「はあっ、ジェットコースターがこんなに凄いモノだったなんて……! 勇気を出して乗ってみてよかったですっ」
「それじゃ、また違うジェットコースターに乗りますか? それとも別のやつにします?」
「では、これ! この船の乗り物に乗りたいです!」
はいはい、と歩ははしゃぐカレンに頷いた。
カレンと結ばれてから数日、歩は改めて遊園地で彼女とデートしていた。
パーク内のカフェで朝食を取ったのだが、いざ遊ぼうとなると設備が色々有りすぎて目移りしてしまった。歩としては特に乗りたいという物もなかったので、カレンに合わせる事にしていた。
ジェットコースターやキャラクターライドものなどいくつかのアトラクションに乗った後カレンが選んだのは、俗にバイキングとかポセイドンと呼ばれる、支柱に支えられた大きな船型ブランコに客が座り前後に揺らされる物だ。歩としてはもっと大人しい物をカレンは好むのではないかと思っていたので、ジェットコースターにしろバイキングにしろこういった激しく動くアトラクションを選ぶ事が少し意外だった。
そう言うと、カレンは心外そうな顔をする。
「そんなコトはありません。せっかくこんな場所に来たのですし、ここでしか乗れないモノを体験しなければ損ではないですか」
「まあそうですけど。その服ヒラヒラしてますから気を付けてくださいね、ライドの時めくれてましたよ」
「う……わ、分かっています」
カレンが頬を赤らめてスカートを押さえた。
今日の彼女は意外にもデートらしい服でしっかり決めて来ていた。胸元に小さなリボンをあしらった白いワンピース。袖もスカートも長めで露出は少ないのだが、銀髪美少女のカレンによく似合っていた。
「ああもう、そんなにじろじろ見ないでくださいっ。セイバーもこんな服を用意して……気を使わないでと言ったのに」
カレンのデート服はセイバーが仕立てたものだった。カレンが歩とデートすると知ったセイバーは、彼女のセンスでデート用品一式を準備してやったのだ。
セイバーは意外と少女趣味だったらしい。カレンが着ているワンピースはフリルや刺繍が施された可愛らしいものになっていた。それだけでなく指輪や、非貫通式のイヤリング、小物入れのバッグまで。とてもカレン自身が用意したものではないだろうという服装に身を包んでいた。
「別に恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。確かに最初はびっくりしましたけど、僕は可愛いと思いますよ。服もすごく似合ってます」
「……本当ですか? 本当に似合うと思います?」
「本当ですってば。なんでそんな疑うんですか、もう」
不機嫌な猫のようにこっちをちらちらと窺う様子に、歩は笑みをこぼしてしまう。
カレンは、んん、と咳払いをして、
「…………では、その。今の言葉の証明が欲しいのですが」
「え。またですか? ……その、ここで?」
「はい。おっと、イヤならいいのですよ、イヤなら。その場合、貴方は口から出任せを言ったコトになりますが」
「うわ、分かりましたって。ヘソ曲げないでください」
身を寄せておねだりするカレン。表面上ツンとしているものの、歩に手を繋がれるとすぐにふにゃりと相好を崩した。
人だかりに溢れたメインストリートから外れ、建物の影へいく。他人の視線から逃れたそこで、二人はぷちゅりと口付けした。
「はむ……んふ……♥️ ちゅっ、むちゅ♥️」
うっとりと目を閉じたカレンが舌を突き出し、歩の口内を舐め上げてくる。
──今日のデートが始まってから、もう何度も二人はこうしてキスを交わしていた。
誘いをかけるのは大抵カレンの方からで、なにかと口実を見付けては歩にキスを迫ってくる。もちろん歩としても望む所なので、その度に人目のない所で舌を絡めていた。
先日のセックスが止めとなり、身も心も歩に堕ちたカレン。
一度たがが外れては、もう想いを塞き止めるものは何もない。自分の感情を受け入れたカレンは積極的に歩と接触を図るようになっていた。無理もないだろう、今や歩はカレンにとって恋愛対象であり崇拝する対象でもある。新たに芽生えた恋愛感情も、これまで敬虔に崇める主へ向けていた崇拝ももう丸ごと歩の物。その相手と大手を振っていちゃつけるとなれば、羞恥心やプライドなど何の役にも立たない不純物にも等しいというものだ。
そんなわけで、以前まであった人を寄せ付けない態度は完全に消え失せ、歩に対しては主人に懐いた猫さながらにすがり付くようになっていた。
