BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√ 作:デスイーター
────気付けば、白い部屋にいた。
この部屋には、見覚えがある。
何処とも知れない、白一色の部屋だ。
それが夢である事は、すぐ分かった。
手術台のような器具の上に薄い手術着のような姿で拘束されていたのは、他ならぬ幼い頃の自分だったのだから。
双葉はそれを、第三者の視点で見ている。
部屋の、監視カメラだろうか。
そのカメラを通じた視点で、双葉は過去の自分を見詰めていた。
幼い双葉は何処か怯えたような様子で、部屋の入口を見ている。
理由は、言わずとも分かる。
だって、あの扉から人が入って来るのは、双葉にとって
…………扉が開き、男が入って来る。
額縁眼鏡をかけた仏頂面の、神経質そうな男。
それは紛れもなく、双葉の
────い、痛いのいや……っ! おねがい、いたいのだめ……っ!────
父親を見るなり、幼い双葉はガタガタと震えだし拘束から逃れようともがく。
しかし鋼鉄の拘束具は幼い少女の力で外れるような事はなく、父親はそんな双葉を見て舌打ちをした。
────ちっ、まだ
────やだ、やめて、いや、いや、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ……っ!!────
幼い双葉の訴えを忌々し気に見た父親は端末を操作し、それと同時に双葉の身体がびくびくと痙攣し悲痛な声をあげた。
…………目を向ければ、双葉の股に埋め込まれた器具が不気味に振動している。
その器具はぴったりと閉じた双葉の幼い秘所に鉛筆のような形をした先端を埋め込まれており、細かく振動して内部を刺激していた。
未だ性感すら碌に発達していない双葉は、その刺激を痛みとしか認識出来ない。
同様の器具はお尻の穴にも埋め込まれており、こちらもまた振動を続けて双葉の内部を刺激し続けている。
身体の中を冷たい金属の棒で掻き回され、双葉は痛みと不快感で悲鳴をあげる。
しかし父親はそんな双葉を冷たい目で見下ろすばかりで、一向に拷問の手を止める事はない。
…………これは、かつて行われていた
来る日も来る日も身体を拘束され、秘所や肛門を無機質な器具で掻き回され続ける。
抵抗すればするだけ、その
あの台に寝る事を拒否すると、頬を叩かれ台の上に叩きつけられた。
嫌だと言って暴れると、器具を振動させたまま一日以上放置された。
もう嫌だと言って逃げ出そうとした時は、腹を蹴り飛ばされ首を絞められた。
逆らうと、もっと痛い事になる。
既にそれを理解してしまった双葉は、毎日毎日その身を冷たい台の上に横たえざる負えなかった。
抵抗しなければ、
他の時間で言う事を聞いてさえいれば、言う事を聞いた分だけその時間を減らしてくれる。
だから幼い双葉は、父親に対し媚びへつらった。
そうすれば、痛い時間が少なく済むから。
そうすれば、それ以上痛い事をされずに済むから。
要は、条件反射による学習だ。
窮極的には、それが父親の思惑だったのだろう。
双葉の思考から自由を奪い、思い通りに操れる『人形』にする。
それが、父親の目的だった。
だから双葉は、父親に従った。
従って、痛い思いをしないように努力した。
けれど、その日の父親はひどく機嫌が悪かった。
そして大抵、そういう時は『痛い時間』が長引くのが常だった。
────くそっ、くそっ、くそっ、これも全部、お前の、お前の所為だ……っ! 私がこんな惨めな想いをするのも、全部お前が……っ!────
────ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……っ! いたいいたいいたいいたいいたいいたいたすけてたすけてたすけてたすけてもうやめてやめてやめてやめてよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいやいやいやいやいやいやいやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……っ!!!!! たす、けて……。
器具で性器や肛門を掻き回され、時折電撃が身体に見舞われる。
その痛苦に耐え切れず、幼い双葉は絶叫する。
(あ、あ、あ…………っ!!)
