※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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急襲

 2056年 2月5日 2041時 S14地区 鉄血の施設

 

 操り人形と化した戦術人形がベッドから起き上がった。彼女は起き上がるなり、腕や脚に刺さっていたチューブやカテーテルを抜き取り、机の上にある銃を手に取った。焦点の合わない瞳で周囲を見回し、弾倉を銃に取り付けてボルトを引く。彼女のAIの人格は消え去っているため、スケアクロウが予めインストールしていたプログラムに従って行動をすることになる。その指令は、"グリフィンに所属している人間と人形を殺せ"というものだ。

 その戦術人形は部屋から廊下に出た。薄暗い廊下の天井の蛍光灯は幾つか消えており、不気味なほど静まり返っている。

 

 施設の医療ルームでは、その操り人形のAIの状態がモニターに表示されているが、それを確認するはずだった人間の研究者は、鉛弾を食らって既に絶命していた。血だまりの中を、戦術人形が歩いていった。

 

 2056年 2月5日 2045時 S14地区 鉄血の施設

 

 スコット・ブレナンはスリングで吊ったアサルトライフルから手を放し、右手で拳銃を抜いてドアノブに手をかけた。M16A1が銃口を扉に向ける。ブレナンは勢いよく扉を開いた。向こうには蛍光灯で照らされた廊下が続いているだけで、誰もいない。廊下の両脇には傾いたキャビネットがあり、両側には引き戸が確認できる。暫く歩いた先の十字路の右側に血だまりが見えてきた。

 AR70とJS9が前に出て、調べに向かった。ステンMk2とStG44がブレナンの前に立ち、その後ろでMP5が銃を構える。

 JS9は血だまりのすぐ近くで人間が倒れているのを確認した。白衣が真っ赤に染まっている。研究者だろうか。その他にも、黒い服と黒いベレー帽を身に着けた人間も倒れている。その近くにはヘッケラー&コッホXM8自動小銃も転がっていた。

 

 ブレナンは死体が着ている服のタグや名札のようなものが無いかどうか調べた。他にも、IDや紙幣の類を持っていないかどうかも確認する。死体の人種は、欧州系、アジア系、アフリカ系と様々だ。死体漁りをしていると、全ての人間がIDを持っているのを確認できた。どうやら、鉄血が発行しているもののようだ。

 MDRが壁に食い込んでいる弾丸を引き抜いてブレナンに差し出した。ブレナンはそれが、鉄血が使っているタイプの弾丸だということに気づいた。

 

「こいつら、サイボーグに殺されたのか?」

 

「その可能性が高いと思いますわ。でも、普通、アンドロイドや人形って、人間に逆らえないように設計されているのではないのですか?私たちのように」StG44が答える。

 

「でも、それは設定を変更することができるはずだ」

 

「人間がわざわざそんなことをすると思いますか?兵器が自分たちに牙をむく可能性は、設計時に全て排除するものと思いますが?」

 

「そこだ。もしかしたら、誰かがサボタージュのために不正なプログラムを仕込んだのかもしれない。それか、サイボーグにウィルスを仕込んでテロ攻撃を仕掛けたとか」

 

「可能性はあると思います。しかし、サイボーグや自律兵器に搭載されているAIは、そう簡単にハッキングなんて受けるようなやわなものじゃないですわ。指揮官が一番知っているでしょう?」

 

「ああ。だが・・・・・・」

 

 その時、乾いた銃声が鳴った。戦術人形たちが一斉に銃を構える。

 

「見てきます」

 

 JS9が通路の角へ向かった。SG510も彼女に続く。ブレナンも付いて行こうとしたが、SG510が制止した。

 

「指揮官はここで。StG、MDR、指揮官の護衛をお願いします」

 

「任せて下さい」

 

 2056年 2月5日 2046時 S14地区 鉄血の施設

 

 JS9は銃を構え、慎重に進んだ。通路の角の壁に背中をぴったりとつけ、右側に続く通路の向こうを確認する。廊下には人間の死体が転がっている。その近くにはリッパーが3体いた。

 JS9は隣にいるSG510に下がるようハンドサインを送った。敵を排除することも考えたが、他にもイェーガー、もしかしたらイージスなどがいる可能性を考えると、銃声を探知され、指揮官を危険に晒すことになる。

 不意に、大きなモーター音が鳴り、二人に緊張が走った。向こうの十字路を巨大な影が横切る。マンティコアだ。

 

「早いところ引き返しましょう。ここにいるのは危険です」

 

 2056年 2月5日 2048時 S14地区 鉄血の施設

 

 JS9とSG510が走って戻ってきた。どうやら厄介なことになったらしい。StG44とステンが銃を構える。

 

「指揮官!引き返しましょう!」JS9が叫ぶ。

 

「何だと!?B中隊をまだ見つけてもいないんだぞ!」

 

「ここは危険です!ここから早く・・・・・」

 

