※この作品はR-18です。

BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√   作:デスイーター

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略取ーAbbreviationー

 

「馬鹿な……お前は、あそこで死んだ筈じゃなかったのか……」

 

 俺は視界の先に立つジャビットを見据え、呆然と立ち尽くす。

 

 あの時、俺は確かに爆散するジャビットの機体、【シュラウド・ラビット】の姿を見ている。

 

 トマホークが直撃し、機体は木っ端微塵になったのだ。

 

 ライフゲージが減って除装されたならともかく、あれで脱出する隙などある筈がない。

 

 シュミクラムが破壊された場合、全身が破壊されるより先にライフゲージが尽きれば強制的に戦闘用の電子体から通常の電子体に戻る。

 

 このプロセスを除(・)装(・)と呼び、除装された場合は搭乗者は即死しない。

 

 だが、ライフゲージが尽きる前に頭部を破壊されたり全身を一気に破壊されたりすれば、除装される間もなくそのまま死亡する事が殆どだ。

 

 あのトマホークには、一撃で戦闘用電子体(シュミクラム)を全損させるだけの威力があった。

 

 ましてや、相手は防御性能に難のある【ラビットシリーズ】。

 

 あれをまともに受けて、生きていられる筈がない。

 

「くくく、わかんねぇよなあそうだよなぁ? 人に頼って殺した筈の僕が生きてるのが、何でなのか理解できねぇよなぁ? いいぜぇいいぜぇ、今の僕は気分がいいからなぁ。種明かしをしてやるよ」

 

 そんな俺を他所に、ジャビットはせせら笑いを浮かべながら話し始める。

 

「僕のシュミクラム、シュラウド・ラビットの【固有兵装】はもう知ってるよなぁ? 【生ける経帷子】は触れた対象を死亡状態と誤認させる【固有兵装】だが、こいつにはもう一つの使い方があるのさぁ」

 

 ニィ、とジャビットは口元を歪め、続ける。

 

「【生ける経帷子】は着せた相手を死亡状態と誤認させる……なら、既(・)に(・)死(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)相(・)手(・)に(・)着(・)せ(・)た(・)場(・)合(・)はどうなると思う?」

「……っ!? まさか……っ!」

 

 ジャビットの言葉に、俺はある可能性を思い浮かべた。

 

 経帷子の意味は、死(・)装(・)束(・)。

 

 これを生者に着せる事で、AIにその対象が死んだように誤解させるのが奴の【固有兵装】、【生ける経帷子】の能力である。

 

 ならば、その死装束を死(・)者(・)に着せた場合どういう現象が起こるのかという事だ。

 

 生者を死者と誤認させる死装束を、死者に着せた場合の結果。

 

 それは、即ち……。

 

「────そう、死(・)者(・)を(・)生(・)者(・)と(・)誤(・)認(・)さ(・)せ(・)る(・)のさぁ! つまり、こいつを着せた死者は生(・)き(・)た(・)電(・)子(・)体(・)として認識される……っ! 当然、少し着(・)飾(・)っ(・)て(・)やれば、俺の真似事も出来るんだよ……っ!」

「……っ!」

 

 ────死者を、生者のように操る事が出来るという事だ。

 

 電子体反応も死亡状態から生存状態に誤認させられているのであれば、レーダーが騙されていても不思議ではない。

 

 まさか、相手が死(・)者(・)を(・)動(・)か(・)し(・)て(・)い(・)る(・)などとは想定すらしていないのだから、双葉の眼を欺けたのも頷ける。

 

 あの時明かされた【生ける経帷子】の能力から、こんな使用方法を想定するなど無理がある。

 

 自分達はまんまと、奴の手に嵌められたワケだ。

 

「僕に狙われたお前があのオッサンを頼りにするのは分かりきってたんでなあ。別段あのオッサンもついでに始末しても良かったんだが、流石にそうなると僕もただじゃ済まなくなる」

 

 だから、とジャビットは続ける。

 

「手っ取り早く、お前等の傍から護(・)衛(・)を遠ざけさせる為に一芝居打ったのさ。あのオッサンにもしてやられたが、今はテメェに地獄を見せるのが最優先なんでなあ」

 

 くくく、とジャビットは低く笑いながら悪意に塗れた眼で俺と双葉を睨みつける。

 

