※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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中継器

 2056年 2月5日 2054時 S14地区 鉄血の基地

 

 416曰く、404小隊は、元々は5人の戦術人形で構成されていたという。隊長のUMP45と彼女の妹のUMP9、参謀役の416とある意味ムードメーカーのG11。

 そして、UMP45にはもう一人、妹がいた。名前はUMP40。言われてみれば、五十嵐は納得した。確かに、ヘッケラー&コッホ社製のUMPシリーズのサブマシンガンには、9mmルガー弾、40S&W弾、45ACP弾を使用するバリエーションがあるのは彼が知っての通りだ。

 しかし、404小隊がある作戦を行っているとき、UMP40は行方不明になった。その後、グリフィン司令部は"死亡"したものと判断し、16LABにてバックアップを取ってあったメンタルモデルでの復元を行ったが、どういう訳か失敗した。そこで、上層部はUMP40のメンタルモデルが完全崩壊したものと判断し、破棄を決定した。

 

 ところが、UMP40は見ての通り、未だに生存してた。そして、今は敵となって現れた。理由は不明だが、メンタルモデルを改造されたか洗脳されたか。いずれにせよ、敵となって立ちはだかるのは間違いないだろう。

 

「それならば416。そのUMP40を捕まえて、メンタルモデルを元に戻すことはできないのか?」

 

「うーん、そうね。16LABにあの子のメンタルモデルのデータが残っていないから。こうなったら、大人しくさせて、説得してから無理やり連れて帰って、鉄血にインストールされた不正ソフトをメンタルモデルから除去するしか無さそうね」

 

「それができそうに無かったら・・・・・・・選択肢は一つしか無いな。一番やりたくない方法だが」

 

 だが、416にはそれがこの指揮官にできるかどうかがどうも引っかかった。五十嵐は、カザフスタンでもボスニアでも、人形を犠牲にすることを極端に嫌っていた。

 

「それはどうしようも無くなった時の、最後の手段にしておきましょう」

 

「だが、まずは、UMP40といったな。あの子を殺さずにおとなしくさせて連れて帰る方法を考えないとな」

 

 今、五十嵐たちがいる部屋は、何かの研究室のようだ。PCと、用途不明の器材やサーバーのようなものが置かれている。

 

「これで動けなくした後に、上手いこと押さえつけて両手両足を縛るってのはどう?」RFBがM84スタングレネードを見せて言った。

 

「問題は、それが通用するかどうかわからない、というところですね。メンタルモデルを改造されて操り人形になっている以上、そういった閃光や爆音に対する耐性を付けるソフトを入れられているかもしれないですよ」と、スプリングフィールド。

 

「それに、効いたとしても、せいぜい2、3秒しか怯まないかもしれません。その間に押さえつけて、拘束するのは無謀としか思えません」

 

 G36の意見はもっともだ、と五十嵐は思った。だとしたら、残る選択肢は。

 

「なるべく致命傷にならない所を撃って、動けなくするしか無いな」

 

「連れて帰るとしたら、それしか無いよね。指揮官、私たちの人工心臓と電子頭脳があるところ、わかる?」UMP9が言う。

 

「人間と同じ。人工心臓は胸の真ん中からちょっと左側、電子頭脳は頭だろ」

 

「うん。そこを撃てば完全に機能停止するよ。でも、電子頭脳が壊れたらメンタルモデルのバックアップを取れなくなるかもしれないから、気をつけて」

 

「じゃあ、人工心臓を撃てばいい。あいつ、防弾チョッキを着ていたかな?」

 

「防弾チョッキを着ているなら、ファルコンに任せてよ。私の撤甲弾を使えば、マンティコアの装甲だって撃ち抜くからね」

 

 ファルコンは12.7mmAPM弾を弾薬ケースから取り出して五十嵐に見せた。

 

「それだ。416、もう一度聞くが、人工心臓を破壊しても、電子頭脳を破壊しなければ、メンタルモデルが消去されるだなんて事は起きないんだな?」

 

