※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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最初の交戦

 2055年 7月26日 1128時 都内

 

 ピラーニャ装甲車が、都内の道路を走った。一般人の目からしたら、自衛隊が出動したかのようにしか見えないかも知れないが、自分のような軍オタからしてみたら、米軍のストライカー、しかも、塗装パターンが米軍とはまるっきり違う、所属不明の車両が走っているとしか見えない。

 

 "45姉"は、タブレット端末をしきりにタップしていた。そして、運転手に指示を開始した。

 

「M14、次の道を右に曲がったらまっすぐ。そうしたら、埠頭まで一直線よ」

 

「埠頭?船に乗るのか?」五十嵐が質問した。

 

「そうだよ。そこで迎えが来ているから、それに乗ってグリフィンの基地まで行くの。もちろん、あなたも一緒に」AM-RFBを持つ少女が答えた。

 

「待ってくれ・・・・・その、"グリフィン"てのは何なんだ?」

 

「グリフィン&クルーガー社。PMCよ。だけど、表立つような事は、普段はしていない。株式上場もしていなければ、ウェブサイトも無い。業務は一つ。世界の平和の脅威になるものを、極秘裏に排除する。それだけよ」45姉が答えた。

 

 アジアナンバー2の国力を持つ国の首都のど真ん中で、白昼堂々銃撃戦を展開しといて、あれが極秘裏かよ。45姉が続けた。

 

「私達のスポンサーはとても多い。軍事防衛産業関連企業、他のPMC、その他マンモス企業、あなたの国の旧財閥系企業、そして、主要各国政府、国際的公的機関。誰でも知っている名前がごまんと名を連ねている。さっきも言った通り、普段は裏工作をしている。本当は、誰にも気づかれず、秘密裏にあなたを連れ出すつもりだった。でも、鉄血の奴らがあなたを殺す、または誘拐する計画を突き止めたの。それで、無理やり連れ出すことにした。例え、白昼堂々、街中で銃撃戦を展開したとしても」

 

「誘拐したのは、君らも同じだろ・・・・・ところで、名前を聞いていなかったな」

 

「UMP45」

 

「は?」

 

「UMP45。私の名前」

 

「それは、君が持っている銃・・・・・・」

 

「隠しても仕方がないわ。私は人間じゃないの。"戦術人形"と呼ばれている、グリフィン&クルーガー社が開発したサイボーグ」

 

「なんだって!?サイボーグ!?」この女の子たち、ターミネーターとかの同類なのか!?

 

「サイボーグ、と言っても、そうね。私たちは、だいたいは人間と変わらないわ。お腹は空かして、人間と同じものを食べるし、笑うし、怒るし、泣くわ。そうそう。サイボーグかどうか確かめるために、変なところを気安く触ったりしたら殴るわよ?」

 

「わかった。もういいよ」

 

 五十嵐がそう言った時だった。

 

「敵!6時方向!」

 

 装甲車のハッチから上半身を外に出していたM60が機関銃の遊底を引いた。

 

 2055年 7月26日 1135時 都内

 

 バイクに乗った鉄血兵が3人、ピラーニャ装甲車を追いかけてきた。鉄血兵は、片手に奇妙な形をしたサブマシンガンを持っている。鉄血兵には戦術人形が持つ個性も感情も無い。あるのは命令と任務だけ。

 

 鉄血兵がサブマシンガンを向けるより先に、M60が撃った。7.62mm弾が鉄血兵を貫き、空中に鮮血を巻き上げる。彼女の足下は、あっという間に薬莢で埋め尽くされた。断続的に機関銃が吠え、敵を仕留める。

 

 機関銃は、鉄血兵が持つ銃の射程外から撃てるため、戦いは一方的なものになった。だが、再び鉄血兵は、バイクに乗ってやって来る。その度に、敵は血と肉の塊になった。続いて、風を切る重低音が聞こえてきた。その音は、だんだん大きくなってくる。

 

「ヘリの音か?警察かマスコミか?どっちにしろ、面倒なことになるぞ」

 

 五十嵐がUMP45に言った。

 

「それならばまだマシな方だけど・・・・ヤバい奴らかもよ」

 

 ヤバい奴ら?まさか。

 

「45!その"ヤバい奴"だよ!ハインドだ!」M60が叫んだ。

 

 Mi-24D"ハインド"が1機、上空から接近してきた。分厚い装甲に覆われたロシア製の攻撃ヘリだ。世界50ヵ国以上の軍で採用され、運用されている。このヘリは、地上部隊から見たら、最悪の殺人マシンだ。機関砲、ロケットランチャー、ミサイルで武装し、戦車すら容易く破壊する。そんなヘリから見たら、ピラーニャなど、池の畔で寝ているアヒル同然だ。

