BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√ 作:デスイーター
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開始ーStarting Firstー
──夢の中、俺の視界には一人の少女が映し出されていた。
橙色の髪をした、幼い女の子。彼女は何処か虚ろな目で、こちらを見据えている。
ともすれば何にも興味を持っていないような、焦点の合っていないぼんやりとした瞳。
しかし、俺にはそれが……酷く、魅力的に思えたのだ。
──こんにちは。僕は、えっと……──
俺はその女の子に声をかけようとして近寄ると、女の子はびくり、と震えて後ずさる。
それと同時に、視界が歪む。
夢から覚めるのだろう。
普段の夢が覚める時と同じように、周囲の景色がぼやけていく。
肉体が、覚醒に向かっている。
それを実感し、俺はそのまま夢の終わりを何気なく見据えた。
──え……?──
刹那、奇妙なものが見えた。
周囲の景色が薄れていく中、その
白い、何処までも白い部屋。
その中央には円形の容器があり、その
──緑色の液体に満ちたその容器の中には、幼い頃の俺によく似た子供が寝かされていた。
まるで、実験動物のように。
──……っ!?──
そんな光景を見てしまった俺は夢の中で声なき悲鳴をあげ、夢の世界から覚醒した。
「……っ!? 最悪の、夢見だな……」
ベッドから跳び起きるように目を覚ました俺は、未だぼやけている意識に脳チップ経由で活を入れ、意識を覚醒させる。
脳チップの刺激によって眠気が消えていき、目が冴えて来る。
体調の
俺は八雲怜二、19歳。
体脂肪率は平均並、腹筋は少し割れているが全体的に細身。
身長は高めで、髪色は黒の黄色人種。三白眼の為か、気の弱い相手には敬遠されがち。
……不必要な情報はカット。脳チップ、身体、精神共に
結果、活動に支障はないと判断する。
時刻は六時半。そろそろ、起きても良い頃合いである。
俺は身支度を適当に整え、ダイニングに向かおうと扉を開ける。
「あ……」
「……双葉か。えっと……おはよう」
開けた扉の先には、今まさに俺の部屋に入ろうとしていた橙色の髪の少女……双葉が立っていた。
彼女、
セミロングの橙色の髪に、整った顔立ち。
胸は非常に豊かであり、黒いキャミを押し上げる深い胸の谷間は気付けば視線を向けてしまうので注意しなければならない。
キャミと同色の黒のショートパンツからは白い生足が剥き出しになっており、こちらもこちらで目の毒だ。
普段はキャミの上に羽織っている黒のパーカーは起きたばかりである為か脱いでおり、白い肩や細い腕がばっちり見えている。
家の中だからこその軽装であるが、同年代の平均より遥かに豊満な肉体を持つ双葉がそれをやると、どうしても目線が泳いでしまう。
そして、その視線に気付かない程双葉は鈍くはなかった。
「……怜二、胸……触りたい?」
「い、いや、そんな事ないぞ……っ! ないからっ、なっ!」
「……そう……」
双葉は何処か残念そうな声で呟き、押し黙る。
俺が慌てて否定したのは、双葉に性的な目を向けてしまったという後ろめたさ……からではない。
もし俺が此処で肯定の返事をすれば、双葉はそれを
双葉は紆余屈折あって、俺に対し強烈に依存している。
彼女の世界は、自分と俺、そしてもう一人の同居人のノインさんの三人だけで閉じているのだ。
だから、双葉は俺を傍に置いておく為なら文字通り
それこそ、俺が双葉に身体を求めれば二つ返事で了承してしまいかねないのだ。
……健全な関係性でない事は、常々理解している。
しかし、双葉は俺へ依存する事でそのアイデンティティを保っている面がある。
もし俺が彼女を拒絶すれば、衝動的に命を絶ってしまってもなんらおかしくはない。
だからこそ、俺は一線を超えないよう立ち回りつつ、彼女の心を護っていかなければならないのだ。
それが彼女を
「…………ごめんね、変な事言って。さ、もうご飯出来てるよっ! 早く行こ!」
「……ああ」
双葉は今見せた暗い表情が嘘であるかのような満面の笑みを浮かべ、俺の手を引いて歩きだした。
この笑顔は、双葉の仮面だ。
先程は起きたばかりで俺と二人きりになった事もあって仮面を被り切れていなかったが、双葉は普段俺達の前でこの笑顔の仮面を被る事で場の空気を盛り上げようとしてくれている。
本来コミュニケーションが不得手な双葉が、精一杯やってくれている努力なのだ。
たとえ無理をして笑顔を取り繕っているのだとしても、そんな双葉の行動を否定する権利は俺にはない。
彼女なりに、俺達を心配させまいとしているのは分かっている。
ならば、俺はそんな双葉の頑張りを、俺なりに支えてやるだけだ。
「あら、おはよう。二人揃って、仲が良いわね」
