※この作品はR-18です。

BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√   作:デスイーター

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Chapter3/盗掘部隊ーBattle of Heodeningsー
転機ーConversionー


『離脱(ログアウト)、完了しました』

 

 無機質な機械音声(マシンボイス)が響き、俺の意識が覚醒する。

 

 気付けば、俺は自宅の『操作席』の中に身体を預けていた。

 

 軽く自己診断をかけてみるが、特に異常は見られない。

 

 無事、【遺跡】から現実へ帰還出来たようだ。

 

「怜二……っ!」

 

 俺が身体を動かす前に操作席のハッチが開き、血相を変えた双葉が俺の方を覗き込んで来る。

 

 双葉は見るからに顔面蒼白で、今にも倒れてしまいそうな気配がする。

 

 俺はゆっくり身体を起こすと、そのまま双葉を抱き締めた。

 

「あ……」

「……大丈夫だ。俺は、此処にいるよ」

「れい、じ……わたし、うぅ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!」

 

 腕の中で直に俺の心音を聞いた双葉は、堰が切れたように泣き出し始めた。

 

 胸元に顔を擦りつけて泣き続ける双葉はいつもより何処か小さく思えて、昔の事を思い出すようだ。

 

 俺はそのままぎゅ、っと双葉を強く抱き締め、双葉は俺の腕の中でひたすらに泣き続けた。

 

 

♦

 

 

「………………ごめん。怜二」

「いや、いい。俺が双葉を不安にさせたのは事実だしな」

 

 ひとしきり泣いた後、求めに応じるまま寝室で身体を重ねて、ようやく双葉は落ち着きを見せた。

 

 今回、俺は前回に引き続き死ぬ一歩手前まで追い詰められた。

 

 あの時八木澤が救援に来てくれなければ、そのままジャビットに殺されたか、もしくは俺(・)で(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)可能性が高い。

 

 正に九死に一生を得た出来事、と言える。

 

 短期間で二度も俺を失うかもしれない出来事を体験してしまい、双葉のキャパシティがオーバーフローしてしまったのである。

 

 現実で俺と再会し、尚且つ身体を重ねて俺の存在を実感してようやく、揺れに揺れた双葉の精神は平静を取り戻す事が出来たのである。

 

 双葉は前回俺と身体を重ねた事で、ある意味では味を占めたのだ。

 

 要は、俺との一体感を得て安心する感覚を、双葉は欲しているワケだ。

 

 俺が傍にいるという感覚を手っ取り早く得る方法が性交である事は、否定しようがない。

 

 身体を繋げ、共に快感を得る。

 

 そのプロセスを経て、双葉は自らの精神を安定させているのだ。

 

 彼女を抱く前であれば、双葉は俺が言葉をかけて傍にいるだけでも我慢出来た。

 

 しかし、一度抱いてしまった以上彼女の説(・)得(・)には同様の手段が必要になるという事だ。

 

 そして俺としても、双葉の極上の肉体を前に据え膳を我慢出来る程、男を捨ててはいない。

 

 結果として、身(・)体(・)で(・)説(・)得(・)す(・)る(・)という今の状況が成り立っているワケだ。

 

 ともあれ、これでなんとか双葉と話(・)が(・)出(・)来(・)る(・)状態が整った。

 

 シャワーで色々なものを流した後、別の服に着替えた俺達は双葉の部屋で状況整理の話し合いを始めた。

 

「……つまり、八木澤さんが助けに来てくれたのは双葉が救援信号を送ってくれたお陰って事か」

「ええ、とにかく四方八方に飛ばしまくって、唯一反応してくれたのがあの人だったの。怜二が腕とかを飛ばされてからは私パニックになっちゃって、八木澤玄治があの場に向かっていた事にも気付いてなかったんだけど」

 

 それは仕方ない、と思う他ない。

 

 なにせ、俺は四肢をもがれ後は嬲り殺されるだけ、という状態だったのだ。

 

 そんな状況で、双葉が冷静さを保てるワケがない。

 

 パニックに陥ったのも、致し方ないと言えるだろう。

 

