※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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射撃訓練

 2055年 7月26日 1214時 太平洋

 

 五十嵐は後部甲板で、まだ弾倉が装着されていないブッシュマスターACRを構えた。口径は5.56mmのものだ。レシーバーの上には、AN/PVQ-31ACOGという光学照準器が、側面にはAN/PEQ-16レーザー照射器が取り付けてある。

この銃は銃身、薬室、機関部のコンバージョンキットを使えば、7.62mm×39、6.8mm×43といった口径に簡単に変更できるようだ。民間向け仕様なので、セミオートでしか撃つことができない。だが、自分のような素人には、そっちの方が適しているだろう。フルオート射撃では、無駄弾をばら撒くだけだ。

 

「おおー、なかなかいい姿勢じゃないの。本当は、銃に随分慣れているんじゃないの?」

 

 416が五十嵐の射撃姿勢を見て言った。後ろではヘリアンが見物している。甲板に置かれていたMH-60Lと思しきヘリは、移動させられていた。

 

「いや、何と言うか・・・・・・プラスチックのBB弾が出るおもちゃで遊んでいただけだよ。本物を見たのも持つのも、これが初めてだ」

 

「本当にぃ?」

 

「さ、さ、早く撃ってみてよ。ほら、こっちに弾があるから、入れてみてよ」

 

 UMP-9が指さした甲板にある机には、プラスチックでできた、マグプル社のP-MAGと5.56mm普通弾が入った箱が置かれていた。

 

「そうだな。やってみよう」

 

 五十嵐は、5.56mm弾を弾倉に詰め始めた。最初はすんなり入っていったが、15発くらい入れたところで段々とバネが圧縮される分、入れづらくなってきた。

 

「30発全部詰め込むな。26発か27発くらいにしておけ。入れるのがきついからという訳じゃない。弾倉のバネの寿命が短くなるからな」ヘリアンが言う。

 

「さて、わかっているかとは思うけど、注意事項。まずは、銃には、弾が常に入っていると思って扱ってね。それから、撃ちたくないものには、絶対に銃口を向けないこと。そして、訓練では撃つ直前まで。実戦では、出撃直前までは装填しないこと。撃つつもりがないなら、絶対にトリガーを触らないこと。これさえ守れば、大抵の場合は事故が起きることは無いよ」

 

 SV98と名乗った少女が、五十嵐にレクチャーをしていた。五十嵐は、弾倉には25発装填することにした。その弾倉を5つ、用意した。

 

 まず、五十嵐は装填せずにACRのボルトを引き、標的に狙いを付けてからトリガーをゆっくりと引き絞った。カチッという金属音が聞こえる。トリガーはそれ程重くは無く、遊びから撃発までのトリガーのテンションの違いがはっきりしている。

 

「もうちょっと猫背気味になった方がいいですよ。反動を受け流しやすくなりますから」FNCがアドバイスをした。五十嵐はそれに倣う。

 

「さて、そろそろ撃ってみても良いんじゃない?」

 

 スオミと名乗った少女の言葉で、五十嵐はP-MAGを手に取り、ACRのマグウェルにしっかりと下から叩き込み、固定し、ボルトを引いた。銃がただの金属とプラスチックの塊から、強力な殺傷力を持つ武器に変貌した瞬間だ。

 五十嵐がトリガーを引いた。鋭い銃声と共に、銃が軽く跳ねた。思ったほど反動は大きくない。標的までの距離は20m。人間の形をした標的の胴体の辺りに穴が開く。

 

「無理に頭や心臓を狙わないで、身体のど真ん中を狙って撃つこと。そんなことをするのはスナイパーだけだよ」SV98が言った。

 

「弾は何を使っているんだ?」この質問にはFNCが答えた。

 

「ライフルはイスラエル製のAPMだよ。銅の膜の下が鉄となんとか合金だから、あいつらの無人兵器の金属製の機体も撃ち抜けるんだって。まあ、相手がテロリストだし、私達は軍人じゃ無いから、ハーグ陸戦条約のことは気にしなくていいからね。拳銃は、レンジャーなんとかだったっけ。ええっと・・・・・・確か、昔はブラック・・・・ブラック・・・・・何だっけ?」

 

「レンジャーSTXだな。ちょっと前まではブラックタロンと言われていたやつだ。あまりにも殺傷力が強すぎるから、弾の特徴はそのままで、名前を変えて作られているやつだ」

 

「確か、そんな名前だった。うん」

 

とは言え、やや揺れる船の上での射撃は難しい。不意な波の揺れに対応できず、標的を外してしまう。

だが、初めて実銃を撃った割には、そこそこ以上の成績だ。

 