 JS9がそこまで言いかけた時、銃声が鳴り響いた。StG44がブレナンを床に引き倒し、覆いかぶさって守る。

 

「くそっ!」

 

 P7とAR70が敵に向かって撃ち返した。そこにいたのは、リッパーとヴェスピドと・・・・・。

 ブレナンの視界に入ってきたのは、黒いドレスを身にまとった、背の高いツインテールのサイボーグ。鉄血のハイエンドモデル、スケアクロウだ。

 

 ブレナンは銃を構え銃を撃つ。その時、SG510の表情が強張るのを見た。

 

「あいつは・・・・・・!」

 

 SG510は怒りを隠そうともせず、敵に向かってフルオートで7.62㎜弾を放った。強力な破壊力を持つ鉛玉が壁やガラスを破壊する。だが、スケアクロウには1発も当たらなかった。彼女は一人で前に出ようとしたが、ブレナンに腕を掴まれ、制止された。

 

「待て!俺が援護する!M16!」

 

「ああ、任せとけ!」

 

 ブレナンとM16A1が並んで銃を撃ち、スケアクロウの周囲にいる敵の排除を始めた。SG510が突然キレた理由を、ブレナンはすぐに理解した。恐らく、前の中隊にいた指揮官を、あの女に殺されたのだろう。つまり、奴は彼女の仲間の仇ともいうべき存在だ。

 

 スケアクロウは素早い動きで銃弾を躱し、奥の部屋へと消えていった。先ほど、JS9が見かけたマンティコアが彼女の後ろに付いて行く。ブレナンはM26手榴弾を敵の集団目がけて投げた。金属の破片がサイボーグを切り裂いて破壊する。

 

「進め!」

 

 ブレナンの号令と共に、戦術人形たちが銃を撃ちながら前進する。ここでハイエンドモデルを仕留めておけば、戦況を変えることができるかもしれない。だが、この先、何が待っているかわからない以上、不用意に進むべきではない。

 

 2056年 2月5日 2056時 S14地区 鉄血の施設

 

 五十嵐智基と戦術人形たちは広いホールに出た。ここまで敵に遭遇してはいない。だが、ここは敵の本拠地ともいえる場所だ。

 

 FALとスオミが先頭を歩き、背後はTMPとFNC、M60が警戒している。周囲は不気味なほど静まり返り、全く物音がしない。敵がこっちの侵入に全く気付いていないとは思えない。

 FALが左手を上げた。"止まれ"の合図だ。彼女は続いて左手を回して、下に下げる動きをする。散開して隠れろ。

 

 五十嵐と戦術人形たちが柱などの遮蔽物に隠れ、銃を構える。やがて、ホールの向こうから人影が現れた。一人だけ。銃を持った、小柄な少女のようだ。

 

 五十嵐は、その少女の動きが、どうもぎくしゃくしているように見えた。まるで、ホラーアクションゲームのゾンビのように。少女の姿は灰色の長い髪、緑色のジャケットと黒く短いタイトスカートを着ている。そして、右手に握っている銃は・・・・・・。

 

 少女は手に持ったUMPを片手で持ち上げ、五十嵐に向けた。416が五十嵐を抱きかかえて柱の後ろ目掛けてスライディングした直後、二人がいた空間を.40S&Wのホローポイント弾が飛びぬけていった。弾丸はコンクリートの壁にめり込み、マッシュルームのような形につぶれる。

 

 こいつは一体何者なんだ?鉄血か?それとも、戦術人形?だが、敵であることは変わりは無い。416は銃を構え、少女目掛けて発砲した。少女は飛び上がり、空中で前転してから着地。再び銃をこちらに向けてきた。416がその少女に銃口を向け発砲したが、少女は再び飛び上がって5.56㎜弾を避ける。先ほどのぎくしゃくした動きが嘘のような素早い動きだ。

 

「こいつは・・・・まさか、そんな・・・・・・」

 

 416は目の前の襲撃者を見て目を見開いた。それは、404小隊のかつての仲間、UMPの3人目の姉妹の人形、UMP40だ。だが、彼女のAIのメンタルモデルは既に崩壊し、サルベージに失敗したはずだ。現に、416はその場に居合わせていたのだ。

 UMP40は、再び五十嵐に銃を向けようとした。416は五十嵐を強引に引っ張りながら後退する。G36、9A-91、RFBがUMP40に向かって発砲するが、まるで映画の登場人物のようなアクロバティックな動きで弾丸を避け、形勢が不利だと判断したのか、その場から走り去った。

 

「くそっ、あいつは何者だ!?鉄血の奴らか!?」

 

「まさか、あいつは行方不明になっていたのに」

 

「416、あいつを知っているのか!?」

 

 416は五十嵐を見た。だが、416は返答に詰まっている様子だった。

 

「・・・・・・知ってるわ。元404の人形よ。作戦中に行方不明になっていて、いわゆるMIA扱いになっていたんだけど、まさかこんなところにいたとね。そうね。指揮官は知っておく必要があるわ」 

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