BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√ 作:デスイーター
小屋の入口に現れた人影は、頭からすっぽりと黒いフードを被っていた。
しかしそのフードの下からはブーツを履いた白く綺麗な脚が覗いており、その人物が女性……しかも年若い少女である事が伺えた。
フードの奥には、透き通るような青い髪が揺れている。
突然の闖入者に驚いていた男達は、その人物が少女であると知ってあからさまに欲情を剥き出しにする。
そして、幾人かは露出した下半身を曝け出したまま少女に近付いた。
「へへ、嬢ちゃんもこんなトコに来るってこたぁ物好きなんだろう? 折角来たんだ、俺達で可愛がってやるぜぇ」
「これで順番待ちが短く済んで万々歳だな。ははははははっ!」
既に男達の中では、少女をどう組み敷くしか頭にない。
「────耳が腐るわ。まずは、その無様な棒切れからね」
────少女が、腕を振るう。
少女の袖口から何かが飛び出し、近くに立っていた男の下半身に飛来する。
「あ……? ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!?」
男の逸物が鋭利な刃物で斬り裂かれたように切断され、絶叫と共に鮮血が迸る。
周りの男達は何が起こったのか理解出来ず、呆然と立ち尽くす。
「……五月蠅いわね」
「ぎっ、が……っ!?」
その悲鳴を耳障りに思ったのか、少女が再び腕を振るう。
途端、男の首が斜めに両断され、首から離れた頭部がゴトリと床に転げ落ちる。
頭を失った胴体も夥しい鮮血と共にバタリと倒れ、血の海が一面に広がった。
「て、テメェェェェェェェェ……ッ!」
何が起きたかをようやく理解した男達が激昂し、各々が武器を手に取ろうとする。
「──遅過ぎるわ」
「が……っ!?」
「ぐぁ……っ!?」
だが、今更対応した所で少女がそれを許しはしない。
少女が腕を揺らすと袖口のシリンダーからナイフが飛び出し、掌でそれを掴み取る。
そして、近付く男達に向けナイフを一閃。
それだけで、二人の男達の首が胴体と泣き別れ、倒れ伏す。
瞬く間に、二つの首なし死体が出来上がった。
「邪魔ね」
「……ひぃ……っ!?」
死体の首が少女の足元に転がり、末期の視線が少女を射抜く。
それをどうでも良さそうに眺めた少女は、その頭部をサッカーボールのように蹴り飛ばした。
死体の頭部が男達の中心に落下し、彼等に恐怖が伝播する。
欲情に満ちていた彼等の表情は恐れに歪み、目の前に立つ少女をまるで死神か悪魔のように見て怯え竦んでいる。
犯される寸前だった双葉は、その光景を……正確には、その少女を見てとある既視感を覚えていた。
(……こいつ。この容赦のなさといい実力といい、想起出来る事が多過ぎる。何より────こいつの
……そう、双葉にはその少女の声に聞き覚えがあった。
あれは忘れもしない、あの【未踏領域】で……そして、ギルドの前で聞いた声だ。
(……成る程。私は、
双葉の胸に、奇妙な安心感が浮かんで来る。
男達は未だ10人近い数がおり、少女一人では手に余る。
傍から見れば、誰もがそう考えるだろう。
少女の
……だが、双葉は少女の
そんな、確信にも似た予感が双葉の中にはあったのだ。
「ひ、怯むな……っ! 数じゃこっちが有利なんだ、囲めぇ……っ!」
男達は無理やり恐怖を振り払い、武器を手に取り少女に襲い掛かる。
────だが、どちらにせよ意味はない。
何故ならば、此処は既に処刑場。
抵抗にも、諦観にも意義はない。
刑の執行を待つ囚人が、処刑人の刃を防げる通りはないのだから。
「──あは」
一閃。少女の蹴撃と共にブーツから飛び出した刃が、二人の男の足を斬り落とす。
足を失った二人の男はそのまま崩れ落ち、手首は少女に踏み砕かれ粉砕される。
「────あはは」
二閃。少女がナイフを投擲し、別の男の首に刃が突き刺さる。
少女が腕を引くと何かに引っ張られるようにナイフが滑り、その男の首を斬り落としながら隣にいた男の首も纏めて斬り落とした。
「──────あははははははは……っ!」
三閃。少女が腕を振るうと三本のナイフが袖口から飛び出し、三人の男の足に突き刺さる。
痛みで硬直した男達の懐に飛び込み、男の足に刺さったナイフを肉を抉りながら引き抜き、裏手に持った刃でそのまま首を斬り落とす。
瞬く間に五人の男の命が断たれ、二人の男は足を斬り飛ばされた上に手首を粉々にされ、最早行動不能。
「あ、あああ……」
あっという間に残り一人になった男は、最早抵抗する意志を折られ、へなへなと座り込んだ。
「無様ね。屑は屑らしく、ゴミ捨て場で屯していれば良かったのに。そうすれば、少しは寿命が延びたわよ」
「ひ、ひぃ……っ!」
恐怖で腰が抜けたのか、男はガタガタと震えながら後方にずり下がっていく。
額には脂汗が浮かび、その視線はコツコツとブーツを踏み鳴らし自分に近付いて来る少女に固定されている。
近くにいる双葉を人質にしようだとか、そういう余計な考えなど思いつきもしない。
余計な事をすれば、その時点で終わる。
少女から感じる圧は、男にそんな明確な予感を強制的に刷り込んでいた。
この場の支配者が誰かは、最早明らかだろう。
狼藉を働こうとした男達は、報いを受けた。
突如現れた、この死神の如き少女によって。
「ぐぉぉ、いてぇ、いてぇよぉ……」
「たすけ、たすけて……くれぇ……」
少女の視界の隅で、足を斬られ手首も砕かれた男達が、痛みに悶え苦しんでいる。
その様子を見た少女の唇が歪み、無造作に腕を振るった。
「がっ、ぎぃ……っ!?」
腰を抜かしへたり込んでいた男の両の掌に、それぞれナイフが突き刺さる。
ナイフによって男の手は床に縫い付けられ、凄まじい激痛が迸った。
「さて、と」
痛みで身動きが取れない男を尻目に、少女は足のない二人の男に近付いて行く。
そして、懐から小さい刃物────医療用のメスのような代物を取り出した。
「が……っ!」
少女は男を蹴り飛ばして無理やり仰向けにすると、片手一本で男を持ち上げてもう一人の足のない男の上に投げつけた。
そして、こよみよがしにメスを右手に持ち、ハンドル部分を持ってくるくると回転させた。
「折角活きの良い屑肉が二つもあるんだし、ちょっと麻酔なしで帝王切開でもやってみようかしらね。ま、途中で死ぬでしょうけど。失血死かショック死か、好きな方を選ばせてあげるわ」
「ひ、や、やめろ……やめ、やめて、くれ……」
まるで玩具を前にした童女のような笑みを浮かべ、少女は残酷な処刑方法を口にする。
それがハッタリなどではなく、
「聞くワケないでしょう?