「おー、上手いねー。実は、本物撃ったことあるとか?」UMP9が言う。

 

「いやいや。本物を触ったのも、撃ったのも、これが初めてだよ。アルバイトしてお金を貯めたら、アメリカへ実銃を撃つための旅行をしようとは考えていたけど」

 

 しかし、よく当たる銃だ。まだ軍や警察に大々的に採用はされていないようだが、将来的に採用されてもおかしくないかもしれない。

 

「さて、私は仕事があるからな。みんな、彼の事は任せたぞ」ヘリアンはそう言うと、船内へと戻って行った。

 

 2055年 7月26日 1035時(現地時間) バングラデシュ

 

 奴らは突然現れ、攻撃を開始してきた。先程、増援部隊を運んできた4機のMi-8が、奴らのミサイル攻撃で撃墜され、部隊は全滅した。奇妙な銃を持った、奇妙な軍隊。更には、UAVや殺人ロボットまで保有している。

 

 奴らが現れた時、テロリストによる攻撃か、またはインド陸軍が侵攻してきた、という話が軍の間で流れた。

しかし、そうでは無かった。見た事が無い銃、見た事が無い装備、そして、見た事が無い無人兵器。

 

「くそっ!増援を要請する!」

 

 無線で現場指揮官が作戦本部に必死で話しかけていた。左手の川の向こうでは、59式戦車が攻撃を開始し、敵の陣地へ榴弾を撃ち込み始めた。

 

『砲撃を始める。座標を送ってくれ。それと、自動車化歩兵部隊を3個小隊、そっちに送る』

 

 指令部の返答の直後、銃声が響き渡り、兵士が3人、倒れた。

 

「アルファ、ロメオ、5、9、4、8、1!繰り返す!アルファ、ロメオ、5、9、4、8、1!」

 

 暫くすると、空に何条もの煙の筋がうっすらと見えた。多連装ロケットランチャーが攻撃を開始したらしい。いいぞ、やっちまえ!奴らは、ネパール、インド、パキスタン、中国の他、アフリカや東南アジアでも暴れまわっている。噂によると、日本やイギリスで攻撃を行ったようだが。

 敵の正体も目的も、まるで不明だった。わかっていることと言えば、奴らは奇妙な銃を持つ歩兵と、無人のロボット兵器で編成され、強大な戦力を持ち、アジアを中心にテロや侵略を行っているということだ。軍人だろうが、民間人だろうが、目につく人間を我が物顔で無差別に殺傷していた。

 

 2055年 7月26日 1221時 太平洋

 

『それで、我々の手違いで保護することになった若者だが・・・・・・君の評価では、現場指揮官兼戦闘員の才能があると見込まれる・・・・そうだな?』

 

 船室に置かれているPCには、髭面の中年の男の顔が映っている。ヘリアンに似た服装だ。

 

「その通りです、クルーガーさん。今、あの子たちと射撃訓練をしていますが、とても素人には思えません。かと言って、雰囲気は、兵士ではなく、一般人そのものです」

 

『なるほど。君は、彼がダイヤの原石だと思っているんだな?』

 

「それは本人次第です」

 

『そうか。それで、今は、オーストラリアの訓練施設に向かっているんだな?』

 

「そうです。彼には、模擬戦で戦術人形たちと共に訓練を積んで貰い、最終的には実戦に参加して貰います」

 

『時間が無い・・・・・とは言え、ずぶの素人を派遣するのは無理だからな。教育期間は、新人指揮官基礎訓練プログラム通り、3ヶ月か?』

 

「はい」

 

『わかった。それで、彼には404小隊を中核とするB中隊を指揮して貰うんだな?』

 

「その通りです」

 

『うむ。それと、1つ残念な知らせがある。I中隊の指揮官、フェルトウェーベル・ゲルップがイエメンで鉄血との戦闘中に死亡した。いつもは落ち着いているSIG510があんなに泣いているのを見たのは初めてだ。あまりにも可哀想で、見ていられなかったよ』

 

「そうでしたか」ヘリアンの顔が苦痛で歪んだ。ゲルップは自分が育てた指揮官の一人だ。だが、嘆いている時間は無かった。

 

「ところで、AR小隊の行方は掴めましたか?こちらでは、まだ何も・・・・・・」

 

『全くもって掴めていない。最後の通信が途切れて2週間になる。4人がばらばらで行動している可能性もある。AR小隊の上部部隊のA中隊は壊滅したからな。だが、当時、AR小隊は、A中隊からは独立した作戦を行っていた。その新人の教育訓練が終了したら、彼のチームには最優先でAR小隊の捜索をしてもらおう。以上だ』

 

「それでは、クルーガーさん」

 

『ああ、気を付けてな。通信終了』

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