※この作品はR-18です。

BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√   作:デスイーター

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交歓ーUnrest Dayー

「……なんか、新鮮な感じ。こうして怜二と二人だけで遊びに出かけるの、いつ以来だったかな」

「最近は探索者業にのめり込んでいたからなあ。純粋に遊びにってのは、かなり久しぶりじゃないか?」

 

 俺は照り付ける太陽の下、双葉と石畳の街路を歩いている。

 

 今いるのは、俺達の住まうスズシロ・シティではない。

 

 ────此処は水上都市【ヴィーアマーレ】。

 

 水路が網の目のように張り巡らされた、中(・)世(・)風(・)と呼称される街並みの観光都市である。

 

 街路はコンクリートではなく石畳が敷き詰められており、道端に植えられた草花の匂いが通行人を楽しませる。

 

 観光都市という街柄上店屋の数が多く、特に水路の傍には雑多な店が立ち並んでいる。

 

 屋台のような出店も各所に存在し、客引きの声でそこかしこが賑わっていた。

 

 この街は水路を中心に設計されており、街を巡る水路にはゴンドラやクルーザーが行き交っている。

 

 普通の都市であれば移動には【転送装置】を使うのが常だが、この街は観光都市というコンセプトもあり、【転送装置】の数は最低限に抑えられている。

 

 その代わりに、ゴンドラやクルーザーといった乗(・)り(・)物(・)が用意されているのだ。

 

 一瞬で移動する【転送装置】ではなく、ゴンドラやクルーザーを使ってゆっくり街の景観を楽しんで欲しいというコンセプトなのだろう。

 

 こちらとしても観光に来たのは事実なので、目一杯その思惑に乗るつもりだった。

 

 …………こうして双葉と二人で別の街にやって来たのは、元を正せばノインさんの助言が切っ掛けである。

 

 例の作戦の後家に帰った俺達の様子を見るなり、ノインさんは溜め息を吐きながら「たまには二人で気分転換して来なさい」と言って来たのだ。

 

 どうやら、ノインさんは俺達が此処最近戦い詰めで精神的にも疲弊している事を見抜いていたらしい。

 

 確かに、最近は【統率個体】との遭遇戦を始め、命の危機に繰り返し遭遇する展開が続いた。

 

 死の恐怖と直面するのは実際相当なストレスで、あの無力感は今でも忘れ難い。

 

 吹っ切ったと思っても、心にしこりが残っているのは事実だった。

 

 ノインさんはそんな俺達の精神状態を察して、気分転換に外出するようアドバイスしてくれたのだ。

 

 俺も双葉もノインさんのそんな助言に一も二もなく同意し、今に至る。

 

 …………言外に、責(・)任(・)を(・)取(・)る(・)と言ったからにはたまには恋人らしい事をして来なさい、という言葉が聞こえた気がしたのも理由の一つではあるが。

 

 既に双葉を抱いてしまった以上、彼女の人生を丸ごと背負う覚悟はとうに出来ている。

 

 自分がいなければ双葉が生きていけない事も、充分に理解しているつもりだ。

 

 だからこそ、ただ肉体関係を結ぶだけで終わらせるのではなく、こうして普(・)通(・)の(・)恋(・)人(・)がやるようなデートもさせてやりたい。

 

 そういった思いが、俺に今回の外出を想い切らせたのだ。

 

 双葉もどうやら今回は気合いを入れて来たらしく、服装もいつもと異なっていた。

 

 黒地の前結びTシャツに、白系統のキャミソール。下には青のフレアスカートを履いており、日除けに白の帽子を被っている。

 

 全体的に爽やかな印象の、良いコーディネートの私服だった。

 

 普段の黒いキャミとショートパンツのスタイルもあれはあれで良いものだが、色合いや露出度を普段とガラリと変える事でまた違ったイメージの双葉を見る事が出来た。

 

 それだけでも、このデートに誘った甲斐があると言える。

 

「これからどうする? 怜二に任せるけど」

「そうだな……じゃあ折角だし、出店で何か買ってからゴンドラで水路を見て回るか」

「うん。それでいいよ」

 

 双葉はこういう本格的なデ(・)ー(・)ト(・)の経験がない為か、何処かおっかなびっくりとした様子がある。

 

 基本的に家に引き籠もり、仮想を介して外部と繋がっている双葉は外出する事自体が稀だ。

 

