表通りで自動車の走り抜ける音。
うるさい蝉の声が、窓から漏れ聞こえている。
丁度休日の部活帰りだろうか、高校生くらいの少年たちの声がかすかに聞こえる。
そんな夏の昼下がり。
「……ん、むっ……❤ はふ…………❤」
──────セイバーと歩は、ソファに倒れ込むようにして口付け合っていた。
歩にセイバーが伸し掛かるような体勢。頬を染める歩とは対照的に、セイバーはあくまでもクールな表情だった。セイバーの吸い込まれそうな金色の瞳に魅入られているかのように、歩は目を離せない。その眼を見詰めているだけで心臓が高鳴ってしまっていた。
唇と唇を合わせるだけのバードキス。小さくも柔らかいセイバーの唇が、歩のそれとぶつかってふにゅんと潰れている。ときおり吐息を零しながら、角度を変えつつ二人はキスしていた。
「ぷぁ…………っ。は……」
二度、三度と唇を合わせてから、ややあって二人は離れた。はあ、と熱い吐息が混じり合う。
「……これが、口付けか。まあ、悪くはないが。思っていたよりも普通だな」
くに、と親指の腹で唇を撫でつつ、セイバーは言った。歩の方はと言えば少しだが息が上がってしまっている。はあはあと肩を上下させていた。
「そ、そうですか。僕は……凄く良かったです。セイバーさんとキスできて……」
「ふん。それほどのモノでもなかろう、この程度」
「余裕ですね、セイバーさんは」
「当然だろう。私を誰だと思っている。経験はなくとも、このくらいこなすのは造作もないコトだ。想像よりも物足りないくらいだったな」
もぞ、と起き上がろうとするセイバー。
しかし、今までの経験でむしろここからだと思っていた歩は拍子抜けしてしまった。
「あ、もう終わりですか。そうですよね」
「……む?」
その様子にセイバーが眉をひそめる。
若干不機嫌になったような声音で、
「まて。それはどういうコトだ。今の行為がキスではないのか」
「いえ、今のもそうですけど。もっとこう、激しくするのかなーって……」
「…………ほう」
きり、とセイバーが眉を逆立てる。歩の言葉に反発したかのように、少年へ言い放った。
「よかろう。今のは小手調べだったというコトだな。望む所だ、貴様の好きにやるが良い。私に本当のキスというモノを教えてみせろ」
「僕の……好きに?」
唾を呑む。セイバーがこう言うということは、本当にやって良いということだ。
彼女に出会ってからのことを思い出す。ベンチで淑やかに眠っていた姿。目を覚ましてからの、傍若無人ながら不快にはならない自然な振舞い。所作ひとつひとつの艶めかしさ。そんな美少女の唇を、思い通りに。
「…………分かりました。本当に良いんですね。僕だって男で、セイバーさんはすっごく綺麗な女の子ですから。思いっきりしちゃいますよ」
「だからよいと言っている。さあ、来い」
むん、と胸を張るセイバー。言質を取った歩は、今度は自分から彼女を押し倒した。ぼふ、と軽い少女の重みがソファに沈む。セイバーの顔の両脇に手をつき、彼女を逃げられなくする。歩に明かりを遮られ、セイバーの陰影が濃くなった。その影の中でも少女の瞳は輝いて見える。
そんな少女に覆い被さるように。歩は、セイバーの唇に自分の唇を落とした。
「ぁ……ン、ぷちゅ❤ にちゅ……❤」
軽いキス。しかしさっきとは違い。歩の唇でセイバーの唇を軽く捲り上げさせる。唇の裏側の柔らかく湿った部分が触れ合い、微かな水音を立てた。セイバーの薄い唇を食むように吸う。ぴちゅ、と空気の擦れる音と共にセイバーの唇が引っ張られた。硬い歯の感触が、僅かに歩の唇に伝う。
「んく……っ。やはり、貴様は唇が好みなのか。そんな風に吸いおって……」
先程までとは若干違う接吻に戸惑ったようだ。むず痒いように唇をもぞもぞとさせる。
「はい、好きです。正直に言っちゃうと、一目見た時からセイバーさんとキスしたいなって思ってました」
「…………痴れ者め。私のような高貴な存在を見てまず思うのが性の対象としてのコトなど、なんたる不敬か……んっ、おい、いきなり……んんッ❤」
小言を黙らせるように歩が再度キスした。さっきよりも乱暴に唇を合わせる。
「ちゅむ、くちゅくちゅ……っ❤ ふぁ、んんんん…………❤」
「ん、む…………っ」
むちゅむちゅと吸い上げるように少女の唇を貪る。セイバーはぎゅっと目を瞑ってしまっていた。そんな様子を可愛い、と思いながら、歩は念願の美少女の唇を堪能する。セイバーの肌はもちもちとして滑らかで、新雪のように穢れが無い。唇は尚更だった。柔らかさ、吸い付き具合は今までの女性の中でもピカ一だろう。常は澄まして硬質な印象を与える少女の柔らかい部分に触れているということが、歩の満足感を刺激する。
一方、キスを激しくされたセイバーは戸惑っていた。知識はあれどろくに経験もなく、先程のバードキスで終わりかと思っていた所にこれだ。現世ではサーヴァントなれど孤絶した王としての自負と、たったいま現実に未知の感覚を送り込まれる接吻との間で板挟みになってしまっていた。
(お、おかしいぞ……恩に報いて少し褒美をやろうと思っただけだというのに……。このままでは、何かおかしな場所まで連れて行かれてしまいそうな…………、し、舌が入って来た……ッ!?)
