※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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MIA

 2056年 1月24日 0813時 ウクライナ

 

 MG23はパラシュートを使い、地面に降り立った。降下中は恐怖で、ただパラシュートをタイミング通りに開くことしか考えることができず、指揮官や他の仲間がどうしているかなど、全く考える余裕が無かった。

 だから、自分がはぐれてしまっていることに気づいたのは、地面に降り立ってからだ。周囲を見回すと、他に誰もいない。周囲には、林が点在し、大きな幹線道路が通っているのが見えるだけ。

 

「あれ・・・・・・・?指揮官・・・・・?」

 

 MG23は作戦前ブリーフィングの手順通りにパラシュートを土に埋め、それから仲間をの姿を探すために歩きだした。暫く歩くと、破壊されたBMP-2歩兵戦闘車やT-64BM戦車、2S6M1ツングースカ自走高射機関砲、BTR-80A走行兵員輸送車が見えてきた。更に、撃墜されたMi-8汎用ヘリコプターもある。近くにはAK-74を持った兵士の死体が大勢転がり、地獄のような光景が広がっていた。

 

「ひっ・・・・・・・」

 

 MG23は腰を抜かし、その場で動けなくなった。彼女は実戦を経験していたが、単独行動になったことはまず、無かった。常に指揮官である呉の近くで戦い、遠くから敵をけん制する弾幕を張る。それが小隊での彼女の役目であった。だから、単独でこの戦場に放り出された事実がわかったMG23の思考は完全に停止してしまったのだ。

 

 2056年 1月24日 0815時 ウクライナ

 

 厄介なことになった。J小隊の戦術人形の一人がパラシュート降下中に風に流され、どことも知れない場所に着地してしまったようだ。救助部隊が、逆に行方不明者を出してしまうとは洒落にならない。

 

「木乃伊(ミイラ)取りが木乃伊(ミイラ)になるだなんて洒落にならないな。どうします?」

 

 五十嵐が呉の方を見た。

 

「ビーコン信号は捉えたわ。ここから30km北東の方ね」

 

 呉はタブレットPCの画面を見せた。地図には部隊の位置とMG23がいるであろう位置に輝点が表示されている。

 

「無線で連絡は取れそうですか?」

 

「それが・・・・・・どうやらかなり強力な妨害電波を使われているみたいで、全く連絡が取れないの」

 

 カザフスタンの時と同じか。鉄血製造工廠は、電子戦でこちらの通信網を妨害・破壊して人間のネットワークや情報網を遮断したところに攻撃を仕掛け、殲滅する。そのため、特に地方の小さな村や町が鉄血に攻撃されても、発覚するのが数日から数週間後になることが多くなっているのだ。

 それは軍やPMCの部隊も同じで、掃討のために出撃したら数時間で司令部と連絡が取れなくなり、数日後に全滅していた、というケースが多いのだ。

 

「厄介ですね。しかし、置き去りにする訳にはいかないですね。何とかして連絡を・・・・・」

 

五十嵐がそこまで言ったとき、SV98が二人の所へ駆け寄ってきた。

 

「指揮官、南の斜面から敵が接近中です!今、防御陣地を作っている所です!」

 

「くそっ。早速おいでなすったか!」五十嵐はSCAR-Lのコッキングハンドルを引き、薬室に5.56mmAP弾を送り込んだ。

 

「この話は後で!今は目の前の敵に集中しましょう!」呉も自分の武器を確認し、戦いに備えることにした。

 

 2056年 1月24日 0816時 ウクライナ

 

 五十嵐はレーザー測距儀機能が付いた双眼鏡を使い、SV98と共に敵の様子を観察した。リッパー、ダイナゲート、プラウラーの姿が見える。あわせて全部で10体程だ。

 

「数は少ないな。多分、斥候だろう。パラシュート降下を見られていたか?」

 

「こっちに来ますね。今ならば外さないですよ」

 

 SV98は伏射の姿勢で、五十嵐にぴったりと体を寄せて敵を観察していた。右手の人差し指がライフルの引き金にかけられ、いつでも射撃準備完了といった様子だ。

 

「ちょっと待て・・・・・・ファルコン?」五十嵐がスロートマイクに囁くように言った。

 

『なーにー子羊ちゃん』

 

「敵が見えているか?」

 

『見えてるよー。撃つ?』

 

「ああ。合図したら全部殺せ。一匹たりとも逃がすな」

 

