2056年 2月5日 2011時 S14地区
CH-47Dチヌーク輸送ヘリが雪原に着陸した。降着装置のタイヤには雪原地帯用のソリが取り付けられている。チヌークの後部ランプが下がると、スコット・ブレナンと戦術人形たちが降りてきた。ブレナンがパイロットに親指を立てて見せると、CH-47はブレナンたちに粉雪を浴びせながら飛び去って行った。
「さーて、信号は捉えたか?」ブレナンがStG44に言う。
「ええ。ここから先、30km程東に向かったところです。ただ、彼らは移動していいるので、合流まで時間がかかるかもしれません」
「30kmか。結構なものだな」
「それに、敵もうようよしていますよ。援護するといっても、一筋縄ではいきませんわ。それに、どうしてこの作戦を受けたのです?」
「借りを返すためだ。M200、様子はどうだ?」
「敵はいないようです。先に進みますか?」
「ああ。そうしよう。いいか、敵を見たら即座に排除しろ。それから・・・・・」
着弾音と銃声がほぼ同時に鳴った。
「散らばれ!伏せろ!」
戦術人形たちが一斉に散会した。だが、StG44だけはブレナンの近くから離れず、セミオートで敵に撃ち返す。
「リッパーです!」StG44はブレナンのすぐ隣で敵を撃っている。
「くそっ!どこから湧いてきやがった!」
「指揮官!」
AR70が匍匐前進をしながらブレナンに近づいてきた。
「AR70!そこの岩の後ろに隠れろ!」
フルオートで銃が連射される音が新たに聞こえてきた。一列に並んだリッパーの群れがバタバタ倒れていく。RPDとMk48が敵の排除を始めたようだ。だが、リッパーとヴェスピド、ダイナゲートの群れはそれを無視してこちらに向かってくる。
奴らには、任務を遂行することしか頭にない。だが、それはもっともなことだ。個性も感情も無く、ただ命令を遂行するだけの存在。
AR70は苦境に立たされていた。敵は孤立した彼女を狙い撃ちすることにしたらしい。銃弾が容赦なくAR70の近くに降り注ぐ。
「AR70、待ってろ!」
ブレナンはM84スタングレネードとM18スモークグレネードを敵目掛けて投げた。強烈な閃光と爆音が鳴った直後に、紫色の脂ぎった煙が敵の視界を遮る。
彼はこの隙を逃さずにAR70の近くに向かった。足元に銃弾が着弾し、雪が飛び散る。その後ろからStG44とステンMk2が追いかけてきた。2人はブレナンの近くにたどり着くと、振り返って銃撃を再開する。
「大丈夫か?撃たれていないか?」
ブレナンは即座にMk16-SCARを構えて敵に銃弾を浴びせた。向こうではM16A1とK31が敵を攻撃している。
「大丈夫です。それよりも、指揮官、何で」
「いいから後ろを警戒してくれ。こいつらは俺が片づける」
「はい!」
だが、敵がの数がかなり多い。一体、どういうことだ?なぜ、ここまで大勢の敵がここにいるのだろうか。フルオートで発射される銃声に、まるで大砲のような重たい銃声が聞こえてきた。この音の主はM200のはずだ。
リッパーの頭の上半分が砕けた。流石はM200。自分には真似できない、非常に正確な射撃だ。更にフルオートでMk48が敵に牽制の弾幕を張る。しかし、敵は飛んで来る銃弾をものともせず、腕を吹き飛ばされようがこっちに向かってくる。いつものことだ。こいつらは任務のことしか頭に無い。
「くそっ、まるで古いゾンビ映画だな。わらわら湧き出てきやがって」
ブレナンが敵を撃ち倒してぼやく。足元には破壊されたダイナゲート、リッパー、スカウトが重なって倒れている。
向こうからまだ敵が接近してきた。だが、今度は1体だけ。だがその1体が問題だった。金色の体に4本の脚。巨大な体躯。
「くそっ!マンティコアかよ!」
『任せて下さい!指揮官はそこから離れて!』
M200の指示通りにブレナンはスモークグレネードを投げてその場から逃げ出した。StG44とステンMk2が牽制の弾幕を張った。2人はブレナンの盾になろうとしたが、ブレナンはステンを担ぎ、StG44の左腕を掴み、強引に引っ張ってから走り出した。
