ジェラルド・グリッドレイ
Five-Seven
P226
スピットファイア
ヴェクター
PPsh-41
ZV-61スコーピオン
64式
AK-12
AN-94
SPR-A3G
四式
81式カービン
ネゲブ
2056年 2月7日 1805時 ボリビア某所
男は隠れ場所から双眼鏡でターゲットを監視していた。この蛸壺のような陣地に缶詰めになって、丸3日になる。だが、こんなのは、この27歳の男にとっては慣れっこだった。
男の名はジェラルド・グリッドレイ。グリフィンのV中隊の指揮官であり、元アメリカ合衆国海兵隊三等軍曹。
グリッドレイの海兵隊における実績は輝かしいものであった。スナイパースクールを主席で卒業し、武装偵察隊にも所属していた。AASMと呼ばれる、オーストラリアで開催されるアメリカの同盟国の軍隊で行われる射撃競技会でも金賞を何度も受賞したことがあった。
だが、彼は、ある事件をきっかけに海兵隊を辞める決意をした。
1年前、海兵隊はリビアで鉄血の掃討作戦を展開していた。その中にもグリッドレイはいた。そこで、グリッドレイと相棒の観測手だったバーナード・オースティン三等軍曹はある夫婦に出会った。
二人は70代で、子供はいなかった。だが、あるサイボーグの少女を実の子のように可愛がっていた。少女は、ファティマと名付けられ、見た目は15、6才くらいで、黒い長い髪、肌は浅黒く、可愛らしい笑顔をいつも浮かべていた。
老夫婦は、グリッドレイたちがやってきた時、その少女をアメリカに連れて帰って欲しいと願い出た。荒廃したリビアよりも、まだ鉄血の脅威に晒されていないアメリカに連れていき、そこで彼女をどうか幸せにして欲しいと。
グリッドレイは約束はできないが、軍の上層部と大使館に交渉はしてみると夫婦に言った。夫婦は大変喜び、グリッドレイに、どうか少女を引き取って欲しいと言った。だが、新たにグリッドレイと相棒には命令が下った。グリッドレイと相棒は、必ずまたやって来て、少女をアメリカに連れて行く手続きができるかどうか知らせると言って、別の任務に向かった。だが、二人が再び老夫婦と少女に出会うことは無かった。
数日後、グリッドレイとオースティンの任務期間が終了し、アメリカに帰ることが決まった。グリッドレイは大使館を通じて手続きを行い、正式にファティマを家族として迎える準備もできていた。二人がファティマを迎えにJLTVに乗って、老夫婦とファティマが住む村に向かった。
だが、その村は無くなっていた。家は焼け焦げ、そこら中に死体と、鉄血のサイボーグやロボットの破片が散らばっていた。グリッドレイとオースティンはファティマの名を何度も叫びながら、村の中を探して回った。だが、見つかったのは、変わり果てた彼女と、彼女の"両親"の姿だった。
サイボーグは、電子頭脳さえ生きていれば、メンタルモデルを回収し、新しい体を与えることができる。だが、ファティマの場合、その電子頭脳すら破壊されていた。
グリッドレイと相棒は、失意と共に帰国することになった。自分は、ファティマのような少女を、少しでも危険から遠ざけるために、世界の悪人から、人々を守るヒーローになるために、海兵隊員になった。だが、現実は?悪人から、小さな村一つどころか、女の子一人守れなかった。
帰国後、キャンプ・レジューンでグリッドレイは、あの時、何が悪かったのか。自分は何をすれば、ファティマを守れたのか。ずっと考えていた。オースティンの方の症状は更に酷く、PTSDの症状が続いた。毎晩のように悪夢に襲われ1ヶ月後、休暇中に自分の頭を撃って、グリッドレイと仲間たちに、突然の別れを告げた。
親友と共に戦う気力を失ったグリッドレイは、海兵隊から去って行った。暫くは、貯金とペンタゴンから支給される僅かな年金を切り崩しながらさまよったが、狙撃以外に技術を持ち合わせていない人間が行き着く先は限られている。そして、やむを得ない形で傭兵をやりながら鉄血狩りをしていた一匹狼の狙撃手は、最終的にグリフィンに流れ着いたのだった。
グリッドレイは目の前のターゲットに集中した。愛用のアキュラシー・インターナショナルL115A3ライフルに取り付けたNVGで、やや小さいものの、外装が豪華な別荘を見る。ターゲットは鉄血の関係者だと作戦本部の連中は言っていた。そいつを排除し、鉄血の情報を奪うのがグリッドレイの任務である。しかし、だ。グリフィンが生身の人間を暗殺する任務をやったことなんてあっただろうか。
