BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√ 作:デスイーター
「……ふう」
一瞬の浮遊感の後、意識を覚醒させる。
周囲には見渡す限りに広がる機械的な青い床が広がっており、各所には何処かに繋がる
此処は
──先史文明の時代、人類は意識のみを仮想空間に没入させ、電子の世界で自由に動く身体を手に入れた……それが今の俺の
仮想空間といえ、高度なAIによるシュミレートによって構築させた仮想は現実となんら変わりはない。
いや、ともすれば現実以上に充実しているのが今の仮想である。
故に、仮想を利用しない人間はまずいない。
仮想は既にもう一つの現実世界であり、最早現実と不可分な存在であるのだ。
だが、意識そのものをアバターと化している以上、電子体になにかあればその影響は実体にも及ぶ。
かつては実体を
つまり、この電子体が破壊されれば、それは俺という人間の
即ち、仮想空間での死は現実世界での死と同義である。
当然、【遺跡】での探索に失敗すれば俺にも同様の結末が待っている。
そういった危険を承知の上で【遺跡】に挑むのが、俺達探索者なのだから。
「──
俺がコマンドを告げると、俺の肉体が解けていきその規模が拡張されていく。
瞬きの内にその変化は終了し、俺の電子体は鋼鉄の肉体へと変貌していた。
──
このプログラムは使用者の電子体を戦闘用のロボットのような外観に切り替え、通常の電子体とは比較にならない戦闘能力を与える。
戦闘が必須となる【遺跡】探索では、必須となるプログラムである。
だが、このプログラムは自身の電子体そのものをロボットの外観に
つまり、損傷を負えばその痛みはダイレクトに使用者に伝わり、破壊されれば最悪死に至る。
ロボットに
決して、軽々しく扱ってはいけないプログラムであるのだ。
俺のシュミクラムの名称は、『ヴァナルガンド』。青と黒をベースとした、スリムな外観の機体である。
全体的なカラーリングはライトブルーが強めで、さながら青い装甲を纏った黒いヒトガタといったところだ。
機体の形状は一般的なシュミクラムと同じく人型ベースだが、胸部には狼を象った装甲を備えており、全体的に鋭角的な印象を受ける。
【遺跡】には特殊な
【遺跡】内部では戦闘が発生する為、万が一にも戦闘能力を持たない民間人が入れないようにする為の処置でもある。
『──怜二、こっちも準備完了だよ』
そこで
通常の没入を行い実体ごと仮想に移動した俺と違い、双葉の実体は操作席に接続されたまま、意識の一部だけをこうして俺のサポートに充てている。
双葉はサポートを行う際、
分割思考が可能かどうかでサポートの精度は格段に変化し、双葉の場合は6つまで思考を分割出来るそうだ。
つまりそれだけ同時に行える作業が多く、人間の形をしたスーパーコンピュータと言っても大差ない
『ああ、始めるぞ』
俺は双葉との通信が繋がった事を確認すると、花のような文様の描かれた転送門の前に立つ。
この門こそ、今回俺が挑む【遺跡】、【
俺ギルドから発行された
「──これより、
『
──
そして開かれた転送門によって俺の身体は門に吸い込まれるようにその場から消失し、目的地へと転送された。
一瞬の浮遊感の後、鋼鉄の足が大地を踏みしめる。
辺り一面は見渡す限りの花畑であり、今俺がいるのは森の広場のような場所であった。
『──座標確認、
「ああ、俺の方も特に問題はない。無事、
俺は周囲に索敵プログラムをかけながら、双葉に応答する。
此処は
【遺跡】へ通じる転送門を潜れば各【遺跡】の接続地点に転送されるようになっており、この接続地点は基本的には非戦闘地帯である。
その為シュミクラムへの移行は此処で済ませても良さそうではあるが、以前に【遺跡】で無法を行う悪質な探索者……
