※この作品はR-18です。

BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√   作:デスイーター

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仮想ーNet Worldー

「……ふう」

 

 一瞬の浮遊感の後、意識を覚醒させる。

 

 周囲には見渡す限りに広がる機械的な青い床が広がっており、各所には何処かに繋がる扉(・)が見える。

 

 此処は中継界(イーサ)、仮想(ネット)に没入(ダイブ)して最初に到達する中継点と言える場所だ。

 

 ──先史文明の時代、人類は意識のみを仮想空間に没入させ、電子の世界で自由に動く身体を手に入れた……それが今の俺の身体(アバター)である、【電子体】である。

 

 仮想空間といえ、高度なAIによるシュミレートによって構築させた仮想は現実となんら変わりはない。

 

 いや、ともすれば現実以上に充実しているのが今の仮想である。

 

 故に、仮想を利用しない人間はまずいない。

 

 仮想は既にもう一つの現実世界であり、最早現実と不可分な存在であるのだ。

 

 だが、意識そのものをアバターと化している以上、電子体になにかあればその影響は実体にも及ぶ。

 

 かつては実体を現実(リアル)に残したまま意識のみを電子体というアバターに変換し、仮想空間に送り込んでいたが、現在は実体そのものを量子変換し、仮想空間に電子体として再構築している。

 

 つまり、この電子体が破壊されれば、それは俺という人間の死(・)を意味する。

 

 即ち、仮想空間での死は現実世界での死と同義である。

 

 当然、【遺跡】での探索に失敗すれば俺にも同様の結末が待っている。

 

 そういった危険を承知の上で【遺跡】に挑むのが、俺達探索者なのだから。

 

「──移行(シフト)」

 

 俺がコマンドを告げると、俺の肉体が解けていきその規模が拡張されていく。

 

 瞬きの内にその変化は終了し、俺の電子体は鋼鉄の肉体へと変貌していた。

 

 ──戦闘用電子体(シュミクラム)、それがこのプログラムの名称である。

 

 このプログラムは使用者の電子体を戦闘用のロボットのような外観に切り替え、通常の電子体とは比較にならない戦闘能力を与える。

 

 戦闘が必須となる【遺跡】探索では、必須となるプログラムである。

 

 だが、このプログラムは自身の電子体そのものをロボットの外観に変換(コンバート)している。

 

 つまり、損傷を負えばその痛みはダイレクトに使用者に伝わり、破壊されれば最悪死に至る。

 

 ロボットに乗(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)のではなくロボットに変(・)化(・)し(・)て(・)い(・)る(・)のだから、感覚そのものも通常の手足のそれとなんら変わりはない。

 

 決して、軽々しく扱ってはいけないプログラムであるのだ。

 

 俺のシュミクラムの名称は、『ヴァナルガンド』。青と黒をベースとした、スリムな外観の機体である。

 

 全体的なカラーリングはライトブルーが強めで、さながら青い装甲を纏った黒いヒトガタといったところだ。

 

 機体の形状は一般的なシュミクラムと同じく人型ベースだが、胸部には狼を象った装甲を備えており、全体的に鋭角的な印象を受ける。

 

 【遺跡】には特殊な転送門(ゲート)を用いて向かうのだが、この転送門(ゲート)はシュミクラムでなければ通れない仕組みになっている。

 

 【遺跡】内部では戦闘が発生する為、万が一にも戦闘能力を持たない民間人が入れないようにする為の処置でもある。

 

『──怜二、こっちも準備完了だよ』

 

 そこで表情画面(フェイスウインドウ)が開き、双葉の顔が映し出される。

 

 通常の没入を行い実体ごと仮想に移動した俺と違い、双葉の実体は操作席に接続されたまま、意識の一部だけをこうして俺のサポートに充てている。

 

 双葉はサポートを行う際、分割思考(マルチタスク)を用いて意識の一部のみを仮想に飛ばし、仮想と現実双方から情報を集積してサポートを行っている。

 

