2056年 3月10日 0701時 ウズベキスタン グリフィン前方展開基地
急ごしらえで舗装された滑走路にC-130J輸送機が着陸した。続いてA330旅客機が着陸し、エプロンに向かう。周囲ではグリフィンの職員が慌ただしく動き回っている。中には武装した少女たちを連れた若い男女の姿も確認できる。
続いて着陸したのはB757-200旅客機だ。B757はエプロンまでタキシングし、フォローミーカーとマーシャラーの誘導に従って停止した。
旅客機にタラップが掛けられ、ドアが開くとFN-SCAR-Mk16をスリングで吊り下げ、ホルスターにヘッケラー&コッホSFP-9を入れた五十嵐が降りてきた。大きなザックを背負い、チェストリグには各種手榴弾を入れている。仲間の戦術人形たちもぞろぞろと続いて降りてきた。
さてはて。これからAR小隊のメンバーを捜索する任務を行う事になるが、手掛かりとなりそうなのが、メンバーが乗っていた航空機が中央アジア地域で墜落した、ということだけだ。しかしながら、先日、グリフィンの通信衛星が件のAR小隊のメンバーのものである可能性が極めて高い信号を数日に渡って数十回受信したのだ。そこで、信号が途絶える前に急遽、捜索部隊を出すことになった。しかし、グリフィンの戦闘部隊はあらゆる場所に派遣されており、余裕がある状態では無い。そこで、白羽の矢がたったのが、指揮官が療養を終えて戦線に復帰したばかりのB中隊という訳だ。
おまけに、B中隊がこの作戦に選ばれた理由がもう一つある。AR小隊のメンバーが二人、この中隊に所属しているからだ。
五十嵐はブリーフィングのために、UMP45、UMP9、416を連れて、あらかじめ指示されていた、いかにも急ごしらえと思われる建物の中に向かった。他のメンバーは隣の大きなプレハブで待機することになる。
「畜生、何で私らだけこんな寒いところで待ちぼうけなんだ?」
M16A1は不満そうに愚痴った。
「姉さん、AR15かROが助けを待っているかもしれないんですよ。二人とも、ずっと寒いところで凍えているはずです。それに比べたらどうってこと無いじゃないですか」
M4A1が、そんな自分の姉にやや素っ気ない口調で言う。
「そりゃそうだけどさ。それにしたって、404のあの3人だけ優遇され過ぎだろ」
「文句を言う前に装備の点検でもしたらどうですか。皆さんそうしていますよ」
立ったまま眠りそうなG11を除き、他の戦術人形たちは武器弾薬やその他の装備品の状態を調べ、リストを見ながら不足しているものが無いかどうかを確認していた。
やがて、ヘリコプターが近づいてくる重低音が聞こえてきた。東の山の峰の向こうからその音の主である2機のAH-64Eアパッチ・ガーディアンと1機のCH-47Fチヌークが現れた。3機とも茶色、黒、白、薄い灰色、濃い灰色の5色を複雑なパターンで塗った迷彩塗装が施されている。
3機のヘリは雪を巻き上げながらヘリパッドに着陸した。チヌークからは若い男と10人の戦術人形たちが降りてくる。この小隊は昨日の深夜からの短距離偵察任務から戻ってきたところだった。戦術人形たちが持っている銃はMk23にAS-VAL、DSR-50、SVD、Gsh-18とバラエティに富んでいる。連中はB中隊の人形たちのことなど、これっぽっちも気にせずに建物に向かった。
2056年 3月10日 0733時 ウズベキスタン グリフィン前方展開基地
『さて、本来なら君の直属の上司であるヘリアンがやることになるのだが、本件はかなり重要な任務故、私から直接説明させて貰おう』
スクリーンに映るのは、遥か南半球のオーストラリアにあるグリフィンの本部にいるベレゾヴィッチ・クルーガーだ。
『AR小隊が乗った飛行機が中央アジアで撃墜されて以降、M16とM4以外のメンバー3人が行方不明になり、うち1人、M4SOPⅡがメンタル崩壊によってKIA扱いになっている事は以前話した通りだ。そして、AR15とRO635が未だに行方不明になっている。だが、つい数日前からRO635のものと思われる信号を我々の通信設備が断続的に数回に渡って受信した。上層部はRO635が生存しているものと断定し、鉄血に殺される前に回収することを決定した。勿論、鉄血の連中に同じ信号を傍受されている可能性は高い。つまり、奴らがRO635を見つける前に回収し、帰還しなければならないということだ』
「厄介ですね。何と言いましたっけ。連中の幹部というか、将校というか・・・・・・」
「ハイエンドモデルよ」416が五十嵐に助け舟を出した。
『そう。ハイエンドモデルという、戦闘能力が高い連中が現れる可能性が極めて高い。先日、グリッドレイが仕留めたような奴だ。他のサイボーグと違い、ハイエンドモデルは戦術人形と同様に、自ら思考し、判断し、行動する。そいつらは、鉄血の元締めであるAI、エルダーブレインの命令を受け、量産型のロボットやサイボーグを直接指揮して、人間に対する攻撃を行っている』
「わかりました。注意しないといけないですね」
『それと・・・・・その辺りはコーラップスの汚染地域でもある。各地ではE.L.I.D.の存在も確認されている。注意しろ』
コーラップス、つまり崩壊液の存在が確認されたのは第三次世界大戦の遥か前である。その存在が第三次世界大戦の引き金の一つであった。幸いにも、五十嵐の故郷である日本はその被害を殆ど受けずに済んだが、多くの国で信じられない数の人命が失われた。何せ、核兵器がさも当たり前であるかのようにバンバンぶっ放されたのだから。しかし、直接戦争に関わることなく、戦争での死者が出なかった国でも、経済危機となり、目に見えないかなりの損害が出たのだから。
「わかりました。E.L.I.D.に遭遇した時は・・・・・・」
『ぶっ放せ。それで奴らは倒せる』
「それさえわかれば十分です」
『それと、実は、つい3時間前なんだが、バックアップのための部隊を派遣しておいた。今、飛行機でそっちに向かわせている。あと1時間でそっちに到着する計算だ』
「それはまた急ですね」
『ああ。部隊記号はS小隊だ。頼りになる連中だぞ』
2056年 3月10日 0745時 トルクメニスタン上空
An-70の機内でグエン・タオ・ランは目を覚ました。彼女を起こしたのはスチェッキン自動拳銃を持つ少女だ。
「・・・・・・何?スチェッキン」
「機長がもうちょっとで目的地だって」
「全く。緊急事態と言ってもさ、急に行先を変更してほしく無いわね。ちょっとはこっちのことも考えて欲しいわよ」
「ねー、こっちだって振り回されてばっかりなのもうんざりなのに。でも、指揮官、緊急事態って何なの?」
「ちっとも教えてもらって無いわよ。まあ、向こうに着けばわかるんじゃない?全く、本部の連中は人使いが荒いんだから」
「うーん。それと、SAAがコーラが欲しいって」
「わかった。じゃあ、到着する前におやつにしましょう。暫くおいしい物が食べられなくなるなるわね。あんなところで作戦が始まったら、ドローンで補給してもらう、不味いパックのご飯しか食べられなくなるんだもん」
「だね。全く、振り回すのもいい加減にして欲しいよね」
「まあ、仕方ないわ。後で報酬をたっぷり貰わないと釣り合わないってことは、クルーガーとヘリアンにしっかり言っておかないと」
S小隊メンバー
指揮官
グエン・タオ・ラン
スチェッキン
コルトSAA
MP7
P-90
OTs-14
T65
モシン・ナガン
M99
ショーシャ