「ん~っ♥️ 貴方の唾液、甘いです♥️ もっと呑ませてくださぁい……♥️」
「んむ、んんっ。……あ、さっきのパンケーキの味」
「おや、貴方からも。では、これが全部なくなるまで舐め取って差し上げます……れろぉ~っ♥️」
カレンは歩の舌だけでなく歯の裏や歯茎までしっかり舐め取る。相手の口にかすかに残ったパンケーキの蜂蜜やカフェオレの砂糖が唾液と混ぜ合わさり、ねっとりと甘く濃縮されていく。
「こく、んくっ……ちゅるっ♥️ ぷは…………はい、御馳走様でした♥️ あ、唇にも付いていますよ……ぺろっ♥️」
歩の唇を舐め上げる。一筋唾液の糸を引いて、カレンの舌は離れていった。
「はあっ…………すっかり大胆になりましたね、カレンさん。もう何度目か分からなくなっちゃいましたよ、キスするの」
「なにを言うのです、他人事のように。私をこういう女にしたのは貴方なのですよ? しっかり責任を取って貰わなければ困ってしまいます」
クスクスと笑ってカレンは歩の胸板に額を擦り付けた。
歩はごくりと唾を呑む。カレンの唇の感触に、髪から漂うほのかな香水の匂い、そして密着してくる均整の取れた身体。
本人も言う通り、カレンはもう歩の女。それも一般的なものではない、歩が命じれば何でもするだろう言いなりのシスターだ。ここで尻でも掴んで催促すれば、喜んで物陰でもトイレでも、なんならデートを切り上げてホテル直行でもして歩に股を開く事だろう。
(駄目だ駄目だ、今日はお互いに楽しみにしてたデートなんだから。そりゃエッチもしたいけど、ちゃんと優先順位ってものがあるよね)
息を整えて興奮を逃がしていく。
歩から見ても、あくまで今のカレンはスキンシップとしてすり寄って来ているのだという事くらいは分かる。かなり際どい感じだが、直接的にエッチを求めているわけではないのだ。
今の歩がすべきことは、好意を示してくれるカレンをしっかりエスコートする事。自分のものになったからといって時と場合を弁えず身体を求めるのは男として落第だろう。求めれば拒まない相手だからこそ自制しなければいけない、と気持ちを切り替える。
「……よし、と。それじゃあ行きましょうか、カレンさん。きっとまた長く並ぶでしょうし、何か買っておきましょうか」
「それではさっきの売店にあったチュロスが食べたいです。揚げたてで美味しそうでした」
「あ、いいですね。一緒に飲み物も買いましょう」
どうにかカレンの柔らかい身体を引き離す。柔らかな手を引いて誤魔化すようにまたメインストリートへと戻っていく。
そんな少年を、
「…………ふふっ♥️」
カレンが悪戯っぽい笑みを浮かべて見ていた。
その後も、二人は遊園地デートを楽しんだ。
カレンが興味を示すままに様々なアトラクションに乗り楽しむ。お化け屋敷では全く怖がらないカレンに幽霊役のスタッフが困るのが可笑しかったり、水しぶきに突入するコースターでは二人揃って頭から水を被ってしまったり。
よく笑い、はしゃぐカレンは歩には新鮮で、ますます惚れ直してしまう。その姿を引き出せるのも見せてくれるのも自分だけだと思うと心の中に嬉しさと独占欲が浮かんでくる。カレンと仲良くなろうとした自分の選択に間違いはなかったと、改めて思うのだった。
「……ふう。すみません、まだ夕方だというのに」
「いえ、無理する事ないですよ」
本日最後の乗り物、街を見渡せる高さの観覧車に二人は乗っていた。
カレンの言う通り、まだ日は落ちていない。夕焼けが空を染め始めていた。
予定よりもかなり早く、今日はこれでお開きする事になった。一日歩き回ったカレンがふらつくようになってしまったからだ。体調不良は収まったとはいえ、根本的な体の弱さは如何ともし難い所だ。
「……でも、夜にはパレードもありますのに。出来れば貴方と見たかったです」
「ああ、行列がメインストリートでやるアレですか」
寂しそうに言うカレン。対面に座る歩が微笑んで言った。
「だったらまた来ましょう。今日は朝からで疲れちゃったと思いますから、次はお昼からとかで。飽きるまで何度でも来ればいいんです」
「………………何度でも、ですか」
呟いたカレンがおもむろに姿勢を整える。
すっくと背筋を伸ばし、正面の歩を真剣な表情で見た。
真っ赤な夏の夕焼けに照らされたカレン。銀髪もワンピースも赤く染まるなか、その瞳だけが金色に輝き、歩を見つめている。
歩がその姿に見とれていると、その口が開いた。