「なら、改めて八木澤さんにはお礼を言いに行かないと。俺は伝聞でしかあの人の事は知らないんで、悪いがデータを出して貰えるか」

「うん。分かった」

 

 双葉は慣れた手つきで仮想キーボードを操作し、俺の手元に八木澤玄治のプロフィールが展開された。

 

 ──八木澤玄治。年齢52歳、探索者序列八位。探索部隊【ミョルニル】隊長──

 

 ──通常の探索の他、仮想の治安維持活動にも貢献しており、幾人もの凶悪な【賞金首】の拿捕も行っている──

 

 双葉が寄越したデータには八木澤の簡単なプロフィールが掲載されており、彼が指揮する探索部隊【ミョルニル】についての情報も記されていた。

 

 どうやら【ミョルニル】は通常の探索以外にも、ギルドに懸賞金をかけられた凶悪な犯罪者、【賞金首】の拿捕に特に力を入れているらしい。

 

 【賞金首】は文字通り、ギルドが懸賞金をかけてでも対処しなければならないと判断した者達である。

 

 基本的に、【賞金首】は生死問わず(デッド・オア・アライブ)。

 

 拿捕でも殺害でも高額報酬が貰えるのは確かであり、【ミョルニル】が今のようにその規模を拡大出来たのもその、懸賞金のお陰で資金が潤沢だったという側面もある。

 

 懸賞金はその人物の危(・)険(・)度(・)に合わせて増額され、ジャビットのようなS級【賞金首】ともなると膨大な金額の懸賞金が懸けられている。

 

 【ミョルニル】の経歴を見る限り相当数の【賞金首】を捕らえており、正に治安維持の専門家と言える。

 

 【都市自警軍】とも協力関係を結んでおり、議会やギルドへのコネも強いようだ。

 

「……成る程。取り敢えず、後でコンタクトを取ってみるか。菓子折りも用意した方がいいかな」

「……そうね。でも、その……」

 

 歯切れの悪い双葉を見て、俺は言わんとするところを察して苦笑する。

 

「分かってる。八木澤さんへの対応は俺の方でやっておくよ」

「…………ごめん」

「いいさ。そこまで手間でもないし」

 

 俺は双葉を安心させるように声をかけながら、八木澤さんへのコンタクト方法を思考していく。

 

 双葉はその極端な価値観から、人付き合いは苦手────否、コミュニケーション障害のレベルにある。

 

 その為、事務仕事自体はできるものの、交渉ごとには全く向いていないのだ。

 

 故に、こういった時に頭を下げるのは主に俺の役目である。

 

 こればかりは双葉の性質を鑑みても仕方のない事なので、やるべき事をやるだけである。

 

「……それから、あいつ等の────【ヒャズニング】の情報も知りたい。今後関わってしまった時に、奴らに対処する為に」

「了解(ヤー)。今出すわ」

 

 双葉はすぐさま俺の頼んだタスクを実行し、仮想スクリーンに映し出された情報を読み上げていく。

 

「……盗掘部隊【ヒャズニング】。中規模の盗掘者が集まった、盗掘者達の中でも名が知れた勢力。【技術遺産】の横流しの他、【遺跡】内で女性の探索者を捕らえての人身売買にも手を染めている、か……」

「で、リーダーはフェネジールで副隊長があのジャビットか。実力を考えればジャビットの方が隊長っぽいけど、あいつは指揮とか無理そうだから当然と言えば当然か」

 

 【ヒャズニング】に関するデータに目を通すが、矢張り隊長のフェネジールの【固有兵装】と、ジャビットという特級戦力で成り立っている組織のようだ。

 

 メンバーの練度は、そう高くない。

 

 俺でも、そこまで苦戦せずに1対多数を行えるくらいには。

 

 だが、此処に姿を消す【固有兵装】を持つフェネジールや隔絶した力を持つジャビットが加わってしまうと、一気に劣勢に陥るのは目に見えている。

 

 奴が操る【シュラウド・ラビット】は、ピーキーな事で有名な【ラビットシリーズ】の一機である。

 

 その脅威は、既に俺が身を以て理解している。

 

