※この作品はR-18です。

BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√   作:デスイーター

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復活ーRevivalー

 

 通路の先から、無数のエネミーが殺到する。

 

 無数の脚を持ち電磁波を発しながら這い回る甲虫型エネミーを中心に、通路を飛び回るバッタ型のエネミーやビーム砲を搭載したトンボ型エネミーが我先にと群がって来る。

 

 特に数が多いのは電磁波を発する甲中型エネミーであり、完全に数(・)で(・)押(・)す(・)陣容だ。

 

 一度でもあの電磁波に触れて動きが止まってしまえば、数の暴力によって押し潰される結末が待ち受けているだろう。

 

 あの甲中型エネミーを大量に配置しているのは、接近戦を封じる為でもある筈だ。

 

 迂闊に接近戦を挑めば、床や天井を所狭しと這い回るあのエネミーに触れてしまう危険が高いからだ。

 

『喰らいやがれ……っ!』

 

 だが、対処法がないワケではない。

 

 先陣を切ったのは、前を行くゲンハだった。

 

 ゲンハはラディカルスピナーをより鋭角的にしたような回転刃を射出し、回転する刃が床を這う甲中型エネミーを次々と斬り裂いていく。

 

 バッタ型エネミーは回転刃を躱しながらゲンハに飛び掛かろうとするが、それは悪手だ。

 

『遅ぇんだよ……っ!』

 

 ゲンハはブレードを振るい、次々と飛び掛かって来たバッタ型エネミーを両断。

 

 続け様にエネミーが爆散し、着実に敵の数を減らしていく。

 

 無論、敵も黙ってはいない。

 

 トンボ型エネミーはビーム砲にエネルギーを充填し、砲撃を放とうとする。

 

「させない……っ!」

 

 俺はそこで、【固有兵装】を起動。

 

 トンボ型エネミーの上の天井を這い回っていた甲中型エネミーの足(・)場(・)を凍結。

 

 凍った天井から足を滑らせた甲中型エネミーは、トンボ型エネミーの上に落下。

 

 トンボ型エネミーは甲中型エネミーの電磁波を浴びてしまい、麻痺した状態で耐性を崩す。

 

 あらぬ方向にビーム砲が放たれ、無数のエネミーがビーム砲によって爆散。

 

 労せずして同士討ちの恰好に持って行った俺は、そのままラディカルスピナーを射出。

 

 ゲンハも更に回転刃を射出し、残る敵戦力を駆逐しにかかる。

 

 その後も敵戦力が追加されて来たが、やる事は同じだ。

 

 ラディカルスピナーと回転刃でエネミーの数を減らし、トンボ型エネミーの砲撃に合わせて羽を削り、体勢を崩してビーム砲による同士討ちを狙う。

 

 俺の【固有兵装】は使用する度にライフゲージを消費するが、凍結範囲を絞ればその消耗は僅かで済む。

 

 幸いトンボ型エネミーの体勢を崩す為には羽の一部を凍結させるだけでいいので、さしたる消費ではない。

 

 それに、今は前衛を張って凄まじいスピードで敵を殲滅しているゲンハがいる。

 

 俺がやっているのは、ゲンハの討ち漏らしを片付けているだけだ。

 

 接近戦で厄介な甲中型エネミーさえどうにかしてしまえば、後はゲンハの独壇場だ。

 

 ゲンハは常人離れした体捌きでブレードを振るい、次から次へとエネミーを駆逐している。

 

 その様子は獰猛な獣そのもので、ジャビットの動きを彷彿とさせる本能による蹂躙だった。

 

 離れた敵は回転刃で斬り裂き、近付く敵はブレードで両断する。

 

 ただそれを繰り返しているだけなのに、隙らしい隙は見当たらない。

 

 動きそのものは粗暴だが、天性の体幹コントロールで動きの際に生じる隙を排除している。

 

 ゲンハの動きは、特に反射神経は並外れている。

 

 まるで後ろにも眼が付いているかの如く、三次元機動を繰り返して全方向の敵を碌に目を向けもせずに排除していく。

 