 双葉を上から下まで嘗め回すように凝視したジャビットは、こよみよがしに舌舐めずりをしてみせた。

 

「くく、想像以上に良い女じゃねぇか。胸もデケェし、良い声で鳴きそうだ。犯し甲斐がありそうな糞牝だなオイ」

「……っ!」

 

 明確な情欲の籠った視線を向けられ、双葉が自分の身体を抱き締めるようにして庇った。

 

 俺も双葉にそんな視線を向けられて黙っていられる筈もなく、挑発と分かっていてもジャビットを有りっ丈の敵意を以て睨みつけた。

 

「ひひひ、良い敵意じゃねぇか。流石に、自分の女を狙われちゃあ心穏やかじゃいられねぇよなぁ」

 

 けどよぉ、とジャビットはほくそ笑む。

 

「分かってんのか、テメェ。此処は仮想じゃないからお得意のシュミクラムの使えねぇし、スズシロでもねぇからあのオッサンや【都市自警軍】の助けもねぇ。そんな状態で、僕からどうやって逃げ切るつもりだ? ええ?」

「く……」

 

 ジャビットの威圧に、ジリ、と思わず足を竦ませた。

 

 【ミョルニル】は既にジャビットを死んだものとして扱っており、俺の護衛は既に外されている。

 

 更に、この【ヴィーアマーレ】には観光都市の性質上、【都市自警軍】は駐留していない。

 

 都市議会が景観を重視して武装した治安維持組織を置く事を嫌がった為、都市が雇った警備員が定期的に巡回しているだけだ。

 

 その巡回も主な店屋通りや観光名所が主であり、こんな街の外れの街路にまではやって来ない。

 

 そもそもアーク直下の【都市自警軍】とは練度が違う為、凶悪な犯罪者相手の抑止力としては心もとない。

 

 それでもこの都市の治安が悪化していないのは、単純に此処で騒ぎを起こす馬鹿がいないからだ。

 

 この都市は例年凄まじい数の観光客が訪れており、動く金銭の量もかなりのものである。

 

 他都市との貿易交渉にも積極的であり、この都市で騒ぎを起こせば多方面の都市議会から睨まれる事になる。

 

 法の恩恵を受ける一般市民は言わずもがな、盗掘者等にとっても多方面から多額の懸賞金をかけられ警備部隊を差し向けられれば、たまったものではない。

 

 ────だが、ジャビットはそ(・)の(・)程(・)度(・)の(・)事(・)で二の足を踏むような相手ではない。

 

 奴の悪名は既に知れ渡っており、相当額の懸賞金が既にかかっている。

 

 今更手配が強化されたところで、ジャビットにとっては何が変わるワケでもない。

 

 精々、自分の手で殺す人間の数が若干増える程度だ。

 

 つまり、ジャビット相手の場合に限り、この街の立場を盾にした抑止力には期待出来ないという事だ。

 

 改めて、俺はジャビットと対峙する。

 

 仮想でない以上シュラウド・ラビットの脅威こそないが、そもそもジャビットには通常の電子体でシュミクラム用の槍を蹴り上げられるだけの驚異的な身体能力がある。

 

 通常の電子体の身体能力は生身のそれを反映させている以上、ジャビットはあの膂力を生身でも使用出来るという事になる。

 

 奴の身体能力は、最早異常の域にあると言って良い。

 

 シュミクラム用の槍は当然ながらシュミクラムが扱う事を前提に作製されている為、通常の電子体でどうこう出来るような重量ではない。

 

 だが、ジャビットはその槍を難なく扱い、正確に標的に当てて見せた。

 

 常識外れの身体能力と、それを完全に制御する精密性。

 

 最早、人間と呼ぶべきかどうかも分からない怪(・)物(・)。

 

 それが、ジャビット=アンサーペという生(・)き(・)た(・)災(・)害(・)の本質なのだ。

 

 戦(・)闘(・)は、論外。

 

 そも、圧倒的な身体能力を持つジャビット相手に戦(・)闘(・)をした所で、前回の二の舞になるのが目に見えている。

 

 故に考慮すべきは、目晦ましをした上での離脱。

 

 どうにかその隙を探る為に、なるべく会話を続ける必要があった。

 