「むぁ、ちょ、ちょっと待……んむちゅぅうううっ❤ ぷちゅ……❤」
歩の掌は、今やがっちりとセイバーの頬を掴んでいた。さらさらとした髪を指でくすぐりながら、しっかりと固定した唇めがけて舌を捩じ込む。反射的に歯を合わせて侵入者を拒んでいたセイバーだったが、歩が根気強く舌で突っつくとやがておずおずと口内を開放し始めた。
こうなればすっかり少年のペースだ。これ幸いと歩の舌がセイバーの口内に潜り込んでいく。怯えるように口の奥で縮こまっていたセイバーの舌を絡め取り、肉と肉を擦り合わせる。
「にちゅにちゅっ、ちゅるるる……❤ んむっ、ちうううう……❤」
少年の舌は、少女の口内を蹂躙した。舌も上口蓋も頬の内側もたっぷりと舐め取る。甘い唾液を確かめるかのように舌で掻き回す。つるりとして引っ掛かりのない歯も、それを支える歯茎でさえも。少女の隅から隅まで味わっていく。
もうセイバーはやりたい放題されるばかりだ。最初見せていたクールな王様としての優越感などすっかり消え去り、身を縮こまらせて男の性技に翻弄される生娘でしかなくなっていた。心臓はドキドキと高鳴っていて、少年の舌の動きに怖いような期待するような不思議な気持ちを抱いていた。本人は気付いていなかったが、いつの間にかフリルドレスの中の足は、膝と膝を切なげに擦り合わせていた。
「んんっ……ぷは……❤ はーっ、はぁー……❤ お、おい、貴様……少し激し過ぎだ……❤ ちょっと落ち着いて……」
「すいません、セイバーさん。全然我慢できません」
「ん、んん~~~っ❤ ぶちゅぶちゅぶちゅ……❤」
たまに唇を離したかと思えばすぐにまた塞がれる。それを繰り返すうちに、自分と歩の唇の境界がなくなっていくかのようにセイバーは感じた。
歩が唾液を送り込むと、セイバーは懸命にこくこくと飲み下す。今度はそちらの番、とばかりに舌で突かれ、もしやと目を見開く。ふるふると顔を振るものの、少年は動じない。観念したかのようにセイバーが自分の唾液を差し出すと、歩がそれを吸い上げた。ぢゅるるるる、と激しく立てられた水音に、セイバーの頬が羞恥に染まる。
少年が、んべっと突き出した舌に、おずおずとセイバーが舌を伸ばす。空中で二人の舌がぴちゃりと触れ合った。ねっとりと唾液を絡ませ、交換する。舌先で突き合い、舌の腹を擦り合わせる。にちゃにちゃと卑猥な音を立てながら、二人は粘膜を擦り付け合う快楽に酔った。
ディープキスを堪能しながらセイバーがちらりとまぶたを開けると、少年と目が合った。きゅんきゅんと胸と股間が疼きとっさに視線を逸らす。原因不明のときめきに戸惑いつつ、気持ち良すぎるキスを続けていく。プライドだけが先行した自意識過剰の処女であったセイバーに、数々の美女との触れ合いで培った少年の舌技はオーバーキル過ぎた。セイバーの腰にわだかまる切なさが次第に大きくなっていく。自慰もしたことのないセイバーの性器が、初めて味わわされる快楽に反応しまくっている。目覚めたばかりで送り込まれる快感に驚きつつも、それを与える誰かのことを探し始めていた。性器にはまだ指一本触れてもいないというのに、歩は生娘で性に興味の無い堅物だったセイバーに無理やり性感を叩き込み、メスの本能さえも起動させていた。生まれたての雛が親を刷り込まれるように、この時点でもうセイバーの子宮は歩だけを求めるようになってしまっていた。
セイバーが目一杯突き出した舌を、不意に少年がぱくりと咥えた。え、と思う暇もなく。
──────じゅるるるるるるるるるっ! と。歩が、セイバーの舌を激しく啜り上げた。
「~~~~~~ッッ…………❤❤❤」
ぴくんぴくん❤ と、目を見開いたセイバーが痙攣する。汗が一滴、首筋を伝い落ちた。
ぱちぱちと脳内で弾ける火花がセイバーに生まれて初めての絶頂を憶えさせた。強敵を打ち破った時よりも、美味な食事を摂った時よりも遥かに上回る、神経に直接流し込まれる快感。王としての矜持を一瞬でも忘れさせる、それは原始的本能的な性感だった。
「あ゙ッ……はっ、はっ、は……❤ な、なんだ今のはっ……もしかして、私……」
「セイバーさん……アクメ、絶頂しちゃったみたいですね。滅茶苦茶可愛かったです……」
「っ……❤ あ、あくめ……絶頂……。わ、私が……? 舌を吸われただけで……?」
「ほら、見てください。セイバーさんの顔、凄いことになってますよ」
歩に促され、首を傾ける。窓際に置かれた鏡台に、セイバーの顔が映っている。
その顔。少年とのキスでとろっとろに蕩け、火照って頬はピンク色。唇の端からはだらしなく唾液が垂れている。髪はほつれ、汗で額にへばりつく。潤んだ目はいつもの鋭さを失い、眦が垂れ下がっている。はふ、はふ❤ と幸せそうな吐息が収まらず、夏だというのに湯気でも立ちそう。
(………………ああ)
それは、孤高の王であるセイバーが、異性に興味などないアルトリアが一目で認めざるを得ないほどに。
(…………もう駄目だ、これは……❤ 撃墜された……❤ 完全に、女の顔になっている……❤)
たった数分間の少年の口吸いだけでメロメロにされてしまった、ちょろい生娘の顔でしかなかった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「……あ、あの、セイバーさん。怒ってます?」
「…………………………」
(こ、これ、絶対怒らせた……! そりゃそうだよね、流石にやり過ぎだよ……!)
