※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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不意打ち

 2056年 2月11日 1200時 タジキスタン

 

 ジェラルド・グリッドレイはL115A3ライフルを持って走った。その後ろからA3Gとファルコン、SV98が付いてきている。WA2000は呉明と共に別ルートへ向かっていた。

 

 敵を見つけたら先手必勝。RFBはタフブックで無人機を操作し、敵陣地の監視を続けている。そこには、ジープが5台と、カラシニコフ自動小銃、タジキスタン陸軍兵士の死体が転がっていた。見たところ、死体は比較的新しい感じがする。規模から推測すると、パトロール中に攻撃を受けたようだ。

 

「ミン、聞こえるか?」

 

 グリッドレイが小声でマイクに向かって言う。

 

『聞こえるわ。今、敵が見えたところ』

 

「様子は?」

 

『ちっとも動く気配が無いわね。狙うには、奴らの視界に入らないと難しそうね』

 

「ちっ。こっちからも狙いを付けるのは難しそうだ。連中、上手く隠れてやがる」

 

『グリッドレイさん。それなら、僕が囮になって、奴らをおびき出すって手も・・・・』

 

『絶対だめよ』

 

 五十嵐からの通信に416割り込んだ。

 

「416の言う通りだ。かと言って、彼女たちを囮に使う訳にもいかん。手投げ偵察ロボを使え。それで奴の気を引いてみるんだ」

 

 手投げ偵察ロボいうのは、小さなクーゲルパンツァーのような形をしており、赤外線カメラと動体センサーを搭載している。危険な地域への偵察に使う地上用偵察ロボだ。

 

 2056年 2月11日 1204時 タジキスタン

 

 RFBがUSBバスを使って手投げ偵察ロボとタフブックを繋ぎ、命令を与えていた。これでこの小さな偵察ロボはPCで操作できる。

 

 G36が偵察ロボを投げた。小さなロボットは雪の上をころころと転がり、イェーガーの集団が待ち構える区域へと向かった。

 

 RFBはタフブックを使い、偵察ロボを操作した。ロボは灌木や岩の陰に隠れながらゆっくりと敵に接近する。装備は光学・赤外線の2種類のカメラだ。

 

「これにアクティブレーダーも搭載していれば良かったんだけど、流石にそこまでは組み込めないか」

 

 五十嵐はロボのカメラから送信されてくる画像を見た。雪と岩肌、枯れ木が見える。やがて、他のものも視界に入ってきた。タジキスタン陸軍の兵士の死体とAK-74、RPG-7、ジープなどだ。

 

『トモキ、ロボを左折させて直進させろ。そうすれば奴らの視界にロボが入る』

 

「わかりました。RFB、左折してそのまま直進だ」

 

「りょーかい。任せて」

 

 2056年 2月11日 1207時 タジキスタン

 

 手投げ偵察ロボが動き、雪に独特なタイヤ跡を引きながらイェーガーの集団に向かって走行する。

 

 イェーガーの一体が偵察ロボに気づいた。ライフルを構えて狙いを定める。引き金を引いたが、外れた。偵察ロボは蛇行し、不規則な動きを始めた。銃声が散発的に鳴り、雪が弾丸で掘り返された。

 

 2056年 2月11日 1208時 タジキスタン

 

 ジェラルド・グリッドレイはレーザー測距儀で待ち伏せしていたイェーガーとの距離を測った。694m。ポケットからメモ帳を取り出し、零点調整している距離を800m前後から700m前後に下げるためのエレベーション・ノブの設定を調整する。

 エレベーションの設定は常に頭に入れておかねばならない。咄嗟の時に、標的からどれだけ上下方向にクロスヘアの照準点をずらすべきなのかという重要な指標となる。

 

 グリッドレイは1体の敵の頭に狙いを定めた。深呼吸して、息を止め、遊びの無い引き金を引く。

 

 パシッ!サプレッサーで抑えられた銃声が鳴り、敵の頭部に.338ラプアマグナム弾が命中する。続いてA3Gも引き金を引いた。サプレッサーが無いので、ズドン!という大きな銃声が響く。ファルコンは撃つ度に薬室へ手で.50BMG弾を込めて撃つ。敵は立ち上がりスナイパーの姿を探して周囲を見回したが、そんな事をしたサイボーグは忽ち狙撃手の餌食となった。狙撃手を狩るならば、狙撃手を差し向けるのが一番だ。

 

