※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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侵攻とちょっとした回復祝い

 2056年 2月20日 0011時 イラン ブーシェルフ

 

 まだ真っ暗な冬空の静寂切り裂くように、突如としてジェット機の轟音が連続して鳴り響いた。それから暫くして、爆発音が鳴り、地上で火柱が立ち上る。アメリカ海軍とイギリス海軍の駆逐艦や潜水艦から発射されたBGM-109Bトマホーク巡航ミサイルが、ブーシェルフ市内に作られた鉄血の拠点に着弾したのだ。ペルシャ湾には、アメリカ、イギリス、スペイン、フランス、サウジアラビア、UAE、カタールといった国々の海軍艦隊が展開している。この連合部隊は、アメリカ海軍第5艦隊をを基幹とし、中東における鉄血の掃討作戦を担っている。

 

 ブーシェルフ空港に駐機されていた、得体のしれない形状の航空機の列の上にAGM-86巡航ミサイルが飛来し、上空で爆発した。不気味な飛行機が爆風でひしゃげ、炭素繊維やアルミニウムでできた残骸となる。このミサイルは、ディエゴガルシア島の基地から出撃したB-21A爆撃機から発射されたものだ。そして、この21世紀の爆撃機と共に同じミサイルを発射したのが、100年前から飛び続けている老兵、B-52H爆撃機だ。この爆撃機は、20世紀後半の戦争で登場して以降、数々の輝かしい戦績を打ち立ててきた。後輩であるB-1BやB-2Aが退役してしまった今でも、アメリカ空軍の主力爆撃機であり、核戦力の三本柱の一つであり続けている。

 続いて飛来したのは、イギリス海軍とアメリカ海兵隊のF-35Bとフランス海軍のラファールM、アメリカ海軍のF-35Cといった戦闘機だ。これらの機体には対レーダーミサイルが搭載され、鉄血が築き上げた防空レーダーや対空ミサイルを封じる役目を担っている。

 

『ハンター11、ターゲットロック。ミサイル発射!』

 

 イギリス空軍のタイフーンFGR.4がの編隊がALARM対レーダーミサイルを一斉に放った。ミサイルはマッハ2の速度で不気味な防空レーダーのアンテナに衝突し、破壊する。

 

『ハンター11、敵の防空施設の破壊を確認。奴ら、随分大人しくしてやがる』

 

『ハンター11、こちらシャドー31、こちらでもターゲットの破壊を確認した。地上部隊を突入させる』

 

『ハンター11了解。帰投する』

 

 2056年 2月20日 0017時 イラン ブーシェルフ

 

 市内の上空にAH-1Z攻撃ヘリに護衛されたCH-53Kが編隊で現れた。ヘリは沿岸部のショガブ・パークでホバリングしながら太いロープを垂らす。そのロープを使って重武装のマリーン・レイダーズの隊員が次々と降りてきた。その周辺の海岸線からは、まるで餌に群がるゴキブリのようにACVやBvS10といった水陸両用車が続々と上陸してくる。車両はそのまま猛然と市街地の中心部に向かって走行していった。

 

 MV-22Bオスプレイの集団が代わる代わる海岸線でホバリングし、ワイヤーで吊り下げた無人兵器を次々と下ろした。四足歩行のヒュドラや二足歩行で、正面に大きな装甲を施され、50口径の重機関銃を搭載したケリュニティスだ。無人兵器は強襲揚陸艦のコントロールルームから衛星通信で操作されるか、AIに予めインストールされたプログラムに従って行動する他、衛星通信で遠隔操作することもできる。

 

 AH-1Zヴァイパー攻撃ヘリの群れが海の方から市街地に向かって飛んでいった。そして、すぐにAGM-114Kヘルファイア対戦車ミサイルを放つ。市内に設置された対空砲から放たれた対空機関砲の曳光弾の花火が上がる。それにまぐれ当たりされたフランス陸軍のEC665タイガー攻撃ヘリが回転しながら落下していった。

 

『メーデー!メーデー!メーデー!コブラ35被弾!墜落する!』

 

 再び戦闘機の轟音が鳴り響き、暫くしてから爆発音が聞こえてきた。空爆が本格的になってきたらしい。市内の各所にトマホークが着弾し、火柱が上がる。建物の窓から市民がその様子を不安げに眺めていた。

 

 2056年 2月20日 0023時 イラン ブーシェルフ

 

 エゴール大尉は手に持ったM27IARのチャージングハンドルを引いた。MV-22Bの中には自分の他、13名の部下が乗っている。M27IARを持つライフル銃手が自分を含めて10名、うち2名がSMAWロケットランチャーを持ち、自動小銃にM320榴弾発射機を取り付けている。そして、M249分隊支援火器を持つ機銃手が2名、Mk11半自動狙撃銃を持つ選抜射手が2名という構成だ。この作戦における、マリーン・レイダーズの標準的な歩兵小隊の編成である。

 

 NATO加盟国とペルシャ湾岸地域の各国は、イラン国内で暴れまわっている鉄血がイラクやクウェート、UAE、カタール、バーレーンに侵攻することを阻止するよう要求していた。しかし、イラン軍と革命防衛隊は全く制圧ができていない状態で、むしろ敵に押されて後退を余儀なくされていた。そこで、サウジアラビアとアメリカが中心となり、2月1日に2月15日、現地時間0000に時までにイラン軍が鉄血に対する攻撃で成果が見えないと判断した場合、無条件でイラン国内の鉄血に対して攻撃を行うという声明を出していた。

 