 ……しかし、残念ながら今後【ヒャズニング】との因(・)縁(・)は回避するには限度がある。

 

 ジャビットが戦場から逃走する刹那、俺に向けた悪意は本物だ。

 

 恐らく俺がフェネジールを撃退した事を本人もしくは組織のメンバーから聞いたのだろうが、それにしたってあの悪意の量は異常である。

 

 今後、俺達に絡んで来る可能性はどうしても否定出来ない。

 

 だからこそ、情報収集は必須と言えた。

 

 それでも俺だけではジャビットの脅威は拭い難いものがあるが、当(・)て(・)はなくはない。

 

 遭遇しないのが一番ではあるものの、一度遭遇したら逃走が難しい以上、対策を考えないワケには行かないのだから。

 

「取り合えず、準備が出来たら政志のトコに行こう。あいつなら、力になってくれる筈だ」

 

 

♦

 

 

 ────同日、某所

 

「……チッ……」

「……っ!」

 

 少年、ジャビットは舌打ちをしながら少女の身体を蹴飛ばした。

 

 全裸に剥かれて血と精液に塗れた少女は苦し気な声をあげ、勢い良く弾き飛ばされる。

 

 少女はまだ10代前半といった様子であり、各所に残る痣が痛々しい。

 

 自分達のボスから獲物を与えられた事で、順(・)番(・)待(・)ち(・)をしていた男達は我先にと少女に群がり、各々の欲望を突き立てて行った。

 

 少女は仮想のスラム、無名都市(アノニマス・シティ)に住む人間であり、即ちい(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)も(・)誰(・)も(・)気(・)に(・)留(・)め(・)な(・)い(・)存在である。

 

 法の及ばない、アンダーグラウンドな世界で生きる住民。

 

 力こそが全てであるそんな世界に置いて、少女は様々な意味で弱(・)す(・)ぎ(・)た(・)。

 

 鬱憤の捌け口を探していたジャビット達に拉致され、思うが侭に凌辱された。

 

 一度ジャビットの改造陰茎で抉っている為、今も秘所からは止めどなく流血が続いている。

 

 しかし彼女を犯す男達はそんな事は関係ないとばかりに少女を嬲っている為、少女の命の灯が消えるのはそう遠くはなさそうだ。

 

 これは、こ(・)ち(・)ら(・)側(・)の世界ではよ(・)く(・)あ(・)る(・)光(・)景(・)の一つに過ぎない。

 

 弱者が淘汰され、強者に踏み躙られて消えていく。

 

 弱肉強食こそが、法の及ばない世界における唯一無二のル(・)ー(・)ル(・)なのだから。

 

「………………」

 

 ジャビットは嬲られる少女を何気なく見ながら、その目に危険な光を宿していた。

 

「…………クク……」

 

 そして、ジャビットの唇が盛大に歪む。

 

 その瞬間を運悪く目撃してしまった男は内心で盛大に震えあがり、恐怖から逃げるようにその場から退いた。

 

 それだけ、今のジャビットからは危険極まりない空気が漏れ出ていたのである。

 

「うちの坊やを泣かした責任は、きっちり取って貰わないとねぇ……何に置いても、どんな手段を使ってでも、制(・)裁(・)しないといけねぇよなぁ」

 

 ジャビットの目からは、既に理性の光は消えていた。

 

 その目に宿るのは、凶悪極まりない狩猟者の本能。

 

 自らの子を傷付けられた、野生の獣の如き凶暴性だった。

 

「きひ、きひひひひひ……」

 

 ジャビットの手元には、二枚の写真がある。

 

 一つは、怜二の写真。

 

 そして、もう一つは────双葉の、写真だった。

 

「地(・)獄(・)を、見せてやるぜぇ。自分が誰を敵に回したか分かるように、徹底的になぁ」

 

 無法の街で、鬼が牙を研いでいる。

 

 その牙が振るわれる時は、そう遠くはないようだった。




 はい、てなワケで第三章です。

 こっからは【遺跡】探索から別の方向へと話がシフトしていきます。

 お楽しみに。
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