 その反応速度は、ジャビットのそれと比べても遜色はない。

 

 【ラビットシリーズ】を扱っているワケではない為ジャビットのような目にも映らぬ速度まで実現出来てはいないが、その反射神経は奴のそれと比べても見劣りしない。

 

 ジャビットがその埒外のスピードで単騎無双を実現する超攻撃的な遊撃手であるならば、ゲンハはその並外れた反射神経で確実に敵を駆逐する乱戦向きの強襲兵だ。

 

 敵の駆逐スピードは機動力の関係上ジャビットの方が上であろうが、窮極的には1対1をひたすら繰り返して敵を駆逐するジャビットと比べ、ゲンハは乱戦を継続する事で場をかき乱していくタイプだ。

 

 有り体に言ってしまえば、ジャビットは味方との連(・)携(・)は一切望めないが、ゲンハはやりようによっては味方との連携も充分に行える。

 

 集団戦の適性で言えば、ゲンハはジャビットを上回っていると言っていい。

 

 ジャビットの操る【ラビットシリーズ】が機能を極限まで特化させたピーキーな機体である事を差し引いても、汎用性という意味ではゲンハが上を取る。

 

 俺からしても、ゲンハは味方としてサポートをするには十二分な相手と言える。

 

 俺が戦闘補助の攻撃を行おうとすればそれを察知して射線を空けてくれるし、俺が落(・)と(・)し(・)難(・)い(・)と感じた場所にいる敵を積極的に殲滅してくれている。

 

 その以心伝心とも言える連携は、ゲンハがこれまで俺の中にいた事と無関係ではあるまい。

 

 ゲンハは俺の中から、俺の戦いを直接見ている。

 

 つまりそれは、俺の動きを知った上で連携でどう動けば良いかが分かっているという事だ。

 

 即席の連携が曲がりなりにも機能している理由は、そこにある。

 

 俺より上の技能を持つゲンハが俺に合わせてくれているからこそ、この連携は成り立っているのだ。

 

 初見では連携など望むべくもない性質に見えたのだが、これは嬉しい誤算と言える。

 

『ヒャーハハハハハ! これで、終わりだぁ……っ!』

 

 ゲンハは哄笑をあげながら、最後に残ったトンボ型エネミーに突貫し、反撃を許さず両断。

 

 袈裟斬りされたトンボ型エネミーの爆散により、この場の敵の殲滅が完了した。

 

『さっさと先へ進むぜ。モタモタしてっと、あのババアがまた邪魔して来るだろうしなあ』

「ああ、先を急ごう」

 

 俺はゲンハの後を追い、通路の先へ進む。

 

 未だ分からない事はあるが、それでも一つだけ言える事はある。

 

 この男は、信頼出来る。

 

 その事だけは、確信出来た。

 

 

♦

 

 

「…………く、なんであいつが出て来るのよ……」

 

 モニターを見据えながらドレス姿の少女、橘玲佳は舌打ちした。

 

 映像には追手として出撃させたエネミー達を駆逐し、進攻を再開する怜二達の姿があった。

 

 玲佳の視線は、ゲンハのシュミクラムを忌々し気に見詰めている。

 

「なんで、あいつが此処で出て来るのよ……? 私のようにサルベージされた……? でも、私と違ってあいつは此(・)処(・)で(・)死(・)ん(・)で(・)る(・)から意識情報は残されていない筈なのに……」

 

 玲佳はかつて自分が生きていた頃の事を思い出し、思案する。

 

 彼女はとある事件の最中、【リヴァイアサン】の中に取り込まれてそのまま実体との接続が途切れて死を迎えた。

 

 いや、正確に言えば自(・)ら(・)接(・)続(・)を(・)遮(・)断(・)し(・)た(・)のだ。

 

 当時の玲佳はこの【リヴァイアサン】の本(・)来(・)の(・)頭(・)脳(・)体(・)の隙を突いてコントロールを得る為に、自ら実体との接続を遮断してこの怪物との適合率を高めた。

