※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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雪中の演習

 2056年 1月21日 0813時 ボスニア・ヘルツェゴビナ某所 グリフィン訓練施設

 

 2機のCH-47Fが森林が点在する平野に着陸した。上空では3機のMi-28攻撃ヘリが援護するようにホバリングしている。かつてはここでは、3つの勢力が争い、血で血を洗う凄惨な内戦が行われていた。

 

 今日は、グリフィンのB中隊とJ小隊の2つの部隊の合同で戦闘訓練が行われることとなった。鉄血の侵攻が思ったよりも激しくなり、ウクライナやベラルーシでは既に政府軍やPMC側の旗色が悪くなってきていた。だが、すぐに部隊を戦力として投入しても犠牲を増やすだけとなるので、グリフィンは部隊に集中的な戦闘訓練を受けさせていた。

 

「展開!」

 

 五十嵐が命じると、B中隊の戦術人形たちが即座に防御陣形を作った。チヌークが着陸し、J小隊のメンバーたちも降りてくる。ヘリは凄まじい風を巻き上げ、枯れ葉を人間と戦術人形たちにぶちまけながら飛び去って行った。

 

「ぶえっ、最悪・・・・・」416が、彼女らしからぬ声を上げて、枯れ葉を吐き出した。

 

「さて、状況を説明するわよ。街中で暴れまわっていた鉄血の連中が逃走し、私たちはその後始末に出かけることになった。敵は全部無人で動き回る訓練用のアンドロイドやロボットだけど、当然のごとく訓練用のペイントボールで撃ち返してくるわ。まあ、こっちは実弾を使うんだけど、くれぐれも味方だけは撃たないように。撃つ前に、ちゃんと誰なのかを確認してから撃つこと。以上。質問はある?」呉明の言葉に全員が首を振った。

 

「じゃあ、いいわね。先頭は私とSAT8、右側面は95式と97式。左側面はFNCちゃんお願い。全員、15メートル間隔で移動。右側面は416ちゃんとスオミちゃん、M60ちゃん。しんがりは五十嵐君とUMPちゃんたち。そして、狙撃手は途中で離脱。わーちゃんの支援は79式、ファルコンちゃんとSVちゃんの支援はG36ちゃんとFALちゃん。以上よ」

 

 呉の指示に従って部隊が動き始めた。今回の訓練内容は、簡単に言うと山狩りだ。逃走した敵部隊を追跡し、仕留める。

 五十嵐が今回選んだ武器はAK-101。AKの5.56mmバージョンで、ロシアのメーカーが西側の軍や警察、PMC向けに製造しているものだ。AK-103も試してみたが7.62mm×39は反動がきつくて撃ちにくく、5.56㎜の銃を選ぶことにした。そこで今回選んだのがこの銃だ。AK系統の銃なので、頑丈で整備がしやすく、多少は粗雑に扱っても問題無し。サイドアームである拳銃は、SIG-P320を選んだ。更に、RPG-7のランチャーも背負っている。

一方、呉はSiG-SG552とワルサーPPQを装備している。他には、コンバットナイフ、M67破砕手榴弾、M84閃光音響弾も用意していた。

 

「指揮官・・・・・・これ本当に必要なんですか?」

 

 スプリングフィールドが背負っている鞄には、RPG-7のHEAT弾頭が入っていた。

 

「イージスやニーマム、マンティコアが出てきたら、ファルコンの12.7mmの徹甲弾でも苦しいからな。対戦車兵器でないと」

 

 本当の所、交戦距離がやや長いB300やカールグスタフM4を持っていきたかった。RPG-7は、携行ロケットランチャーとしては軽く、細身なので持ち運びは便利だ。B300は予備弾頭はチューブに入っているため嵩張る。口径の大きいカールグスタフの弾頭も然り。車両での移動ならばそれらを持っていくことも考えたが、やはり徒歩移動だと軽量のものを選びたい。

 へリボン作戦で車両を持ち込めない状況では、これが問題になるのだ。スティンガーやジャベリンといった重装備を持ち込むことが難しくなる。

 

「それと・・・・・・こいつは役に立つのかな?」

 

 五十嵐が弾薬ベルトに入れていた缶のようなものを手に取った。それには黒い塗装が施されており、白で『WP』という文字が描かれている。

 

「うん?まあ、機械のやつにはあまり効かないけど、人型のは普通に燃えたよ。一番いいの敵の足元を狙うことかな」呉が言った。

 

「足元・・・・ですか」

 

「奴ら、痛覚が無いみたいだから、普通に燃えたまま歩いてくるんだけど、結局は足が燃えて炭になって歩けなくなるのよ。まあ、そうなったら這ってこっちにくるんだけど」

 