 

「うわっ!最悪だ!」五十嵐は、ハインドを見上げて言った。流石に、この状況では、初めて本物のロシア製攻撃ヘリを見た感動よりも、死の恐怖が先に迫ってくる。

 

「M14、30秒だけ時間を稼いで」

 

UMP45がダッシュボードの下から、極薄のPCを取り出して起動し、タッチパネルになった画面上のアプリをタップして開いた。

 

 UMP45が起動したアプリは、彼女たちの後方上空で警戒飛行をしていた、MQ-9リーパー無人偵察攻撃機の操作をオーバーライドするものだった。リーパーは、遠く離れたグリフィンの基地にいるオペレーターによって衛星通信により操縦されているが、緊急時には、このアプリを使い、現場にいる隊員が操作することもできる。45は、火器管制画面を呼び出し、白い十字のレティクルの真ん中にハインドが重なるように操作した。やがて、レティクルは赤に変わり『Lock On』の文字が表示される。

 

「これで・・・・・ファイア!」

 

 MQ-9からAGM-114Rが発射された。誘導には、機体に付いているレーザーレンジファインダーが使われた。いかに頑丈な装甲を持つ攻撃ヘリでも、タンデム弾頭を持つ最新型の対戦車ミサイルを撃ち込まれたら、ひとたまりも無い。ハインドはメインローターを破壊され、地面に叩きつけられた。

 

「ふう。一安心かな?」五十嵐が言う。

 

「あ、生き残ってたか。しぶといなーもー」

 

 UMP45が持つタブレットには、MQ-9のカメラからリアルタイムで映像が送られてきている。ハインドのコックピットからは、2人の鉄血兵が這い出ようとしていた。UMP45は、バンが安全な距離を取るまで待ち、レティクルを鉄血兵に合わせた。

 

「もう一発、発射!」

 

 無人機から、再び対戦車ミサイルが発射された。それは、墜落した攻撃ヘリのコックピットを直撃し、近くにいた2人の鉄血兵を消し炭に変えた。

 

 2055年 7月26日 1136時 某所

 

 スクリーンには、MQ-9無人機から送信されてくる画像がリアルタイムで送られてきている。たった今見たのは、ヘリから這い出ようとしていた鉄血兵が、ミサイルの直撃を受けるところだった。そのスクリーンを見上げていたのは、眼鏡をかけた若い女性だ。

 

「やれやれ。いつもの事とは言え、また随分と派手にやってくれたものだな」後ろから、中年の男が話しかける。

 

「おまけに、日本の首都のど真ん中で銃撃戦ですよ。これはもう、戦争と言った方が良さそうですが」

 

「あの国だと、発砲事件があるだけでそこそこ大きな事件扱いになるのに。今日の出来事は、とんでもない騒ぎになりそうだな」

 

「クルーガーさん。日本は世界的に見ても、銃の規制が一際厳しい国です。基本的には、法執行者か自衛隊関係者だけが銃を持てます。例外として、射撃競技の選手などが持つ事を許されますが、競技人口は非常に少ないです。そのため、日本ではエアソフトガンやガスガン、電動ガンを使った、サバイバルゲームという"安全な"模擬戦争ゲームというものが、銃器愛好家の間で楽しまれています。パッと見た目は、実物の銃とあまり変わりません。そうですね。グロックみたいな、プラスチックを多様した銃ならば、グリップだけを見せたら、それが実銃のものなのか、ガスガンのものなのか、分かりにくいケースもあると言われています」

 

「ふむ。それで、あいつを連れてきたら、まずはどうするつもりだ?」

 

「彼女たちと同様に、訓練を受けさせます。銃を支給して」

 

「何を支給するつもりだ?」

 

「自動小銃はブッシュマスターACR。5.56mm。拳銃はベレッタAPXの9mmを用意しています」

 

「ふむ。奴が銃に慣れるまで時間がかかるか」

 

 

「いえ。彼の下調べはついています。彼はサバイバルゲームが趣味のようです」

 

「ほう?」

 

「クルーガーさん。先程言った通り、サバイバルゲームというのは・・・・・」

 

「知っているよ。まあ、玩具とは言え、銃に親しんでいる人間の方が、こっちとしても都合がいい。後は頼むぞ、ペルシカ」

 

「クルーガーさん。これからどちらへ?」

 

「ヨーロッパ支局だよ。向こうでも、鉄血の奴らが暴れまわっているからな」

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