 精々食事の買い出しや俺のギルドへの付き添いで出る程度で、それ以外は専ら家で家事かプログラム弄りをやっている。

 

 当然他の街に行った事はないし、観光の楽しみ方にも覚えがない。

 

 だからこそ、行き先を完全にこちらに任せているのだ。

 

 俺は当然そうなるだろうと予想していたので、幾つかのプランは用意してある。

 

 …………まあ、俺もデートの経験などある筈がないので、精々仮想経由で人気の観光スポットやその楽しみ方等を吟味した上でプランを実行に移すまでだが。

 

 観光ガイドには、『ゴンドラに乗りながら見る景色は最高』という一文があり、観光系のスレッドにも観光して来た本人のレビューが幾つも乗っていた。

 

 レビューの内容に『出店で買ったものを食べながら乗るゴンドラは最高』と書かれていた為、今回はそれに乗った形になる。

 

 俺は近くの出店でベーコンとチーズで彩られたアーティチョークというピッツァと炭酸飲料を購入し、双葉を連れてゴンドラに乗り込んだ。

 

 

♦

 

 

「……賑やかな街ね」

 

 双葉はゴンドラの上で周囲の景色を眺めながら、そう呟いた。

 

 俺は今、双葉と共にファーストフードを食べながらゴンドラに乗り込んでいる。

 

 ゴンドラは自動操縦タイプと船頭が漕ぐタイプがあり、人嫌いな双葉の事を考慮して俺達は自動操縦タイプのゴンドラに乗り込んでいた。

 

 このゴンドラは水路を一定のコースで回り、指定したポイントで下りる事が出来るようになっている。

 

 途中で進路変更する事は出来ないが、一度目的地に着いた後であれば再度目的地を設定し直す事も出来る。

 

 利用時間によって料金は加算されるものの、そこまで大きな出費というワケではない。

 

 その分ゴンドラが進むスピードは非常にゆっくりではあるが、元々景色を楽しむ為に乗ったのだから何の問題もなかった。

 

 クルーザーでの移動となれば豪勢なサービスが受けられるが、今日はこうやってゆったりとした時間を過ごす事が目的である為、特にそちらを利用するつもりはない。

 

 そもそもクルーザーの利用料金はゴンドラとは文字通り桁が違う為、過剰な出費を嫌ったという面もあるのだが。

 

 ともあれ、双葉もゴンドラの乗り心地は満更でもなさそうだった。

 

 人間嫌いの双葉は基本的に人混みは嫌いである為、俺と二人だけでゆったりとした時間を過ごせるこのゴンドラでの航行は本人の趣味にも合致したのだろう。

 

 双葉自身人目を惹き易い容姿をしている為、尚の事だ。

 

 実は双葉には、自分の容姿が優れているという自覚がない。

 

 俺以外に同年代の友達はおらず、唯一の知り合いと言えるのが政志くらいである為、自(・)分(・)が(・)他(・)の(・)女(・)性(・)と(・)比(・)べ(・)て(・)ど(・)う(・)見(・)え(・)る(・)の(・)か(・)という自覚するような経験をした事がなかったのだ。

 

 特級プログラマである双葉は無理に『学習機関』に通う必要もなかった為、当然ながら学友と呼べる相手はいない。

 

 今まで教育機関に通った事はなく、集団行動の経験もない為、そもそもの対人関係が希薄過ぎるのだ。

 

 だから外に出た時に自分に注がれる視線については単にスタイルが良いから男共が見てるんだろうくらいにしか考えておらず、自分の容姿そのものはごく平均的なものだと思い込んでいる。

 

 当然ながら、双葉の容姿は美少女と言って差し支えないものである。

 

 スタイルの良さは勿論の事、鮮やかな橙の髪や不健康な生活を送っていても尚きめ細かい肌、整った顔の造詣。

 

 それらを併せ持つ双葉の容姿は、平均を遥かに超えていると言って良い。

 

 知らぬは本人ばかり、とはこの事だ。

 

 下手をすれば、俺が双葉を抱いた事に関しても胸(・)が(・)大(・)き(・)い(・)か(・)ら(・)喜(・)ん(・)で(・)く(・)れ(・)た(・)ん(・)だ(・)ろ(・)う(・)くらいに考えていても不思議ではない。

 

 実際は、そんな事はない。

 

 双葉は誰もが認めるであろう美少女であり、彼女レベルの容姿を持つ者など早々いない。

 

