※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

40 / 107
目標捕捉

 2056年 1月24日 0833時 ウクライナ ボリシブカ

 

 スコット・ブレナンはSiG-SG516を撃ち敵を倒した。正面からはダイナゲートやリッパーが押し寄せてきている。通りの向こうにはウクライナ陸軍の兵士や警察官、そして一般市民の死体が多数転がっている。AK-74を持った兵士が銃弾を受けて倒れた。他の兵士が彼の迷彩服の襟を掴んで後ろへ引きずっていく。

 StG44がセミオートで銃を撃ち、敵に銃弾を浴びせるが切りが無い。後ろの通りでは、兵士や警官たちがパトカーや装甲車が横向きに停車させ、バリケードを作り、その物陰からSVDで兵士が敵を狙い撃ちする。

 

「畜生!こいつら、どこから湧いてきやがっているんだ!」

 

 ドラグーンやガードの群れが銃を撃ち、飛んできた銃弾を浴びた兵士が3人、倒れる。ブレナンはその兵士を後ろに引きずっていこうとしたが、StG44に制止された。

 鉄血部隊の連中の向こうに、見慣れない大型の4足歩行のUGVが現れた。あいつは何者だ?そのUGVが背負っている四角い箱のようなものから煙が上がったと同時に甲高い空気を切る音が聞こえてきた。

 

「みんな隠れろ!」

 

 ブレナンが叫んだ数秒後、地面が爆発し警察官と兵士が数名吹き飛んだ。畜生!自走式の迫撃砲かよ!更に、その後ろからは、上に銃身が乗った、大きな歩く盾のようなものが接近して来る。他の敵は小銃の銃弾程度で破壊され、動けなくなるのに、こいつにはかすり傷一つ付いていないようだった。

 こいつを排除しなければ、どんどん犠牲者が増えてしまう。必要なのは・・・・・・RPGだ!そうだ、RPGだ。だが、それは、先程倒れた兵士が持っていた。その兵士から、自分たちはだいぶ後方に下がってしまっていた。

 

後ろから重たいエンジン音が聞こえてきた。振り返ると、ウクライナ陸軍のBTR-80が2両やってきて、乗せていた兵士たちを下ろした。援軍だ。装甲車の上の砲塔のKPVT重機関銃が唸りを上げ、敵に向かって銃弾を浴びせる。その銃弾を浴びた先ほどのUGV、ジャガーは破壊され、動かなくなった。やったぞ!

 だが、今度は、巨大な獣が歩いてくるような足音が聞こえてきた。一体、何だ?その正体はすぐに現れた。装甲車の右手から、装甲で覆われた、四足歩行の巨大なバケモノが2体、ぬっと現れた。BTR-80の砲塔が回転し、重機関銃の弾を連射で浴びせるが全く効いている様子は無い。そのバケモノは、簡単にBTR-80を踏みつぶし、機関銃を撃ちながら兵士や警察官を虐殺し始めた。冷たい空気中に赤い鮮血の霧が舞う。

 

「くそっ!逃げろ!逃げろ!」

 

 MDRが背負っていたRPG-32を掴み、バケモノに向けて撃った。ロケット弾が見事に命中し、成形炸薬が炸裂する。軽量装甲車ならば、簡単に穴を開けてしまうような武器だが、バケモノには傷一つ付けられず、そいつは平然と通りに立っていた。

 

「マジかよ・・・・・・」

 

「指揮官、こっちです!」

 

 JS9がブレナンを引っ張り、二棟のビルの間にある、軽自動車1台がやっと通れるような狭い通りに半ば引きずるように連れて行った。他の仲間たちも続く。バケモノは隠れたブレナンたちを無視するように素通りして、多くの鉄血部隊を引き連れるように去っていった。

 

「くそっ、あれは何だ!?事前情報では、あんな奴がいるだなんて聞かされていないぞ!」

 

 RPG-32はタンデム弾頭で、最新鋭の歩兵戦闘車であっても簡単に貫通してしまうほどの威力がある。それが直撃したにもかかわらず、あのバケモノは平然と歩いて進撃していた。

 

「指揮官、マンティコアです。奴の装甲は最新鋭の戦車並か、それ以上です」SG510が答える。

 

「畜生。テロリストがあんな武器を持つとは。正規軍が苦戦する訳だ」

 

「ひとまずは、ここに隠れてやり過ごしましょう。弾薬はどうです?」

 

「ちょっと厳しそうだ。くそっ。無線さえ生きていれば、ドローンで物資を送ってもらえるんだが」

 

