2056年 2月5日 2056時 S14地区 鉄血の基地
スコット・ブレナンとStG44は廊下の先にある扉を開け、広いホールに出た。そのホールは真っ暗だったが、すぐに明かりが点いた。ホールには、太い柱や頑丈そうな机、キャビネットなどが置かれている。そして、ホールの向こう側には、先程、外で見かけた鉄血の女。その周囲には、リッパーとハンターがいる。
なるほど。どうやら、決闘をお望みのようだ。ブレナンが自動小銃のボルトを引くと、StG44とM16A1が前に出る。ステンMk2とAR70、RPDはブレナンの周りに集まり、指揮官を守る陣形を取った。
「さあて、ようやくパーティーの始まりだな。お前たちは、運が良ければ生き残れるかも知れないな。まあ、私が皆殺しにしてやるつもりだが」
スケアクロウはブレナンたちの近くへと歩み寄った。StG44が銃を構え、安全装置を外す。
「だが、お前のお仲間は、どうかな?確かに、お前たちが戦う相手は、鉄血のハイエンドである、この私だ。だが、奴らは違う。奴らに差し向けたのは、お前のお友達が愛してやまない戦術人形だ。そんな人間が、果たして、戦術人形を撃つことができるかな。それと、もう1つ」
スケアクロウはポケットから小さな端末を取り出し、キーを幾つか叩いた。
「奴は、敵に操られた仲間を撃つことができるかな?」
2056年 2月5日 2057時 S14地区 鉄血の基地 倉庫
五十嵐たちはUMP40を探し、広い倉庫に入った。そこらじゅうに大きなラックが並び、そこには銃や弾薬、工具が置かれている。そして、ラックの間の"通路"にUMP40が立っていた。周りに鉄血のサイボーグやUGVなどはいない。彼女は虚ろな目でこちらを見る。
UMP40は銃を持ち上げた。その直後、G36と9A-91が発砲する。40は人間、いや、人形離れした動きで飛び上がり、宙を舞いながら弾丸を避けた。倉庫に並んだラックの上を飛びながら移動する。
「私が追うわ!G11、スオミ、ついてきて!」
416の言葉に二人が従う。他にも鉄血のサイボーグがいる可能性がある。スプリングフィールドとM14が通路の先に向かい、警戒する。
『RFB、M9!私が指揮官の所に40を追い詰めるから、待ち構えて!』
416が無線で二人に指示を出した。RFBたちが五十嵐がいる通路の反対側に出て銃を構える。その時だった。
ラックの上から突如としてUMP40が現れた。サブマシンガンをスリングで肩から吊り下げている。"敵"になった戦術人形の左手には注射器が握られていた。
40はUMP45に飛びかかり、目にも止まらぬ速さで注射器を彼女の肩に突き刺し、中身を注入すると再びジャンプして逃げ出した。鉄血の操り人形は五十嵐とG36が放つ弾丸を全て避けて、再び姿を消した。
「くっ、素早い!」G36が銃の弾倉を入れ替えた。
「416、出入口を封鎖しろ!40をここから逃がすな!」五十嵐が無線で指示を出す。
『わかった!』
「45姉!」
UMP9の声に五十嵐は振り返った。彼女は気絶した姉を抱き、揺さぶっている。その傍らには注射器が転がっている。五十嵐はそれを拾い上げて見た。くそっ!あいつ、45に何をしやがった!