 呉とWA2000は斜面をゆっくりと登り、敵を見下ろせる位置へと向かった。そこには、当然イェーガーが待ち構えているものだと考えていた呉の予想は完全に外れた。3つの銃身を束ねた、巨大な銃を持ったサイボーグがのっしのっしと歩いてくる。

 

「あれは、ストライカーね。のろまだけど、早いところやっつけないとまずいことになるわ」

 

「ふん。あんなのろま、楽勝よ」

 

 WA2000が引き金を引く。連続して5回。ストライカーは見事に電子頭脳を撃ち抜かれ、生体組織と金属やプラスチックの塊になった。

 

「お見事。はい、チョコバー」

 

 WA2000はまんざらでもない表情で呉からチョコバーを受け取り、ザックの中に入れた。だが、二人は背後から1機のスカウトに監視されていたことには気付かなかった。

 

 2056年 2月11日 1209時 タジキスタン

 

「ねー、早いところあいつらやっちゃおうよ。どうして放っとくのさ」

 

 白い髪をツインテールに結び、その小柄な体に不釣り合いな程大きなグレネードランチャーを持ったサイボーグがモニターを見て言った。

 

「いいか、ドリーマー。奴らの狙いはAR小隊の誰かだ。我々は、そいつを捕獲しろと命令を受けている。つまり、奴らを追えば、ターゲットに辿り着けるという訳だ」

 

「わかったよ、エクスキューショナー。で、AR小隊の奴を見つけたらどうするのさ?」

 

「勿論、奴らと一緒に一網打尽だ・・・・・ん?」

 

 地下に作られたアジトの扉が開き、別のサイボーグが入ってきた。

 

「あら。ドリーマー、ここにいましたか」

 

「なんだ。エージェントか。何か用?」

 

「アルケミストが私たちに用がある、と。迎えのヘリが来ますよ」

 

「えっ!?じゃあ、グリフィンのあいつはどうするのさ!?」

 

「ここはエクスキューショナー、あなたに任せます。いいですね?」

 

「いいだろう。奴らを追えば、いずれターゲットが見つかるはずだ。任せておけ」

 

「それでは、行きますよ。ドリーマー」

 

 2056年 2月11日 1215時 タジキスタン

 

 岩肌に偽装された扉が開き、エージェントとドリーマーが出てきた。外には既にローターを回すMi-17汎用ヘリが待機していた。コックピットには、2体のイェーガーがいる。

 

 2人が乗り込むと、ヘリは離陸し、北へと向かった。エージェントは通信機を手に持ち、エクスキューショナーに呼び掛けた。

 

「いいですか、エクスキューショナー。あなたの任務は、奴らを監視し、AR小隊を捕獲することです。くれぐれも余計なことはしないように」

 

『わかっている。残りの連中は?』

 

「邪魔にならない限りは放っておきなさい。どうせ、大した奴らではありません」

 

『わかったよ。じゃあな』

 

 エクスキューショナーとの通信が切れた。

 

 2056年 2月11日 1033時 トルコ アンカラ

 

「さて・・・・・と。随分時間がかかったな、これ」

 

「でも、よくメンタルモデルの再現ができたわね」

 

「ちょっと手こずったけど、まあ、いいさ。それに・・・・・」

 

 少年はキーボードを叩いた。サイボーグと彼女に烙印された銃のシルエットが画面に映る。

 

「ちょっと調べたけど、この銃、かなり成功したみたいだね。特殊作戦モデルだってさ」

 

「それに、この銃の下に付いているこれは何かしら?」

 

「銃の事はよく知らないけど、まあいいや。シーア、取り敢えず、メンタルモデルが問題無いかチェックして、問題無ければこいつを起こしてみよう」

 

 シーアと呼ばれた少女はベッドの上に横たわる少女の傍らに置かれた銃を持つ。

 

 シーアは、少年の後ろ姿を見た。つい先日、グリフィンの作戦のサポートをしたお陰で、二人は莫大なお金を手に入れた。その資金を使い、二人はS15地区からこの新しい家に移り住んだのだ。

 

 しかし、この人形と銃。どこの誰が放置して行ったのだろう。朝、シーアがゴミを捨てに行こうとした時、家の前に無造作に捨ててあったのだ。

 

 どういう訳か、この少年、デールはこの人形に興味を持ち、メンタルモデルの再現を試みていた。この作業は思った以上にトントン拍子に進み、デールは僅か数時間で復元を完了させたのであった。

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