それを見ていた現在の双葉も、過去の記憶を想起して顔を青冷めさせた。
あの時の痛みは、今でもハッキリ思い出せる。
何度も何度も、来る日も来る日もあの痛みを味遭い続けた。
父親の機嫌の悪い時は、あのように当たり散らされもっと痛い目に遭わされた。
地獄と、そう呼んで差し支えない日々。
もう過ぎ去った筈の悪夢の記憶が、双葉の精神に牙を剥く。
双葉の奥底に刻まれた
平気でいられる、ワケがない。
双葉は幼い自分の絶叫を耳にしながら、目を閉じて耳を塞ぐしかなかった。
けれど、目を閉じれば過去の記憶がフラッシュバックし、耳を塞げば有りもしない幻聴が聞こえて来る。
どちらにせよ、双葉に逃げ場はなかった。
双葉は痛みで絶叫する過去の己の姿を見せつけられ、精神を蝕まれていく。
その場に座り込み、掠れるような声で「止めて」と呟いて、くずおれる。
だから、気付かなかった。
痛みで絶叫している、幼い双葉。
────その口元が、歪に歪んでいた事に。
「…………双葉がいる場所に俺を送り込むなんて、出来るのか……?」
俺は突然のノインさんの言葉に、思わずそう返した。
ノインさんを疑うワケではないが、彼女の語る
ノインさんはあの咆哮をわざと浴びて俺を双葉の元に送り込むと言ったが、【リヴァイアサン・デブリ】の咆哮自体は俺も有栖も聴いている。
それでも、意識を持っていかれたのは双葉だけだ。
そう簡単に、双葉のいる場所へ行く事など出来るのだろうか。
「あの咆哮を解析した結果、あれは特定の脳波パターンの持ち主を自分の意識の中へ誘う効能がある事が分かったの」
つまり、とノインさんは続けた。
「あの咆哮は、特定の相手にしか効果のない津波のようなものなの。だから怪物の望む脳波パターンを持っていた双葉だけが見えない津波に攫われて、怪物の中に捕らわれた。だから、同じ脳波パターンさえ用意出来れば怪物がそれを双葉の脳波パターンと同一視して取り込もうとして来る筈よ」
簡単に言うとね、とノインさんは告げる。
「あの怪物は、己の存在を補完する為に自分の核になる
ノインさんは自信満々にそう告げ、その姿に俺は胸をなでおろした。
此処まで言う以上、ノインさんはその自説に相当の自信があるのだろう。
彼女がこう言う以上は、
俺が最も信頼する大人の女性が、
これ以上の懸念は、抱くだけ無駄というものである。
俺は、一人で何でも出来るとは欠片も思っていない。
【遺跡】を探索するには双葉のサポートは必須だし、ジャビットを相手取るには有栖の力なくしては成す術がなかった。
【ミョルニル】という大きなコネクションは必ず俺の力になるし、ノインさんの知識量と聡明さには驚かされるばかりだ。
だから、信頼出来る相手が
俺は、自分に協力してくれる相手には誠実でありたい。
自分一人では何も出来ない事は、俺自身が一番理解している。
人を頼る事は、恥ではない。
人を頼らずに無意味な失敗を繰り返すより、よほど建設的な生き方だ。
人は、一人きりでは生きていけない。
他人と関わり合って初めて、自分というアイデンティティが確立出来るのだ。
自分自身を全肯定してしまうような自我の怪物でもなければ、人は生きる上で他者の
【探索者】とて【技術遺産】を買い取ってくれるギルドがいなければ生計を立てられないし、そのギルドは政府機関やアーク・インダストリーの全面的な援助を受けて成り立っている。
一つでも欠ければ、
それを理解しているからこそ、人と人は手を取り合う。
互いが必要としているからこそ、人と人は繋がる事が出来る。
殺伐とした戦いの世界においても、それは変わらない。
ノインさんが
「脳波パターンのダミーはいつでも用意出来るけど、その咆哮を聴いて双葉の下へ行くには【リヴァイアサン・デブリ】に可能な限り近付く必要があるわ。有栖さんはその為に怜二の護衛をお願いしたいのだけれど、頼めるかしら?」
「ええ、勿論です。責任を以て、私が彼を双葉の所にまで送り届けます。任せて下さい」
有栖はノインさんの依頼を聴き、二つ返事で了承した。
俺はその返事を頼もしく思い、有栖に目を向ける。
有栖はそんな俺の視線に気づき、微笑みを浮かべた。
倫理観や常識に問題があったとしても、有栖が心強い味方である事に変わりはない。
そんな彼女が味方してくれるのだから、細かい事は水に流して共に戦う事に否はない。
そもそも、有栖は自分が味方と認知した者に対する態度だけは一貫している。
今更、有栖が裏切る可能性など欠片も考えていない。
信じなければ、勝てない。
これは、そういう戦いなのだ。
「夜までには準備を整えるわ。二人共、それまでに用意しておいて」
「「
こうして、双葉救出作戦の決行が決まった。
俺達は彼女を取り戻す為、今夜死地へと舞い戻る。
終盤に向けた準備段階のようなものです。
こっからどんどんストーリーが進んで行くので、こうご期待