※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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ラボと演習場

 2056年 1月21日 0834時 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ某所 グリフィン研究施設

 

 M16A1は不満そうに段ボール箱を持ち、トラックからラボへと運び込んでいた。AR小隊の隊長が、こんな雑用をさせられるとは。ふざけた話だ。しかし、こいつの中身な何なんだ?抱えた感じ、そこそこの重量がある。

 本来は、こんな事をしている場合では無いはずだった。中央アジアでは、3人の妹たちが助けを必要としている。それなのに、自分がやらされているのは、ラボの雑用ばかりだ。

 

「おい、ペルシカ。こいつはどこへ持っていけばいいんだ?」

 

「その机の上にお願い。他の荷物は隣の部屋に置いておいて」

 

 ペルシカは、ラボの中にある大きな透明なカプセルを見た。中には、長い金髪の少女が裸の状態で入っている。そして、カプセルのすぐ隣のラックには、古いライフルが入れられている。

 ペルシカは机に向かい、パソコンのスイッチを入れた。AIの状態と烙印システムのアルゴリズムを表すグラフが表示される。

 

「よーし、同調は順調。さて・・・・・後は」

 

 彼女はキーボードを叩き、コードを入力した。呼吸、心拍数、脳波。全てが正常だ。臓器は全て人工物だが、ほとんど人間と変わらない。

 

「おはよう。すぐにでも新しい仲間に会わせてあげるよ」

 

 やがて、ドアが開き、T中隊の指揮官であるハビエル・コルテスが入ってきた。彼はM110SASSという戦術人形を連れている。

 

「やあ、ペルシカ。そいつは・・・・・?」

 

「ん?残念ながら、君の部隊の所属にはならないよハビエル」

 

「ちっ、何だよ」

 

「さて、クルーガーさんから新しい命令だ。さて、これを見てくれ」

 

 ペルシカはPCを操作した。コルテスが自分のタブレットPCを見る。そこには、新しい命令が表示されていた。

 

「せっかくバルカン半島でのんびりできたと思いきや、今度は中東かよ」

 

「あっちは報酬なら弾むと言っているぞ。金が必要だろ?」

 

「わかったよ。いつも通り、半額を任務前、任務後にもう半額。それだろ?」

 

「その通りだ」

 

「全く、真冬のヨーロッパから中東に派遣とか、体調がおかしくなりそうだ」

 

「報酬を貰っているんだろ?早く行け」

 

 2056年 1月21日 0849時 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ グリフィン訓練施設

 

 銃声が2回鳴り、訓練用のサイボーグが倒れた。額には45ACP弾が撃ち込まれている。さらにフルオートで自動火器が発射される音が鳴り響いた。7.62㎜弾が雨あられと掃射され、同じようなサイボーグがバタバタと倒れる。

 

「装填!」

 

 M60は肩から掛けた弾薬ベルトを持って銃に装填した。彼女が装填している間、スオミとRFBが銃撃して弾幕を張り、"敵"をけん制する。訓練用サイボーグは、自分たちに向かって飛んで来る弾丸を全く気にする様子は無く、全身しながらペイントボール銃を撃ってくる。まあ、鉄血のサイボーグ兵自体、そんな様子で攻撃してくるのだから、シミュレートとしては正解だ。

 大きな銃声とともに、訓練用サイボーグの頭部が消し飛んだ。ファルコンの12.7㎜弾が命中したのだ。そもそも、この弾薬は人を撃つために設計されたものでは無いのだが。

 

 狙撃チームは、部隊主力から離れた場所にいた。WA2000が敵に狙いをつけ、引き金を引く。

 

「WA、敵が南から移動している。見える?」

 

「見えてるに決まってるじゃない。79式、やるの?」

 

「やって」

 

 4体のサイボーグの頭部が次々と熟れたスイカのように破裂した。全滅させるまでに30秒とかかっていない。精密さと速射性を両立させたワルサーWA2000だからこそ成せる業だ。

 

「お見事」

 

「この程度、余裕よ。当然に決まってるでしょ」

 

「さて、移動ね。今度は指揮官たちを目視で確認できるところへ行かないと」

 

 2056年 1月21日 0903時 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ グリフィン訓練施設

 

 呉明は、SAT8と共に先頭を歩き続けている。先ほど、訓練用サイボーグの足跡を幾つか見つけたため、それを追いかけて排除することにしたのだ。

 後からついてくる仲間たちは、2~3人一組になってやや広めに間隔を空けて歩いている。最後尾を歩く五十嵐の側にいるUMPの姉妹は、まるで護衛するかのように、彼の近くから離れることは無かった。

 二人とも、この指揮官のことが好きなのだろう。そう言えば、初めて顔合わせをした、イタリアの支部でも、この姉妹が彼の近くから離れるところをあまり見たことが無かった。まあ、特に妹の方か。この指揮官に懐いているのは。

 

 暫く歩くと、SAT8が立ち止まり、地面を指した。足跡がたくさん残っているのがわかる。呉は自動小銃を肩から下げ、それを使って足跡の歩幅を測る。ざっと見たところ、足跡の主は5~6人のグループで行動しているものと推測できた。

 呉は後ろの仲間たちに左右に展開し、間隔を広げるよう合図した。そして、前進するペースを遅くした。敵が近くにいると呉は判断したのだ。

 

「わーちゃん、今どこ?」呉は無線機のマイクに向かって囁くように言った。

 

『指揮官のことは見えてるわよ。任せてって言っているでしょ』

 

「よし。じゃあ、敵が見えたらすぐにぶっぱなして」

 

『わかったわ』

 

 2056年 1月21日 0909時 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ グリフィン訓練施設

 

 一方、SV98とファルコン、G36は五十嵐からの指示により、敵を追いかけ、狩る作戦を行っていた。遠くから敵を見つけたら、即座に撃ち、排除する。3人は自分たちがいる林の中から、だいたい500m先にある山の斜面を見た。5体の訓練用サイボーグが隊列を作って歩いているのが見える。

 

「G36、敵だよ。やる?」

 

 ファルコンはレーザーレンジファインダーで距離を測った後、銃に付いているスコープのヴィンテージノブとエレベーションノブを回し、着弾点を調整した。

 

「いいでしょう」

 

「よーし、まっかせてー」

 

 ファルコンが銃の引き金を引いた。12,7㎜弾が標的の頭部の四分の一ほどを消し飛ばした。ボルトを引き、弾薬パウチから取り出した弾を薬室に装填する。彼女の銃は、弾倉に1発しか装填できないため、速射性には難ありだが、B中隊の戦術人形の中では、最も射程が長く、パワーの強い弾丸を発射する銃を使っている。SV98も銃を撃ち、遠くの敵を排除した。

 SV98とファルコンはスコープ越しに倒れた"敵"の様子を確認した。破壊された訓練用人形が転がっている。その左手の方から、呉明が仲間たちを引き連れて歩いてきたのを確認した。

 

「指揮官様、どうされます?私たちはこのままここで待機しますか?」G36が無線機で五十嵐に呼び掛けた。

 

『後ろから距離を開けてついてきてくれ』

 

「わかりました。SV、ファルコン、移動しますよ。WAはどうします?」

 

「そうね。一人でいるよりはマシだと思うわ。あんたたちについて行くことにするわ」

 

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