「お前は────」

「────おっと、お喋りは此処までだ。此処からは、私刑(リンチ)の時間だよ」

「が……っ!?」

 

 ────だが、そんな魂胆などジャビットにはとうに見抜かれていた。

 

 ジャビットは目にも止まらぬ速さで俺の懐に飛び込み、足払いを敢行。

 

 そのまま肘打ちを腹に叩き込み、俺の身体は成す術なく押し倒された。

 

「ぐぁ……っ!」

「くく、踏み付けられる気分はどうだ? いっそマゾに目覚めちまった方が楽かもしれねぇなぁ」

 

 ジャビットは俺の右腕を足で踏み付け、体重を乗せて抑えつけて来る。

 

 腕を踏み躙られる痛みを必死に耐え、なんとか態勢を立て直そうとするが、それを許す奴ではなかった。

 

「くははっ、無駄な抵抗ごくろーさんっと……っ!」

「がぁぁぁぁぁ……っ!」

 

 ジャビットはすかさずもう片方の足を思い切り踏み抜き、俺の左腕を地面に縫い付けた。

 

 骨の折れる嫌な音が響き、全身を強烈な不快感が襲う。

 

 痛みによる吐き気を堪えながら、俺はなけなしの意地でジャビットを睨みつけた。

 

「…………くくく、腕の骨を折ってやったっつーのにまだ目が死んでねぇとはなあ。根性だけはいっちょ前ってかぁ、オイ」

「や、止めなさい……っ! れ、怜二を離しなさい……っ!」

「……やめ、ろ……双、葉……っ!」

 

 俺に対する蛮行にとうとう根を挙げたのか、双葉が震える身体を押さえながらキッ、とジャビットを睨みつける。

 

 その目には明確な恐怖があったが、それを怒りが上回ったのだろう。

 

 双葉はあくまで毅然とした態度でジャビットと対峙しているが、今この場に置いてそれは逆効果だ。

 

 ジャビットは、自分に牙を剥いて見せた弱(・)者(・)を見逃すような男ではない。

 

「くく、自分の男が壊されるのを見るのは辛ぇよなあ。安心しなよ、コイツを壊すのは一番最後のとっておきだ────テメェを、餌にしてな」

「……が……っ!」

「双葉……っ!」

 

 止める間もなく、ジャビットが動く。

 

 奴は一瞬で双葉との距離を詰めると、鳩尾に拳を叩き込み双葉の意識を刈り取り、その身体を抱きかかえた。

 

 意識を失いぐったりとした双葉を担ぎ上げたジャビットは、俺に向かって凄絶な笑みを浮かべる。

 

「女を返して欲しけりゃ、【無名都市】の【廃棄場】に来な。言っとくが、誰も呼ぶなよぉ? 一人でも余計な奴が付いて来てたら、この女はザーメン塗れの使い古しになっちまうからなぁ。丁度、テメェが見たあの牝みたいになァ」

「ま、て……ぐぁ……っ!」

 

 ジャビットは追い縋ろうとする俺の左足を踏み砕き、そのまま踵を返す。

 

 そして、口元を盛大に歪ませながら見せつけるように意識を失った双葉を抱え直した。

 

「精々、早く追い付いて来るこったな。あんまり遅いと、我慢出来ずにこいつを使っちまうかもしれねぇからなぁ。ま、僕としちゃあそれでも全然構わねぇけどなァ! ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……ッ!」

 

 痛みで立ち上がれない俺を尻目に、ジャビットが双葉を抱えて夜の闇へと消えていく。

 

 俺は己の無力を思い知りながら、立つ事も出来ずに崩れ落ちる。

 

 既に、ジャビットの姿は夜闇の奥へと消えて行った後だった。





 はい、前々から予定していた双葉誘拐イベントです。

 このイベントはジャビットが健在な状態で有栖を連れずに双葉とのデートイベントで【ヴィーアマーレ】に来ると発生します。

 ぶっちゃけ、この√でしか起きないイベントです。

 原作のレイン√のレイン独断専行イベントのようなものです。

 この√はBALDR SKYのレイン√と菜ノ葉√、バルドフォースのミノリ√と月菜√を参考に作ってあるのである程度オマージュしてる部分があるワケですね。
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