※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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突破

 2056年 1月8日 1319時 カザフスタン

 

 鉄血の部隊は、通りを塞ぐように装甲車を並べ、バリケードを作っていた。路肩には銃で撃たれた人間の死体と破壊された乗用車やトラックが転がっている。

 広大な土地での戦闘のためなのか、イェーガー、ヴェスピド、ドラグーンといったサイボーグで編成されており、更にはジャガー、ニーマムといったUGVも確認できる。

 

 この部隊の目的は、人の移動の阻止だった。この幹線道路を封鎖し、人間と物資の移動を止めることだった。ここを通る人間を皆殺しにする。それが、このサイボーグたちに与えられた命令だった。現に、この道路は、カザフスタンの大動脈の一つであり、戦略上、かなり重要な道でもある。

 鉄血のこの小隊は、何も知らずにここに車を走らせてきた人間を片っ端から撃った。男も、女も、子供も無差別に。

 

 鉄血のイェーガーが、向こうから車両が接近しているのを確認した。ライフルのボルトを引き、大口径の弾を薬室に送り込む。だが、イェーガーが狙いを定める前に、周囲が爆発した。

 

 2056年 1月8日 同時刻 カザフスタン

 

「敵、発見。正面に鉄血の小隊だ。対戦車榴弾用意」

 

 T-14のマニュアルは、タブレット端末でダウンロードしておいた。グリフィンが保有しているそれは、各国語翻訳されていた。日本語版があるのはありがたかった。五十嵐は、キリル文字はさっぱり読めない。

 

「ターゲットロック、ファイア!」

 

 UMP9がタッチパネルに触れると、凄まじい轟音を立てて125mm砲が火を吹いた。多目的榴弾が炸裂し、敵を爆風で吹き飛ばす。

 

「よし、こいつを食らいな」

 

 五十嵐は、砲塔の上に載せられた、アルバレットDMという機銃遠隔操作装置に載せられた6P49重機関銃を車内から操作した。鉄血兵たちは、四肢を切り飛ばされ、あるいは頭を粉々に砕かれ、腹部から真っ二つに切断された。そこらじゅうに白い人工血液が撒き散らされる。

 ジャガー、ニーマムはAPFSDSの餌食となった。装甲で覆われた鉄血の大型兵器も、第3.5世代以降の戦車を破壊する目的で設計された徹甲弾には耐えられなかったようだ。

 脚を破壊された鉄血兵が、この場から這って逃げ出そうとしたが、後ろからやって来たクルガネツ25のキャタピラがのしかかってきた。金属とセラミックの骨格が潰される軋むような音が鳴り、人工血液が飛び散った。

 

「わーお、すっごいじゃん!これ!CoDやWoTより面白いかも!」

 

 クルガネツ25の砲手を務めるAM-RFBは興奮気味だった。彼女は、近くの鉄血を片っ端から照準レティクルで狙い、撃った。同乗するSV98からは、運転の方が向いているのでは、と言ったが、RFBは頑なに砲手になることを譲らなかった。

 そこで、運転手は、AEK-999がやることになった。彼女曰く、バイクとそう変わらんよ、とのことだった。

 

「RFB、武器の使い方はばっちりかい?」AEKが訊いた。

 

「まーかせて!こんなのアーマードコアより簡単よ!と、言うよりゲームより面白いよ!」

 

 RFBの口からは、いかにもゲーマーらしい言葉が次々と飛び出した。

 

「そいつは良かった。まあ、仲間を回収して、基地に辿り着くまで、たっぷり楽しみな!」

 

 2056年 1月8日 1322時 カザフスタン アルマトイ国際空港 グリフィン現地指令部

 

「B中隊の信号を捉えました!全員、生体反応有り!」

 

 コンソールに座っている若い女性がヘリアンの方を見て、大声で言った。

 

「衛星画像は?」

 

 ヘリアンは彼女のコンソールのすぐ近くまで歩き、モニターを覗きこんだ。

 

「追跡中です・・・・・・待ってください。AR小隊の信号も確認!ただし、1人だけです」

 

