2056年 1月24日 0849時 ウクライナ ボリシブカ
スコット・ブレナンはイージスが十分な距離まで接近してくるのを待ってからRPG-7を撃った。頑丈な装甲に覆われているとはいえ、この大きさのロボットの装甲の厚さなどたかが知れている。せいぜい.338ラプアマグナム弾をはじき返す程度だ。.50口径の徹甲弾を使えば簡単に貫通させることができる。だが、そんな弾丸を発射できる武器は今は手元に無い。成形炸薬弾を食らった鉄血のロボットは胴体に穴を空けられて倒れた。
「くっ、こいつら、いくら倒してもきりが無いじゃないの!」
Mk48が自分の銃に新しい弾薬帯を装填しながら言った。その隣でRPDが銃を連射して弾幕を張る。
「さーて、ここからは我らが指揮官の活躍をご覧あれー」
MDRがスマホをスタンドに設置してから生放送アプリを起動した。
「MDR、そんなことをしている暇があったら敵を撃ちなさい!」JS9が弾倉を取り換えながら言う。
「わかってるわかってる。せっかくいい生放送になると思うんだけどなー」そんなことを言いながらも、MDRは敵に狙いをつけ、射撃を開始した。
「畜生。そろそろRPGの弾が少なくなってきたか」
ブレナンはRPG-7に新しい弾頭を装填し、狙いを付けて撃った。成形炸薬弾はマンティコアを見事に直撃したが、装甲をへこませただけに終わった。
「ちいっ、やっぱりダメか」
イージスやニーマムを貫通できるこの武器も、さすがにマンティコアを破壊することはできなかった。そのマンティコアは飛んで来る弾丸の雨をものともせず、こちらにどんどん近づいてくる。
「こうなったら仕方が無い。全員、ここから逃げるぞ」
ブレナンは武器を手にすると、小屋の後ろのドアを開けた。G3とステンが隠れていたイワンたちを連れて外に出る。中隊のメンバーが小屋から脱出した30秒後、迫撃砲の弾が空を切る特徴的な甲高い音が聞こえてきた。
「伏せろ!」
ブレナンが命じた20秒後、先程まで隠れ場所にしていた小屋が爆発した。再び空を切る音と爆発音が聞こえる。ジャガーが迫撃砲をぶっ放しているらしい。
「くそっ!走れ!走れ!」
ブレナンが命じると、戦術人形たちが走り出した。その間にも、周囲で迫撃砲の砲弾が炸裂する。
「行け!行け!行け!」
イワンはモシン・ナガンを持ち、カーリンとナターリャを連れて走り出した。だが、そのすぐ右と正面で複数の迫撃砲の弾が炸裂した。三人の子供の体は迫撃砲の砲弾で切り裂かれ、ひき肉となって雪原に散らばった。
「畜生!」
一瞬、立ち止まったブレナンの右手をStG44が引っ張り、彼を現実に戻した。SG510がもう片方の腕を掴む。
ブレナンはSG510を見た。彼女は一度、作戦中に指揮官を失っている。自分の部隊に配属され、ようやく立ち直りつつあるところだ。こんな時に自分が死ぬ訳にはいかない。
ブレナンは二人に引っ張られるような状態で、必死に走った。周りには未だに砲弾が降り注ぐ。すると、向こうにいくつか黒い大きな塊のようなものが見えてきた。やがて、その塊から、"何か"が猛スピードでこちらに飛んできた。
「伏せろ!」ブレナンは叫んだ。
2056年 1月24日 0851時 ウクライナ ボリシブカ
「命中。直撃だよー」
BMP-3の砲手席のスコープ越しに、スパンドレルを食らってバラバラになったマンティコアを確認したRFBが言った。
『よくやった。他のもぶっ飛ばしてやれ』
「まっかせてー!」
RFBは続いて76mm砲を連射してジャガーやイージス、ニーマムを破壊する。
「指揮官!奴らの後ろにマンティコアがもう一体いるよ!気をつけて!」
『わかった。任せてくれ』
五十嵐が乗っているBMPから対戦車ミサイルが放たれ、鉄血のUGVを破壊した。76mm砲が数回発射された後、戦闘が終わった。
『さて。あれが目標だな。指揮官に挨拶しに行くか』
2056年 1月24日 0854時 ウクライナ ボリシブカ
スコット・ブレナンは目の前の歩兵戦闘車を呆然とした様子で見上げた。SG510とStG44が銃を構え、鋼鉄の化け物に向ける。やがて、BMPのハッチか開くと、中から長い茶髪の少女と黒い短髪の青年が顔を出した。
「P中隊ですか?」青年が言った。
「あ・・・・・ああ」ブレナンが答える。
「グリフィンのB中隊です。救助に来ました」
ブレナンは2人の戦術人形に銃を下ろせと合図した。
「ふう。一時はどうなるかと思ったぜ。そのBMPに余分なスペースはあるかい?」
「勿論。乗ってください。引き上げますよ」
「スコット・ブレナンだ。こいつは俺の相棒のStG44」
「五十嵐智基です」
「・・・・・・その名前からすると、日本人か?」
「そうですよ」
「どうやら事情があるようだな。まあ、詳しい自己紹介は、基地に戻ってからにしよう」
「そうしますか。それと、あと1個小隊が作戦に参加していまして・・・・・・・」
五十嵐がそこまで言うとTMPが中隊無線機を持ってやってきた。
「指揮官、J小隊からです」
「わかった・・・・・・B中隊です・・・・・・はい。MG23は・・・・・・・?わかりました。P中隊と合流しました。これから引き上げます・・・・・・はい。では、後程」
五十嵐は無線を切り、仲間たちを見た。
「よし、引き上げだ。J小隊はMG23を無事、見つけたようだ。これからあっちも引き上げだそうだ。全員、周辺警戒を怠るな!配置に付け!」