 分割思考が可能かどうかでサポートの精度は格段に変化し、双葉の場合は6つまで思考を分割出来るそうだ。

 

 つまりそれだけ同時に行える作業が多く、人間の形をしたスーパーコンピュータと言っても大差ない性能(スペック)である。

 

『ああ、始めるぞ』

 

 俺は双葉との通信が繋がった事を確認すると、花のような文様の描かれた転送門の前に立つ。

 

 この門こそ、今回俺が挑む【遺跡】、【花園(ガーデン)】へ通じる転送門である。

 

 俺ギルドから発行された探索者証(シーカーライセンス)を通じて認証コードを送り、転送門を起動させた。

 

「──これより、遺跡(レムナント)NO1,花園(ガーデン)へ突入する。サポートを頼む、双葉」

『了解(ヤー)!』

 

 ──転送(ムーブ)──

 

 そして開かれた転送門によって俺の身体は門に吸い込まれるようにその場から消失し、目的地へと転送された。

 

 

♦

 

 

 一瞬の浮遊感の後、鋼鉄の足が大地を踏みしめる。

 

 辺り一面は見渡す限りの花畑であり、今俺がいるのは森の広場のような場所であった。

 

『──座標確認、問題なし(オールグリーン)。【花園(ガーデン)】への到着を確認したよ』

「ああ、俺の方も特に問題はない。無事、接続地点(アクセスポイント)に到着したようだ」

 

 俺は周囲に索敵プログラムをかけながら、双葉に応答する。

 

 此処は接続地点(アクセスポイント)、転送門の出(・)口(・)にあたる場所であり、【遺跡】の入(・)口(・)でもある。

 

 【遺跡】へ通じる転送門を潜れば各【遺跡】の接続地点に転送されるようになっており、この接続地点は基本的には非戦闘地帯である。

 

 その為シュミクラムへの移行は此処で済ませても良さそうではあるが、以前に【遺跡】で無法を行う悪質な探索者……盗掘者(ローグ)によって接続地点に転送(ムーブ)したばかりの探索者を狙われた事があった為、転送門を潜る前に移行するようギルドが徹底させたのだ。

 

 接続地点には自立敵性体(エネミー)は入って来ないが、当然他の探索者は自由に立ち入る事が出来る。

 

 その為、探索者証を持たない盗掘者であろうと転送門を利用する事こそ出来ないものの、出入り自体は出来てしまう為、接(・)続(・)地(・)点(・)で(・)の(・)探(・)索(・)者(・)へ(・)の(・)襲(・)撃(・)が理論上可能となってしまうのだ。

 

 故に、探索者が接続地点に転送後にまず行う事は、周(・)囲(・)の(・)安(・)全(・)確(・)認(・)である。

 

 もっとも、現在ではギルドが転送門の仕様を変えた事により、接続地点に探索者証を持たない電子体反応が存在する場合、探索者証を通じて探索者に知らせる事が出来るようになっている。

 

 その事は既に盗掘者側も知っている為、現在では接続地点での襲撃というものは殆ど発生しなくなっている。

 

 ただし発生件数は完全な0では無い為、探索者側が自己責任でこうして安全確認を行っているワケである。

 

「周囲に異常なし。これより探索を開始する」

『了解(ヤー)。マッピングは済ませておいたわ。眼を通しておいて』

「了解(ヤー)」

 

 俺は双葉から送られて来たマップデータを参照し、彼女が示した移動ルートを脳に叩き込む。

 

 この【花園】は6つの【遺跡】の中では最も難易度が低く、初心者用の【遺跡】とも言われている。

 

 無論俺もこの【花園】の探索は初心者(ビギナー)時代に何度も行っているのだが、【遺跡】は定(・)期(・)的(・)に(・)内(・)部(・)構(・)造(・)が(・)更(・)新(・)さ(・)れ(・)る(・)という特徴がある。

 

