※この作品はR-18です。

BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√   作:デスイーター

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旧友ーbondsー

 

「よぉ怜二、久しぶりじゃねぇか」

「……あぁ、元気にしてたか。政志」

 

 俺は待ち合わせ場所であるスズシロ・シティの中央広場で、久方ぶりに会う友人と言葉を交わした。

 

 茶色のトレンチコートを纏ったそいつの胸には【都市自警軍】のロゴが入ったバッジが付けられており、彼の所属を明確に示している。

 

 こいつは須藤政志(すどうまさし)、俺の親友と呼ぶべき間柄の男だ。

 

 最初に政志と出会ったのは学習機関(アカデミー)時代、俺がよく訪れる仮想の廃墟での事だ。

 

 当時の政志は彼女にフラれたばかりらしく、傷心を紛らわせる為にあの場所を訪れて黄昏ていたらしい。

 

 話してみると意外と馬が合い、結果的に連絡先を交換し、暇があれば共に出かける程度の仲にはなっていた。

 

「フン、サボったりしてないでしょうね? アンタの事だから、その辺で女を引っかけて安宿にしけこむとかやってそうだし」

「流石に仕事中にそんな事はしないさ。最近は女日照りが続いてるし、良い出会いが欲しいもんだよ」

 

 双葉の毒舌に、政志はからからと笑いながらそう応じた。

 

 基本的に俺とノインさん以外へは大なり小なり毒を吐く双葉だが、政志への言葉には何処か親しい相手へ対する気安さがあった。

 

 政志もそんな双葉の態度を分かっているとばかりに受け入れており、にこにこと笑っている。

 

 知り合って暫くした後、双葉にも政志を紹介したのだが、双葉は知っての通り俺とノインさん以外の人間を全て敵扱いしている為、最初はこいつの事を蛇蝎の如く嫌っていた。

 

 双葉の人間不信は俺と仲良くする人間を見ただけで、即こ(・)い(・)つ(・)は(・)怜(・)二(・)を(・)利(・)用(・)し(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)る(・)と思い込み、その人間を俺から遠ざけようとするレベルにある。

 

 特にあの頃は双葉は人間関係に関して完全に自暴自棄になっており、表面上取り繕うという事すらしていなかった。

 

 これまでの俺とノインさんの頑張りで、なんとか初(・)対(・)面(・)の(・)男(・)性(・)に(・)は(・)い(・)き(・)な(・)り(・)毒(・)を(・)吐(・)か(・)な(・)い(・)レベルにまで落ち着いているが、相手が女性であれば双葉は顔を見るなり激しい毒を吐く。

 

 これは双葉の価値観が男性=怖いもの=触れたくない、女性=怜二を狙っている奴=外敵、となっている為である。

 

 しかし、度重なる邂逅で政志が俺に敵意はなく、人を利用出来るようなタイプの人間でない事をようやく理解し、ある程度その存在を許容するようになったのだ。

 

 それでもそれまでの経験による人間不信はそう拭い切れるものではなく、政志との会話では平然と毒が混ざるのが常である。

 

 しかし政志は生来の大らかさもあって、そんな双葉の対応も笑って受け入れている。

 

 政志には双葉の許可を得て彼女の過去を簡単に説明しており、今の双葉の状態も理解してくれている。

 

 俺にとっても双葉にとっても、彼のような理解者がいる事は非常に大きな意味がある。

 

 その為口ではなんと言おうと、双葉は政志を身(・)内(・)としてカウントし俺の傍にいる事を許しているのだ。

 

 とはいえ、政志は多忙な【都市自警軍】。ある意味自分で仕事時間を選べる探索者(おれ)とは違って、中々プライベートな時間を取る事は難しい。

 

 その為、会うのは実に数週間ぶりだったりする。

 

「しかし、やっぱ社会人になると時間は取れないもんだな。ま、分かってた事だが」

「そうだな……たまに、【学習機関(アカデミー)】時代が懐かしく感じるよ」

「だな」

 

 俺と政志は、そう言って笑い合った。

 

 政志と知り合った時、俺は【学習機関】に所属していた学生だった。

 

 【学習機関】は戸籍登録している未成年を適齢期まで教育を施し、希望職種に応じたスキルを学習し、必要資格を得る為の場所である。

 

 その為、小等部では基本的な知識や一般教養を学ぶが、中等部からは各々で科目を選択して単位を取っていく事になる。

 

