※この作品はR-18です。

BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√   作:デスイーター

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策略ーTrickー

「貴様、こんな所で何をしている……っ!?」

 

 俺を親の仇の如く睨みつけるフェネジールは、俺に対して微妙に逃げ腰になりながらも有りっ丈の敵意を剥き出しにして来る。

 

 彼としては恫喝のつもりなのだろうが、前回の痛手が余程堪えたのだろう。

 

 いつでも逃げ出せるように腰を低くしながら、周囲を見回していた。

 

 ……恐らく、俺に仲間がいないかを気にしているのだろう。

 

 索敵プログラムを奔らせているらしく、俺と向かい合っていながらも心此処にあらずといった様子が見て取れた。

 

「俺が何処で何をしていようが、お前には関係ないだろう? お前こそ、何をしてるんだよ」

 

 俺は軽い挑発のつもりで、フェネジールにそい問いかけた。

 

 索敵プログラムで周囲に敵がいない事を確認出来たのだろう。

 

 フェネジールはそれまでとは打って変わって、自信に満ち溢れた表情に変わった。

 

 本当に、分かり易い奴だ。

 

「ハッ、下等生物如きに俺様のプライベートを明かす必要などないわ戯けが……っ! それともなにか? 俺様の力に敬意を表して仲間にしてくれとでも言いに来たのか?」

「まさか。お前の力の程度は前回で知れたよ。仲間になんか、なるワケないだろう?」

「貴様ァ……っ!」

 

 俺のあからさまな挑発に、フェネジールの顔が怒気で歪む。

 

 しかし感情を爆発させる前に何かに気付いたのか、途端ににやにやしながら口元を歪めている。

 

「くく、随分と威勢が良いようだが……貴様、ジャビットの奴にズタボロにされたのだろう? 大方、俺様を通してジャビットに命乞いをしに来たんじゃないか? ええ?」

 

 ────食いついた、と俺は内心ほくそ笑んだ。

 

 フェネジールは恐らく、俺がジャビットに惨敗した事を知っている。

 

 そして、フェネジールはジャビットという極大戦力を自(・)分(・)の(・)力(・)だと考えている節がある。

 

 ならば、無意味なまでに自信過剰なフェネジールがジャビットに惨敗した俺が自分に命乞いをしに来た、という思い込みをするのは至極当然と言えた。

 

「……そうだな。正直、あいつの相手はもう後免被りたい。金銭で片が付くなら、そうしたい所だ」

「くくく、物分かりが良いじゃないか。いいだろう、話を付けてやる。付いて来い」

 

 フェネジールは意気揚々と、俺が付いて来ると信じて疑わない様子で歩き始めた。

 

 俺はそんなフェネジールの後を付いて行きながら、双葉からの直接通話を受ける。

 

≪予想通り、仲間を呼び集めてるみたいね。そこかしこに直接通話を飛ばしてるわ。多分、仲間を集めて怜二を袋叩きにするつもりでしょうね≫

≪だろうな。その証拠に、俺の方を時々見ながら笑いが漏れ出ている。こいつ、本当に分かり易いな≫

≪あんな規格外の戦力を抱えてるんだもの。自信過剰が天元突破してるんでしょうね≫

 

 けど、と双葉は続ける。

 

≪今回はそこに、思い切り付け込みましょう。敵に容赦する程、私達は甘くないわ≫

 

 

♦

 

 

「よし、この辺りでいいだろう」

 

 フェネジールに付いて行った先にあったのは、無数のガラクタが重なる廃棄場だった。

 

 廃棄されたシュミクラムやその武装、機能不全を起こしたガイノイド等、雑多なジャンクがそこかしこに散らばっていた。

 

 【無名都市】の外れにあるこの場所は街の喧騒からは遠く離れており、人の気配は殆どない。

 

 何(・)か(・)をやるには、絶好の場所と言えた。

 

「さぁて、貴様との交渉だが────乗るワケがなかろう馬鹿めが……っ! 貴様は此処で、無残な屍を晒す事になるのだからな……っ!」

 

 フェネジールの号令で、俺を囲むように無数のシュミクラムが瓦礫の影から姿を現わした。

 

 そのシュミクラムの規格は【海底都市】で俺が倒した【ヒャズニング】のそれと同じもので、奴の手勢である事は明らかだ。

 