 その為、【遺跡】に挑む度にマッピングをし直さなければならず、一度倒したエネミーも時間経過で再出現(リポップ)する為、事前情報に頼る事は難しい。

 

 故にマッピングは意味のないものと思われがちだが、双葉であれば話は違って来る。

 

 双葉は特級プログラマ(ウィザード)特有の技能を用いて【遺跡】全体にスキャンをかけ、通(・)常(・)階(・)層(・)内(・)で(・)あ(・)れ(・)ば(・)瞬時にマッピングを行い、最適な移動ルートを算出出来てしまうのだ。

 

 この双葉の高度なサポートがあってこそ、実質単独(ソロ)である俺が【未踏領域】へ挑戦可能となる探索者(シーカー)ランクの序列二桁(ダブルナンバー)にまで上り詰める事が出来たのだ。

 

 特級プログラマは、仮想の常識を軽々と超越する。

 

 普(・)通(・)で(・)あ(・)れ(・)ば(・)という言葉は、彼女達には通用しない。

 

 まるで魔法を行使するかの如く、仮想の法則を書き換えていく者達。

 

 故に付けられた名が、魔法使い(ウィザード)。

 

 只人とは隔絶した技術を持つ、仮想のエキスパート達である。

 

「さあ、探索開始だ」

 

 俺はそんな双葉のサポートをバックに、接続地点から【遺跡】内部……鬱蒼と茂る森の小道に足を踏み入れる。

 

 脚部のブースターを起動し、ホバー移動で森の中を進む。

 

 するとそんな俺に気付いたのか、木の影から無数のエネミーが現れる。

 

 現れたのは、鋭い牙を持つ花形エネミー【ファングフラワー】三機と、動く樹木のようなエネミー、【トレントアーム】が二機。

 

 全て、情(・)報(・)通(・)り(・)だ。

 

『手早く蹴散らしちゃって、怜二』

「了解(ヤー)」

 

 俺は双葉の指示を受ける前から準備していた回転する刃、ラディカルスピナーを射出し、回転するブレードが草木を斬り刻みながら滑空していく。

 

 ……『遺跡』内部のエネミーは各遺跡ごとである程度モデルの統一性があり、この【花園】の場合はこの二機のような植物を象ったエネミーが多い。

 

 基本的に、その遺跡の雰囲気に見合ったモデルのエネミーが出現しているワケだ。

 

 【花園】のエネミーは耐久はそこそこだが動きが鈍重なタイプが多く、この二機も例によって動きは緩慢としている。

 

 結果、エネミーの集団はラディカルスピナーを回避する事が出来ず、回転刃が直撃。

 

 それにより一気に三機のエネミーが両断され、爆散。

 

 俺はその隙にエネミーに肉薄し、右手に大型のブレードを出現させて振り抜く。

 

 ブレードの一閃により二機のエネミーも袈裟斬りとなり、機能停止。

 

 都合数秒で、五機のエネミーは全滅となった。

 

『流石に、【花園】の通常階層のエネミーじゃこんなものね。特に機体の調子も問題ないみたいだし、この後はエネミーをなるべく回避していきましょう』

「了解(ヤー)。探索を続行する」

 

 今の戦闘は、機体や俺自身のコンディションを確認する為の試運転のようなものだ。

 

 その為敢えてエネミーと遭遇するように行動したのだが、特に問題は見当たらなかった。

 

 後は余計な戦闘を回避しつつ、目的の【未踏領域】まで突っ切るだけだ。

 

 俺は双葉の指示するルートに進み、【遺跡】の奥へと機体を疾駆させた。

 

 その先に何が待つか、知る由もなく。




 二話目投稿。このままコンスタントに更新を続けます。夜勤とかで執筆出来ない日以外は更新を続ける所存。習慣づけすれば楽だしね。

 取り敢えず、バルドを知らない人でも少しでもわかるように色々説明を加えてみた。

 ある程度は読み易くなっている筈。

 バルドを知ってる人も知らない人も、是非読んで欲しい。

 クオリティは保証しますのでね。
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