接続地点には
その為、探索者証を持たない盗掘者であろうと転送門を利用する事こそ出来ないものの、出入り自体は出来てしまう為、
故に、探索者が接続地点に転送後にまず行う事は、
もっとも、現在ではギルドが転送門の仕様を変えた事により、接続地点に探索者証を持たない電子体反応が存在する場合、探索者証を通じて探索者に知らせる事が出来るようになっている。
その事は既に盗掘者側も知っている為、現在では接続地点での襲撃というものは殆ど発生しなくなっている。
ただし発生件数は完全な0では無い為、探索者側が自己責任でこうして安全確認を行っているワケである。
「周囲に異常なし。これより探索を開始する」
『
「
俺は双葉から送られて来たマップデータを参照し、彼女が示した移動ルートを脳に叩き込む。
この【花園】は6つの【遺跡】の中では最も難易度が低く、初心者用の【遺跡】とも言われている。
無論俺もこの【花園】の探索は
その為、【遺跡】に挑む度にマッピングをし直さなければならず、一度倒したエネミーも時間経過で
故にマッピングは意味のないものと思われがちだが、双葉であれば話は違って来る。
双葉は
この双葉の高度なサポートがあってこそ、実質
特級プログラマは、仮想の常識を軽々と超越する。
まるで魔法を行使するかの如く、仮想の法則を書き換えていく者達。
故に付けられた名が、
只人とは隔絶した技術を持つ、仮想のエキスパート達である。
「さあ、探索開始だ」
俺はそんな双葉のサポートをバックに、接続地点から【遺跡】内部……鬱蒼と茂る森の小道に足を踏み入れる。
脚部のブースターを起動し、ホバー移動で森の中を進む。
するとそんな俺に気付いたのか、木の影から無数のエネミーが現れる。
現れたのは、鋭い牙を持つ花形エネミー【ファングフラワー】三機と、動く樹木のようなエネミー、【トレントアーム】が二機。
全て、
『手早く蹴散らしちゃって、怜二』
「
俺は双葉の指示を受ける前から準備していた回転する刃、ラディカルスピナーを射出し、回転するブレードが草木を斬り刻みながら滑空していく。
……『遺跡』内部のエネミーは各遺跡ごとである程度モデルの統一性があり、この【花園】の場合はこの二機のような植物を象ったエネミーが多い。
基本的に、その遺跡の雰囲気に見合ったモデルのエネミーが出現しているワケだ。
【花園】のエネミーは耐久はそこそこだが動きが鈍重なタイプが多く、この二機も例によって動きは緩慢としている。
結果、エネミーの集団はラディカルスピナーを回避する事が出来ず、回転刃が直撃。
それにより一気に三機のエネミーが両断され、爆散。
俺はその隙にエネミーに肉薄し、右手に大型のブレードを出現させて振り抜く。
ブレードの一閃により二機のエネミーも袈裟斬りとなり、機能停止。
都合数秒で、五機のエネミーは全滅となった。
『流石に、【花園】の通常階層のエネミーじゃこんなものね。特に機体の調子も問題ないみたいだし、この後はエネミーをなるべく回避していきましょう』
「
今の戦闘は、機体や俺自身のコンディションを確認する為の試運転のようなものだ。
その為敢えてエネミーと遭遇するように行動したのだが、特に問題は見当たらなかった。
後は余計な戦闘を回避しつつ、目的の【未踏領域】まで突っ切るだけだ。
俺は双葉の指示するルートに進み、【遺跡】の奥へと機体を疾駆させた。
その先に何が待つか、知る由もなく。
二話目投稿。このままコンスタントに更新を続けます。夜勤とかで執筆出来ない日以外は更新を続ける所存。習慣づけすれば楽だしね。
取り敢えず、バルドを知らない人でも少しでもわかるように色々説明を加えてみた。
ある程度は読み易くなっている筈。
バルドを知ってる人も知らない人も、是非読んで欲しい。
クオリティは保証しますのでね。