 中等部へ上がる際、所属する学生は【能力適性検査】と呼ばれる試験を受け、そのデータを元に適性職業をリストアップ、職業選択の参考にするシステムが確立されている。

 

 俺がその適正検査を受けた結果は【探索者】がA評価で、【警備員】がB評価、【戦技教導官】がC評価と、軒並み戦闘に関わる職種で高い評価を得ていた。

 

 その外にも蓄えていた知識から【先史文明研究者】、【書庫(バンク)管理者】、【遺物鑑定人】などもB以上の評価を受けていたが、身体を動かす方が性に合っていた為【探索者】を選んだワケである。

 

 ちなみに、【学習機関】は【探索者】に進む事をあまり勧めたがらない傾向がある。

 

 収入が安定し難いのは勿論であるが、実際の命の危険があり、【遺跡】探索を舐めてかかった初心者【探索者】が屍を晒す機会はざらにある。

 

 昨日【遺跡】でジャビットに殺された女性探索者も、探索者になって間もない新人(ニュービー)だったようだ。

 

 【花園】での修練を終え、【海底都市】に乗り出して次のステップへ向かおうとした矢先の出来事だったのだろう。

 

 彼女を救えなかった事は、今でも悔やまれる。

 

 ともあれ、そういったケースは決して珍しいものではない。

 

 探索者がエネミーや盗掘者の手にかかり帰らぬ人になる事など、よくある事だ。

 

 そういった経緯から、【学習機関】では近年科目の中に戦闘に関する科目を用意したワケだ。

 

 【探索者】は学業成績が振るわない者でもなる事が出来、一攫千金を狙える職種でもある為、学生時代から目指す者が多い職業である事は紛れもない事実である。

 

 その為、【学習機関】は初心者【探索者】の生還率を少しでも上げる為、戦闘科目の導入に踏み切ったワケである。

 

 俺と政志はまさにその戦闘に関する科目の一つ、【シュミクラム戦闘】の科目を偶然にも共に履修していたのだ。

 

 まあ、俺が【探索者】、政志が【都市自警軍】を目指していた以上、必須科目である【シュミクラム戦闘】を履修していたのは当然ではあったのだが。

 

 ともあれ、学友である事を知ってからは時間があれば政志と俺はシュミクラムの訓練に打ち込んだ。

 

 【学習機関】で借り受けられる模擬闘技場(アリーナ)を頻繁に利用し、共に切磋琢磨していたものだ。

 

 あの頃は、楽しかった。

 

 今でも色褪せない、掛け替えのない思い出である。

 

「で、用件を聞こうじゃないか。改まって『話がしたい』なんて言うんだし、なんかあるんだろ?」

「……ああ、掻い摘んで説明するぞ」

 

 ともあれ、こうして政志に会いに来たのは単に旧交を温め合う為ではない。

 

 俺は一呼吸置き、今までの経緯を政志に説明した。

 

 

「…………成る程な。よりにもよって【ヒャズニング】、しかも【牝喰い鬼(マンイーター)】とは……厄介な奴に目を付けられたな」

 

 話を聞き終えた政志は、難しい顔でそう告げた。

 

 矢張り、ジャビットの悪行は『都市自警軍』所属の政志としても無視するワケにはいかない類のものであるようだった。

 

「ああ、そうだな。実際に対峙してみて、分かった────あれは、ヤバイ。今の俺じゃあ、逆立ちしたって勝てる筈のない相手だ。あそこで八木澤さんが来てくれなきゃ、俺は今此処にはいなかっただろうな」

「……あんまり怖い事言うなよ、と言いたいところだが……こいつに関しては、俺も同意見だと言わざる負えないな」

 

 政志ははぁ、と溜め息を吐くと手元の画面に資料を展開して話し始めた。

 

「ジャビット=アンサーペ、年齢不明。盗掘部隊【ヒャズニング】に所属しており、その最高戦力でもある。過去数十件以上に昇る強姦殺人の容疑者であり、女性に対しての過剰なまでの敵意が確認されている」

 

 しかも、と政志は続ける。

 

「その戦闘力は、推定【序列上位者】と同等かそれ以上。戦場で出会えば、まず命はない。事実、奴と遭遇した探索者は一部の例外を除いて悉くが嬲られた後殺されている。女性探索者を捕まえて仲間に輪姦させたり、四肢を削ってスラムの浮浪者に与えるなんて事もやってやがる。筋金入りのイカレ野郎だ」

「…………だろうな」

 

