 風呂場から戻ったアルクェイドは、今度はトコトコと台所へ向かって行く。その歩く姿さえ優雅で、モデルか何かのようだ。後ろから見ると、お尻の大きさが余計目に付く。

 

「あの、手伝いましょうか」

「いいから座ってて。ちょっとぐらい濡れてもいいから」

 

 促されて、歩はお尻を払ってからソファに座った。

 少し待つと、アルクェイドがコップを二つ持って来た。中身は麦茶らしく、しっかり氷も入れられている。

 

「はいどうぞ。喉渇いたでしょ。お代わりもあるよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 確かにしばらく飲み物を飲んでいなかった為に喉が渇いていた。一気に飲み干していると、アルクェイドがテレビを点けた。天気番組が映っていて、どうやら雨は明け方まで続くらしい。

 

「ひゃー、雨止みそうにないね。わたし晴れてる方が好きなんだけどなあ」

「ぼ、僕もです」

「だよねー? 夏の暑いのは嫌いじゃないんだけどね。やっぱり太陽が見える方がいいなあ」

 

 くるくる変わる表情に見惚れながら、なんとか受け答えする。晴れも似合うけれど、どちらかといえば月光に照らされている方がアルクェイドの綺麗さが映えるような気がすると歩は思った。

 

「あ、あの。お聞きしてもいいですか」

「うん? なあに、何でも聞いて?」

「えっと……その写真の方たちは、お友達ですか?」

「ああ、これ? うーんと。まあ友達、かな? もしくは知り合い?」

 

 少年が指した写真を見てアルクェイドが言った。その辺りは複雑らしい。

 更に、歩がもっと聞きたかった事に触れる。

 

「それじゃ、その男の人は……」

「え?」

「い、いえ。何でもないです」

 

 共に写っていた男性について聞こうとしたが、勇気が出なくて躊躇した。しかしアルクェイドには伝わっていたらしい。にんまり、と猫のような笑みを浮かべて、

 

「なになに、気になるー? わたしと彼がどんな関係か。もーキミったら結構おませさんなんだから」

「す、すいません! 忘れてくださいっ」

「ふふっ。別にいいよ、隠すようなコトじゃないしね」

 

 口元を緩めてアルクェイドが言った。

 

「うーん、昔は……そういう関係だったコトもあるけど。彼、色々と忙しいし、とんでもなくモテるから。今はわたしと特別に深い仲、って訳じゃないかな。まあ、友達って感じ?」

「も、モテる……。そうなんですね」

 

 こんな極上の美女と良い関係だった上に彼女から女性にもてると言われるなんて、どれほどの女殺しなのだろうか。若干恐ろしくなる歩だった。

 

 そんな風にしばらく話していると、風呂場の方からピーッと音が鳴った。どうやらお風呂が入ったようだ。

 

「っと、準備できたみたい。それじゃこっち。ここが洗面所ね」

「あ、分かります。うちと間取り同じですから」

「あはは、そりゃそっか。じゃ、ごゆっくりー。石鹸とか使っていいからね」

 

 洗面所兼脱衣所に案内される。洗濯機や洗面台が置いてあって、ドアを閉められ一人になった。

 

「…………はあ」

 

 気になっていた隣室の女性の部屋で今からお風呂を借りようとしている。改めて、想像もしていなかった状況になったものだと思う。隣の自分の住む部屋と同じ形の脱衣所のはずなのに、ここで彼女が毎日裸になっていると思うと特別な場所に感じられる。

 

「って、馬鹿な事考えてないで早く入っちゃおう……」

 

 急いで服を脱ぐ。何となく綺麗に畳んで脇に置いておいた。

 

 と、裸になっていざ風呂に入ろうとした時、視界の端で何かが目に付いた。

 蓋の開けられた洗濯機。よく見ると、その口に、白いブラジャーが引っ掛かっていた。

 

「………………っっ!!」

 

 心臓がばくんと跳ね上がる。

 

 あの歩く度にぷるぷると震える金髪美女の巨乳。少年が毎日のようにオカズにしていたおっぱいを包んでいた下着。それが今、手の触れられる場所にあるのだ。

 

「…………はあっ、は……!」

 

 駄目だと思いながらも、吸い寄せられるようにふらふらと近付いてしまう。

 近くで見ると、華美になり過ぎない程度にさりげなくデザインされているのが見て取れた。本人自身が美し過ぎる彼女には丁度いいだろう。

 

「こっ、これが……あの人の…………!」

 

 間近で見詰めてしまう。触れてしまいたくなるも、流石にそれはまずいと歯止めを掛ける。彼女の白い美しさを汚す気がして触れ難かった。

 などと考えながらも、とっくに盛んに股間へ血液が送られているのが分かった。既にチンポは勃起し始めている。

 

「うっ、や、やばい……! こんな所で……収まらせないと…………!」

 

 この光景を見られでもしたら一巻の終わりである。必死に理性を総動員して視線を引き剥がそうとする。

 

 しかし、そこへ。

 

「────もうお風呂入ったよねー? バスタオル忘れてたよ、入口に置いておくから……」

 

 ガラリ、とアルクェイドが脱衣所のドアを開けて入って来た。

 更に運の悪いことに、はずみでポロリと落ちたブラジャーが、何の冗談か少年の反り返ったチンポに引っ掛かってしまった。

 

「…………え、あっ、そ、それわたしの……? えっと…………」

「────────!!! ち、違うんです! これは何というか、とにかく誤解でっ!?」

「……あ、あはは…………。ゴメンね、ちゃんと片付けないわたしが悪かったね……」

「だ、だから違いますってばっ!?」

「あーうん、えっとその、あまり汚さないでね……? じゃ、ごゆっくりー…………」

 

 お互い真っ赤な顔で言い合う。アルクェイドは逃げるように脱衣所のドアを閉めて離れて行った。

 

「…………さ、最悪だ……。終わった……」

 

 ポツンと取り残される。

 

 歩は全裸のまま、脱衣所で一人絶望した。

 チンポがしなしなと萎れて、ブラジャーがはらりと床に落ちていった。

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