「ええ、保証するわ。体を破壊してしまっても、最悪、頭を解剖して、電子頭脳のCPUだけを回収できれば問題無い」

 

「あまりやりたくない方法だな。サンマの解剖ならば中学生の時にやったけど、流石に人形の解剖は」

 

「普通の考えの人間ならば、戦術人形の解剖はトラウマものよ。やる時は私たちに任せてちょうだい」

 

「電子頭脳を取り出したら、体の方は置いてきぼりで構わないのか?」

 

「構わないわ。戦術人形の外見に関するデータも、電子頭脳の中に入っている。それでグリフィンのラボで復元できるはずよ」

 

「わかった。それで行こう」

 

「指揮官、これができるのは、あくまでもUMP40自身のメンタルモデルが電子頭脳の中に残っているという仮定しての話よ。奴らのことだから、元のメンタルモデルを完全に消去して、完全に別人各に入れ替えているか、メンタルモデルそのものを破壊して、ただの操り人形にしている可能性の方が高いわ。そうなったら、40を元に戻すことはできなくなる。45とナインには酷な話だけど、その場合は殺すしか選択肢は無くなる」

 

「メンタルモデルの書き換えや抹消だと?まあ、一応、AIだから、できないことは無いか」

 

「セキュリティがかかっているから、そう簡単にはできないようにはなっている」

 

 確かにその通りだ。一般人向けの愛玩サイボーグや、企業向け作業用サイボーグのAIにもセキュリティが設定されており、所有者以外の人間か簡単にAIのプログラムを操作できないようになっている。だが、鉄血はその頑丈なセキュリティを破って、戦術人形を操る方法を確立したようだ。

 

「セキュリティがかかっているならば、そうか。行方不明になってから、メンタルモデルのセキュリティソフトウェアの更新が止まっているのか」

 

「ご明察。私たちは、グリフィンの支部や本部、前方展開基地にいるときに、ローカルクローズドネットワークとAIを接続することでAIのセキュリティを更新している。でも、それを受けられずに、古いプロテクトを使い続けていたら、いずれはプログラムを解析されて、ファイアウォールを破られる。無線ネットワークを使ってメンタルモデルに侵入され、ハッキングされた。そうでなければ、もっと直接的なやり方よ」

 

「直接的?」

 

「40を捕まえて、AIに直接アクセスしてから、メンタルモデルを書き換えた。つまり、頭の中にある電子頭脳を・・・・・・」

 

 うわ。やつら、戦術人形の頭を解剖して、中にある電子頭脳を直接弄ったのか、

 

「こいつは参ったな」

 

「あり得ない話では無いわ。とにかく、40を見つけましょう」

 

「ああ。まずは」

 

 その時、銃声が聞こえ始めた。単発や3点射で撃っているようだ。

 

「あっちだ。見てくるぜ」

 

 AEKが、銃に取り付けられた、200発入りマガジンの中から延びている弾薬ベルトが薬室に正しく装着されているかどうかを確認してから歩きだした。9A-91とM14が援護に向かう。他の仲間は416の指示に従い、防御陣形を取った。

 

 2056年 2月5日 2059時 S14地区 鉄血の施設

 

「さてと、これならば、一人にしかハッキングを仕掛けることはできないか。オープンネットワークを使って適当な人形に仕掛けるしかない」

 

 スケアクロウはコンソールのキーボードを叩いた。ネットワークシステムを使い、侵入したグリフィンの人形を探し出す。それには、あの操り人形が役に立つ。そのために、わざとグリフィンのネットワークに接続するためのシステムを、あの人形のメンタルモデルに残しておいたのだ。

 操り人形のメンタルモデルを介してネットワークに侵入し、更に適当な人形のメンタルモデルにハッキングを仕掛ける。但し、操り人形の方を破壊されてしまった場合は、ハッキングは中断されてしまう。致し方がないが、これ以上のことはできない。スケアクロウはコマンドの入力を終えると、エンターキーを叩いた。それに、あれは、元々はグリフィンの人形だ。奴らにそれを破壊できるとは思えない。さて、パーティーを始めるとしよう。

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