 俺はあの【出来】での、ジャビットの常軌を逸した言動を思い返す。

 

──女の悲鳴を聞くのは、最高に気持ち良いぜぇ……っ! これだから、女連れの男を嬲り殺すのは止められねぇんだよなぁ……っ! ヒャーハハハハハハハハハハハハッ!──

 

 ……あいつは俺のシュミクラムの四肢を削りながら、それを見て悲鳴をあげる双葉の声を聴いて明確な性的興奮を覚えていた。

 

 改造した陰茎で女性を犯して挙句殺した事といい、まともな神経を持った人間でない事は一目瞭然だ。

 

 良心の欠片も存在しない外道ぶりを見せつけた超級の凄腕が、自分達を狙っている。

 

 想像するだに、ゾッとしない話だった。

 

「……しかし、なんで目を付けられたのかね。聞いた経緯じゃ、八木澤のオッサンの方に目を付けそうなもんだが、何か思い当たる事はあるか?」

「…………そんな事を言われてもな。いや、待てよ」

 

 政志の言葉を聞き、そういえば、とあの戦場での奴の言葉を再度思い返した。

 

──────そうか。お前、フェネジール(坊や)に手を出したのか──

 

 …………確かに、奴はそう言った。

 

 八木澤と一戦交えた後、何処からか通信を受けたジャビットは、俺の方を見ながらそう呟いたのだ。

 

 坊(・)や(・)とは恐らく、文脈や状況からして奴とかち合う前に戦ったフェネジールの事だろう。

 

 となれば、ジャビットは味方を傷付けられた報復として俺を狙っている事になる。

 

 俺がその考えを伝えると、政志は苦虫を嚙み潰したような顔をした。

 

「…………そういう事か。確かに、【牝喰い鬼】は自分のトコの隊長にえらくご執心だって情報がある。割と、有名なんだよな。【ヒャズニング】の隊長は、自走式の地雷のようなものだって」

 

 実はな、と政志は続ける。

 

「フェネジール=ジルベルトの方は隙が多くて【固有兵装】にさえ気を付ければ戦うのはそう難しくないんだが、一度手傷を負わせてしまうとジャビット=アンサーペが即座に報復に出るもんだから、適(・)当(・)に(・)い(・)な(・)す(・)のが一番ってのが通例なんだよ。まあ、それがまた難しいんだけどな」

「……そうだな」

 

 フェネジールは、決して雑魚というワケではない。

 

 引き際を見極める状況判断能力も悪くないし、何より【固有兵装】の能力もかなり強力だ。

 

 しかし、ジャビットと違い決(・)し(・)て(・)勝(・)て(・)な(・)い(・)相(・)手(・)というカテゴリーには入らない。

 

 フェネジールは地力はそう悪くないのだが、その慢心癖の所為で詰めが甘く、自身の【固有兵装】の能力を過大評価していた。

 

 だからこそ、時間がかかったにせよ綺麗に反撃を決める事が出来たのだ。

 

 しかし、それ故に超級の凄腕(ジャビット)に狙われる事になろうとは────確かにこれは、自(・)走(・)式(・)地(・)雷(・)というのは言い得て妙だろう。

 

「けど、過ぎた事はしょうがない。要は、これからどうするかを話し合いたいんだ」

「それはそうだが……いや、待てよ」

 

 だが、それを嘆いた所で何が変わるワケでもない。

 

 俺は建設的な話をしようと政志に話を振り、政志はそ(・)れ(・)が(・)出(・)来(・)た(・)ら(・)苦(・)労(・)は(・)し(・)な(・)い(・)と言わんばかりの表情をしていたが────どうやら、何か当(・)て(・)があるらしかった。

 

「怜二、繰り返し確認するけど……八木澤のオッサンにも一言お礼が言いたい、って事だったよな」

「…………ああ、そうだが。それが、どうかしたのか?」

 

 俺の返答を聞き、政志はにかっと笑みを浮かべた。

 

「だからそのついでに、八木澤のオッサンに【牝喰い鬼】の事を相談してみろよ。あのオッサンなら、大丈夫だからさ」

 

 聞けば、政志は八木澤とは顔見知りで、アポイントメントも簡単に取れるのだという。

 

 俺はこの機会を逃す手はないと考え、政志に導かれるままに八木澤との会談をセッティングした。





 BALDR SKY原作の彼は須藤雅で、こっちは須藤政志です。関係があるかって? それはまだ言えないのだよ。
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