2056年 4月2日 1840時 UAE グリフィン前方展開基地
「くそっ、無人機がやられた。これじゃ、戦場の様子がちっともわからんじゃないか」
無人機の管制官が吐き捨てるように言った。真っ黒になったノートパソコンの画面の中心には赤い文字で『UAV OFFLINE』の表示が出ていた。
戦場で活動している部隊は全部で4部隊。そして、無人機を失った今、4部隊全ての状況が全く掴めない状態だ。
「おい、状況はどうなっている?」
「ええっと、こんな感じです」
カリーナがタブレット端末を管制官に差し出した。そこにはドバイ市内の地図に幾つか記号が表示されている。
「何だこれは?」
「この白いのはUAEの軍部隊、青が私たち、そして赤が鉄血です」
「くそっ!これじゃあドバイは完全制圧されたも同然じゃないか!」
「先ほど、UAE陸軍の連絡係の人と話したのですが、UAEはドバイを放棄するようです。既に一部の部隊は市民を避難させつつ撤退を始めているようで・・・・・」
バタバタと大きなヘリの音が聞こえてきた。UAE空軍のUH-60Lやベル412、AW139だ。他にも、消防や警察、沿岸警備隊のヘリの姿も見える。日が暮れはじめ、すでに西の方は暗くなってしまっている。向こうの通りでは、トラックや装甲車が列を成し、ハイウェイへ向かっている。ドバイから離れる方向だ。
「それで、どうするんだ?」
「少なくとも、市内に派遣した部隊が支援をするはずです。この2部隊が孤立した部隊を回収して、撤退を始めます」
「それまで、俺たちはここを死守するってことか」
「仕方がありません。脱出用の装甲車と揚陸艦だけを残して、あとは撤収させます。ヘリは危険です。撃墜される可能性があります」
「畜生!」
「まずはここで待機しましょう。後は、取り残されている部隊の回収を済ませます」
2056年 4月2日 1853時 UAE グリフィンドバイ支部
「うーん、やっぱりダメです。いくらやっても雑音ばかりで、全くつながりません」
無線機の前に座るTMPがM4を見て言う。やはりジャミングの元を絶たねばどうにもならないようだ。
「そうか。じゃあ、ちょっと偵察にでも行ってみるか。もしかしたら、この辺りにジャマーが設置されているかもしれない」五十嵐が提案する。
「ダメよ、リスクが大きすぎる。ここで防衛戦をする方が最善の考えよ」416が即座に反対し、UMP45とM4も同意した。
「とはいえ、ここでじっとしていてもどうにもならない。何か行動した方がいいかもしれない」
「いえ、このまま待ちましょう。基地ではこっちと連絡がつかなくなっているのはわかっているから、救出部隊が来る可能性もある。それに、ここには無人機もあるから、それを使えばいいでしょ」とUMP45。
「でも、こんなジャミングの中じゃ無人機をコントロールするのも難しいんじゃないか?」
「確かに。でも、無暗に動き回って危険な目に遭うよりはマシよ。TMP、ここに中型の無人機があったわね。用意して。それで周囲を偵察しましょう。そして、脱出できるルートを探す。夜中に動くのは危険だから、行動を開始するとしたら翌朝ね。それまでは、ここで待機するしかないわ」
「わかりました」
TMPがタブレットを操作して、クアッドコプター型のUAVを離陸させた。静かにUAVは飛び去り、オレンジ色の空に消えていった。
2056年 4月2日 1857時 UAE ドバイ
スコット・ブレナンは暗視装置の状態を確認した。バッテリーは十分残っているし、他の物資も十分残っている。問題は、ジャミングによって味方と連絡を取ることが全くと言って良いほどできなくなってしまっていることだ。
先頭を進むJS9とMP5の合図で部隊が前進する。ヘリの音が聞こえてきた。よく耳を澄ませると、聞きなれたUH-60の音のようだ。
その音の主、2機のUAE空軍のUH-60が東の方から現れ、ビルの裏側に姿を消す。メインローターが回り続けている音が聞こえることから、軍の部隊を回収しに来たのだろう、とブレナンは判断した。
しばらくすると、ヘリが再び離陸するのが見えた。しかし、攻撃ヘリの護衛も無しにこんなところを飛ばすのは無謀過ぎるとブレナンが思った矢先、地対空ミサイルがヘリに向かって飛翔し、炸裂した。
「くそっ、こいつは酷い。軍はボロボロじゃないか。全く、何やっているんだか」
「撤退したんじゃないのか?さっきから通信の傍受をしていたけど、うんともすんとも、誰も話していないみたいだ。ほら」
ブレナンはMDRが差し出した無線機にある"傍受"のスイッチを押し、周波数を何度か切り替えながら耳をそばだてていたが、雑音が聞こえるだけで誰かが話している様子は無い。
「後は、考えたくないが・・・・・」
ブレナンが口を開いた途端、通りの向こうにM4A1カービンやT91自動小銃が散らばっているのが見えた。その近くには、銃創が幾つも刻み込まれた兵士たちの死体がそこら中に転がっている。
「悪い予感が当たったみたいですわね」とStG44。
「やっぱりなというか予想通りというか、これだよ」
2056年 4月2日 1840時 UAE グリフィン前方展開基地
「くそっ、無人機がやられた。これじゃ、戦場の様子がちっともわからんじゃないか」