「フハハハハハハハハハ! こんな所にまでノコノコと付いて来るとは、貴様は筋金入りの大馬鹿野郎だなぁ……っ! まさか、俺様があんな真似をした相手を見逃すとでも思っていたのかぁ……っ!?」

 

 手勢を呼び寄せたジャビットは、最早勝ったつもりのようで盛大に高笑いをあげている。

 

 そんな状況下で、俺は……。

 

「────いいや、勿(・)論(・)そ(・)ん(・)な(・)事(・)は(・)思(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)さ。だからこそ、此処まで来てやったんだからな」

「な、に……?」

 

 ────笑みを、浮かべた。

 

「こういう、事だよ……っ!」

「な……っ!?」

 

 不意に、爆発音が響く。

 

 何処からともなく放たれた砲撃が、フェネジールの背後にいた機体の頭部を撃ち貫いたのだ。

 

 それに続くように無数のシュミクラムが現れ、砲撃によって次から次へとフェネジールの手勢を打ち倒していく。

 

 瞬く間にフェネジールの手勢は殲滅され、俺の背後には十数機のシュミクラムが立ち並んでいた。

 

 それらの機体には、雷と槌を組み合わせたマークが刻まれている。

 

 それは、【ミョルニル】の隊章。

 

 彼等は俺が引き寄せた餌(・)を吊り上げる為に控えていた、【ミョルニル】の部隊だった。

 

「馬鹿な……っ!? 索敵プログラムには、何も反応はなかった筈……っ!」

「残念だが、こっちにゃ特級プログラマが付いてるんでね。プログラムの誤魔化しなんてお手の物だよ」

 

 そう、俺は初めから、ヒ(・)ャ(・)ズ(・)ニ(・)ン(・)グ(・)の(・)部(・)隊(・)を(・)誘(・)い(・)出(・)す(・)事を目的に行動していた。

 

 幾らフェネジールでも、こちらに護衛がいると分かれば軽挙妄動は慎むだろう。

 

 だからこそ、俺はフェネジールに索敵プログラムを使わせる事で、俺の味方はいないと誤(・)認(・)させた。

 

 他でもない、双葉の手腕によって。

 

 双葉は予め、【ミョルニル】の部隊に特殊な隠蔽処理を施していた。

 

 前回の接敵で解析したフェネジールの機体の【固有兵装】、【完全迷彩】を元にした隠蔽処理をだ。

 

 流石に姿だけでなく電子体反応まで完全に隠蔽するオリジナルのそれよりは劣るものの、汎用索敵プログラムを潜り抜ける程度なら何の問題もない。

 

 何せ、双葉は特級プログラマである。

 

 普通の技術で作られたプログラムが、彼女の作製した特性プログラムに勝てるワケがない。

 

 特級プログラマの名は、誇張ではないのだ。

 

 仮想の法則を自在に組み替える、魔法の如き技術を持つ者。

 

 それが、特級プログラマ(ウィザード)なのだから。

 

「さて、お仲間はこれで全滅したな。大人しく、御縄に付いて貰おうか」

「き、貴様ァ……ッ!」

 

 フェネジールには既に無数の銃口が向けられ、奴の反応速度では咄嗟の移行も上手くは行かないだろう。

 

 余計な事をすれば、即座にワイヤーネットで捕らえる。

 

 そういう準備を、俺達はやっていた。

 

 仲間は全滅し、周囲には敵しかいない。

 

 フェネジールの命運は、最早風前の灯火と言えた。

 

『……っ! 怜二、上……っ!』

「……っ!? な……っ!?」

 

 ────瓦礫の上から降って来た、一機の兎(・)の存在がなければ。

 

『────ッ! ────ッ!』

 

 その兎(・)は包囲のど真ん中に飛来し、蹴りでフェネジールを狙っていた銃を斬り飛ばした。

 

 突然の乱入に呆気に取られた『ミョルニル』のシュミクラムは、対処が一瞬遅れる。

 

「チィ……ッ!」

「……っ、待て……っ!」

 

 その一瞬の隙を逃さず、フェネジールは逃走を図る。

 

 すかさず追おうとする『ミョルニル』の隊員達だが、その前に立ちはだかるように『兎』……ジャビットのシュミクラム、【シュラウド・ラビット】が道を塞いだ。

 

『────ィ、────ッ!』

 

 シュラウド・ラビットはその赤いカメラアイをこちらに向け、ただ純粋な殺意を叩きつけて来る。

 