「指揮官、こっち。あのビルならば、なんとか隠れ場所にできそうですよ」

 

 ステンMk2が、この狭い通りの先にあるビルを指した。

 

「敵は?」

 

「M1911とP7が調べたけど、いないって」

 

「わかった。行こう」

 

 2056年 1月24日 0839時 ウクライナ ボリシブカ

 

 ブレナンたちはビルの1階の部屋に隠れた。通りでは、銃声や爆発音が鳴り響いている。そんな中、重たい重低音が聞こえてきた。ブレナンが外の様子を見てみると、ウクライナ軍のMi-24Dハインド攻撃ヘリが2機、警戒するようにゆっくりと低空飛行していた。

 

 あれは鉄血も持っている。奴らは、正規軍が泣く泣く置き去りにした装備を使うこともあるのだ。やがて、ハインドはコックピットを東の方に向けた。が、その直後、後ろから地対空ミサイルが飛んで来た。ミサイルは攻撃ヘリの後部ローターを直撃し、アンチトルク作用を失った空飛ぶ戦車は切り揉み状態になって落下した。僚機のハインドも同じ運命を辿る。

 ブレナンはバッグパックから小型のUAVとタフブックを取り出した。UAVの電源を入れ、タフブックのキーボードを叩くと4基のプロペラが高速で回転し、UAVは空に舞い上がった。

 

 2056年 1月24日 0842時 ウクライナ

 

 五十嵐たちは、幹線道路に放置されていたBMP-2歩兵戦闘車を見つけた。全部で3両。AT-5"スパンドレル"こと9M113コンクールス対戦車ミサイルのランチャーチューブはそのままで、30㎜機関砲の弾も装填されている。車体のほぼ全面に爆発反応装甲タイルも追加装備され、車長ハッチの前には6P49重機関銃も搭載されていた。

 

 9A-91とRFBが状態を確認している間、他の中隊隊員たちは銃を構えて周辺を警戒していた。やがて、BMP-2のエンジンが唸りを上げる。どうやら動くようだ。

 

「よっと」

 

 RFBがBMP-2の操縦席からぴょんと飛び降りた。

 

「燃料は十分入っているよ。機関砲の弾もミサイルも、予備が積んであるし、予備の燃料タンクもあるよ」

 

「じゃあ、頂くことにしよう。」

 

「さて。またお得意の装甲車略奪ね。このままだとAPCレイダーとかIFVロバーだなんてあだ名が付くんじゃない?」416が五十嵐を見て言った。

 

「おっ、なかなかイカすあだ名だな。グリフィン&クルーガー、戦闘部隊B中隊"APCレイダーズ"だなんて。まるで、アメリカ海軍や海兵隊の航空部隊の名前みたいでかっこいいじゃないか」

 

 五十嵐はそう言って先頭のBMP-3の車長席に乗り込こんだ。416とUMP9、G36が後に続く。他のメンバーも、装甲車に分乗する。五十嵐が乗るBMPの運転をするのは416だ。416はエンジンをかけた後、少し待った。

 

「FAL、あなたが先に行って。私たちは2番目から付いて行く」

 

『わかった。敵の排除は任せて』

 

 五十嵐はやれやれとかぶりを振った。普通ならば、指揮官である自分が先導するべきケースなのだが。だが、先頭を行くメンバーの安全を確保する手段が無い訳では無い。五十嵐はバッグパックからタフブックを取り出し、グリフィンが周辺で飛ばしている無人機にアクセスした。滞空中の3機の無人機を見つけたので、コントロール権限を自分の部隊に移した。これで待ち伏せを予め見つけることができる可能性が高まった。キーボードを操作し、無人機からのリアルタイム俯瞰映像をモニターに映し出す。

周辺に見えるのは、崩れたビルや道路。破壊された車輌やヘリ、死んだ鉄血のサイボーグや破壊された鉄血のUAVやUGV、そして人間の遺体だ。鉄血の姿は無い。

だが、奴らは建物の中や物陰に隠れている可能性は高い。市街地での戦闘は、そこが厄介なのだ。敵がどこに隠れていて、どこから襲撃してくるのかわからない。そのため、より慎重に行動することが求められる。

 

『指揮官、P中隊の信号を捉えたよ。かなり近いみたい』RFBが無線で知らせてきた。

 

「わかった。方向は?」

 

『タブレットに送るよ。ちょっと待ってね』

 

五十嵐が自分のタブレットPCの画面を確認した。なんと、ターゲットまであとほんの数キロ程度の場所まで近づいていた。

 

「よし。そこに向かおう。全員、戦闘準備」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。