無人機の管制官が吐き捨てるように言った。真っ黒になったノートパソコンの画面の中心には赤い文字で『UAV OFFLINE』の表示が出ていた。
戦場で活動している部隊は全部で4部隊。そして、無人機を失った今、4部隊全ての状況が全く掴めない状態だ。
「おい、状況はどうなっている?」
「ええっと、こんな感じです」
カリーナがタブレット端末を管制官に差し出した。そこにはドバイ市内の地図に幾つか記号が表示されている。
「何だこれは?」
「この白いのはUAEの軍部隊、青が私たち、そして赤が鉄血です」
「くそっ!これじゃあドバイは完全制圧されたも同然じゃないか!」
「先ほど、UAE陸軍の連絡係の人と話したのですが、UAEはドバイを放棄するようです。既に一部の部隊は市民を避難させつつ撤退を始めているようで・・・・・」
バタバタと大きなヘリの音が聞こえてきた。UAE空軍のUH-60Lやベル412、AW139だ。他にも、消防や警察、沿岸警備隊のヘリの姿も見える。日が暮れはじめ、すでに西の方は暗くなってしまっている。向こうの通りでは、トラックや装甲車が列を成し、ハイウェイへ向かっている。ドバイから離れる方向だ。
「それで、どうするんだ?」
「少なくとも、市内に派遣した部隊が支援をするはずです。この2部隊が孤立した部隊を回収して、撤退を始めます」
「それまで、俺たちはここを死守するってことか」
「仕方がありません。脱出用の装甲車と揚陸艦だけを残して、あとは撤収させます。ヘリは危険です。撃墜される可能性があります」
「畜生!」
「まずはここで待機しましょう。後は、取り残されている部隊の回収を済ませます」
2056年 4月2日 1853時 UAE グリフィンドバイ支部
「うーん、やっぱりダメです。いくらやっても雑音ばかりで、全くつながりません」
無線機の前に座るTMPがM4を見て言う。やはりジャミングの元を絶たねばどうにもならないようだ。
「そうか。じゃあ、ちょっと偵察にでも行ってみるか。もしかしたら、この辺りにジャマーが設置されているかもしれない」五十嵐が提案する。
「ダメよ、リスクが大きすぎる。ここで防衛戦をする方が最善の考えよ」416が即座に反対し、UMP45とM4も同意した。
「とはいえ、ここでじっとしていてもどうにもならない。何か行動した方がいいかもしれない」
「いえ、このまま待ちましょう。基地ではこっちと連絡がつかなくなっているのはわかっているから、救出部隊が来る可能性もある。それに、ここには無人機もあるから、それを使えばいいでしょ」とUMP45。
「でも、こんなジャミングの中じゃ無人機をコントロールするのも難しいんじゃないか?」
「確かに。でも、無暗に動き回って危険な目に遭うよりはマシよ。TMP、ここに中型の無人機があったわね。用意して。それで周囲を偵察しましょう。そして、脱出できるルートを探す。夜中に動くのは危険だから、行動を開始するとしたら翌朝ね。それまでは、ここで待機するしかないわ」
「わかりました」
TMPがタブレットを操作して、クアッドコプター型のUAVを離陸させた。静かにUAVは飛び去り、オレンジ色の空に消えていった。
2056年 4月2日 1857時 UAE ドバイ
スコット・ブレナンは暗視装置の状態を確認した。バッテリーは十分残っているし、他の物資も十分残っている。問題は、ジャミングによって味方と連絡を取ることが全くと言って良いほどできなくなってしまっていることだ。
先頭を進むJS9とMP5の合図で部隊が前進する。ヘリの音が聞こえてきた。よく耳を澄ませると、聞きなれたUH-60の音のようだ。
その音の主、2機のUAE空軍のUH-60が東の方から現れ、ビルの裏側に姿を消す。メインローターが回り続けている音が聞こえることから、軍の部隊を回収しに来たのだろう、とブレナンは判断した。
しばらくすると、ヘリが再び離陸するのが見えた。しかし、攻撃ヘリの護衛も無しにこんなところを飛ばすのは無謀過ぎるとブレナンが思った矢先、地対空ミサイルがヘリに向かって飛翔し、炸裂した。
「くそっ、こいつは酷い。軍はボロボロじゃないか。全く、何やっているんだか」
「撤退したんじゃないのか?さっきから通信の傍受をしていたけど、うんともすんとも、誰も話していないみたいだ。ほら」
ブレナンはMDRが差し出した無線機にある"傍受"のスイッチを押し、周波数を何度か切り替えながら耳をそばだてていたが、雑音が聞こえるだけで誰かが話している様子は無い。
「後は、考えたくないが・・・・・」
ブレナンが口を開いた途端、通りの向こうにM4A1カービンやT91自動小銃が散らばっているのが見えた。その近くには、銃創が幾つも刻み込まれた兵士たちの死体がそこら中に転がっている。
「悪い予感が当たったみたいですわね」とStG44。
「やっぱりなというか予想通りというか、これだよ全く」ブレナンが肩をすくめる。
側面に穴が空いたBMP-3やハマーがまだ煙を上げている。UAE陸軍はどれだけの戦力を失ってしまったのだろうか。
「それで、どうするのさ。早いところ部隊を見つけてヘリを呼ばないと」P7がキョロキョロと辺りを見回す。
「まあ、焦るな。まずは敵を掃除することから始めよう」ブレナンがそう言って自分が持つアサルトライフルの状態を確認した。