2056年 2月5日 2021時 S14地区
M200はスコープ越しに敵の姿と、指揮官が仲間を強引に掴んでその場から離れるのを見た。レティクルの中心に敵を捕らえ、引き金を引く。大砲を撃ったかのような激しい銃声が響き渡り、12.7㎜徹甲弾が敵の装甲を貫いた。ところが、未だにマンティコアは指揮官たちを追いかけていた。
「M200、奴のAIのCPUを撃ち抜かないと止まらないよ!」隣にいるK31がアドバイスをする。
「どのあたりにあるの?」
「奴の胴体の真ん中辺りだったと思う」
「わかった」
M200はスコープをのぞき込み、再びマンティコアに狙いを定めた。スコープのエレベーションノブを数目盛り分動かし、ゆっくりと引き金を絞り、12,7㎜徹甲弾を発射した。弾丸は見事に敵に命中し、鉄血の巨大な4足歩行兵器は動かなくなった。
「やっつけた」
「ナイス」
M200はスロートマイクのスイッチを入れた。
「指揮官。マンティコアを片づけました」
『ありがとよ。援護頼むぞ』
「任せて下さい」
M200は続いてイージスに狙いを定めて撃った。12.7mmの徹甲弾が標的の頭部を貫き、CPUを破壊する。M200が重装甲を持つ敵を撃ち、K31がそれ以外の敵を撃つ。遠くにいる敵がバタバタと倒れていく。Mk48とRPDが放つ弾幕が周囲で群がるリッパーやダイナゲートをなぎ倒していく。やがて、向こうに見慣れない敵の姿が現れた。
「指揮官、見えますか?おかしな奴がいます」
『何だ?』
「敵の集団の向こうです。見えますか?」
『こっちからではよく見えない。移動する』
「いえ。確認されていない新手の可能性があります。注意してください」
『わかった。君から俺たちの姿は見えているか?』
「見えています。奴を狙撃しますか?どうやら、そいつは敵の集団の指揮をしているようです」
M200は見慣れない敵の行動を観察していた。そいつは両手を動かし、指示を出しているように見える。そいつが何かすると、敵の集団が動く。
『多分、ハイエンドモデル、ってやつだろう。蝶事件が起きて鉄血に所属していた戦闘員や技術者の人間の虐殺を指揮したのが、そういう奴らだと考えられている』
「どうしますか?」
『まともにやり合うのはまずい可能性がある。遠くから観察して、状況を知らせてくれ。それと、まずいと思ったら、俺たちと合流しろ。俺たちの姿を視界に捉えられる範囲にいろ。いいな?』
「わかりました」
2056年 2月5日 2023時 S14地区
思った以上の損害だ。投入していたマンティコアは全て破壊され、残るは数個小隊分のリッパーやハンターが残っている程度だ。切り札はまだ使うべきではない。まだあれは、最後の最後まで隠しておかねばならない。ウロボロスは手に持った小さな端末を見た。あの"隠し玉"のコントロール装置だ。
ウロボロスは別の端末を手に持ち、ここに展開させている部隊の交戦モードを"自動"に切り替えた。こいつらに敵を任せ、自分はアレの調整と実戦投入に全力を投入すべきだという結論に至った。ウロボロスは引き下がり、ラボのある建物へと向かった。
2056年 2月5日 2025時 S14地区
M200は、おかしな奴が前方の建物に引っ込むのを確認した。それと同時に、他の"雑魚敵"が前進を開始する。敵の数は少なくないが、撃滅することは可能だ。
「指揮官、迫撃砲で目の前の奴らを片づけてやりましょう。こっちで敵をマークします」
M200はカバンからレーザー照準器を取り出し、敵を不可視光レーザーで照らした。M224迫撃砲の弾道を計算するアプリケーションと連動しているため、非常に正確な射撃が可能だ。
2056年 2月5日 2026時 S14地区
ブレナンたちは迫撃砲の発射準備を終えた。3門の迫撃砲を用意し、StG44とブレナン、JS9が砲弾を砲にセットする。
「やるぞ。3、2、1、撃てっ!」
砲弾が次々と宙を舞い、敵がいる方へと飛翔した。これで奴らは砲弾の雨でかなりの損害を受けるはずだ。