「どうなっているの?」

 

「少々お待ちを・・・・・・・どうやら、B中隊は、AR小隊のメンバーの方に向かっているようです」

 

「やっと見つけたか。そうなると、ミスターイガラシは、あのAR小隊の人形の居場所に向かっているのか?」

 

「そのようです。衛星で捉えました。画像が出ます」

 

 モニターには、不鮮明な俯瞰映像が映った。それがだんだんとデジタル処理されて鮮明になっていく。やがて、猛然と突き進む戦車と装甲車の車列が映った。

 

「おい・・・・・あの日本人、戦車なんて運転できたのか?」

 

「今はいい!それよりも、無人機を発進させろ!援護急げ!」ヘリアンが命令を出した。

 

 2056年 1月8日 1327時 カザフスタン アルマトイ国際空港

 

 格納庫から、巨大なエイのような航空機が4機、ゆっくりと出てきた。エプロンで一旦停止し、グリフィンの整備員かが機体の最終チェックを行う。

 

 この無人機は、MQ-45B。かつて、アメリカ空軍が開発していた無人戦闘攻撃機であるX-45を発展させ、実用化にあたって二回り程大型化させたものだ。

 グリフィンは、この無人機を戦場監視、航空偵察、近接航空支援、目標の破壊に使っている。2つのウェポンベイには、GBU-32JDAMを1発ずつ、あるいはGBU-39かGBU-53/Bを4発ずつ搭載できる。この2機は、GBU-54/Bを8発ずつ搭載していた。近接航空支援をするため、威力が小さく、かつ、正確に相手を攻撃し、数多く搭載できる武器が必要だと判断されたためだ。

 

 先頭を行く2機の無人機は滑走路の端で並ぶと、即座にエンジンの出力を上げ、空へと舞い上がる。残りの2機も、すぐにそれに続いた。

 

 2056年 1月8日 1339時 カザフスタン

 

「RFB!ちょっと!あなたのパソコン、無人機に接続しましたと出てますよ!」

 

 クルガネツ25の車内で、G36がタフブックをRFBに差し出した。確かに、無人機管制アプリが起動し『UCAV ONLINE』という文字が画面に出ている。

 

「おおっと!サンキュー!ええっと、おお!MQ-45Bか!アメリカから拾った"ジャンク品"だけど、十分使えるやつだね!」

 

 RFBは猛烈な勢いで10本の指を動かし、無人機のうち1機の操作権限を作戦本部のコンソールから、自分のPCに切り替えた。

 

「これで無人機がいつでも使えるよ!」

 

 2021年 1月8日 同時刻 カザフスタン  アルマトイ国際空港 グリフィン現地指令部

 

「おい、無人機が1機"奪われた"ぞ。どうなったんだ?」

 

 技術者の一人が立ち上がった。すぐさまシステムをチェックする。どうやら、援護中の部隊が無人機のコンソールシステムに侵入し、操縦権限を奪っただけのようだ。

 

「はた迷惑な。一瞬、鉄血にやられたのかと思ったじゃないか」

 

 ヘリアンには、その犯人にすぐに目星がついた。RFB。B中隊のゲーマーにしてコンピューターギーク。彼女の専門は、電子・サイバー戦だ。RFBは一度、アメリカやロシア、イギリスなど主要国のアルファベット3文字や4文字の情報機関のネットワークに侵入して、一悶着を起こしたことがある。無人機のハッキングなぞ、朝飯前のはずだ。

 

「やれやれ。とは言うものの、帰ってきたらRFBは後で叱ってやらんとな。無闇にハッキングをして、こっちを混乱させるな、とな」

 

 ヘリアンはそう言ってかぶりを振った。無人機はそのまま五十嵐たちを援護するように上空を周回している。だが、五十嵐が必要な時に、すぐに無人機を指示通りに動かすとなると、どうしてもタイムラグが生じてしまうのも、また事実だ。とは言え、無断で社の資産をハッキングして好き勝手に使うのは感心ならなかった。

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