※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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再会と武器商人

 2056年 2月11日 0934時 タジキスタン

 

 五十嵐智基とジェラルド・グリッドレイは仲間たちをぞろぞろと引き連れてキャンプの中を進んだ。このキャンプは非常に広く、2500mの未舗装の仮滑走路が2本設置されているくらいだ。そして、その滑走路に1機のC-130が進入してきているのが見える。

 

 暫く歩いていると、DSR-50狙撃ライフルを持った少女と一人の若い白人の男がバラックから出てきた。その男は、グリッドレイに気づくと片手を挙げたが、当のグリッドレイはあまり良い顔はしなかった。

 

「よお、グリッドレイ!まさかこんな所で会うとはな!なんだなんだ?またかわいこちゃんをぞろぞろ連れて来やがって、まったく!おい、そのちっこいのは誰だ?ダチか?」

 

 酒の臭いを撒き散らす、赤ら顔のその男はかなり馴れ馴れしくグリッドレイと五十嵐に絡んできた。グリッドレイは、その男を五十嵐から遠ざけた。

 

「おい、コール。お前、酔っているのか?酒の匂いがするぞ」

 

「ああ?夜中のパトロールから帰って来たから、明日の朝まで休暇だからな。それにしても・・・・・そこのお前、どこから来た?ベトナムか?中国か?」

 

「日本ですが」

 

「ハハッ!日本!こいつは傑作だ!」

 

 UMP45と416がその男を睨む。どうも、そいつのことを危険人物と判断したようだ。

 

「おい、そこの白猫ちゃん。俺の部隊に来ないか?ガハハハハハ!」

 

 グリッドレイは嘆息した。こいつがかつては自分と同様、合衆国海兵隊にいたというのだから始末が悪い。古巣の知り合いに、この男───サイモン・コール元三等軍曹───を知っているかどうか聞いてみたが、評判はすこぶる悪かった。酒癖が悪く、粗暴ですぐ女の子に手を出す。ACVの運転手をやっていたようだが、トラブルメーカーとして有名で、彼の上官は、その男を海外展開先では、あまり外出許可を出さない方が良い、という評価を下していたようだ。

 そして、コールは、自分が乗艦していた強襲揚陸艦が寄港していたマレーシアでトラブルを起こした。バーで酔った上に、女性に絡み、暴れて彼女とバーの用心棒を含む店員数名を負傷させて店を破壊。たまたまその場を通りかかったMPに逮捕されたのだ。その件で、コールは海兵隊から追い出されるように除隊した。グリッドレイは、その男の普段の素行から、名誉と伝統ある海兵隊の面汚しとしか見ていなかった。

 

「いいからそいつらには絡むな」グリッドレイはコールと416の間に割り込んだ。

 

「おい、日本人。お前、そいつらとはヤッては・・・・いなさそうだな。おいおい、勿体ないぜ」

 

 グリッドレイはコールの右腕を掴んだ。

 

「いいか。最後通牒だ。こいつらに二度と絡むな」

 

「あー、あー、わかったよ。あばよ」

 

 コールはDSR-50に支えられるようにして去っていった。

 

「全く。あいつに関わると録な事が無いな」

 

 2056年 2月11日 0938時 タジキスタン

 

五十嵐とグリッドレイは、ブリーフィングのためにキャンプの奥にある大きなバラックへと向かった。途中、武装した男女や車輌とすれ違う。バラックの扉を開け、中に入ると五十嵐が見知った人物がいた。

 

「あら、久しぶりじゃない。そこにいるのはジェリーね」

 

呉明だった。95式や97式たちもいる。

 

「ミン、今回の作戦に同行するとは聞いてなかったが」グリッドレイが言う。

 

「ジェリー、あんた、図体だけは相変わらずデカイままね。それと、ちょっとくらいは髪を伸ばしたら?」

 

「毎日、筋トレと射撃を欠かさないからな。海兵隊にいた頃の癖はなかなか抜けないさ。遺伝子レベルで刻まれているからな」

 

「さっき、サイモンを見たんだけど、あいつ、私たちを見るなり絡んできて、私と95式のお尻を思いっきり掴んできたのよ」

 

 グリッドレイは嘆息した。あいつは、海兵隊のネガティブキャンペーンをそこら中でやっているに違いない。

 

 突然、大きなモーター音が鳴り、戦術人形たちが銃を手に取った。五十嵐とグリッドレイは何事かと思い、バラックの扉を開け、様子を見ようとしたが、G36とAK-12に静止された。