長いキスが終わって。
口許を拭い、向き直った二人だったが、その間には微妙な空気が漂っていた。褒美としてのキスを口実に女の子を押し倒し、やりたい放題唇を貪ったのだから当然である。セイバーはへそを曲げたかのようにそっぽを向いてしまっている。ちなみに配膳に使用したお皿は全てセイバーが洗ってくれたのだが、その間もずっとセイバーは歩の呼びかけを無視していた。
今はお皿を戸棚に片付け、机を拭いている最中だ。前の同居人との生活で家事はお手の物なのだろう、皿洗いといい後始末といいその手並みは実にスムーズだった。料理以外の全てを担っていたというのは嘘ではなさそうだ。
「…………終わりだ。では、帰る」
「あっ……お、送ります! 部屋まで……」
「要らん。一人でいい」
すっくと立ち上がって、何の未練もなくセイバーは玄関へ向かう。歩はわたわたと慌ててしまう。少し近付いたような気がしていたセイバーとの距離だが、振出しに戻った……どころか初対面の時より離れてしまったかも知れない。
どうしよう、どうやって謝ろう。もう一度ご飯を奢ればいいだろうか。でもそれだとまた『ご褒美』を要求していると思われるかも、なんて歩が考えていると。ドアノブに手を掛けたセイバーが、くるりとこちらへ振り返った。
「…………おい」
「はっ、はいっ」
冷たい目で呼び掛けられ、反射的に背筋を伸ばす歩。
そんな少年に、セイバーは、
「…………アルトリア」
「え?」
「だから、アルトリア。それが私の本名だ。これからは、そう呼べ」
「は、はあ」
戸惑う歩。少女はドアを開きながら、
「ではな、アユム。…………また来る。次は食材を持参するから、また何か作ってくれ」
「あ……は、はい! 喜んで!」
喜色を浮かべて返す歩に、わずかに頬を染めて。
アルトリアは、歩の部屋から姿を消した。
「ん…………く、ふ……っ❤」
ばたんと閉じた自室の玄関のドアにもたれ掛かって。
ずるずるとドアを背に、アルトリアは腰を抜かしていた。その股間から、にちゃりと湿った音がする。少年の前では懸命に抑えていた息が次第に上がっていく。耐え切れず、ドレスの裾から中に手を這わせた。
「くそ、くそ……アユム、アユム、アユム……っ。絶対に許さないぞ、絶対にっ……」
額に汗を浮かべながら、うわ言のように少年の名前を唱える。
「絶対に、絶対に責任を取らせるからなっ……! 私をこんな風にして……弄んで……! 女にして…………❤ 憶えていろっ、この落とし前は必ず付けさせる……❤」
乏しい性知識を総動員して、生まれて初めての自慰を敢行する。その拙い指先でも連続でイキまくる程に、少女の身体は火照ってしまっていた。
「ん、んんっ❤ つ、次に逢った時はどうしてやろうか……❤ 勿論食事を作らせて、一緒に食べて……キスして……❤ そ、そのあとは……❤ あっ、あ❤」
恥も外聞もなく、腰を突き出しながら乱暴に性器を掻き回す。
そのままアルトリアは、ドレスがぐっしょりと濡れそぼってしまうまでオナニーを続け、10回以上イキまくったのだった。
その絶頂全てで、あの少年をオカズにして。
キスだけで1話終わってしまった。もしかしたら4話構成になるかも知れません。
黒王可愛いですよね。みんな好きですが、セイバー系列ではオルタが一番好きです。
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