「そういえば。なあなあになっていましたが、はっきり伝えなければいけないコトがありました」
「はい? って言うと?」
「決まっています」
カレンは宣言するように、
「貴方が好きです。私を癒し、身体を満たし、心を開かせてくれた貴方が」
歩の目を見つめながら、
「だから。私と交際して欲しいのです。
……ええ、貴方が何人もの女を囲う鬼畜ハーレム野郎だというコトは重々承知です。そのうえで、その中の末席に加えて頂きたいと申し込んでいるのですよ」
彼女らしい、素直ではない告白をした。
しぃん……と観覧車の箱に沈黙が満ちる。澄まし顔のカレンの顔が、だんだん夕陽ではない赤色に染まっていく。
ややあって、
「え? 今更ですか?」
「~~っはあああぁぁ!? 貴方っ、私の一世一代の告白の反応がそれですか!! 女どもと絡むうちに脳が腐ってしまったのではないですか!?」
「うわ!? ちょっ、すいません冗談ですって!」
ぷんすかと怒るカレンを歩は必死に宥める。肩を抱き、頬を寄せるとカレンは大人しくなった。
がこん、と観覧車が揺れる。窓を見れば、頂点に差し掛かり下りへ入る所だった。
「ごめんなさい、今更って言ったのは……もうとっくにそういう関係だと思ってたからです。順番がおかしかったかも知れないですね、デートする前にエッチしちゃうなんて」
「……そんなコトを言って。他の女の子とも身体の関係が先行しているのでしょう。そのくらい分かりますよ」
「う。ま、まあそうかも知れないですけど」
ジト目で見られ、歩はたじろいだ。
とはいえ告白してくれたなら返事を返さなければからない。そして、歩の答えなど決まりきっていた。
「告白の返事ですけど。もちろんオッケーです、っていうかこっちからお願いしたかった所ですよ。僕も、カレンさんが好きですから」
「……ふん。ならばさっさとそちらから言ってくれれば良かったのです。そうすれば私が恥をかく必要もなかったんですから」
また怒っている、フリをしながらもカレンは嬉しそうだ。口角が上がるのを抑えられないようで、口をむにむにとさせている。
そんな様子を微笑ましく見ていると、気付いたカレンがむっと唇を尖らせる。一転、最近はなりを潜めていた嗜虐的な笑みを見せた。
「貴方、まるで自分がウワテみたいな態度ですけど。今日一日、私を襲いたくってたまらなかったの、お見通しですからね?」
「え!? あー……」
図星を突かれ慌ててしまう。カレンの言う通り、何度彼女を押し倒したくなったか分からない。それを精神力で耐えていたのだった。
「ふふ。でも今日はエッチはなしです。これは健全なデートなのですから。どうです、焦らされる気分は。いつも女性を自由にしている貴方からすれば癇に障りますか」
「いえ、そんな。むしろ新鮮で良いですよ」
「……そう言って貰えると嬉しいです。私は出遅れているわけですから、他の子たちと同じようにやっていては追い付けません。私なりの方法で貴方にアプローチしないと」
「カレンさんなりって言えば、さっきの告白も何だか雰囲気があってグッと来ましたよ。想定してなかったからびっくりしました」
それは嘘ではない。突然の夕陽の中の告白は、歩に思わぬ衝撃を与えていた。
カレンも言ったが、歩とカレンの関係は事後承諾で何となく成り立っている所があった。歩も意地っ張りなカレンの事だしこのまま成り行き任せで続いていくと思い込んでいたのだ。
そこに真っ直ぐな告白をかまされたのだからたまらない。冗談ぽく流しながらも、歩の心に深く響いていた。
「あら、あら。余裕そうな顔をして、その実私に参っていたのですね。そうでしょうそうでしょう、私がやられっぱなしで終わるとでも思いましたか。ベッドの上では敵わない以上、それ以外の所で意地を見せませんと」
ニヤリ、と流し目。
うわあ、調子出てきちゃったなカレンさん……と冷や汗を流す歩に彼女が言う。
「それに、サプライズはこれだけではありません。とっておきが準備してあります」
「??」
「まあ、今はまだ良いでしょう。……おや、そろそろ終わりますね。ほら、今日は家までしっかりとエスコートしてください」
一周した観覧車のドアを係員がガチャリと開ける。
先に地面にトンと降り立ったカレンが、笑みを浮かべて手を差し出す。
歩は苦笑しながら、カレンの小さな手のひらを握った。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「ふぁああああ…………眠い」