 

「見てきます。指揮官はここに」

 

 AK-12はそう言ったものの、グリッドレイがついてくることはわかっていた。Five-SevenとAn-94がグリッドレイの後を追いかける。五十嵐は興味本位で野次馬しようとしたが、UMP45に腕を掴まれ、止められてしまった。

 

 2056年 2月11日 0945時 タジキスタン

 

 ジェラルド・グリッドレイとAK-12、An-94、Five-Sevenが物音がする方向に向かう。音が発生していたのはすぐ近く、バラックのすぐ裏にある、キャンプの射撃訓練場だった。グリフィンの研究員と、見かけないスーツ姿の男女が数名、そして迷彩服を着た軍人の姿があった。迷彩パターンから推測すると、アメリカ海兵隊とイギリス陸軍、そして、知らないパターンの迷彩。奴ら、何しに来たんだ?

 

「それでは、この次世代戦術人形、サイクロプスの性能をご覧ください。生体パーツのある人形なんぞ、もう時代遅れ!必要なのは、圧倒的火力と頑丈な装甲です!」

 

 男は兵器メーカーの営業に来ているようだ。サイクロプスと呼ばれたロボットが、訓練用の標的に銃を向け、発砲を始め、標的を撃つ。グリッドレイはポケットから双眼鏡を取り出し、標的を見た。射撃は極めて正格で、直径でほんの2cmから3cm程度の範囲内に弾痕が刻まれる。

 

「続いて、防御性能をご覧に入れましょう!」

 

 サイクロプスが今度は自ら射撃訓練場の標的に向かって歩き、300m程先の所で止まり、真っ直ぐ立った。グリッドレイが知らなかったパターンの迷彩服を着た男が、ケースからバレットM82A1ライフルを取り出し、弾倉を取り付ける。男はアイウェアとイヤマフを身に付け、レーザー測距儀で距離を確認してから、スコープのエレベーションノブとヴィンテージノブを動かした。この時、男はメモを見ていない。つまり、こいつはこの銃とスコープの設定を完全に頭に叩き込んでいる。素人でないことは明らかだ。

 狙撃手がM82のボルトを引き、スコープを覗き込んでから呼吸を整えた。そして、引き金をゆっくりと絞る。

まるで大砲が放たれたかのような凄まじい銃声が鳴り、AK-12とFive-Sevenはたじろいだ。狙撃手は、立て続けにサイクロプスに弾丸を撃ち込む。弾倉が空になると、狙撃手は立ち上がり、弾倉を銃から外し、ボルトを引いて薬室をオープンにした。

 

 サイクロプスがこちらに歩いてきた。所々に傷が付いているが、弾丸が抜けた痕は無い。

 

「どうです!この防御性能!最大で、23mm機関砲弾の複数発の直撃に耐える性能は保証します!流石に、対戦車兵器を防ぐまでとはならないのですが、このサイズの自立人形兵器としては、十分な性能と言えます。今ならば、現在、使用中の戦術人形を下取りしますよ!どうです?」

 

 グリフィンの研究員はかぶりを振って退席した。一方、軍人たちはタブレットPCに何やら打ち込んだり、電話をかけたりしている。兵器メーカーの人間たちは、パフォーマンスの後片付けを始めた。

 

 やがて、サイクロプスの売り込みをしていた男がグリッドレイに気付き、近づいてきた。

 

「おやおや。あなたはそのエンブレムから見ると、グリフィンの部隊指揮官ですな!どうです?あのサイクロプスを買ってくれるなら、今、あなたの戦術人形を高値で下取りしますが・・・・・・」

 

 グリッドレイはその言葉にカチンときた。怒りを隠しもせずに男を睨み付ける。

 

「悪いが、彼女たちは、俺の部下であり、大事な友人でもある。他人に差し出すなんぞ、あり得ないね」

 

 グリッドレイは、一言一言に男に対する嫌悪感を剥き出しにして答えた。

 

「ふむ。ならば仕方がありませんな。他の買い手を探すとしましょう」男は引き下がった。

 

 気づくと、Five-sevenが両手でグリッドレイの腕を掴んでいた。グリッドレイがそんな彼女の頭を優しくなでる。

 

「大丈夫だ。安心しろ。何があっても、君らを他人に引き渡したり、売り飛ばしたりはしない。これだけは信じてくれよ、相棒」

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