 唯一の例外がこの前出会った有栖と言えるが、あれはどちらかといえば容姿の良さのベクトルが違う。

 

 双葉が美少女と呼ばれる系統の容姿ならば、向こうは美人、と呼ばれる類の容姿である。

 

 有栖の美貌は完成され過ぎていて、まるで絵画の彫刻のような硬質な美を覗かせる。

 

 容姿の方向性が違う以上、二人を比べても詮無い事だ。

 

「へいらっしゃいっ! うちの目玉はホタテ貝のソテーバター風味だ。損はさせないよっ!」

「おっと、こっちは名物のイカ墨パスタだ。中々いけるぜ」

「冷たいデザートは如何かな。塩ソフトクリーム売ってるよ」

 

 水路に立ち並ぶ出店が、我先にと近くを通る俺達に声をかけて来る。

 

 俺は手元に表示されたメニューの一覧に目を通し、ホタテ貝のソテーをクリックする。

 

 すると次の瞬間にはゴンドラの上に木皿に乗ったホタテ貝のソテーが出現した。

 

 このゴンドラは、近くの出店のメニューを検索してクリックする事で、指定した商品が手元に転送される仕組みとなっている。

 

 料金はその都度口座から引き落とされる為、スムーズな買い物が行えるのだ。

 

 水路脇の出店の店主達が通りがかるゴンドラに声をかけるのも、そういう理由である。

 

 店先で買うだけでなく、その場で注文して速やかに商品を転送で受け取るのが観光地のを上手く回るコツだ。

 

 時間が限られている以上、その時間は有効に使うべきである。

 

「はい、あーん」

「あ、あーん……」

 

 転送されて来たソテーを見た双葉は、にっこりと笑って串に刺したホタテ貝のソテーをこちらに寄せて来ており、俺は若干恥ずかしくなったものの差し出されたソテーを口にした。

 

 口の中でホタテ貝の甘さとバターのシンプルな味付けが絶妙にマッチし、芳醇な香りが口一杯に広がった。

 

 俺が味を噛み締めながら料理を咀嚼していると、双葉が顔をぐぐっと突き出して来る。

 

 それで何を求めているかを察した俺は、観念して串に刺したソテーを双葉の口元に近付けた。

 

「あ、あーん……」

「ふふ、あーん」

 

 悪戯っぽい笑みを浮かべた双葉は、ぱくりとソテーを口にした。

 

 嬉しそうな顔でソテーを食べた双葉は、にこりと笑って俺の方に近付いた。

 

「……楽しいね、怜二」

「……ああ、そうだな」

 

 双葉は俺の返事を聞くとこてり、と自分の頭を俺の肩に乗せる。

 

 俺は双葉の好きにさせ、味を占めた双葉がしなだれかかって来る。

 

 俺は肩にかかる心地よい重みを感じながら、双葉と二人の船旅を楽しんだ。

 

 

♦

 

 

「今日は楽しかったね、怜二」

「ああ、俺も楽しかったぞ。双葉」

 

 時刻は既に夜、街頭が水路を照らし、幻想的な光景を映し出す。

 

 俺達は水路にかかる橋の上を二人並んで歩きながら、今日のデートの感想を言い合っていた。

 

 こうして考えてみると、良い気分転換になった事は間違いない。

 

 双葉の魅せる微笑みが、その考えを裏付けていた。

 

「……また、来れるといいな」

「そうだね。また、来よう」

 

 俺達はそう言って、帰路に付いた。

 

 今日の事は、良い思い出になった。

 

 また来たいと、俺も双葉も思えるくらいには。

 

「────ヒャハハハハハハハハハ! 随分お気楽にしてるじゃねぇか、テメェ等」

 

 ────その声を、聞いてしまう前までは、だが。

 

「お、前は……」

 

 橋の先に、人影が見える。

 

 フリフリのドレスのような、ゴスロリチックな服装。

 

 少女と見紛うような、ほっそりとした容姿。

 

 そして、その顔に凶悪な表情が張り付いたそいつは、紛れもなく……。

 

「……何故お前が生きている、ジャビット……ッ!?」

「さあ、何でだろうねぇ? ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハッ!」

 

 ────あの時死んだ筈の【賞金首】、ジャビット=アンサーペに違いなかった。




 というワケで半ば分かってたネタバラシ。
 
 カラクリについてはまた次回に
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