※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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※スプラッタ注意


目覚めと鹵獲された人形

 2056年 2月5日 1241時 S15地区某所

 

 ドリームマシンのVRギアを外された途端、五十嵐は目を覚ました。くそっ。眠っている筈なのに、脳は働いているというおかしな体験をしたため、余計に疲れたような感覚がした。仲間たちもベッドから起き上がり、辺りを見回している。

 

「おはようみんな。データはちゃんと記録してあるよ。ほら」

 

 デールがキーボードを操作すると、地下室のモニターに地図と無人機の位置情報が表示された。ここからは、決して近くは無いが、だからと言って遠すぎるという訳でも無い。

 

 五十嵐はモニターを見てから、座り込んだ。416とUMP45が顔を覗き込んでくる。

 

「ちょっと疲れただけだよ。何というか。"体は動いていないのに、頭だけ働いていた"とでもいうのかな」

 

「無理も無いよ。意識だけをネットワーク空間に移したから、人間の場合、こっちでは睡眠というよりは気絶に近い状態だったからさ」

 

 そう言いながらキーボードを操作するデールを416は睨み付けた。

 

「大丈夫。こんなの、世界中のハッカーがよくやっているけど、脳に障害が残ったとか、そういうのは全く無いよ。さて、グリフィンから報酬も振り込まれたことだし、その分の仕事はするよ」

 

 2056年 2月5日 1243時 S15地区某所

 

 1機の輸送用無人機が低空飛行していた。見た目は分厚いサーフボードのような形をしており、機体の上にターボジェットエンジンが1基取り付けられ、艶消しのガンシップグレーに塗られている。厚さ、横幅共に1m程度、前後の長さは2m程度だ。

 

 無人機は目的地に近づくと減速した。そこには、小さな壁が黒く塗られ、窓の無い無機質な平屋があった。UAVは、その平屋の前で一端静止し、垂直に着陸する。

 

 平屋の扉が開き、中から2人の女が出てきた。女の一人がUAVの前部にあるつまみを捻った。中からシュッと、炭酸飲料のボトルを開けた時のように、気体が外に漏れ出す音が鳴る。棺桶のような無人機の中身は、長いグレーの髪、浅黒い肌の少女だった。気絶しているのか、彼女は微動だにしない。

 

「全く。手間かけさせやがって。こいつを見つけるのにどれだけ時間を浪費したんだ?デストロイヤー」

 

「ちょっと待ってよドリーマー。マジで苦労したんだから。こいつを捕まえるのにどれだけサイボーグやロボットを消費したと思ってるのさ」

 

「まあ、いい。目的の第一段階は達成できたからな。さて、次の目標には・・・・・少し時間がかかるがな」

 

「それで、次はどうするって言うのさ」

 

「とりあえず中に入れ。ウロボロス、第二段階が完了したら、後は任せる。私とデストロイヤーはここを離れる」

 

「わかった。では、計画通りに進めるわ。まあ、こいつがいなかったら、元も子も無かったけど、運良く手に入ったから、問題は無いな」

 

 2056年 2月5日 1305時 S15地区某所

 

 無人機で運ばれてきた少女が裸に剥かれ、両手と両脚、頭に拘束器具を付けられ、手術台の上にうつ伏せの状態で寝かされている。この手術室には、医療器具とは似ても似つかない不気味な器具が揃っていた。

 

 ウロボロスという鉄血のハイエンドモデルがコンソールを操作すると、ロボットアームが動き出した。その先端には回転鋸が取り付けられている。

 

 ウロボロスはスイッチを押し、回転鋸を作動させた。コントローラーを動かして、手術台の上の少女の後頭部のすぐ下に刃を立てる。回転鋸が回る金属音と共に、人工皮膚と人工筋肉の破片、人工血液が手術台に飛び散り始めた。

 鉄血の低級ハイエンドモデルがジョイスティックを動かし、回転鋸で少女の背骨の頭の付け根から腰の上の辺りまで真っ直ぐ縦に切り開いた。これで第一段階は終了した。

 

