※この作品はR-18です。

型月ハーレムマンション   作:七味胡椒

31 / 42
聖女陥落(カレン)

「信じられません、まったくもって信じられません。私が寝ているすぐ傍であんなコトをっ」

「いや、本当にすいません……」

 

 ベッドに横たわりそっぽを向くカレンに歩は平謝りだ。

 

 カレンの部屋はきっちりと整理整頓されていた。モノトーンを基調とした内装で、家具もベッドのシーツも白が多い。開けられた窓からふわりと風が入ってカーテンを揺らしていた。

 カレンはまだふらつくとのことでベッドに入っている。さっきは水を汲みに部屋を出たら使っていないはずの部屋から物音がするので、見に行ってみたら……ということらしい。

 

「びっくりさせましたよね。お部屋は掃除しておいたので……」

「そ、そういうコトではありませんっ。今日は仮にも……で、デート……だと思っていたのに。体調を崩した私も悪いですが、そのお見舞いに来た私の家で他の女性とあんなコトをするなんてっ」

「うぐ」

 

 カレンは歩と目を合わせようともしない。まったくもって仰る通りなので、歩には何も反論出来なかった。

 

 どうしようかと迷っていると、部屋のドアを開けてセイバーが入って来た。手には水の入った桶とタオルを持っている。

 その格好は歩も以前見たことがあるメイド服だ。袖もスカートの裾も短いミニスカタイプだが、意外なほどにセイバーに似合っている。家事をこなす時はこちらに着替えるのだろう。

 

「まあそう言うな、カレン。誘ったのは私の方でな、アユムを責めないでやってくれ」

「……セイバー。貴女、彼とお付き合いしていたのね。驚いたわ」

「うん?」

 

 きょとん、とセイバーが眉を上げる。机の上に桶を置きながら、

 

「お付き合い、交際か。まあ外れてはいないが」

「……? どういう意味かしら。さっきのは、つまり……そういうコトでしょう?」

「ふむ。話せば複雑な事情なのだ。いや、単純と言えば単純か?」

「??」

 

 セイバーが何を言っているのか、カレンにはよく分からない。

 

 カレンにとって、セイバーとは清廉潔白な騎士だ。身も心も触れがたい誇り高さを持っている。

 正直にいえば、そんな彼女が男と交わっていること自体、信じがたい所がある。それでもまぐわっている場面を目の当たりにしてしまった以上認めないわけにはいかない。

 

 ならば、二人が交際しているとカレンが判断するのは当然だった。何しろあのセイバーが行きずりの相手に身体を許すはずがない。身体を許したということは、恋愛関係であるからに決まっているのだから。

 

「そうだ、貴女に謝っておかないと。悪かったわねセイバー、貴女の良い人に手を出そうとしてしまって」

「む? いや別に、そんなコトは」

「けれど貴女も酷いわ。事情を知っていれば私だって、デートの約束なんて突っぱねたのに。……けれど、一番悪いのは貴方じゃない?」

 

 じろり、と恨みがましい目で見られて歩はたじろいでしまった。かすかに涙の浮かんだその瞳には、怒りだけでなく悲しみも映っている。

 

「こんな、セイバーなんていう身も心も綺麗な彼女がいるのに、私なんかに気のある素振りをして。見窄らしい私で遊んでいたのですね。ええ、勿論穢れた私なんかを本気で相手にするつもりが無いコトくらい分かっていたけれど────ああもう、心底傷ついてしまったわ。どう落とし前を付けてくれようかしら」

「いやっ、そんなつもりは!」

 

 冗談めかして言いながらもその声音は泣き出してしまいそうで、歩は慌ててしまう。

 カレンの言っていることは全くの誤解だ。しかし確かに、この状況ではそうとしか思えないだろう。

 

(ど、どうしよう……! 話して分かってくれそうにも思えないし……)

 

 俯き、今にも涙を溢しそうなカレンの前で歩が頭を回転させる。だがあいにくと妙案は浮かんでこない。

 

 それを救ったのは少年の従者だった。状況を理解したセイバーがカレンに言う。

 

「成る程成る程。ようく分かったぞ。──カレンよ、ひとつ聞くが。貴様、アユムに慕情を抱いているのか?」

「…………っ」

 

 カレンは目を見開いた。眉根を寄せて言いづらそうにちらちらと歩を見る。しばし躊躇ってから、嘆息して口を開いた。

 

「はあ。もうこうなったから言ってしまうけれど、そうね。憎からず想っていたわ、その……もっと隣にいたい、と考えるくらいにはね」

「……カレンさん」

「な、何ですか。そんな目で見ないでちょうだい」

 

 もう貴方との縁もこれまでだから、とカレンは言う。しかしカレンの言葉を聞いたセイバーは目を光らせた。

 