 そして、イラン軍と革命防衛隊が全くもって成果を上げられないままこの日を迎えることになった。イラン国内の鉄血の拠点には巡航ミサイルと精密誘導爆弾が降り注ぎ、地上では有志連合部隊の無人兵器や兵士が進軍を続けている。

 

「大尉、地上にいる連中がバーイーガン飛行場に敵の陣地を発見しました!かなり強固な陣地で、火力支援が必要です!」

 

「わかった。ちょっと待ってろ」

 

 エゴールは無線に向かって何やら話し続けた。暫くすると、向こうの広い通りにテュポーンというAI搭載の巨大な戦車が轟音を立てて現れた。テュポーンは車体の上に搭載したプラズマ砲を回し、数発発射した。青白い光が飛行場に向かって伸びていき、即座に爆発が連続して発生した。

 

「無人機からの映像を確認・・・・・ターゲットの破壊を確認した」

 

「さて、突入ですか?大尉」

 

「ああ。ぶちかましてやれ」

 

 MV-22Bは高度を下げ、着陸に適した広さの空き地を探すためにプロップローターの角度を飛行機モードからヘリモードに切り替えた。

 

 2056年 2月19日 2134時 ポルトガル グリフィンリスボン支局

 

『・・・・・・現地時間2月20日、午前0時丁度にアメリカ、イギリス、フランスを中心とした有志連合軍がイラン南部の都市、ブーシェルフに対する攻撃を開始しました。標的は市内を占拠しているテロ組織、鉄血製造工廠です。NATO加盟国及びペルシャ湾岸諸国は、イラン政府に対して国内の鉄血製造工廠の拠点を排除するよう再三に渡って要求していましたが、イラン側の回答が得られず、2週間前に予告していた通り、攻撃を開始しました。ただ今、市街地で爆発が・・・・』

 

 中継映像の日本人レポーターがそこまで言ったところでテレビのスイッチが消された。椅子に座っていた五十嵐が首を回すと、いつの間にかスプリングフィールドとG36、UMP45、UMP9が部屋に入ってきているのを見た。スプリングフィールドはボール紙でできたやや大きな箱を、G36は魔法瓶とマグカップが乗った大きな盆を持っている。

 

「指揮官、おやつだよー。傷の具合はどう?」

 

 UMP9がニコニコ顔で話しかけた。

 

「ん?ああ。今朝、もう抜糸したよ。やっぱり人工生体パテはすごいな。あっという間に傷が塞がったよ。あれは21世紀初頭の技術を応用したものだけど、実用化までは時間がかかったらしいな。明日には訓練を始めていいとさ」

 

「それは良かったですね。では、完治祝いに食べて下さい」

 

 スプリングフィールドが箱を開くと、色とりどりのカップケーキがぎっしりと並んでいた。

 

「おっ、うまそうだな」

 

 五十嵐は深緑色のケーキを掴み、一口齧った。抹茶味だ。

 

「じゃ、私も、いただきまーす」

 

 UMP9はピンク色のケーキを手に取った。G36がポットからマグカップに紅茶を注いでいく。

 

「ところで、明日の訓練はどうする?ヘリアンさんは・・・・・」五十嵐がそこまで言ったところで、UMP9が遮った。

 

「もー、こんな時くらいさ、そんな話は忘れようよ。それよりも、さ。例えば・・・・・・・・45姉はやっぱり指揮官の最初の彼女になるの?」

 

 五十嵐は噎せてケーキの欠片を喉に詰めそうになり、コーヒーで流し込んだ。スプリングフィールドとG36の頭が戦車の砲塔のように回って五十嵐の方を向く。

 

「なんでそんな話を?」

 

「へっへー。45姉が指揮官のお気に入りだってことくらい、みんな知ってるよ。良かったね45姉。大切にしてもらってね。あ、そうか。45姉と指揮官が家族になれば、私も指揮官と家族だね。あ、もし浮気とかしたら、後ろから頭を撃つ・・・・・までは、しないけど、両足を折るくらいはするから覚悟しといてね」

 

 いや、いくらなんでも怖すぎる。

 

 UMP45は顔を真っ赤にして、その場で固まっている。一方でスプリングフィールドはいつもと同じような柔和な表情で五十嵐を見ていた。

 

「あらあら。じゃあ、食べ終わったら、私たちはあまり長居せずに退散しましょうか」とG36。

 

 退散?おい待て。

 

「そうしましょう」スプリングフィールドがチョコレート味のケーキを紅茶で胃袋に流し込んでから言う。

 

「あっ、ちょっと待っ」

 

「ええっと、これとこれと、あとこれも。置いておくから、後で二人で食べてね」

 

 UMP9は棚から皿を取り出し、ケーキを幾つか置いてからラッピングした。

 

「それでは、指揮官様。失礼いたします」

 

 G36はやや深く一礼してから出ていった。スプリングフィールドが彼女に続いて出ていく。UMP9はご機嫌な表情で右手を振りながら自室へ戻っていった。かくして、妙に慌ただしい茶会が終了した。

 

「何がしたかったんだ、あいつら」

 

 五十嵐は面食らった様子で仲間たちを見送った。

 

「ねえ・・・・指揮官・・・・・・」

 

 UMP45が五十嵐の腕を掴んだ。五十嵐はわかったという風に彼女の頭を撫でてやる。今日は45の気持ちに応えてやろう。B中隊の指揮官はそう決心した。




現実にこの年代になっても、B-52やC-130、UH-60、CH-47などの軍用機はアップデートを重ねて普通に飛んでいそうな予感。
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