 ウロボロスは、天井から吊り下げられた点滴パックから伸びるカテーテルを、切り開いた少女の背骨の中にある脊髄に突き刺し、中身の液体を流し込み始めた。続いて、コンソールから伸びる2つの電極のようなものを意識の無い少女の後頭部の付け根に突き刺す。点滴装置の中間にある輸液ポンプの中に、琥珀色をした不気味な薬液がポタポタと落ちてきた。

 

 2056年 2月5日 1332時 S15地区某所

 

 五十嵐は化学ヒーターで温めたレーションのパックに先割れスプーンを突っ込み、中のシチューを胃袋に送り込んでいた。酷い味だ。大阪のサープラスショップや岩国基地の航空ショーで買ったアメリカ軍のMREや陸上自衛隊のイベントで手に入れた缶飯がご馳走に思えてくる程に。

 

 416の提案で、行動を開始するのは日没直後とすることにした。その為、暗視装置の準備をしっかりとせねばならない。

 

 用意したものはGPNVG。4眼のナイトビジョンゴーグルで、アメリカ軍特殊部隊の標準装備だ。これを身につけた姿は異様で、まるで昆虫やエイリアンのようにも見えなくもない。この暗視装備の第一世代が登場したのは約40年程前とかなり古い部類になるが、今でも一線級の装備の一つであり、各国の軍やPMCで広く使われている他、装備品マニアの間では、裏の販売サイトや闇市で高値で取り引きされている。

 五十嵐も以前、興味本位で検索した、違法に米軍や自衛隊の物品の売買を行っている裏サイトで、思わず椅子ごとひっくり返りそうになるような値段で出品されているのを見たことがあった。

 しかし、今は、そんな装備品を日常的に支給されているという。本当に人生、何が起きるかわからないものである。

 

 多目的バッテリーを充電し、弾薬、医療品、携行食。不足しそうなものがないかどうか、今一度確認する。幸いにも、S-15地区にあるグリフィンの前方展開指令部と連絡を取ることができた。連絡手段が確保され、位置情報を送信できる状況であれば、ドローンで物資を送ってもらうことはできるらしい。ありがたい。

 

「そうだお兄さん。さっき地下室でこんなのを見つけたんだけど」

 

 デールが大きな金属製の筒のようなものを五十嵐に差し出した。筒の下には前後に2つのグリップが取り付けられ、前のグリップには引き金、上には簡易的なサイト。

 

「RPG-7か。弾頭は?」

 

「これだよ」

 

 PG-7VRタンデムHEAT弾とOG-7V破片榴弾の2種類だ。RG-7Vを使えばマンティコアやイージス、ニーマムにダメージを与えることができ、OG-7Vならばダイナゲートやリッパーの集団をまとめて片づけることもできる。

 

「借りて行ってもいいか?」

 

「もちろんだよ。どの道、僕にはいらないものだし」

 

「他にも役に立ちそうな物が残っているか?特に、武器弾薬があれば有難い」

 

「さあね。色々ごちゃごちゃとガラクタが置いてあったけど、何がどれなのかちっともわかりやしないよ」

 

「そうか。その地下室はどこにあるんだ?」

 

「そこの階段を下りて行った先だよ」

 

「わかった。他に使えそうなものが無いかどうか探してみよう。C4とリモコン信管、手榴弾、クレイモア辺りがあると助かる」

 

「私が探してきましょう。ここでお待ちください」

 

 G36が立ち上がり、バッグパックを持って地下室に向かった。

 

「私も行ってきます」SV98が続く。

 

 しかし、この施設は一体何なのだろう。ネットワーク直結型VRシステム。武器。用途不明の電子機器やコンピューター。そして、この作戦にあたって、グリフィンから報酬を受け取っている少年と少女。かなり古い施設だが、しっかりと稼働している。そこら中に置いてある電子機器のメーカーの銘柄を調べてみることにした。モニター、PC、サーバー、モデム、スマートデスク・・・・・・。

 ものが古く、銘板の文字が摩耗して読めなくなっているものばかりだ。製造年月日すら読み取ることができない。もしかしたら、第三次世界大戦前の化石のような電子機器なのかもしれない。秋葉原のジャンク市でそういったものをよく見かけたことがあった。

 

 まず、やるべきことは、使えそうなものをかき集め、当初の目標である無人機のデータの回収を達成することだ。もし、足りないものがあれば、無人機で輸送してもらえばいいだけだ。

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