「ゾンビかなんかですか、それ」

 

「まあ、そういう風に見えなくもないよ。大事なのは、奴らが完全に止まるまで弾を撃ち込んで、ぶっ殺すことよ。撃った後でも、しぶとく動いていることも多いから油断しないでねってこと。さて、SAT8、先導頼むわよ」

 

 2056年 1月21日 0817時 グリフィン訓練施設

 

 不格好な銃を持ったアンドロイドが隊列を組んで歩いていた。このアンドロイドは、グリフィンが使っている戦闘訓練用のもので、手にしている銃には9㎜のペイントボール弾が装填されている。AIには最低限のプログラムしかインストールされていないが、戦闘能力だけはある。だが、体に関しては必要最低限の機能しか無い安物だ。

 このアンドロイドの存在意義はただ一つ。グリフィンの戦闘部隊の戦闘訓練の標的となり、破壊されること。なので、見た目もかなり安っぽい。アンドロイドはペイントボール銃を構え、森の中を歩いていた。

 

 その様子を、4人の戦術人形が見ていた。SV98とファルコン、FAL、G36だ。この4人の狙撃チームは、木の枝や蔦などを使って作り上げたシェルターの中で敵を待ち、監視して五十嵐に報告をするという任務をしていた。

 

「敵が6体。隊列を組んで南に向かっているね。指揮官、このまま追いかける?」ファルコンが無線で報告した。

 

『そうしてくれ。他の監視はWAたちに任せよう。君らは連中の監視を頼む』

 

「任せて。通信終了」

 

 ファルコンは狙撃班のメンバーを見た。

 

「あいつらを追いかけろって。じゃあ、静かに、そっとね」ファルコンは囁くように仲間たちに言って、標的の追跡を始めた。

 

 2056年 1月21日 0823時 グリフィン訓練施設

 

 降り積もった雪を踏み固め、呉とSAT8が目標地点へと進む。仲間たちは一定間隔を空けて進軍していたが、最後尾のUMPの姉妹だけは、五十嵐の護衛に付いていた。そして、暫く歩いていると銃声と共にビシッ、ビシッとペイント弾が着弾して破裂する音が聞こえてきた。一斉に仲間たちが地面に伏せる。五十嵐はUMP45に地面に引き倒された。

 

「敵襲!9時の方向!」

 

 UMP45が五十嵐に覆いかぶさったまま銃を撃った。その方向には、戦闘訓練用のサイボーグの姿を4体確認した。五十嵐も伏射の姿勢で撃ち返す。サイボーグは後退しながらペイントボール銃を撃ったが、45ACPや5.56mmNATO、30-06弾などを食らって地面に倒れる。

 

「周辺警戒!撃たれた子は!?」

 

 スプリングフィールドが銃のボルトを引き、弾薬を装填し、周りを見回した。向こうには銃弾でボロボロになったサイボーグが転がっている。

 

「大丈夫」

 

「平気だよ」

 

 全員無事のようだ。さて、敵の掃討を続けねば。今回、事前ブリーフィングでは、どれくらいの数の敵が確認されたのか、という事前情報は無かった。つまり、それは、いつまで作戦が続くのか、全く見通しが立たないことを意味する。

 

「"死体"を確認しよう。さて・・・・・」

 

 五十嵐は銃で撃たれて転がっているサイボーグを蹴った。ズタボロになった体から人工血液をだらだらと流し、周囲には生体組織とセラミックや金属の骨格の破片が地面に散らばっている。

 

「こいつは死んでるな。人工心臓が見事に撃ち抜かれている」

 

 やがて、銃声が鳴った。9A-91が硝煙を上げる自動小銃をサイボーグに向けている。

 

「まだ死に損ないがいますね。気をつけてください」

 

 UMP45は五十嵐の体をざっと見た。オレンジ色の蛍光ペンキが体に着いていないので、撃たれてはいない。45は素手で木の幹に付着した蛍光ペンキを指先に付けて五十嵐に見せた。

 

「いい。これは、自分の血だと思って。それに、当たったらかなり痛いわよ。そうね。だいたい、投げられた石くらいの威力はあるわ。普通に皮膚が破れて血が出るレベルよ。勿論、顔に当たったら大怪我だわ」

 

「恐ろしいな」

 

「実戦では、怪我で済めば儲けものだわ。わかっているでしょ?指揮官」

 

「当然だ」

 

「よし、みんな無事のようね。じゃあ行きましょう」

 

 先頭近くにいたはずの呉が、いつの間に列の後ろの方にやって来ていた。

 

「隊列を組み直し、目標へ向かうわよ。前進!」

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