「そうかそうか、それは結構。──ではカレンよ、是非アユムと交際するが良い。私はそれを止めん、むしろ推奨しようではないか」

「……はあ!? な、何を言ってるの、貴女?」

「言葉通りの意味だが? ああ、しかしこやつは私にとっても唯一傅くべき主でな。ゆえに私も主従関係を保たせて貰うが」

「だ、だから何を……って、主……??」

 

 目を白黒させてカレンが呆気に取られる。

 それは歩も同じだ。突拍子もないことを言い出したセイバーに仰天である。

 

(……あのっ、セイバーさん!? いきなり何を)

(……なにを慌てるコトがある。今さら囲う妾が一人増えようと貴様は構うまい、そもそもそのつもりでカレンに手を出したのだろう? それに、好色な主に新たな牝を用意するのも従者の役目に違いあるまい)

 

 横目で薄く笑いながら言われてしまう。

 歩がひるんだ隙を衝いて、セイバーが主の懐からスマホを抜き取った。画面に指を滑らせると、あっと思う間もなくロックが解除されてしまう。

 

「ええ!? なんで暗証番号知ってるんですかっ」

「下女の嗜みだ」

「意味わかんないですー!?」

 

 喚く歩を無視してセイバーはカレンへ向き直った。スマホの画面を掲げながら、

 

「カレンよ。貴様、どうも私の存在や故郷での前歴でアユムと交際するのを拒んでいるようだが、そんな必要は無い」

「え……と言うと……?」

「なぜならば──こやつは私も含め、幾人もの女を囲い日毎に別の相手と愉しむ漁色家だからだ。故に、もう私と付き合っているだの男性経験があるだのと気にするコトはない。とっくに私以外の女に手を出しまくった後だし、不可抗力で関係を持った貴様と違ってこやつは単なる趣味で女を喰い散らかしているのだ。むしろこやつの方が下半身に自制が利かず申し訳ないと弁解する側だろうよ」

「…………は…………??」

 

 意味が呑み込めずぽかんとするカレン。それも、突き付けられたスマホを見て表情が変わっていく。

 

 セイバーの指がスワイプする度に写し出されていく画像。

 相手はそれぞれ違う。金髪赤目の美女であったり、高校生くらいの制服姿の少女であったり、中には子どもがいてもおかしくないくらいの和服の女性であったり。しかしそのどれもが、少年と接吻するなり性交中なりといった、ただならぬ関係にあることが一目で見てとれる写真ばかりだった。

 

「んえっ……な、な、なあ……!??」

 

 両手でセイバーから渡されたスマホを握り締め、紅潮した顔で震えるカレン。激しく画面を指で撫でていくが、大量に保存された画像は中々終わらない。

 そのうちどこか違う所を触ってしまったのか、今度は画像ではなく動画ファイルが再生された。じゅっぽじゅっぽと粘ついた音が響く。手に持って撮影しているのだろう、見下ろすような画面の中では、メイド服姿のセイバーが夢中で少年の股間をしゃぶっていた。

 

「ち、ちょっとセイバーさん!? なんでカレンさんに見せちゃうんですかっ」

「これが一番手っ取り早いだろう。言って説明してもどうせ信じられんだろうしな」

 

 事も無げに言いつつセイバーがカレンのベッドへと片膝を乗せる。まだ目を皿のようにしてスマホを凝視するカレンに囁いた。

 

「どうだ? それがアユムの女性遍歴の一端だ。貴様、どうせあやつを年相応の童貞だとでも思っていただろう。言っておくが、そんなものはほんの一部に過ぎないぞ? アユムは存外に女殺しでな、一度嵌まったら体も精神も抜け出せなくなる。貴様は──どうやら、心の方は残念ながら手遅れらしいな」

「っ……そ、そんなコトはっ……」

「いいや、私には分かる。何故なら私も同じなのだからな」

 

 くすり、と笑う。それはいつもの彼女が見せるひねた笑いではなくて、自分と同種の女を歓迎するような顔。

 

「……それに、どうやら身体も興味津々のようではないか。私は鼻が利く。この部屋に入った時からぷんぷんしていたぞ、発情した女の匂いが。先程の私とアユムの性交で濡れてしまったのだろう? じっくり最後まで見ていたものなあ、覗き見ながら股でも弄っていたのではないか?」

「くっ…………!」

 

 それは、図星だった。

 さっきの光景は、カレンには衝撃だった。カレンにとってセックスとは、ただ性器を擦り合わせて精を吐き出すだけのモノ。そこに快楽も充足も感じたことは無く、ただ耐えるだけの行為だった。

 