リビングに着くと、テーブルには先客がいた。
ロングヘアの茶髪を揺らした、彫りの深い顔立ちの美女。
この家のもう一人の同居人にして俺達の保護者でもある、ノインさんだ。
元々この家は彼女の持ち家であり、俺達はそこに住まわせて貰っている形になる。
ちなみに、俺と双葉はそれぞれノインさんの養子という事になっている。
だから自分になにかあればこの家は俺達が使っていいのだと、昔ノインさんに言われた事がある。
勿論、彼女に
ノインさんの服装はいつもと同じ緑系のキャミソールの上に白衣を纏い、キャミソールと同色のショートパンツを履いている。
双葉と似たような服装選びではあるが、これはノインさんが双葉に似せたのではなく、双葉がノインさんの服装を参考に服を選んでいる為だ。
ノインさんも双葉と同様、いや……それ以上に豊満な体型なので、胸元が大きく開けられたその服装は中々に刺激的である。
幾ら母親代わりとは言っても血は繋がっていないので、ちょっとした仕草にドキッとした事は多い。
もっとも、それを双葉に見咎められると冷たい視線を向けられる為、中々に困った家庭環境ではある。
「もう朝ごはん出来てますから、持って来ますね」
「ええ、分かったわ。怜二、手伝ってあげて」
「ああ」
俺はノインさんに言われるが侭、双葉の後を追ってキッチンへ向かう。
キッチンには既にエッグトーストとコーヒー、サラダが盛り付けられた皿があり、あとはお盆に乗せて持っていくだけの状態である。
「じゃあ、怜二はそっちのお盆持って貰える?」
「了解した」
双葉の指示通り、俺は朝食をお盆に乗せ、双葉と共にリビングへ向かおうとする。
「……ねえ、怜二」
だが、お盆を運ぼうとしたその刹那、双葉が俺を呼び止めた。
双葉は何処か不安を湛えた眼で、俺を見詰めている。
「……どうしても、
その事か、と俺は得心する。
俺は
今回、俺は晴れてギルドより【遺跡】の深部、【未踏領域】へ進む許可を得た。
【未踏領域】は【遺跡】の中でも特に危険な領域で、【
そこへ向かおうというのだから、双葉が心配になるのもある意味当たり前である。
しかし、俺としては此処で否というワケにはいかない。
「……ああ、その意志は変わらない。お前には負担をかけて悪いとは思うが……」
「……ううん、いい。私は、怜二のサポートだもん。怜二がやるって言うなら、付き合うよ」
双葉はそう告げ、笑顔の仮面を被り直す。
彼女自身何も思わない筈もないが、こうして形だけでも納得してくれた事には感謝しかない。
俺自身、何故此処まで【遺跡】の攻略に拘るのかは分からない。
けれど、
そして、それだけではないのだ。
……【遺跡】を攻略したその先に、何が待っているかを知りたい。
そういった探究心もまた、俺の原動力である事は否定出来ないのだから。
「さ、行って食べよっ! ノインさんも、待ってるんだからっ!」
「……ああ」
俺はそう言って急かして来る双葉の言葉に従い、お盆を持ってリビングへ向かう。
リビングで朝食を待っていたノインさんは俺達の様子に何か気付いた様子だったが何も言わず、笑顔で俺達を迎え朝食を摂った。
俺は表面上笑顔でノインさんと言葉を交わす双葉の様子を見ながら、ノインさんの気遣いに感謝しつつ、少しでも雰囲気を盛り上げようと会話に加わった。
……お世辞にもコミュニケーションが得意とは言えない俺が加わって場の空気が盛り上がったかは、察して知るべしだが。
俺達はノインさんに
そこには無数のチューブに繋がれた、二つの大きなポッドがある。
これが、この家に存在する
双葉の場合は操作席に入った後、そのまま実体を操作席の中に残してサポートを行う。
しかし俺の場合は操作席を通じて実体を電子体に変換して
無線でも没入する事は出来るが、操作席を利用する事で緊急時の
俺は隣の操作席に双葉が入った事を確認すると、自分も操作席に身を横たえる。
そして操作席の蓋が閉じた事を確認し、脳チップに命じてプログラムを起動する。
──
現実の肉体が解けて行き、俺の構成情報が電子の海へと流れ込む。
やがて俺の身体は現実から消失し、電子の海へとその身を投じていった。
はい、てなワケで『BALDR GENESIS~Revive of Future World』、双葉ルートスタートです。
長らくお待たせしました。これより、双葉ルートの連載を開始します。
本編より少々雰囲気が違うのは、これがバルドシリーズでいう「最初のルート」だからです。
バルドフォースにしてもBALDR SKYにしても、最初のルートがどういったものだったか、原作をプレイした方々ならわかる筈。
私から言えるのはそれだけです。これ以上はネタバレになってしまうのでね。まあ、察しの良い方は気付くでしょうが。
では、BALDR GENESISのルート1、双葉編を愉しんで下さい。