※この作品はR-18です。

BALDR GENESIS~Revive of Future World~双葉√   作:デスイーター

73 / 82
克己ーself restraintー

 

『お前等、一ヵ所に固まるなよ……っ! 動きを止めれば、あの砲撃を喰らう……っ! 足を止めずに動き続けろ……っ!』

 

 八木澤の号令を受け、【ミョルニル】の部隊員達が疾駆する。

 

 これまでにも【リヴァイアサン・エコー】の龍頭からの砲撃により、幾人もの隊員達が命を落としている。

 

 その犠牲は、決して軽くはない。

 

 【リヴァイアサン・エコー】は龍頭からの熱線を、碌に狙いも付けずに無差別に放っている。

 

 傾向としてはより多くのシュミクラムを巻き込める射線を選ぶ傾向があるものの、気紛れに息をするように放たれるその砲撃を回避し続けるのは、至難の業だ。

 

 その理由の一つとして、砲撃の大(・)き(・)さ(・)も然る事ながらその数(・)がある。

 

 【リヴァイアサン・エコー】の本体から生えている龍頭は、全部で九本。

 

 それらが一斉に砲撃を放って来るのだから、一度熱線が放たれれば多角度的且つ範囲の大きな攻撃が一度に襲って来る事になる。

 

 まさに、熱線の檻。

 

 檻に捕らわれた機体が、次々と焼き払われる。

 

 断末魔の叫びと共に、シュミクラムが、仲間が、死に絶えていく。

 

 その事実は、受け入れたつもりでいた。

 

 しかし、慣れない。

 

 いや、慣れてはいけない。

 

 この胸の痛みを忘れてしまえば、あの橘玲佳と同じ外道に成り下がってしまう。

 

 そんな予感が、俺の心を決めさせた。

 

 何が起ころうと、自分の役割を忘れない事を。

 

『皆聞いて……っ! これまでの行動を解析して、熱線の発射兆候と発射角度が自動で分かるようにプログラムを組んでみたわ……っ! 粗が大きいデータだけど、なんとか役立てて……っ!』

 

 そんな折、通信越しにノインさんから嬉しい報告が届く。

 

 先程からずっと無言だったかと思えば、そんな事をやっていたのかと改めて理解する。

 

 砲撃の発射タイミングや発射角度が分かれば、当然の事ながら回避の難易度が大分変わって来る。

 

『助かる……っ! 今、データを共有するぞ……っ! このデータを機体に適応して、少しでもあの化け物の動きを避けられるようにしろ……っ!』

 

 八木澤は早速データを回し、隊員と共有する。

 

 これで、少しでも多くの隊員達が助かる。

 

 俺はそう、楽(・)観(・)してしまった。

 

────3fffffffffffffZ! p@y2@、:ds^@5555555555555555555555555555555555……Z!────

 

 ────その報いは、すぐにやって来た。

 

 【リヴァイアサン・エコー】が再び咆哮をあげた、刹那。

 

 目に見える程のエネルギーが、【リヴァイアサン・エコー】のカメラアイの中心に集まって行くのが見えた。

 

 どす黒い瘴気がカメラアイの中心に収束していき、各部の龍頭からもエネルギーが一点に注ぎ込まれている。

 

 爆発寸前の、核爆弾。

 

 俺は、そんな印象を受けた。

 

「あれは……っ!?」

 

 気付いた時には、既に充填が完了していた。

 

 【リヴァイアサン・エコー】のカメラアイには、俺の姿が映り込んでいる。

 

 奴が何処を狙おうとしているのかは、明らかだ。

 

 俺ごと、部隊の大部分を消し飛ばすつもりだろう。

 

『マズイ……っ! とんでもないエネルギーが中心部に集まってる……っ!大きいの、撃つつもりだ……っ!』

『見れば分かるわよ……っ! 怜二……っ!』

「うわ……っ!」

 

 言うが早いか、有栖は文字通り俺の首根っこを掴まれて大きく上に跳躍した。

 

 俺は【ヴォーパル・ラビット】の超スピードに翻弄されながらも、眼下を見た。

 

 見て、しまった。

 

────deeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee<555555555555555555555555555555555555555555555555……Z!────

 

 ────それは、咆哮と共に放たれた。

 

 膨大なエネルギーが収束されたカメラアイから、光の濁流が溢れ出す。

 

 禍々しき極光は、一瞬にして全てを飲み込んだ。

 

「ぐううううううううう……っ!」

『く……っ!』

 

 余波の爆風だけでも尋常なものではなく、俺は有栖に担ぎ上げられながらもそれに翻弄される。

 

 有栖はいち早く上空に飛び退き、完全な効果範囲外へ退避する。

 

 そして、煙が晴れた。

 

「……これは……」

 

 …………被害は、甚大だった。

 

 【ミョルニル】隊員の、約半数が今の一撃で死亡。

 

 【都市自警軍】も、少なくない被害を被っている。

 

 一撃。

 

 一撃で、戦況を一変させられた。

 

 常識の埒外にあるかのような、凄まじい規模の砲撃。

 

 これが、【リヴァイアサン・エコー】。

 

 電子の海を統べる、怪物の力。

 

 その力がどれだけのものなのか、これ以上ない形で示されてしまった。

 

 …………だが、悪夢はこれで終わりではなかった。

 

「な、なんだあれは……っ!?」

 

 異変は、【リヴァイアサン・エコー】の砲撃痕の残る場所で起きていた。

 

 地面から、白い腕が幾つも突き出される。

 

 やがてその腕は無数に折り重なって一つになり、パーツの欠けたシュミクラムと化した。

 

 正確には、死霊となってしまった、とでも言えばいいだろうか。

 

 悪夢の熱線の跡地から、次々と亡霊のシュミクラムが現れる。

 