「指揮官、私はファルコンと一緒にあいつを探してくるわ。あなたはここで待ってて」
FALが自分の銃を点検し、薬室に7.62mm弾を送り込む。
「わかった。そうだな。FNCとAEK、M14を連れていけ。SV、スプリングフィールド、M60、G36も奴を探せ。二手に分かれるんだ。出入口は1つだけだから、ここであいつを捕獲する」
「待ちなさい。そんなに攻撃に人形を割いたら、あなたと45を護衛するのがナインだけになる。そうね。G36とスプリングフィールドは指揮官と45を守って。SVとM60は私についてきなさい」FALが反論する。スプリングフィールドとG36も彼女に同意した。
「わかった。そうしてくれ。M60、頼む」
「了解!」M60は銃のボルトを引き、7.62mmNATO弾を薬に送り込んだ。
FALたちが五十嵐たちから離れた直後、再び銃声が閉鎖された部屋の中で響いた。
2056年 2月5日 2059時 S14地区 鉄血の基地 ホール
ブレナンたちはスケアクロウ率いる部隊に銃撃を開始した。鉛弾の暴風に晒された敵がバタバタと倒れるが、スケアクロウは周りのサイボーグを巧みに盾として使い、弾丸を避ける。ブレナンは大理石のカウンターを遮蔽物として使い、反撃する。
スケアクロウは自分自身で攻撃することは無く、サイボーグを盾に後ろで様子を見ている。気に食わん。部下のサイボーグが殺されても、屁とも思わないような奴等だ。
ブレナンは銃撃し、敵を倒した。スケアクロウを狙い撃ちするべきなのだが、敵は巧みに移動してスケアクロウへの射線を塞ぐ。
P7が弾倉を入れ替えている間、SG510が彼女をカバーする。敵の数は減っているが、スケアクロウに弾が届かない。
ブレナンはM26手榴弾のピンを抜き、心の中で"サウザンドワン、サウザンドツー、サウザンドスリー"と数えてから敵に向かって投げた。ところが、リッパーの一体が飛び上がって空中でそれを掴む。だが、投げ返す間もなく手榴弾は爆発し、鉄血のサイボーグはズタズタになって床に落下した。
ブレナンが自動小銃の弾倉を取り替え、ボルトリリースレバーを叩いた時、自分の右の向こう側の机の陰から敵を撃っていたステンMKⅡが倒れるのを見た。
「ステン!」
ブレナンは鉛弾が飛んで来るのも構わずに彼女に駆け寄ろうとした。その様子にM16A1が気付く。
「くそっ!」
M16は背負っていた大きな鞄から、鋼鉄の間にタングステンとセラミックを挟んだ分厚い防弾盾を取り出し、ブレナンを守りながら走った。盾に鉛弾が着弾する音が響く。
ブレナンはステンの傷を確認した。左肩と左ふくらはぎ、左太腿に被弾している。
「指揮官、ごめんなさい」
「じっとしてろ。M16!」
「わかってる!」
ブレナンがステンを手当てしている間、M16は防弾盾で二人を守りつつ、反撃する。銃撃戦は尚も続き、三人の周囲にも鉛弾は着弾した。
2056年 2月5日 2101時 S14地区 鉄血の基地 倉庫
五十嵐は気を失ったUMP45の背中に触れ、続いて耳を当てた。人工心臓の鼓動は止まっていないので、殺された訳では無いようだ。
くそっ、あいつ、何を注射しやがった。五十嵐は戦術人形用の医療道具の入ったパウチを開け、人形用血液検査器を取り出し、端子になっている針を静脈に突き刺そうとしたときだった。UMP45が突然目を開き、こちらを見た。45、と五十嵐が呼び掛けた時、彼女は右手で五十嵐の喉を掴み、締め上げ始めた。
「よ・・・・よん・・・・」
2056年 2月5日 2101時 S14地区 鉄血の基地 ホール
スケアクロウはサイボーグを盾に使いながら端末を操作した。あの操り人形は、首尾よくウィルスをグリフィンの人形に植え付けたようだ。ほう。どうやら、その人形はウィルスを植え付けた時に気絶し、一時的に機能を停止したようだ。
だが、機能を回復した時、スケアクロウは状態をその操り人形の確認した。ウィルスは機能しており、完全にコントロールはこちらのものになっている。その人形の眼を通して、そいつが何をみているのかを確認した。どうやら、人間がそいつを介抱していたらしい。おめでたい奴だ。その代償に、こいつは死ぬことになる。そういえば、向こうにいる人間も人形を庇いながら戦っている。大馬鹿者だ。さて、一気にやっつけてしまうとしよう。スケアクロウは銃の弾倉を入れ替え、銃撃を開始した。それと同時に、操り人形に命令を出した。"目の前の人間を殺せ"と。