それから一週間ほど経った、とある朝。
歩は眠い目を擦りながら登校していた。広いグラウンドで部活に励む生徒たちを横目に校舎へ入り、下駄箱でシューズに履き替える。
階段をひとつ上がって廊下を歩いた先。二階の角部屋が歩のクラスだ。
ガラリと引き戸のドアを開けると、教室には半数くらいの生徒がいた。部活のある者以外はほぼ居そうだ。
自分の席に座り荷物を出していると、後ろから聞き覚えのある声が話し掛けてきた。
「おはよう。ちゃんと課題やってきた?」
「朝の第一声がそれ? まあいいや、おはよ」
振り返ると、そこにいたのはやはり委員長こと有間都古だった。今日も今日とてキリッとした表情である。
「宿題ならやってきたよ。委員長は」
「やったに決まってるでしょ。……そっか、ちゃんとやって来たんだ。まだなら土下座すれば見せてあげなくもなかったんだけど」
「何だよそれ」
都古は毎朝のようにこうして歩に挨拶しに来る。それ自体は嬉しいくらいなのだが、口の悪さのせいでよく減らず口の言い合いになってしまうのが困りものだった。
都古としばらく雑談していると、部活も終わったのか段々生徒が増えてきた。やがてドアが開き、一人の女性が入ってきた。
「おはようございます、皆さん。席についてくださいね」
「あ、浅上先生だ。じゃ戻るわね」
都古が自分の席に戻っていく。入って来たのは黒い服の女性教諭だった。
杖をついているが足取りは確か。名を浅上藤乃という彼女は、歩のクラスの担任である。
噂で聞いた所によると昔の事故で視力を失ったらしく、完全に盲目というわけではないが、杖やコンタクトレンズがなければ日常生活が難しいレベルのようだ。
ちなみに藤乃は男女問わず生徒から大きな人気があった。女子からは親しみ易く親身になって相談に乗ってくれる性格から。男子に関しては、その整った美貌と柔らかな雰囲気、何より豊満な身体つきからすれば理由を考えるまでもない。もちろん、歩もその中の一人である。
教壇に立った藤乃が点呼を取っていく。全員居る事を確認してから生徒を見渡した。
「はい、皆さんいらっしゃいますね。今日はまず皆さんにお知らせがあります。実は、今日から皆さんと一緒にこの教室で勉強されるお友達がいらっしゃいます」
──つまり、転校生がいると。
わっ、と教室が沸く。どうやら誰も知らなかったらしく、男か女か、どんな子だろうと近くの席の相手と話し合う。
(……転校生? へえ、どんな人だろ)
今まで自分のクラスに転校生が来た事のない歩も、御他聞に漏れずわくわくしていた。男の子でも女の子でもいいから仲良くなれるといいなあ、などと呑気に思う。
思っていた、のだが──
「はいはい、静かに。……それではどうぞ、入ってきて」
藤乃の呼び掛けに応じて開いたドア。
その少女を見て、歩の思考が固まった。
(…………はぁ!??)
彼女は、銀髪を揺らしながら教室へと入ってくる。
整った顔立ちに外国人らしいスタイル。あまりの少女の美しさに、ざわついていた教室が静まり返る。
コツコツと教壇まで歩み寄る彼女は、やがて中央で止まり、生徒たちへ向き直った。その後ろで藤乃が黒板にチョークで名前を書いていく。
カタカナで書かれたその名前は、歩にとってはもう慣れ親しんだ名前。
藤乃に促され、彼女が名乗る。
「────カレン・オルテンシアと言います。本日より皆さんと共に勉学に励むコトになりました。以後、宜しくお願い致します」
腰を曲げて頭を下げる。
また背筋を伸ばした時には、教室内が弾けていた。どう見ても外国生まれの、人生でそう何人もお目にかかれないような美少女の登場に歓声が爆発する。
(ああ、そう……サプライズって……)
引きつった笑みを浮かべる。
壇上のカレンは、そんな歩だけを見つめていた。
そんな感じでカレン編でした。思った以上に長くなってしまった。
カレン編では出会いや過程に尺を取ってみましたがどうでしょうか。そのぶんエロが薄くなってしまったので、そのうちエロ要素メインのカレンを書きたいと思います。
次は橙子さんか攻略済みキャラか、もしかしたらそれ以外かも。
そろそろマンション外も開拓していきたい。題名「ハーレムマンション」だけど学校とかでもハーレム作っていいよね?
どのキャラクターの話が読みたいですか?
-
月姫より「姫アルクェイド」
-
月姫より「有間都古」
-
Fateより「美綴綾子」
-
Fateより「セラ&リズ」
-
空の境界より「浅上藤乃」