 …………最悪なのは、それがたった今【リヴァイアサン・エコー】によって消し飛ばされた【ミョルニル】の隊員らしいからである。

 

 多くの機体には【ミョルニル】や【都市自警軍】のマークが刻まれており、武装にも見覚えがあった。

 

 間違いなく、殺した相手をそのまま再利用している。

 

 この状況下での、敵の増援。

 

 しかも、その敵は死ぬ時まで自分達の仲間だった相手。

 

 橘玲佳は物量と心理戦、両方から負担をかけて来たのである。

 

「ちっ、悪趣味な……っ!」

『同感ね。少し、待ってなさい。数(・)を(・)減(・)ら(・)し(・)て(・)くるわ』

 

 有栖はそう告げるなり俺を高台に降ろすと、地上に降りて低空起動で蘇った亡霊達を次々と斬り伏せていく。

 

 中には隊員達が密集して狙い難い場所もあったが、その点で心配する事は何もない。

 

 たとえどんな状況だろうが、有栖にある選択肢は前(・)進(・)ただ一つ。

 

 この程度で、揺らぐ筈もない。

 

(有栖……)

 

 有栖は傍目から見ると、平然と仲間の死体を斬り裂いているように見える。

 

 彼女には【ミョルニル】の潜入隊員を殺した前歴があり、有り体に言ってお世辞にも人格が信用されるタイプではない。

 

 今も【ミョルニル】には、有栖に複雑な感情を覚える輩が多い筈だ。

 

 大切な仲間を殺したのだから、ある意味当然とも言える。

 

 そして、有栖はその事に対しては何ら責任を感じていない。

 

 あの状況では彼を見捨てるのが最善だったと、彼女の計算が導き出したからである。

 

 だが、だからといって何も感じていないワケではない。

 

 彼女は確かに好き勝手に振る舞っているものの、責任感は非常に強い。

 

 今回も、強制的に蘇らせられた仲間を倒すのは、自分が一番だと考えたのだ。

 

 確かに彼女であれば、特段呵責を感じる事なく雑兵を駆除出来る。

 

 適材適所だと、彼女ならそう言うだろう。

 

『ハッ……!!』

『おぉぉ、おぉぉぉ……っ!?』

『あぁ、うあぁぁぁ……っ!』

 

 一機一機、蘇った機械の屍の首を斬り落とす。

 

 それだけの、単純作業。

 

 それは、一種の掃除じみていた。

 

 居るべきではない者を、本来あるべき場所に戻す。

 

 感情を抜きにして、淡々と処(・)理(・)する。

 

 その工程を、直に見せつけられているかのような気分だった。

 

『お前等、嬢ちゃんばっか働かせんな……っ! 難しいと思うが、割り切れ……っ! 何の為に、此処にいると思ってやがる……っ!』

 

 それを見兼ねた八木澤が、隊員に檄を飛ばした。

 

 八木澤の号令で、動きが鈍っていた隊員達はすぐさま転進して亡霊達に攻撃を開始する。

 

 なんだかんだで、八木澤がいるからこそ隊員達は上手く纏まっている。

 

 個々の強さは左程でもないが、強力なリーダーの指揮下に集えば最大限の力を発揮出来る。

 

 それが、【ミョルニル】の強みなのだから。

 

『……っ!? さっきと同じ反応……っ! 大きいの、来るわよ……っ!』

「く、またか……っ!?」

 

 ノインさんの報告と、同時。

 

 【リヴァイアサン・エコー】のカメラアイに、膨大な力が収束していく。

 

 それを確認した瞬間、全員が脱兎の如く逃走を開始した。

 

 散り散りになって皆が逃げていく中、遂に【リヴァイアサン・エコー】はその暴威を解き放つ

 

────ug@fo5555555555555555555555555555555555555555555555555555555555555……Z!!

 

 咆哮と共に、強大な熱線が地表を焼き焦がす。

 

 その範囲は先程よりも更に広く、その威力の途方もなさが伺える。

 

 今ので、更に隊員の数が削られた。

 

 そしてご丁寧に、先程と同じように亡霊として敵の戦力を増強した。

 

 あの砲撃をどうにかしない限り、じり貧だろう。

 

「かと言って、あの規模じゃあ……っ!」

 

 俺は思わず声に出してしまい、舌打ちする。

 

 あの極大砲撃はそれまでの9体の龍頭による多角度的な砲撃と違い複雑な軌道は描かないものの、とにかくその攻(・)撃(・)範(・)囲(・)は尋常ではない。

 

 全ての龍頭からのエネルギーを集めても足りないだろうと思わせる程の威力を持つ極大砲撃は、察知出来ても回避は難しい。

 

 鉄砲水に巻き込まれたらまず助からないように、あれも撃たせた時点で如何に被害を減らせるかを重点的に考えた方が良いだろう。

 

 もっとも、その余裕があればの話だが。

 

 これまでの砲撃で、相当数の友軍が削られている。

 

 状況は、刻一刻と悪化していく。

 

 手をこまねいているだけでは、全ての頑張りが無に帰すのを待つだけになってしまう。

 

 それだけは、何が何でも避けなければならなかった。

 

 もしもそんな事になったのなら、俺は犠牲になった人々に顔向け出来ない。

 

 彼等は、自分を信じてその命を俺達に託してくれたのだ。

 

 その想いを、裏切るワケにはいかない。

 

『────準備、出来たよ。これから、カメラアイ周辺の防御を破る……っ!』

 

 ────そして、福音が聞こえた。

 

 それまでの戦いが、遂に結実する。

 

 最早、逃げ回るだけの時間は終わりだ。

 

 此処から反撃する。

 

 否。

 

 終わらせる。

 

 この戦いの、全てを。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。