 五十嵐はここでスコープを付けたHK417かドラグノフSVDといったマークスマンライフルを持ってきておけば良かったと思った。5.56mm口径のMk16-SCAR-Lでは、交戦距離は最大でせいぜい200~300m程度。普通は100mから150m程度の距離で撃つのが基本となる。しかし、このような林が点在する平原のような地形では、交戦距離は300mから600m程度なのが普通だ。だが、それにもってこいの武器を持つ仲間はいる。

 

「M14、聞こえるか?」

 

『聞こえてるよー』

 

「こっちに敵が向かってきている。SVとファルコンが撃ち漏らしたのを見つけたら、即座に撃て」

 

『任せて。全部屑鉄に変えてやるよ』

 

 五十嵐は改めて敵の動向を確認した。2~3メートルほど間隔を空けてこちらに近づいてきている。サイボーグ型の敵は銃を構えて辺りの様子を窺っているらしいが、UGV型の敵を操作したり、タブレットPCなどで情報を確認している様子は無い。

 グリフィンや軍が鹵獲した鉄血のUAVやUGV、サイボーグを解析したところ、どうやら電子頭脳に埋め込まれたネットワークシステムによって命令を受け取り、AIが最適な行動をするように設計されているらしい。だが、それの命令を下しているのも、鉄血の無人兵器やサイボーグを開発した人間なのではないか。それにしても、このサイボーグやロボット兵器を操っている人間は何を目的にしているのだろうか。資源の収奪?領土の拡大?これだけの武力攻撃を行っている連中ならば、何かしらの目的があってもおかしくはない。クルーガーやヘリアンに訊いてみたが、二人から帰ってくる答えは『ちっともわかっていない』とのことだった。

 そろそろ奴らが接近してきた。もうすぐSCAR-Lの上に搭載したCOMP-ML2でも、その姿をはっきり捉えることができるほどの距離まで近づいてきている。五十嵐は先頭の敵に狙いを付けると、無線のスロートマイクに「撃て」と囁いた。

 

 銃声が鳴り、リッパーの頭が破裂した。SV98が放った7.62mm×54R弾が直撃したのだ。続いて、12.7mm弾が2体のヴェスピドの胴体を貫通して地面にめり込む。続いて7.62mm×51弾や30-06弾が飛来し、敵を倒す。戦闘はすぐに終わった。破壊されたプラウラーやダイナゲートの胴体からは電気のアークが光り、リッパーの体からは人工血液が流れ落ち、そこら中に人工生体組織が飛び散っている。

 まだ生き残っている2体のリッパーが敵の姿を探して辺りを見回した。だが、それらもすぐにSV98が放った銃弾の餌食となった。

 

「やっつけました。他に敵はいません」

 

「よし。この先どうするか、みんなで話しておこう」

 

 2056年 1月24日 0822時 ウクライナ

 

 P中隊の位置はわからないが、風に流されたMG23の位置はわかっている。呉は妨害電波の僅か隙間を縫い、彼女に連絡を取ることができたのだ。MG23にはその場をなるべく動かず、救助を待つよう指示をした。

 

「さて、私たちはMGちゃんと合流しに行くわ。あなたたちはP中隊を探しに行って」

 

 それが一番だろう。戦術人形にとっては、指揮官が唯一の頼みの綱だ。

 

「どうやって探し出すのです?」

 

「見て。奴らの妨害電波は、常時飛ばされている訳じゃない。一定間隔で妨害が途切れる時が10分くらいある。その隙間を縫って連絡を取る」

 

「それで。MG23と合流した後の合流ポイントは?」

 

「ここね」

 

 呉が指したのは、マラツリフカという所だ。

 

「わかりました。僕らは一旦そこに向かって行って待機します」

 

 2056年 1月24日 0841時 ウクライナ

 

 五十嵐たちは武器を構え、幹線道路から離れた場所を歩いた。P中隊が最後に確認された場所へと向かっている。五十嵐の護衛をするスプリングフィールドとUMP9以外のメンバーは、5mごとに間隔を空けている。

 

『ここから先800mには敵はいないよ。進んで大丈夫』

 

 先頭で敵の様子を窺っていたファルコンが無線で伝えてきた。彼女と9A-91を15m程先に歩かせている。

 

「わかった。慎重に行け。僕の姿が見えない範囲には行くな」

 

『了、解。援護は任せといて』

 

 五十嵐はタブレットPCで地図を確認した。この先は開けた平原で、遮蔽物になりそうな物が無い。だが、それは敵とて同じことだ。何はともあれ、P中隊と合流するのが先決だ。その目標だけは変わることは無い。 

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