 言葉を発さないのは、フェネジールを狙われた怒りからだろうか。

 

 不気味な沈黙を保ったまま、シュラウド・ラビットが機体を沈み込ませ、跳躍する。

 

『────ァ!』

 

 空高く跳んだシュラウド・ラビットは、そのまま【ミョルニル】の機体に向かって急降下。

 

 その脚部のブレードを以て、機体胴体部を真っ二つに切断。

 

 【ミョルニル】の機体は二つに裂かれ、爆散した。

 

 一瞬の内に起こった惨事を他所に、当の本人であるシュラウド・ラビットは再び跳躍し、上空から獲物を見定めている。

 

 そして、俺は上空に跳躍した【兎】を見据え────。

 

「────かかった」

『────ッ!?』

 

 ガキン、と硬質な音が響く。

 

 シュラウド・ラビットの脚部に鉄の重しが出現し、奴を重力の楔に縫い付けたのだ。

 

 重しを付けられたシュラウド・ラビットは態勢を崩し、落下。

 

 瓦礫の山に墜落し、尚も身体を縛る重(・)し(・)によって地面に縫い付けられた。

 

「残念だが、お前を相手にするのに無策で挑むなんか馬鹿な真似はしないさ」

 

 これが、俺達の仕掛けた第二の策。

 

 即ち、【模造電子体(デコイ)】を用いた罠である。

 

 実は、今この場にいる【ミョルニル】のシュミクラムは、その殆どが張りぼてだ。

 

 双葉がその技術力によって作り出した、精巧なダミーである。

 

 フェネジールを手勢を倒したのは、隠蔽を解除しないまま近くに潜み続けた本当の【ミョルニル】の部隊である。

 

 敵を全て砲撃で倒したのも、出て来たシュミクラムが【模造電子体】であると気付かせない為の仕(・)込(・)み(・)である。

 

 …………実は、フェネジールの捕獲というのはあくまで第二プランであり、本命の作戦はフェネジールを餌(・)にしてジャビットを釣り出す事である。

 

 ジャビットのフェネジールへの執着は、常軌を逸している。

 

 そんな彼がジャビットの危機を知れば、迷わず駆け付けて来るのは目に見えていた。

 

 だからこそ、ジャビットが襲来する前提で作戦を組んだのだ。

 

 双葉の作り出した【模造電子体】は、最低限の戦闘能力しか備えていない。

 

 だが、その真価は破(・)壊(・)さ(・)れ(・)た(・)時(・)にこそ発揮される。

 

 この【模造電子体】は破壊されると同時にプログラムが組み変わり、自身を破壊した敵を縛り付ける重し(デッドウェイト)となる。

 

 シュラウド・ラビットはまんまとその罠に嵌まり、こうして無力化されているのだ。

 

 【ラビットシリーズ】の真価はその常識外れの機(・)動(・)力(・)にあり、機体そのもののパワーはそこまで高くはない。

 

 その突破力はあくまで機動力あってのものであり、一度こうして重しを付けて地面に縫い付けてしまえば、抵抗の余地はない。

 

 飛べない鳥は、堕ちるしかないのだから。

 

「さて、無駄話する時間が惜しい。終わらせるぞ」

 

 俺はシュミクラムに移行し、トマホークを射出。

 

 大型のミサイルはゆっくりと弧を描くようにして飛び、シュラウド・ラビットに着弾。

 

 凄まじい爆発音と共に、奴の機体は粉々に消し飛んだ。

 

『────ぃ、────ぁ』

 

 爆風が晴れ、爆心地が露わになる。

 

 トマホークの爆発は無数の瓦礫を巻き込み、奴の残骸は瓦礫に紛れて飛び散っており、見聞出来るような状態ではない。

 

 しかし、目を凝らせば所々にシュラウド・ラビットのパーツが飛散しており、奴が撃破された事は間違いないだろう。

 

 少々呆気なくはあったが、成果は成果だ。

 

 用意していた作戦により、ジャビットは無力化され討伐には成功した。

 

 後に残るのは、その結果だけである。

 

『怜二、今の爆発で瓦礫が崩れそうになってるわ。巻き込まれない内に逃げた方が得策よ』

「ああ、もう此処に用はないしな。行くか」

 

 俺は双葉の助言を受け、協力してくれた『ミョルニル』の隊員達にお礼を言って、その場を後にした。

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