『指揮官、ターゲットが出てきたぞ。どうする?』
別の場所から監視していた仲間が知らせてきた。
「他に誰かいる様子はあるか?」
『いや。こっちからは1人しか確認していない。今、指揮官のいる場所に向かっているぞ』
「わかった。四式、そっちはどうだ?」
『敵は一人しかいないようであります。他に誰かいる様子は無いであります』
彼女の口調を聞いていると、どうしても笑いがこみ上げてくる。四式は、まるで絵にかいたような昔の軍人のような話し方をする。グリッドレイは、そんな戦術人形をなんとも可愛らしく思っていた。
「わかった。他の仲間が来ないうちにやっつけて、さっさと帰ってパンプキンパイでも食べよう」
そんな事を言っていると、ターゲットがグリッドレイの視界に入ってきた。ターゲットは上半身肌で、下にはジーンズを履いている。ポケットから煙草を取り出して火を付け、カウチに座り込んだ。
グリッドレイはレーザー測距儀で距離を図った。316m。楽勝だ。スコープのエレベーションノブを少しだけ反時計回りに動かし、引き金に人差し指をかけ、大きく一度だけ呼吸し、息を止める。
グリッドレイが人差し指を動かすと.338ラプアマグナム弾が銃口から飛び出した。サプレッサーのおかげで、微かな音しか鳴らない。
ターゲットの頭が破裂し、男が庭に転がった。グリッドレイは周囲の様子を確認した。他に人がいる様子は無い。続いて、グリッドレイは徹甲弾を装填し、別荘の前に駐車されていたベンツを撃った。エンジン、バッテリーを撃ち抜き、使い物にならなくした。
「よし、小屋を調べるぞ。奴が何を隠しているか見てみよう」
2056年 2月7日 1811時 ボリビア某所
グリッドレイはL115A3ライフルを背負い、手にMk18カービンを持って小屋に近づいた。レッグホルスターにはワルサーPPQ/M2を入れている。仲間たちがターゲットを包囲するようにして前進した。
グリッドレイがドアに近づくと、一人の少女が制止し、自分が先に入ると合図した。手にはAK-12アサルトライフルが握られている。
AN-94を持つ少女が、先ほどグリッドレイが撃った男の様子を確認し、首を掻き切るような仕草をした。ターゲット死亡確認。
AK-12がドアを蹴り開け、中に突入した。明かりは点いたままだ。必要なのは、PC、HDD、USBメモリ、書類などだ。仲間たちが、そういったものを回収していく。
グリッドレイはMk18を手に部屋の中を捜索し、やがて、地下室へ続く階段を見つけた。彼はカービンを両手で構えなおし、慎重に階段を降りていった。後ろからFive-Sevenとスピットファイアが付いてきて、指揮官を援護する。
グリッドレイは地下室の扉を蹴り開けた。明かりは点いており、真ん中にベッドがあるだけ。そして、そのベッドには、銀髪の少女が縛り付けられていた。裸に剥かれ、体の所々に痣や傷痕が見える。少女は静かに寝息を立てていた。
なんて事を。グリッドレイは少女を縛り付けていたロープをナイフで切り、解放した。
「スピットファイア。毛布と、着るものを探してくれ」
「毛布はありますよ。それと、私の着替えがあります」
「わかった。この子に着せてあげてくれ」
グリッドレイは地下室から出た。あまり見知らぬ少女の裸をじろじろ見るものでは無い。別荘の外に出てPPsh-41と64式、ヴェクターが命令通り警戒のために立っているのを確認した。
「指揮官、HQと連絡がついたわ。迎えのヘリが来る」64式がグリッドレイの方を見て言った。
「了解だ。なあ、64式。何で俺たちは、こうもヤバい仕事ばかりさせられるんだろうな」
「グリフィンに人殺しに慣れた人間が少ないからじゃない?」
「やれやれ」
「まあ。基地に帰ったら休暇ね。指揮官、美味しいものたくさん食べさせてよ」
「わかってる。何が食べたいか考えておけよ」
「私は、それよりもお風呂に入りたいわ。こんな泥臭い場所で作戦なんだもの」グリッドレイの後ろから付いてきていたFive-Sevenが不満そうに漏らした。
グリッドレイは肩書の通り所謂『正規軍』出身の指揮官です。