 

 結果として目論見は失敗に終わり、実体に戻る事も出来ずに【リヴァイアサン】と運命を共にしたのだ。

 

 研究者達が【リヴァイアサン】の残骸から玲佳の意識をサルベージしなければ、二度と目覚める事は無かっただろう。

 

 そもそも、実体の方は【リヴァイアサン】が崩壊を迎えた時には既に死亡していた可能性が高い。

 

 あの男(クーウォン)が、自分を生かしておく筈がないからだ。

 

 恐らく没入しっぱなしで昏睡状態に陥っていた自分の実体は、あの男によって殺されたのだろう。

 

 戻る身体がなければ、【リヴァイアサン】が倒されたとしても仮想を出る事など叶いはしない。

 

 だがそれでもこうして自我を保って復活出来たのは、電子体が直接死を迎えたワケではないからだ。

 

 …………しかし、ゲンハの場合は違う。

 

 あの男は、【リヴァイアサン】の中で明確に死(・)を迎えている。

 

 実体に加え電子体まで失ったのだから、あそこまで明瞭な自我が残っているのはおかしい。

 

 玲佳の知識を総動員してみても、ゲンハがああして復活した理由については皆目見当もつかなかった。

 

「八雲怜二だけならどうとでも料理出来たけど、あいつがいるなら面倒ね。私の手管も知られているし、何よりあいつの戦闘力は無視出来ない。このままじゃ、万(・)が(・)一(・)が起きる事も有り得てしまう」

 

 思い通りに事が進んでいると考えていた玲佳だったが、此処に来て自分の計画に明確な障(・)害(・)が出現してしまった。

 

 元より完璧主義のきらいがある玲佳にとって、その事実は看過出来る事ではない。

 

 力で排除するのが手っ取り早いが、ゲンハの実力は並外れている。

 

 しかも玲佳自身、【リヴァイアサン・デブリ】の頭脳体ではなくあくまで行(・)動(・)の(・)方(・)向(・)性(・)を(・)誘(・)導(・)す(・)る(・)程度の権限しか持たない為に、この世界(リヴァイアサン・デブリ)そのものによってゲンハを排除しにかかる事も出来ない。

 

 更に言えば、この【リヴァイアサン・デブリ】は未だ不完全な状態にある。

 

 【頭脳体】が据えられていない以上、出来る事に限りはあるのは当然だった。

 

「…………致し方ないわね。もう少し洗脳を仕上げてからにする予定だったけれど、時間をかけて失敗したのでは目も当てられないわ」

 

 玲佳の視線は、椅子に座ったまま微動だにしない双葉に向けられている。

 

 心を折られた双葉は外界の刺激には何ら反応を示さず、虚ろな目で虚空を見続けている。

 

 そんな双葉の様子に嗜虐心を刺激されながらも、玲佳は酷薄な笑みを浮かべた。

 

「────この子を【頭脳体】に据えて、【リヴァイアサン・デブリ】を本格稼働させましょう。第一プランは使えなくなるけど、第二プランで代用は効く」

 

 双葉の椅子が形を変え、一瞬にして彼女は操作席のような匣に押し込められる。

 

 四方八方からコードが伸び、触手のように双葉の入っている匣に絡みつく。

 

 コードが巻き付いた【匣】は徐々に上に持ち上げられ、次から次へと新たなコードが殺到し、接続される。

 

 無数のコードと接続した【匣】はドクン、ドクン、と生物の心臓のように脈打ち、紅い光を帯び始める。

 

「────さあ、目覚めなさい【リヴァイアサン】。貴方の今の主人は、この私よ」

 

──オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォン!!!──

 

 怪物の眼に光が灯り、咆哮が響き渡る。

 

 今此処に、旧世界を混乱に陥れた怪物が復活の時を迎えた。





 王道は、面白いからこそ王道と呼ばれる。

 こういうシュチュエーションになったら、まあこうなるよねというお話。
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