 けれど歩とセイバーのそれは違う。そこには肉を交わらせる快楽と、心を満たす充足があった。荒々しい交わりだというのに、二人からはただひたすらにお互いへの愛を感じた。

 何よりも、歩のセックスを生で見てしまったのがカレンには致命的だった。セイバーをイキ狂わせる彼を見ながら、もし自分にもそうしてくれたらと思ってしまうのも仕方ないことだろう。自然、股から蜜が漏れ、そこに手を這わせてしまったのだった。

 

「どうだ、カレン。あやつに抱いて欲しくないか? それこそ私のように、天上の快楽を教えられたくはないか」

「ぁ、う…………で、でも……」

「なあ、考えてみろ。もはや貴様が遠慮する意味など毛頭無くなったのだぞ? 何も拒むモノなどない、貴様がただ一言強請ればあやつが貴様を手篭めにしてくれるのだ──ほら、こんな風に」

「…………っっ!!」

 

 セイバーがスマホを操作する。中空をさ迷っていたカレンの視線が再度、画面を捉えた。

 カレンの心臓が爆発しそうなほど跳ねた。すぐ隣にいるメイド服姿の少女が正常位で組伏せられ、股間を貫かれている。メイド服のセイバーは、カレンが見たこともない蕩けきった顔で歩の名を呼んでいた。常は低く威厳のある声を響かせる喉からは甲高い鳴き声が奏でられている。指を絡めてご主人様、ご主人様と泣き叫ぶ姿はひたすらに女としての幸福に満ち溢れていた。

 

(こんな、風に…………彼に)

 

 一度思ってしまうと、もうせき止められない。

 セイバーに腕を回されたカレンの肩が、ぶるりと震える。俯いたカレンの顎に汗が伝っていた。それは身体の不調ではなく、明らかに興奮によるものだ。

 

 すりすりと布団の中で膝と膝を擦り合わせる。寝巻きの股間はぐしょ濡れになっていると触れずとも分かる。もうセイバーはおろか少年にもバレバレだろう。

 

「あっ……あの……」

 

 それでも。それでもまだ素直に誘うことは出来なくて、歩を見上げる。おずおずと言葉を放つ。

 

「あ、貴方はどうでしょう……やっぱり私なんて」

「カレンさん」

 

 不意に肩を捕まれて、身体が跳ねる。

 視界に広がった少年の顔は、さっきまでのセイバーとの会話で狼狽していたのとは全く違う、覚悟を決めた顔。カレンでも分かる、獲物を捕らえると決めた雄の顔だった。

 

「なっ、なにっ……」

「率直に言っちゃいますけど」

 

 歩はカレンの顔を覗き込みながら、

 

「僕、カレンさんが好きです。初めて逢ったあの日からずっと。

 だから、カレンさんとエッチしたいですし、カレンさんに僕の隣にいて欲しいです。カレンさんを──僕のものにしたいんです」

「あ……が、あ、あ……♥️」

 

(酷い……なんて酷い口説き文句ですかっ……♥️)

 

 そう、余りにも酷すぎる。少年が言っているのは、要するにお前が気に入ったから抱かせろと、そして自分のハーレムに入って俺を囲えと言っているようなものだ。

 

 それなのに、カレンの胸で歓喜が弾けた。さっきのスマホの写真を思い出す。少年が自分を見初めたということは、あのとびきりの美女たちを味わっている彼が自分を女として求めてくれたということ。

 カレンは性経験は豊富でも、それは毒素を抜き取る道具として使われていただけで、愛する女として求められたことなど一度もない。望んでもいない行為であるにも関わらず身を汚されたカレンを、教会の者たちも穢れた存在として敬遠していた。

 なのに、よりにもよって想い人の少年に求められるということは、それら全てが塗り潰されるということだ。今まで自尊心を決して満たされなかった女としての諦めも、穢れた身としての自虐も根こそぎ消し飛ばされて、ただ好きな異性に求愛されるという幸福だけに満たされてしまう。

 

 きゅんきゅんと、カレンの子宮が痙攣している。下腹が幸せに緩む。それは、カレンが初めて味わう絶頂だった。

 

「で、では……♥️ その、不束者ですがっ……♥️」

 

 もう、止まることが出来ない。

 カレンにとって初めての行動──自分から悦楽を求めるという動作へ、一歩踏み出す。

 

「その……♥️ お手柔らかにお願いします……♥️♥️」

 

 少年と少女の唇が、優しく触れ合った。

 




書いたデータ全部消えて死んでました

どのキャラクターの話が読みたいですか?

  • 月姫より「姫アルクェイド」
  • 月姫より「有間都古」
  • Fateより「美綴綾子」
  • Fateより「セラ&リズ」
  • 空の境界より「浅上藤乃」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。