「ぎぁ……っ!」
少女は容赦なく刃を滑らせ、男の腹に切れ目を入れる。
そして、そのままメスを無造作に突き刺し、無造作に臓腑を掻きまわした。
「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ! やめ、やめ、やめでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……っ! お、ぼれのはら、掻きまわさないでぐれぇぇぇぇぇ……っ!」
臓器を直接刃でズタズタに引き裂かれ、男はあまりの痛みと恐怖で絶叫する。
腹の中を無遠慮に刃で掻き回され、グチャグチャにされている感覚。
それはそれまでのどんな体験よりもおぞましく、吐き気を催す程の嫌悪感が激痛と共に込み上がる。
「……汚いのは嫌ね」
「が……っ!?」
男が嘔吐しかけていた事に気付いた有栖は顔を顰め、無造作に刃を一閃。
切断された男の首がゴトリと落ち、下敷きになっていたもう一人の男の顔に夥しい鮮血と髄液が流れ落ちる。
「ぎゃあああああああああああああああ……っ!」
目の前で仲間だった男の凄惨な拷問を見せつけられたばかりか、首が斬られそれが落とされる瞬間を間近で目撃してしまい、その男の正気は限界を迎えた。
「あ、あひひ、あひひひひひ……」
正気を投げ捨ててしまった男は目から光が消え、ただ虚空を見上げたまま壊れた機械のような笑い声をあげる。
「つまらないわね」
「が……っ!?」
その様子を見ていた少女は男の顔をブーツで踏み潰し、その笑い声を物理的に停止させた。
「さて、これでようやく静かになったわね」
黒いフードを夥しい返り血で真っ赤に染めた少女は、何事もなかったかのように地面に掌を縫い付けた男の方に向き直った。
たった今凄惨な処刑を行った者と同一人物なのか目を疑う程、少女の声は自然体だった。
声が少し高くなり、多少昂揚状態にあるようだが、その程度。
人を殺した後の後味の悪さはおろか、戦意高揚による過剰な興奮も見受けられない。
その声の調子からは、単に部屋の掃き掃除でも片付けた後のような、そんな自然体な様子が伺えた。
彼女は、殺しをなんとも思っていない。
というよりも、今殺した連中を
少女にとっては、今行った行為は道端のゴミを片付けたという、そういう意味合いでしかないのだ。
男に行った拷問すら、
彼女にとって、今の男達は文字通りの意味で塵芥なのだ。
人間扱いしていない以上、その命を奪う行為に感慨すら抱いていない。
罪悪感も、後味の悪さも、ましてや良心の呵責も、何もない。
あるのはただ、自分の仕事を片付けたという
────壊れている。
性格が悪いとか、常識知らずだとか、そういうレベルではない。
彼女には、倫理観というものが始めから無いのだ。
常識も、ただ
知った上で、自分のルールを優先する。
彼女は、紛れもなくそういう人種だ。
言葉を交わさずとも、分かる。
こいつは、そういう女なのだと。
「うあ、ああ、あああ……」
一歩一歩、近付く女に手を縫い付けられた男が震え怯える。
最早、抵抗の意志など微塵もない。
命乞いすら、思い浮かばない。
今の男の頭にあるのはただ、
こんな恐怖を知ったまま生きているなど、それこそ地獄だ。
いつ、この死神に追いつかれるか分かったものではない。
ならば、今此処で死神の手で速やかに命を刈り取って貰った方が
既に男の精神は、そんな事を本気で考える程に追い詰められていたのだ。
「────ねえ、貴方達の拠点────教えてくれる?」
甘い、死神の声が響く。
男に最早、抵抗の余地はなかった。
はい、一話丸々濡れ場(物理)でした。
この展開はこの√をやる以上絶対やるぞー、と意気込んでいたものです。
ンンン、こういう残虐系ホロコーストを書く快感は何にも替え難いですなあ。